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あたし好きなもんは好きだし、強引に諦める術も知らない

『あさが来た』25週 惣兵衛、誇り高き人生

2016-03-26 13:18:04 | 朝ドラ
『あさが来た』24週「誇り高き人生」の長文ネタバレ感想まとめ

  

流れていく時代、みかん色の人生。


※ゲスト登場と回想しっちゃかめっちゃか。




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『あさが来た』24週、みんなの大仕事、みんなの笑顔、みんなの幸せ

『あさが来た』23週、大きな手のひらに包まれて、時代が変わる

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■格別の安心感


明治34年。
九州からはじまった取り付け騒ぎは大阪にも大きな混乱を招きました。

 

どこかで見覚えがある光景。
御一新のあとの銀目廃止のとき、同じような騒動がありました。

(→『あさが来た』4週

 

当時の当主・正吉さんがぎっくり腰で寝込む中、暖簾の前に立ったのは雁助さんでした。

今はいない雁助さんの代わりに立つのは弥七。
うーん、革靴は痛そう。

そんなあのころを思い出しながら、懐かしいねえ、と。
ちょうど東京から帰ってきたあさと亀助さん。



懐かしんでんじゃねえよwww

といいつつもテレビのこっち側でも懐かしんでることに気づきます。
最終週近づく中、半年くらい前の気持ちを思い出します。


 

あのときも、新次郎に「格別のおなご」とよいしょされて店頭に立ったあさでしたが。



あささん、安定の格別の安心感。

あのころもあさが店頭に立ち、支払いに応じると伝えて騒動は落ち着きました。
この堂々とした態度、「胸がすく」と言えばいいんでしょうかね。

うーん、かっこいい!!

第2週のときと同じ感想を抱きます。




で、役員室。
この騒動をどうするか、支払いに対応するか。
あさは「全額払おう」、と提案するのですが。

銀目廃止騒ぎの時には不在だったけれど、今の大阪恐慌のここにいるのはへえさん。
「ありえない。そんなことをしてしまったら加野銀行が倒産する」と。

これほどの恐慌なら政府の援助があるはず、とあさは考えるのですが。
「難しいかもしれない」

加野屋に来る前は大蔵省に勤めていたへえさんが言うことには説得力があります。
支援はしたい、でも……と一同が煮詰まったとき。

また新次郎がちょうどいいタイミングでやってきた。

それは正吉さんが残した言葉と、渋沢栄一の言葉。



徳川時代から続く信用が肝要であると説く七代目加野屋久右衛門。(→『あさが来た』3週の感想まとめ、その2。
また、銀行経営にとって最も大切なものは信用であると説く渋沢栄一。(→『あさが来た』17週

銀目廃止の騒動が対になった描かれた明治34年の大阪恐慌の様子。
あれから多くの人と出会い、いろんな経験を積んできた加野屋の面々。

そんな新次郎の話が語る加野屋の成功体験が、へえさんの心を動かす。
銀目廃止のときにいなかったへえさんの存在が、彼らの成長を際立たせるのがいい。



■砂が落ち切った砂時計


加野銀行が大きな困難を乗り越える中。
ひとつのフラグがたちました。



茶を味わっている最中に手が止まる新次郎。
あさの呼びかけに間をおいて反応。


思わず「どきっ」としました。
新次郎の仕草が立派な高齢者です。
近藤さんからアドバイスを受けたとのことだったけれども、だとしてもこの玉木宏っていう俳優さんすごい。

役人と商人のあれこれ。
「過去にもこんなことがありましたなあ」
珍しい旦那様の昔話なのですが……


よりによって「くそ食らえ・ワンダフル回」とはwww
(これをチョイスするBKずるい)

銀目廃止を思わせる大阪恐慌。
新次郎の回想。
「ああ、そんなに時間が経ったんだ」と実感します。




砂が全部落ち切った砂時計。
思い出すのは五代友厚の砂時計。(→『あさが来た』16週その2)

新次郎にも死期が迫っているのかと不安がよぎります。
それともどうしてもあさちゃんの寝顔を見たいフェアリー五代くんの粒子か。


「旦那様…どっかけったいなような気ぃせえへん?」

商才はあれど、女の勘には自信がないあさが新次郎のことをうめに相談するのいいな。
でも今はその勘が外れてくれることを祈るばかり。



■もう1歩前へ


全額払い戻しをしたはいいものの、加野屋の経営は窮地に。
そこであさが提案したのは、生命保険事業の拡大、他社との合併でした。

このタイミングだからこそ、あえて拡大を試みる。
営業地域や顧客層がかぶらない同規模の会社と合併する。
そうして収益を伸ばし、危機を乗り越えようという。
平成の今ではビジネスニュースなどでよく聞く話ではありますが、明治の当時にこれを見越していたのはすごい。


「ご明察だす」

半年かけて育った貫禄よ。

 
「生命保険の商いまで手放すおつもりですか?」
「いいや。いっそ大きしよ思てますのや」


このために炭坑を売却したと、あさの「商売の勘」に驚かされるへえさん。
15週から16週にかけて登場していたあの謎の人物が、まさかこう使われるとは。


その数日後。



【速報】日銀介入決定。

多分朝ドラのドラマ内ではそうそうお目にかかれない言葉だよなあ。
銀行経営も安定、そしていよいよ乗り出す生命保険会社合併。


「生命保険部門を強化したい」

初登場のときには「あの賢そうな子がどうしてこうなった」と言われていた榮三郎。
いやいやまあまあ随分立派になりまして……

「日銀の救済融資決定」やら「生命保険部門の強化」やら、朝ドラらしからぬ難しい台詞が飛び交ってるのですが。

へえさんを演じる山崎さんは吉本新喜劇の座長だし。
榮三郎を演じる桐山さんは歌って踊るジャニーズです。


キャスティングの妙。



■トンチキ東柳君と常識人お千代


リビングでは千代と東柳君が結婚式の打ち合わせ。
銀行業務を手伝いたいという東柳君の言葉が嬉しくて、あさちゃん思わずシェッハン。


千代「ちょ、母ちゃんうちの旦那様に何してんの」


新次郎「ちょ、五代くん。うちの嫁さんに何してんの」

姉妹の約束から、新婚夫婦の旅立ち、それから切ない恋の終わり。
シェイクハンドがうまく生きて繋がってるなあと。

  
「それ以上言いはったらちょっと妬きます」

ドレスはそんなに好きではないんだけど、「あさのドレス姿は好きだ」と言うトンチキ旦那に、千代が一撃。
うーん、千代も東柳君もかわいい。



■憧れの女子大学校


あさは念願の女子大学校の授業を受けることになりました。
本当は自分が通ってみたかったんだよね。

  

「なぜあなたはロミオなのじゃ?」って。
「じゃ?」って。

 

机に向かうあさに、嫁ぐ前のまだ10代半ばだったころのあさを思い出す新次郎。
その目がどこか優しくも切なくて。

新次郎が過去を回想することってそんなになかったと思います。
珍しいなあと。


で、夢を叶えた成澤先生はどうしているかというと。



かつての商法会議所の五代くんを思わせる部屋の姿。
ソファ寝といい積まれた本といい。


 
「私は彼女たちを愛しています」

教育者として、というか史実的に言うとクリスチャンとしての成澤先生の言葉なのだけれど。
「えっ私は」と言いたげな宜ちゃんのメガネが切なくて。



■「淀川保険」


同業他社との合併が決まった加野生命。
その合併相手がスペシャルゲスト。

 

東京の古川生命・古田信男(宮根さん)、九州の福豊生命の富永巌(松平さん)でした。

うーん、ジワジワくる。
宮根さんはともかく、松平さんが人力車に乗って登場とか。

加野生命、古川生命、福豊生命の3社が合併し誕生したのが『淀川生命』。
これがのちの「大同生命」につながっていきます。
(この社屋の建築設計を担当したのがW.M.ヴォーリス)



「淀川は京都や奈良や滋賀やらから色んなとこから水集めて、海から世界中に流れ出していくんやて」

大阪恐慌から続く合併、難局を乗り切ったあさがうめに語るのは『淀川生命』の社名の由来。
川が集まり大河なり、やがて海にそそぐ。
あさもまたグローバルな視点を持つようになっているんでしょう。

でも、もう一つ込められた意味があるように感じます。
それが23週、加野屋にやってきたと栄達さんの言葉。



大阪の街は栄達さんにとっても思い出深い地だったはず。
御一新のあとガラリと変わってしまった大阪の街でも、「それでも淀川の流れは変わらない」と。
世界中に流れても、時間が経っても、その本流は変わらない。
そんな思いが込められているようにも感じます。




■「そろそろ朝が終わる」


生命保険事業も無事に安定し、しばらくたっての晴花亭。
へぇさんが美和さんにラブラブ光線を飛ばす中(多分アドリブだろうなww)、あさたちの後ろに座っていた外国人客が……



えっヴォーリンガーって、ヴォーリズ( ゜д゜)

(モブかと思ってたからびっくりした)

W.M.ヴォーリズ。
テロップにもある通り米国の建築家で、加野生命のモデルである大同生命肥後橋社屋の建築設計を担当しました。
有名なのはメンソレータムの近江兄弟社の元を作った話。

千代のモデル・亀子、東柳君のモデル・広岡恵三の新居の設計担当もするのですが。
その通訳にと兄が呼んできた妹が一柳満喜子。
後にヴォーリズが惚れ込んで猛アタックする女性です。

ってヴォーリズの話まで持ち出したら、とんでもないことになるぞ。

「この人だけで朝ドラ作れるレベル、時間も予算もおさまらんわ」
ってくらいの感じで、ここにヴォリンガーとして登場させたのかなとか。


「西洋のものまねばかり」
「ワンダーランドは消えてしまった」


明治の近代化政策をあまりよしと思っていない様子のヴォリンガー。
変わったことが悲しい、と。

それでもあさは、ヴォリンガーに話します。

 
「そやけどそないして日本ゆう船乗って、こいだり流されたりしてようよう今の朝迎えたことは間違いやあらしまへん」


淀川生命の由来や、明治の日本を船に喩えるあさ。
やはり少しだけ五代友厚の影を感じる。


「もうそろそろ朝も終わりだすなあ。もう夜明けなんて言うてられしまへん」


あさも新次郎も美和さんも、日本の近代黎明期が終わることに気づいている。
駆け抜けた時代、出会って別れた人たちを思い返すようなそれぞれの表情が、じんわりくる。

近代黎明期も、それを描いてきたこのドラマも。
もう終わるんだなあと。


 

両替屋時代を懐かしむ亀助さんうめさんも。
時代の波を乗り切り大きくなった『加野屋』に感じるわずかな寂しさ。
亀助さん、雁助さん、うめ、弥七たちで加野屋新喜劇やってたころが懐かしい。

何気ないドラマの中の日常の一コマ。
でも気付いたら登場人物と同じ目線に立ってる。
とても印象的。




■変わらないもの


どんどん変わっていったあさ。
榮三郎も変わっていった。
正吉が、よのが、この世を去り。
変わらないのは淀川の流れくらい。

新次郎はそんなことを考えて、少し寂しくなったのでしょうか。


「昔からの日本の景色が見たなって来てしまいましたのや」

和歌山にやってきました。

変わっていくものが描かれたなかで、変わらないものがもうひとつ。
それが惣兵衛やはつたちのいる眉山家のある風景。


惣兵衛もまた「時が流れても変わらず、大切な人を迎えられるわが家」を語る。

時代が変わっても変わらないもの。
「お家を守る」という姉妹の約束であり、それを支える旦那様たち。

それにしても惣兵衛が本当に嬉しそう。

そうだなあ、惣兵衛が名前を呼ぶのははつたち家族を除いたら新次郎だけなんだよなあ。
はつさんへのデレもそうだけど、惣兵衛の惣兵衛らしさが突き抜けてて気持ちいい。
ぶれないことってこんなに安心できるもんなんだなあと。



「イノシシはなぁ眉間や。イノシシとヒグマは眉間」

あの頃、和歌山に初めてきたときのことを朗らかに語る惣兵衛。(→『あさが来た』9週その2
思いっきり酔っ払っている様子。
イノシシはともかく、ヒグマは和歌山にいない。
ヒグマやイノシシの眉間に拳くらわすなんてどこの武井壮。

そんな冗談を言うくらい、惣兵衛さん、酔っぱらってる。
それくら新次郎に会えたの嬉しくて酒が進んでる。




同一人物とは思えないくらいに変わった惣兵衛。(→『あさが来た』前半まとめ2.惣兵衛、進化の記録
そんな惣兵衛を見守るはつも変わった。
新次郎もまた変わった。
穏やかに聞いてる笑顔が、改めて時間の流れを感じさます。


ところで、このイノシシ話

「猪突猛進」を意味しての、あさを象徴してるんだとしたら。
それを倒した惣兵衛というのもまた象徴的です。
「あさより強い」、というか「あさより波乱」の人生送ってるのは惣兵衛なのかもしれません。

惣兵衛が和歌山から帰ってきた9週。
「あさが加野屋のファーストペンギンなら、山王寺屋のファーストペンギンは惣兵衛」と言いましたが。
【あさ:はつ】の対比と共に、【あさ:惣兵衛】の対比もあったのかもしれません。




■新たな人生


大阪では、千代と東柳君の祝言が執り行われました。

 

なんって美しいの。
白無垢姿で思い出す、あさやはつ、ふゆたちそれぞれの女性の祝言。

その後、晴花亭でパーティーが行われました。


千代ちゃん宜ちゃんのこのキャッキャしてるの眩しくて涙が出そう。

 

成澤先生もご招待されたのですが、東柳君をとっつかまえて「千代のどこが気に入ったのか?」と興味本位で尋ねます。
すると東柳くん。


「『堪忍だす』とか『いやや』とか『もう2度とお会いできへんやろと思っていましたさかい』なんて言われたらもう東京育ちのぼくなんか、それだけでビリビリと」

まさかの上方言葉萌え。

いや、待て。
「堪忍だす~」「いやや~」の言葉のセレクトはなんだ。



 

新居へ向かう千代と東柳君を見送るあさ。
意地っ張りお母ちゃん。
はつを先に大坂に送り出した日、あさが送り出された日が脳裏に過ります。

そんなあさも隠居を考えてもおかしくない年頃。
夫婦の寝室に相撲取って大福帳広げてたのはもう遠い昔。



■みかん、すれちがう命




体調を崩しながらも、はつの絞ったミカンジュースをこれまた幸せそうに味わう惣兵衛
「さすがわしの嫁のこしらえたみかん、わしの嫁のこしらえたみかんジュース、さすがわしの嫁の(以下略)」
そんな声がどこからか聞こえてきそう。



老いゆく惣兵衛とは対比的に描かれるのが、千代たち。
第一子を妊娠したと伝えにきたとき、そこには眉山家からのおみかんがありました。

惣兵衛の食べるみかん、それから千代の食べるみかん。
みかんが象徴しているものは、「生命」そのものなのでしょうか。





孫が出来た、と満面の笑みの新次郎さん。

新しい命の誕生は、誰かとの別れの象徴。
千代の誕生と正吉さんの死がまさにそれでした。

惣兵衛と新次郎にできた初孫。
その初孫たちとすれ違う命が、終わる命がその惣兵衛と新次郎なのだとしたら。


砂時計フラグのたった新次郎だけではなく、予告では惣兵衛も床に臥せっていました。

親世代をここまで見送ってきたけれど、これ以上死んでほしくないのも本音。
「せめてあと少し」
それでも
「最後は笑顔で」

いろんな気持ちが入り混じります。



■誇り高き人生


惣兵衛の具合は悪くなる一方。
藍之助も和歌山に帰ってきました。
藍之助、今度は間に合って良かったね。

惣兵衛を看病するはつ。
「笑ってくれ」と言われるものの…

 
「笑いたいのに…笑われしまへん」

寺町のとき、転んだ惣兵衛に当たる光を思い出した。
はつにさす逆光の後光を思い出した。

「ようよう弱いところ見せてくれはりましたな」
涙を流すはつに、笑う惣兵衛。

惣兵衛は、藍之助、養之助、節ちゃんと初孫ちゃんを呼び寄せて、言いました。


「わしな…ええ人生やった。フフッ、ええ人生やった。
誰に愛想笑いして頭下げることものう、土の上に立って自分で耕して、みかん作って家建てて子ぉ育てて…こないな誇りあれへん」


誇り高い人生。みかん色した惣兵衛の人生。

惣兵衛さんの呼び寄せる大声。
そのあとの「うう……」が本当に肺を痛めている人のような息遣い。
柄本佑と言う俳優の底力を見せつけられた。


簡単には語りつくせないくらいいろんなことがありました。
でもそれを乗り越えるとき、いつもそばにははつがいました。




大好きなはつのそばで、大好きなはつのお箏聴いて。
あの最後の大阪の日と同じ、幸せそうな顔してる惣兵衛さんが愛しくて。


ああ、これが惣兵衛の最期なんだなと。
涙があふれて止まりませんでした。



■喪失、慟哭


翌朝、惣兵衛は息を引き取りました。



喪失感を超えてるんだろうはつの心境。
空っぽの瞳。

井戸の底からずっとそばにいた旦那様がもういない。


あさと新次郎が駆けつけ、はつにはあさが寄り添います。
そしてはつの慟哭。

「わろて生きなかんなぁ。そやけど、悲しいなあ、寂しいなぁ」」


見送った人は数あれど、残された人の悲しさや寂しさをこう見せられるのは、臨終そのものより辛いのかもしれません。
『あさが来た』の中で旅立った人それぞれに、はつのような残された人の悲しみがあったのかもしれません。

でも、思うのは、惣兵衛が先でよかった。
惣兵衛ははつを悲しませることになってしまったけれど、でも惣兵衛が悲しまなくてよかった、と。

はつのこうした涙は多分1週のとき以来かなとも。


「大阪行きたないなぁ、けど行かなあかんなぁ」

翌朝はつはけろりと立ち直りましたが、それは受け入れる覚悟をしたからでしょう。
でも惣兵衛の喪失は簡単には受け入れられない。
はつのなかでの惣兵衛の存在の大きさを実感します。



「惣兵衛さん……そっちはどないだす?」

新次郎がおみかんの山、山王寺屋を見上げながら惣兵衛に語りかけて。
涙を流し続けるはつと対照的な穏やかな新次郎の隠れた涙。

お猪口に入れて、飲み干してしまうんだろうなあ。



■生きること、死ぬこと



今井の両親、眉山家の菊さん栄達さん、それからよのさん。
そして惣兵衛。
次々と旅立つ人が続く新次郎たちの周りには成澤がいました。

おまえかよ!って勢いで出てきた成澤先生。
でもこういうときはトンチキに救われるものです。


「私にとって生と死はあまり違いはないのです」

成澤先生も彼なりに苦労してきました。
大切な人を送ってきました。
成澤先生の言葉に新次郎が少しでも救われたらいい。

もちろんこれはクリスチャンとしての言葉なんだろうけど、でも惣兵衛はんは生きてる気がしてくる。
白蛇さんになって、眉山家や山王寺屋のお山に住み着いて、
みかんの害虫退治したり、縁の下あたりでおはつさんたち(主にはつ)を見守ってるんじゃないかなって。




■笑顔の行方


惣兵衛がはつにお願いしたのが「笑ってくれ」。

 
「そないな顔せんとくれ。笑てくれ」

惣兵衛のこの言葉。
『笑顔』がキーワードになって、物語の周りを囲んでいることに気が付きます。


嫁入り前のはつが不安に思っていたのは『惣兵衛が能面のようにちっとも笑わない』ということでした。(→2週


その不安は後まで続き、あさも惣兵衛に「笑ってくれ。姉に笑顔を見せてやってくれ」と。(→2週


お互いに嫁いだ後、御一新の混乱を迎える直前の大坂で。
不安を感じたあさは、町で見かけたふゆ(このときはまだ山王寺屋の女中)に手紙を託します。(→4週
このとき矢立を貸したのが亀助さんで、これが亀助さんとふゆの出会いでした。



その手紙?の内容?がこれ。
「わろてね」のメッセージが添えられたへのへのもへじ。

惣兵衛が井戸の底に来て、はつを助けます。
はつは「このへのへのもへじが旦那様に似ているような気がする」と。
笑顔を取り戻しました。

その後、御一新の混乱で山王寺屋は没落。
はつたち一家は大阪の町を追われ、谷町そして郊外に身を隠すようになります。
途中刀傷沙汰がありながらも笑顔をとりもどした惣兵衛でしたが、失踪してしまい…


「お前にもう、一生得意な琴も持たしたらへんいうのに、何でわしが笑て生きてられるんや」(→7週
自分が笑うことに罪悪感を感じてしまっていた惣兵衛。
どうにか惣兵衛も帰還、和歌山への道も決まり、新たな人生を迎えた惣兵衛たち。

一方、ふゆと亀助も無事にゴールイン。

あさが、亀助の矢立を借りてふゆに託したはつへの手紙。
ここに一周してきたのかなとか思うと涙目。



そして、惣兵衛がはつに「笑てくれ」

同じ言葉でも、同じ人物でも、言葉の意味が違う。
それでも言葉って一周するんだなって。
しみじみ考えます。




■朝が終わる


明治36年。生命保険事業は絶好調ながらも
やはり体調が芳しくない新次郎。


この黄昏色がなんだか切ないなあ。

生命保険事業も絶好調ながらも、女子教育のほうは『女子学生の堕落』が説かれる始末。
これにおこなのがあさ。
そんなあさに…


「ほれ、よちよちよちよち」
「もう子供やあらしまへん!」


ほっぺムニムニも懐かしい。
炭坑で、銀行で、家族の場で。
忠政おじいちゃんがかつてあさにそうしたように、「おなごのやらかいちから」を気づかせる。
やらかい力で生きていけ、と新次郎は相変わらず言っているようで。


「そないゆうたら江戸の時分の夜は暗おましたなあ」

内国勧業博覧会の色電球。
明るくなった夜に思い出すのは、提灯で歩いていた江戸の夜。
東京で見たガス灯の明かり。



(→13週



■身の丈にあった暮らし



「一家みんなで身の丈に合うた暮らししたらそれでええのや。みんなで笑て暮らせたら……それで十分だす」

惣兵衛の残した言葉の通り、笑顔を取り戻したはつさん強い。
はつ母ちゃんは強い。

身の丈に合った暮らし。
はつはずっとそれでいい、それがいい、と言っていたことを思いだします。

(→第8週

そして位牌の増えた仏壇に置かれたおみかん。



ふと、和歌山に出立を決めた夜、仏壇にみかんを添えた菊さんの姿が過りました。

(→第10週




■教科書に載ってるあの人


女子大学校ではあさが教壇に立ちます。



激おこのあさにこの人が登場。


「いけすかない傲慢おばさんですこと」

「引っ込んでろ老害BBA」と独り言を言って不敵な笑みを浮かべたのは、平塚明(はる)、のちの平塚らいてう。
演じるのは元AKBの大島優子。

この鼻っぱしらの強そうな生意気そうな感じ。
うん、いいぞ。


作るあさたちも大変だったけれど、入る女学生たちも苦労をしたことでしょう。
信念と決意を持って女子大学校に入学した女の子たち。
みんながみんな「白岡のおばさまかっこいい!」「白岡のおばさますてき!」なわけはない。
あさのごもっとも過ぎる話に対して「うるせえ引っ込んでろババア」と言うくらいの気概のある学生がいてもおかしくはない。

そういえば忠政おじいちゃん言ってましたね。
「人間ごもっともばかりではあかん」って。

(→第1週

ごもっともな話こそ穏やかに話さなければいけない。
それは新次郎のことなんだろうなと。



ワカメと絹田先生が頭モシャモシャするのかわいい。
でも絹田先生あんまりモシャモシャできてない




■生まれる命


そんなあさのところに、連絡が入りました。



どことなく漂うおばさん感拭えない。

中の人24才だなんて信じられない。

妊娠していた千代が第一子を出産したとのこと。
無事出産を終えた千代を囲みながら、あさが初孫を抱っこ。

「あさ、啓介さんに抱かしたげ」
と新次郎があさに声をかけます。

この新次郎の思いやりが微笑ましい。
思えば千代が生まれたとき、新次郎は「コントかよ」ってくらいによのさんたちに押しのけられていました。

(→11週その1



新次郎も初孫ちゃんを抱っこ。

 
「ありがたいなあ、なんて美しいのや」


生命が「ありがたい」「美しい」と、新次郎。
流れる時間が変えたもの、あの世へ旅立った人。
いろんなことを見守ってきた新次郎らしい言葉であるなあと。

それでも生まれてきた千代を初めて抱いたときの優しい表情はそのままに。





■消えゆく命


しかしそんな新次郎の様子がどうもおかしい。
あさがその勘に確信を持ったのは、生命保険を取り扱う上での疾病に関する資料でした。

 
「うちと一緒に病院行っとくなはれ」
「うん、わかった。ほんなら行こうか」


頭を下げるあさに重なるのが「妾をとってくれ」と覚悟して頭を下げた夜の姿です。

(→6週

今のあさも、あのときのように覚悟を決めてるんだろうか。
新次郎の「ほんなら行こか」が優しくも辛い。

それにしても新次郎。
あからさまに弱るのではなく、内臓の細胞がひとつずつ死んでいくような、静かに静かにむしばまれていくような。
それが老いというものなのでしょう。

いやはやこの演技はすごい。
玉木さん、36歳とか信じられない。




■カーテンコールのような25週


お気づきかもしれませんが、今回エントリ、勝手に回想いれまくってます。
(文字色が茶色のところが勝手に回想部分)

1話から張られた伏線に改めて驚かされ、気づかされます。
もう一度最初からゆっくり見たいなあと思います。

凧で空を飛ぼうとして、蛇を振り回して、パチパチはんをシャカシャカしていたあの女の子が。
炭坑開発して、銀行も作って、女子の大学校を作るだなんて。
それを取り巻く人たちとこんなにも密度の濃い時間を過ごすだなんて。


25週と来週、最終週で描かれるのは「長いフィナーレ」でしょう。
キャスト・スタッフの丁寧な心意気、登場人物たちへの感謝の気持ちを感じつつ。

そんなドラマがどう終わるのか見てみたい気持ちもあり、けれども終わってほしくない気持ちもあるような。



■最終週は…


 

 



・親分!宮部さん!
・宜ちゃん洋装!
・雁助さん!
・ぐっさん!
・亀ちゃん!!!




新次郎さんの運命やいかに!

ってな陳腐な言い回しはわしの言い回しが許さんのである。

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