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政府 中東地域に護衛艦と哨戒機を派遣 きょう閣議決定
2019年12月27日 5時09分
中東地域で日本に関係する船舶の安全確保に必要な情報収集態勢を強化するため、政府は、日本独自の取り組みとして、護衛艦と哨戒機を派遣することを27日、閣議決定します。安倍総理大臣は、来月中旬にもサウジアラビアなどの関係国への訪問を調整していて、派遣への理解を得たい考えです。
中東地域では、イランをめぐる核合意から、アメリカが一方的に離脱して以降、緊張が高まっています。
政府は、地域の緊張緩和と情勢の安定化に向け、外交努力を続けるとともに、日本に関係する船舶の安全を確保するのに必要な情報収集態勢を強化するため、日本独自の取り組みとして、護衛艦と哨戒機を派遣することを27日、閣議決定します。
防衛省設置法に規定された「調査・研究」に基づいて行うもので、護衛艦1隻を新たに派遣するほか、アフリカ東部のジブチを拠点に海賊対策にあたっているP3C哨戒機を活用します。
活動範囲は、オマーン湾、アラビア海北部、バーブルマンデブ海峡東側のアデン湾の沿岸国の排他的経済水域を含む公海で、ホルムズ海峡やペルシャ湾は含まれていません。
活動期間は1年間とし、延長する際には国会への報告と、改めて閣議決定を行うとしています。
不測の事態が発生するなど状況が変化した場合には、海上警備行動を発令して、対応にあたるとしていて、政府は、準備や訓練などが終わり次第、部隊を派遣することにしています。
今回の派遣をめぐって、安倍総理大臣は、今月20日に日本を訪れたイランのロウハニ大統領に、直接説明して、日本の取り組みへの理解を求めたほか、その翌日にはアメリカのトランプ大統領と電話会談を行い、会談の内容を説明しました。
安倍総理大臣は、来月中旬にも、サウジアラビアなど関係国への訪問を調整していて、こうした内容を直接伝え、理解を得たい考えです。
中東派遣 これまでの流れ
アメリカとイランの対立で中東地域の緊張が高まるなか、ことし6月、中東のホルムズ海峡付近のオマーン湾で、タンカー2隻が攻撃を受け、うち1隻は日本の海運会社が運航する船でした。緊張緩和に向けた建設的な対応を働きかけるため、安倍総理大臣が、日本の総理大臣として41年ぶりにイランを訪問しているさなかの出来事でした。
アメリカの無人偵察機をイランが撃墜するなど、緊張がさらに高まるなか、アメリカのトランプ大統領はツイッターで「すべての国々は、自国の船を自分で守るべきだ」などと投稿しました。
そしてアメリカは、ホルムズ海峡の安全を確保するためとして、日本を含む同盟国や友好国に有志連合の構想を説明し、参加を呼びかけました。
こうした中、政府は、同盟国のアメリカや、伝統的な友好国イランとの関係を踏まえて外交努力を続けるとともに、10月、NSC=国家安全保障会議を開き、アメリカが結成を目指していた有志連合には参加せず、独自の取り組みで情報収集態勢を強化するためとして、自衛隊の中東地域への派遣を検討する方針を決めました。
これを受けて、政府は、茂木外務大臣や河野防衛大臣が、アメリカや中東各国の閣僚に対し、派遣の方針について説明を進めました。
一方、国内では、今月に入ってから、与党側の党内手続きが始まり、公明党からは、派遣に慎重な立場から、必要性や派遣期間を明確にするよう求める意見が出されました。
このため政府は、派遣期間を1年ごとに更新し、活動の結果を国会に報告することなどを盛り込んだ案をまとめ、与党側の了承を得ました。
今月20日には、安倍総理大臣が、日本を訪れたイランのロウハニ大統領と会談。粘り強く外交努力を続けるとした日本の立場を伝えるとともに、自衛隊派遣をめぐる具体的な検討状況を説明し、ロウハニ大統領は、「日本が、みずからのイニシアチブにより、航行の安全確保に貢献する意図は理解している。透明性をもって説明していることを評価する」と応じました。
また、安倍総理大臣は、アメリカのトランプ大統領と電話で会談し、ロウハニ大統領との会談内容を説明。中東地域の緊張緩和と情勢の安定化に向けて、アメリカと緊密に連携しつつ、引き続き外交努力を続ける考えを伝えました。
自衛隊の活動範囲など
政府は、自衛隊の活動範囲について、オマーン湾、アラビア海北部、バーブルマンデブ海峡東側のアデン湾で、沿岸国の排他的経済水域を含む公海としています。イランにより近い、ホルムズ海峡やペルシャ湾は含まれていません。政府は、日本に関係する船舶の航行が、年間でホルムズ海峡はおよそ3900隻、うちおよそ2600隻がタンカー、またバーブルマンデブ海峡は1800隻が通過するとしています。
護衛艦が燃料の補給などを行う際は、活動範囲内にある港に寄港して行うとしていて、オマーンの南部にあり、アラビア海に面するサラーラ港という港などを活用する方向です。
一方、哨戒機での情報収集活動は、現在、取り組んでいる海賊対策に支障を及ぼさない範囲で行うとしていて、海賊対策の活動範囲でもあるアデン湾を中心とする方針です。
「調査・研究」と「海上警備行動」の違い
今回の派遣について、政府は、中東地域での情報収集態勢を強化するため、防衛省設置法で定められた「調査・研究」に基づいて行うとしています。「調査・研究」に基づく自衛隊の活動は、防衛大臣の権限で行うことができ、政府は通常、この規定を自衛隊による、日本周辺での警戒や監視活動の根拠としています。
今回の派遣にあたっては、公明党を中心に、派遣の長期化を防ぐなど、「歯止め」を求める意見が出ました。
このため政府は、派遣について、本来は必要のない閣議決定を行うほか、派遣期間を1年と区切り、延長する際には改めて閣議決定を行い、国会に活動の結果を報告をするといった、手続きを盛り込みました。
ただ、「調査・研究」に基づく活動は、あくまでも情報収集活動が目的で、日本に関係する船舶であっても、この法的根拠に基づいて護衛を行うことは難しいとしています。
政府は、日本船籍のタンカーが何者かによって襲撃されるなど不測の事態が生じた場合は、「調査・研究」を「海上警備行動」に切り替えて対応するとしています。
「海上警備行動」は、自衛隊法に基づいて、閣議決定により、防衛大臣が、海上で人命や財産を守り治安を維持するために、自衛隊に必要な行動をとるよう命じるものです。
発令されれば、不審船などを見つけた場合、拡声器を使った警告や針路妨害のほか、憲法で禁じられる「武力の行使」に至らない範囲で、警告射撃など武器の使用も認められます。
ただ、国際法上、船舶の保護は、船籍を登録している国の政府が行う原則があることなどから、防衛省は、外国籍の船の場合、日本人が乗船していたり日本の会社が運航していたりしても、武器を使用した実力行使は難しいとしています。
日本船主協会によりますと、日本の海運会社が運航する船舶のうち、船籍が日本のものは、10.5%だということです。
「海上警備行動」の発令にあたって政府は、意思決定を迅速に行うため、必要に応じて電話などで閣議決定を行うこともあり得るとしています。
海上警備行動が初めて発令されたのは、平成11年に、日本海の能登半島沖で見つかった北朝鮮の工作船と見られる不審船が領海侵犯した際で、これまでに合わせて3回発令されています。
「調査・研究」に基づく長期の海外派遣は初
自衛隊が、防衛省設置法の「調査・研究」に基づいて1年単位の長期間にわたり海外に派遣されるのは初めてのケースとなります。防衛省設置法の「調査・研究」は、自衛隊の艦艇や航空機が日本周辺の海域で行っている警戒監視や情報収集活動の根拠とされていますが、過去に一時期、自衛隊の部隊が「調査・研究」に基づいて海外派遣されたことがあります。
平成13年のアメリカ同時多発テロを受けて海上自衛隊がインド洋で行った給油活動では、当初、「調査・研究」に基づいて艦艇が派遣されました。
このときは、本格的な活動に先立ち、派遣先の海域の気象や港湾の状況を調査する一時的な措置と位置づけられ、およそ2週間後には、新たに作られた「テロ対策特別法」に基づいて艦艇が派遣されました。
当時、一時期とはいえ、「調査・研究」に基づいて海外派遣を行うことには「法の拡大解釈ではないか」という指摘もありました。
今回、活動期間は1年間とされ、自衛隊を「調査・研究」に基づいて長期間にわたり海外に派遣する初めてのケースとなります。
自衛隊活動範囲周辺の情勢
中東に派遣される自衛隊の活動範囲になるオマーン湾、アラビア海北部、アデン湾は、世界のエネルギー供給やアジアと中東、ヨーロッパをつなぐ物流網にとって重要な海域になっています。このうちオマーン湾は、ペルシャ湾からホルムズ海峡を抜けてアラビア海に向かう上で必ず経由する海域で、湾岸の産油国から原油を輸入する各国にとって重要な海上交通路となっています。
今回自衛隊が派遣される活動範囲には含まれませんが、オマーン湾と接するホルムズ海峡は、世界に供給される原油のおよそ2割が通過しています。
このうち原油の多くを湾岸諸国に依存する日本は、輸入量の8割以上がホルムズ海峡を通過し生命線ともいえる航路となっています。
この海域ではことし6月、ホルムズ海峡を抜けてオマーン湾を航行していた、日本の海運会社が運航するタンカーなど2隻が何者かに攻撃を受ける事件が起きています。
アメリカは、攻撃にはイランが関与していると主張していますが、イランは否定しており、真相は明らかになっていません。
さらに、同じ6月にはアメリカの大型の無人偵察機がイランに撃墜されたほか、7月にはイギリス船籍のタンカーが国際的な航行規則に従わなかったとして、イランに拿捕(だほ)され緊張が高まりました。
一方、アラビア半島の南側、イエメンとソマリアの沖合にあるアデン湾は、アジアと中東、ヨーロッパを結ぶ、海上交通路になっています。アデン湾の東端には紅海につながるバーブルマンデブ海峡があります。
この海峡は湾岸諸国からヨーロッパなどに向かう原油タンカーの輸送ルートになっており世界の原油供給量の5%近くが通過します。
海峡の北側の紅海では、イランが支援するイエメンの反政府勢力が、敵対するサウジアラビアのタンカーを攻撃する事件が起きています。
一方、紅海では10月、イランのタンカーで爆発が起き、イランは国家レベルの関与があった可能性があると主張しています。
米主導の事実上の新たな有志連合 活動開始
ホルムズ海峡やオマーン湾、そしてバーブルマンデブ海峡では、アメリカ主導の事実上の新たな有志連合も先月から活動を始めています。この有志連合はことし7月、アメリカがイランへの圧力を強めることをねらって各国に結成を呼びかけましたが、対話による緊張の緩和を目指すフランスやドイツが参加を見合わせ、イランとの関係を重視する日本政府も慎重な姿勢を示しました。
この結果、参加した国はアメリカと同盟国のイギリス、オーストラリアのほかイランと対立するサウジアラビアやUAE=アラブ首長国連邦、それにバーレーン、アルバニアの7か国となっています。
アメリカは各国の懸念も踏まえ、現在では当初の有志連合という呼び方を控え「国際的な海洋安全保障を構築する活動」としていて、近くカタールとクウェートも参加する見通しだとしています。
この活動では司令部をアメリカ第5艦隊の拠点があるバーレーンに置き、参加国は艦艇などを派遣して、警戒・監視活動にあたっています。
活動海域はペルシャ湾からホルムズ海峡、そしてオマーン湾に至る海域とアラビア半島の西側の紅海、そしてバーブルマンデブ海峡で、アメリカとしては周辺で活動するイランとイランが支援するイエメンの反政府勢力「フーシ派」を念頭に置いているとみられています。
これらの海域は自衛隊の活動を予定している海域とも一部、重なっていて、中東地域を管轄するアメリカ中央軍のマッケンジー司令官は先月、バーレーンで開かれた国際会議でNHKの取材に「日本もおおむね同じ活動をすると見ている。同盟国として多くの情報を共有できるだろう」と述べて、自衛隊との連携に期待を示しています。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191227/k10012229801000.html
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■ 2009年7月9日
「我が郷は足日木の垂水のほとり」 はじめました。
本稿はその保管用記事です。
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