妄想ジャンキー。202x

あたし好きなもんは好きだし、強引に諦める術も知らない

〈09冬、今ふたたびの奈良へ〉藤の木古墳の夢

2009-01-11 16:36:51 | ○09冬、今ふたたびの奈良へ
ホテルに泊まってよかったと思うのは、いつも朝食のときだ。
本格中華レストランが階下にあることは判っていたが、まさか朝食から健康的な中華粥にありつけるとは思っていなかった。
念願の奈良漬けと一緒に頂くと、旅先の朝を実感する。

橿原神宮前に着いた。
うとうとしていたが、冷気に晒された瞬間に目が醒める。
飛鳥周遊はやはりバスにしようか――とバス停に向かったが地元ばりの少ない本数に驚き、背中を丸めながらレンタサイクル屋へ向かった。

橿原考古学研究所附属博物館は、今回奈良を選んだ理由のひとつだ。
常設展に入るとすぐさまボランティアガイドのおばさんに声をかけられた。
「奈良には貝塚がないんですよ」
石刃、瀬戸内技法、黒曜石、骨角器、尖頭器、ヒスイ……
聞き覚えのある単語が眼前にズラリと並んでいて、懐かしささえ覚える。
「鹿男のドラマ、ご覧になりましたか?」
話によると、この博物館でもロケをしたらしい。
おばさんは残念ながら非番で、玉木宏を一度でいいから見たかったと悔しそうに言った。

話をしているうちにおばさんは何かを感じたらしい。
「もしかして勉強されてたんですか?」
そんなにマジメではなかったが大学ではその手のゼミに籍をおいていたことだし、とりあえず頷くことにした。
「あらそうなの、勉強してる方をお相手にするなんてあたしもついてないですね」
おばさんが笑う。

奥に一際輝く展示品が見える。
「藤の木古墳の出土品です、こちらは全て国宝ですよ」
「これが見たくて来たんです」
あたしが言うと、おばさんはまた笑った。

藤の木古墳の歩揺付金冠。
国宝である本物の出土品は金が剥がれ落ちてしまっているが、それでも往時の輝きを思わせる。
遊牧騎馬民族が運んだステップルートの文化。
その形が今ガラス越しにある、それだけでも奈良に来た甲斐があるというものだ。

レプリカには青い石が象篏されていた。
「これは何ですか」
「この色はラピスラズリ、ルリ……ガラス玉ですかね」
おばさんは首を傾げていたが、あたしはそれはラピスラズリであってほしいなんてことを真剣に考えていた。

最後におばさんにお礼を言って、博物館をあとにした。
日はとうに高く登り11時。
9時の開館ちょうどに入ったから思いの外に長居をしてしまった。
それでも懐かしいことをたくさん思い出した素敵な時間だった。

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