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ワクチン接種副反応 「実態解明し不安解消したい」 岐阜の病院長
2021/5/15 20:56
全国的な感染再拡大が深刻な新型コロナウイルスの感染対策について、私たちはどのように向き合っていけばよいのか。医療従事者への「先行接種」として2月から岐阜県内で最も早くワクチンの接種がスタートした国立病院機構・長良医療センター(岐阜市長良)の松久卓院長(64)に、ワクチン接種やその副反応、いまだに解明されていないウイルスの実態などについて聞いた。【聞き手・井上知大】
――センター職員のワクチン接種状況は。
◆全職員442人のうち9割の396人が3月までに接種を受けた。残り1割の職員は接種を希望しなかった。また107人の委託職員も含めると、当院の関係者計503人が2回の接種を受けた。
――接種直後の副反応は。
◆直後に手や唇のしびれや寒気、吐き気を訴える人が3~4%程度いたが、急性の激しいアレルギー反応「アナフィラキシーショック」のような重篤な症状の人はいなかった。接種後に血圧が高くなったまま下がらない人が1人いて入院したが、翌日には血圧が下がって退院した。
――2回目の接種後に比較的強い副反応が多いと聞いた。
◆その通りだ。打った直後は軽度でも翌日になって全身の倦怠(けんたい)感や頭痛、発熱を訴える人が多い。ワクチン接種を受けた職員の43人が、翌日に体の不調を訴えた。職員には仕事を休んだり、早退してもらったりしている。
経過観察のため入院したのは、血圧が下がらなかった1人を除き計2人。うち1人はすぐに回復したが、3月に2回目を接種した女性職員は、頭痛と嘔吐(おうと)の症状が長引き、(取材した)4月下旬も症状が続いている。日を追うごとに回復しつつあるが、自宅療養している。
高齢者より若年者の方が多く出現
――副反応の全国的な傾向は。
◆厚生労働省がワクチンを先行接種した医療従事者を対象に全国で健康調査を行い、当院からは258人がこの調査に参加した。4月9日時点の中間報告では、1回目接種後の報告は1万9158例、2回目接種後の報告は1万5985例あり、2回目の副反応として、37・5度以上の発熱があった人が38・1%。注射を打った局所の痛みを訴える人が91・1%。全身倦怠感が69・3%、頭痛が53・6%。いずれも2回目の接種の翌日が多い。
私も2回目の接種翌日は腕が上がらないほど痛かったし、38度の熱が出た。さらにフルマラソンを走ったのかと思うほど全身に筋肉痛が出て、起き上がることもつらかった。副反応の出現は、高齢者より若年者の方が多く、特に若い女性が多い。多くは数日以内に改善している。
――かなり高い確率で副反応が出るようだが、ワクチンは打つべきか。
◆それなりにしんどい思いをする症状が出てしまうが、その多くが1~2日で回復する。ワクチンの有効率は95%と言われている。重症化し最悪の場合に死亡することや、後遺症で苦しむリスクと比べたらベネフィット(利益)が大きく、私は接種を勧める。副反応の実態を明らかにして、皆さんの不安を解消したい。
――新型コロナウイルスのワクチンを接種すれば、マスクを外せるのか。
◆ワクチン接種は感染時の発症を抑え、重症化を防ぐことにつながる。ワクチン接種の有無に関わらず、症状のない人は感染に気づかないことが多い。(ワクチンが)他人への感染を防ぐことにつながるかについての調査はしきれない。ワクチンを接種した後も、未接種者と同じようにマスクの着用を励行するなどの感染防止対策を続けてほしい。
――治療法やワクチンがある季節性インフルエンザに感染し、死に至る患者もいる。コロナの感染予防のための多大な行動制限は合理的なのか。
◆外出時はマスクをして密閉、密集、密接の「3密」を避ける心がけをしても、新型コロナは高水準の流行が続いている。もしマスクをせず、行動様式も従来のままだったらこの程度では済まない。現在の数倍、数十倍の人が亡くなるだろう。
今冬は国内でインフルエンザは流行せず、死者も激減したのに、新型コロナの感染者が多い。対処が難しいウイルスだ。
――インフルエンザが流行しなかったのは、新型コロナウイルスが流行したためでは。
◆そうした考えもあるかもしれないが、私は多くの人の感染症予防につながるマスク着用や手洗いの徹底、会食の機会を減らすといった行動が大きいと思う。
新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける長良医療センターの松久卓院長=岐阜市長良の同病院で2021年2月19日午後2時4分、井上知大撮影 拡大新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける長良医療センターの松久卓院長=岐阜市長良の同病院で2021年2月19日午後2時4分、井上知大撮影
流行を抑えられれば以前のような生活に
――未来永劫(えいごう)、今のようなマスク生活を強いられるのか。
◆人と会って会話するという人間の根本的な行動が、コロナの流行に結びついてしまう。流行を抑えることができれば、以前のような生活が送れるはずだ。明けない夜はないと信じている。
――現場の状況はこの1年、どのように変わったのか。
◆2020年に最大20人のコロナ感染者の入院が可能だった当院では、21年1月に最大30人、4月に最大40人を受け入れ可能となった。医師や看護師などコロナ感染者の診察ができるスタッフを教育して増やしてきた。
単純にベッドの数を増やしても、スタッフの人数が増えなければ意味がない。平時は1人の医療スタッフは複数の患者を受け持つが、新型コロナで重症化した感染者がいると、人工呼吸器や人工心肺装置「ECMO(エクモ)」の管理などで、多くの時間を割かざるを得なくなる。
――国や自治体から「医療体制が逼迫(ひっぱく)している」といわれていた時の現場の様子は。
◆コロナは感染力が強いので、治療にあたるスタッフはマスクや手袋、防護服を着用し、別の仕事に取りかかるたびに脱着しなくてはならない。コロナは他の病気と比較にならないほど人手と時間がかかる。21年1月、長良医療センターに最大26人が入院していたときは大変だった。
――重症化リスクの高い高齢者へのワクチン接種が本格化。接種する医療側に求められる準備は。
◆高齢者はあらゆる移動に時間がかかることを念頭に、接種体制を整える必要がある。車椅子を使う人もいれば、付き添いが必要な人もいる。接種会場は「密」になりやすい。
集団接種を行う施設は、受け付けから接種、副反応の経過観察をする待機場所に至るまでの動線の確保が必要だ。ヒトは加齢と共に物忘れをしやすくなるもので、なかには認知症の人もいる。当日の急なキャンセルを想定し、用意されたワクチンが無駄にならないような仕組みづくりが必要だ。長良医療センターでは、未接種の職員に接種してもらうようにしている。
――接種を受ける側に心がけてほしいことは。
◆事前に予診票を書いてから接種会場に来てほしい。会場で記入すれば1人あたりの滞在時間が長くなり「密」になりやすい。「お薬手帳」を持参すれば既往症や服用中の薬をすぐに把握できる。
会場では問診をするが、あらかじめかかりつけ医に相談したうえで、自身のアレルギーや基礎疾患を伝えてくれると、スムーズな接種につながる。肩を出しやすい服装で会場に来てほしい。脱着に時間がかかる着物などは避けてほしい。
まつひさ・たかし
1957年、岐阜県山県市生まれ。東海中央病院(同県各務原市)副院長を経て2020年7月から現職。高校時代に人の病気を治す仕事をしたいと考え、医師を目指した。専門は脳神経外科。岡山大医学部時代は、硬式テニス部で汗を流した。「最近は膝が悪くてプレーはしていない」が、大坂なおみ選手や錦織圭選手を応援する。https://mainichi.jp/articles/20210515/k00/00m/040/222000c
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■ 2009年7月9日
「我が郷は足日木の垂水のほとり」 はじめました。
本稿はその保管用記事です。
■ 2010年3月2日 人気blogランキング(政治)にエントリーしました。