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岩淸水

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癌、認知症の治療法が変わる

2018年04月18日 12時28分59秒 | 保管記事

 

  記事の紹介です。

 

癌、認知症の治療法が変わる「進化医学」で病に立ち向かう

 『人類の進化が病を生んだ』

 東嶋和子 (科学ジャーナリスト・筑波大学非常勤講師)

     2018330

  タイトルから想像した内容ではなかった、と最初にいっておこう。むしろ、想定の先を行き、「医学に進化の考え方を取り入れる」ことで見えてくる地平の広さを示してくれる内容だった。

 

 「病気を理解し治療法を見つけるためには、既存の視野を少し広げて進化の観点からも考えてみることが大事」という問題提起に立ち、最新の医学知見や先駆的な治療法を丁寧に描き出している。

 

 「癌細胞も化学療法をだしぬくように進化する」

  『人類の進化が病を生んだ』という邦題は、昨今よく話題にのぼる「進化的ミスマッチ」を想像させる。たとえば、アレルギーと自己免疫疾患が劇的に増加したのは、公衆衛生、抗生物質、家庭用除菌剤が体内の共生微生物を激減させたせいで、「ヒト免疫系は正しく教育されなくなり、正しく制御されなくなった」。このミスマッチが現代の疫病を引き起こした、というわけである。

  こうしたアプローチを紹介する本は、本欄でも何度かご紹介した。本書でも、「第1章 自己免疫疾患とアレルギー」で詳細に論じている。

  ただし、著者は、世間の耳目を集めている抗生物質耐性菌の問題などを述べるにとどまらず、それと同じ間違いが、癌などの分野でも繰り返されている、と警告する。

  <進化をよく知る生物学者らは以前から、こういうことは起こるはずだと警告してきた。ヒトの生殖サイクルが数十年なのに対し、細菌は数時間ないし数分で増殖する。圧倒的に早く進化できるのだ。にもかかわらず、私たちはその警告に耳を貸さず、新しい抗生物質がどんどん発見されることに甘えて、ヒトの病気の治療や予防にざぶざぶと使うだけでなく、成長促進剤として無数の家畜にも与えてきた。その結果、多剤耐性菌や強力な病原性微生物の脅威にさらされることになった。>

 

 <現在、多くの癌専門医は、微生物と同じく癌細胞も医者が投与する化学療法をだしぬくように進化するということを知らずに、同じ間違いをくり返している。各種の癌による生存率は少しずつよくなってはいるが、多くの症例で治療の妨げになっているのは腫瘍内部で細胞に耐性がつくことだ。>

  このように本書では、自己免疫疾患に始まって、不妊症、腰痛、眼の病気、癌、心臓病、アルツハイマー病の順にとりあげ、これらの病気の本質には進化がかかわっており、「病気を進化的に理解する」ことによって治療のパラダイムが変わり、新たな治療法が生まれつつあることを紹介する。

 

 癌やアルツハイマー病の現在の治療法に対する批判

     2018 03 30 癌、認知症の治療法が変わる【保管記事】

 

  著者のジェレミー・テイラーはサイエンス・ライター。訳者あとがきによると、イギリスBBCテレビでシニア・プロデューサーとディレクターを務め、科学番組のシリーズを担当した。リチャード・ドーキンスと共同で『盲目の時計職人』のドキュメンタリー作品も制作し、評価を得た。

  フリーランスになってからはディスカバリー・チャンネルなどの科学番組を制作。本書を含む2冊を書く一方、進化医学公衆衛生国際協会の出版局でアソシエイト・エディターを務めた。惜しいことに2017年7月、膵臓がんのため70歳で亡くなったという。

  さすがに気鋭、かつ経験豊かなサイエンス・ライターの仕事の総括ともいうべき重厚な内容で、頭が下がった。それぞれの病気の歴史的理解と、最近の進化医学から明らかになった研究内容が、著者の視点で抽出されている。

  私も恥ずかしながら把握していなかったいくつかの研究報告があり、目を見開かせられた。

  たとえば、「多種多様な分子と微生物が脳に侵入するのを阻止する血液脳関門もまた、腸内細菌によって管理されている」ことを見出したカロリンスカ研究所のぺターソンの研究。

  <無菌マウスから生まれた子マウスは死ぬまでずっと、血液脳関門が漏れやすかったというのだ。この研究結果はあくまでマウス実験で、ヒトでは検証されていないが、意味するところは憂慮に値する。母親の腸内マイクロバイオータが減衰していると、生まれた赤ん坊の血液脳関門が不完全となり、脳の正常な発達が阻害されるのはもちろん、その後の人生でも脳の防御がうまくいかなくなる可能性があるということだ。>

  癌やアルツハイマー病については、気骨のあるジャーナリストでなければここまで書けないと思われるほど、歯に衣着せぬ批判を現在の治療法にぶつけている。

  <現在の抗癌剤治療には重大な欠点がある。治療そのものが選択圧となって既存の遺伝子に変異を促し、抗癌剤への耐性をつけさせてしまうことだ。ところが、ほとんどの臨床医は抗癌剤の耐性のことに気づいていない。>

  <大部分の症例において抗癌剤治療がしているのは、癌を悪性化させないことではなく、むしろ癌が悪性化する方向に選択圧をかけることだ。>

 

 癌を撲滅する方法がないなら、癌と共に生きる方法を探せばいいのでは、と考えた科学者たちの新しいアプローチは、かなりシンプルだ。アスピリンと重曹である。

  <ここに一つの皮肉が存在する。製薬業界は毎年、抗癌剤治療と癌免疫学に巨万の投資をし、そこから利益を得ているという皮肉だ。過去数十年にわたる癌の進化についての研究から言える、いまのところ最も有望なアドバイスは、癌を根絶しようとするのではなく、抗癌剤治療を控えめにして患者が癌と共に生きられるようにすることだろう。そして、考えられうるありとあらゆる化学物質の中で最も効果の見込みのある二つの物質が、驚くほど安く買えることは覚えておいて損はない。>

  著者によると、アスピリンの作用機序はまだ解明されていないし、重曹のアプローチはマウスへの投与にとどまっている。とはいえ、癌の進化という概念を取り入れて、癌の素顔がかなりわかってきた現在、癌と共存するという考え方が理にかなっていることは、本書を読めば腑に落ちる。

 これまでの薬や治療法を否定するのは難しいが……

  アルツハイマー病も同じである。政府や製薬業界が巨額の資金と時間を投じてきた薬や治療法を否定するのは、タイタニック号の進路を変えるよりむずかしい。

  著者は、従来の「アミロイド仮説」を覆し、「感染症原因仮説」を推す。進化の視点から病気の道すじを洗い直し、新たな治療法を模索する研究者たちや、藁にもすがるかのように臨床試験に参加する患者たちの姿を見せることで、率直な議論を呼びかける。

  <これまで異端と呼ばれていた科学者たちに目を向けて、彼らを舞台の袖から中央ステージに引っぱり出し、進化が人体に与えた盲目的なデザインに対して生物学の第一原則から議論し直すときがきた。>

  もはや一刻の猶予もない。そう書きのこした70歳のジャーナリストの熱情と、それを裏打ちする科学的な態度に、すがすがしさを感じた。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12354

  記事の紹介終わりです。

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  「我が郷は足日木の垂水のほとり」 はじめました。
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