BSプレミアム・朝ドラアンコールにて再放送中、2003年BK制作、石原さとみヒロインの『てるてる家族』。
22週目のネタバレ感想レビュー。
時代の闇に翻弄された桑原兄弟と、大人の仕事をする大人たち。
後半はこちら。
『てるてる家族』22週その2.鐘の音降り注ぐ教会で
関連リンク
・『てるてる家族』21週 悲しくて悲しくてとてもやり切れない
・『てるてる家族』20週 膨らんだ入道雲のような幸せを
・『てるてる家族』19週 夢見る力できっと何かになれる
朝ドラ『とと姉ちゃん』『あさが来た』『ゲゲゲの女房』『あまちゃん』などこちら。
・朝ドラ感想記事のまとめ
『真田丸』『精霊の守り人』『ちかえもん』『映像の世紀』他、大河、Nスペ、BSプレミアムのまとめ。
・結構ゲスいテレビっ子の備忘録まとめ<NHK系>
『重版出来!』『天皇の料理番』『新釣りバカ日誌』など民放ドラマ、映画などなどのまとめ
・テレビっ子の備忘録まとめ。<民放系>
●その日の夜に
政也を黒塗りの高級車が囲み、「まさかその夜そんなことが起きるなんて、私は思いもしませんでした」という不穏ナレで終わった21週、楽しい楽しいクリスマス。
さて今週は……
「今すぐ逃げ!」
「堪忍や、和人」
政也ああ!!!!
政也の落とした包みから顔をのぞかせるミニカー。
かつて和ちゃんが「車を作りたい」と言っていたように、木塚兄弟もまた車の製造へのあこがれを離していたのでしょうか。
自分たちと重なる幼い兄弟を思って買ったのであろうクリスマスプレゼント。
黒塗りの高級車に踏みにじられた政也の思い。
政也が和ちゃんに電話をかけるのに少し遅れて、岩田家の電話が鳴ります。
「冬ちゃんに来るな言うて下さい」
「絶対来させんといてください!」
和ちゃんからの電話でした。
しかし冬子はもう家を出て和ちゃんのアパートに向かっていて……
冬子を待っていたのは和ちゃんと木塚兄弟ではなく、政也を追いかけていた893もんたち。
咄嗟のことに驚き立ちすくむ冬子を物陰に引っ張ったのは、大家のおばちゃんでした。
「和ちゃんは?」
「さっき出ていった」
おばちゃんにファインプレー大賞。
すぐに春男が到着し、怖い大人たちも出ていって安心する冬子でしたが。
和ちゃんの部屋はひどく荒らされていました。
「あれまあこれはひどい!はあ~どないすんねんなこれ!」
3人で楽しく飾り付けていたクリスマスツリーは倒れ、飾り付けも無残に散り。
ストーブは倒されていて。
政也から電話を受けた和ちゃんは急いで身支度をしたのでしょう。
拓夫と光樹を急かしながらも、火の始末はしっかりしていったのでしょう。
消されたストーブ、部屋の惨状が気になる大家さん。
ひとつひとつの描写がとてもリアルで、緊迫感を与えます。
●私らが和ちゃん助けてあげなあかんて思う
和ちゃんの行方はわからないままいったん帰宅した冬子と春男。
状況が状況なだけに警察に知らせるべきだと春子と秋子は言いますが、そうも出来ない事情がありました。
「和ちゃんな、政兄ちゃんからお金預かってんねん」
それが何かよくないお金だったら、和ちゃんが疑われるのではないかと不安を隠せない冬子。
そういえば21週半ば、和ちゃんが政也からお金を受け取った時、その出どころを不審がっていました。
和ちゃんはそのお金が何なのか知らないのなら大丈夫だとは思う。
だが現実に和ちゃんは逃げてしまった。
何のお金か分かった上で、政也と子どもたちを守るために身を隠したのではないだろうか、と。
それにしてもこの見上げるようなカメラアングル。
届かなかったケーキ、括りつけられた風船。
3人の安否が心配になります。
困ったときは相談すると和ちゃんは言っていた。
何かあったら自分か春男に相談してくれるはずだ。
そんな『他人』のようには思っていないはずだ。
そんなのは嫌だ、と冬子。
「私は信じたいね!」
「私らが、和ちゃん助けてあげなあかんて思う!…思いたいね」
冬子の言葉に、ずっと黙っていた春男が頷きました。
「わかった…ほな待つか」
和ちゃんだって心配していることをわかっているはずだ。
そのまま心配させておくほどの『薄情者』ではないはずだ。
まずは、待とう。
和ちゃんと冬子に全幅の信頼を置く春男が頼もしい。
それを見守る春子と秋子も温かい。
雪の降るホワイトクリスマス。
てるてる坊主に願いを込めて。
●社会の厳しさ
和ちゃんから何の音沙汰もないまま、そのまま年が明けました。
昭和44年。
春男が訪れたのは、和ちゃんの勤め先。
しかしそこで聞いたのは、無断欠勤のため解雇されたという事実でした。
「待てと言われてもねえ。本人が無断で休んでいるようじゃ待ちようがありませんな」
当たり前の社会の厳しさ。
大人としてスーツで訪問する春男
厳しいけれど、これが当たり前の描写。
●休憩コント
※少しハードモードですが、ここでコントをお楽しみください。
街の話題はすっかり『ブルーライトヨコハマ』。
床屋夫婦も来る客来る客に「知ってるか?」と話を振るのですが。
「ほんだらいわたなつこ、知ってはるやろ」
「誰やそれ」
「あら!あんたこの町の者ちゃうな。えっこらタダでな出られる思うなよ!」
ちょっと待ってwww
誰このお客さんwww
何このお客さんwww
今度は萩原さんがご来店。
「街の灯りがとてもきれいな横浜」
「きれいね」
「はっ?」
「きれい『ね』」
「わしか?!」
ちげえよww
一文字間違えてんだよwww
一方松本書店でも宣伝は怠らず。
この夫婦はどこにアピールしてんのwww
●スターたるもの
場面は変わり東京の照子と夏子。
『ブルー・ライト・ヨコハマ』の売上は上々です。
その実感を自らかみしめる夏子。
「ほんまのスターいうもんはどこにおってもスターなんや」
どこで歌っていてもスターはスター。
『あまちゃん』のアイドル論につながるような照子の言葉。
夏子の活躍の立役者でもう一人忘れてはならないのがこの人。
「夏子ちゃんが初舞台に立った時の輝きを僕も最近よく思い出すんです」
7週で夏子を発掘した、マネージャーの斎藤さん。
冬子や春男が和ちゃんを信じるように、斉藤さんやミッキーカーチスは夏子を信じてくれている。
家族ではないけれどあたたかい絆がありがたい。
と、喫茶店に流れる有線に『ブルー・ライト・ヨコハマ』。
誰がリクエストしてくれたんだろうね、嬉しいね、って夏子と斉藤さんが話していると。
照子おまえかwww
喫茶店で本人プロモーションするんじゃないよwww
●佐世保へ
和ちゃんたちの身が案じられる矢先、佐世保の恒夫兄ちゃんから電話がかかってきました。
「『大将には言わんといてくれ』言われたんですけど、何や心配で」と春男に連絡をした恒兄ちゃん。
和ちゃんたちの居場所が分かった。
右も左もわからないところに行くよりも、ひとりでも知り合いのいるところがいい。
じゃあ誰を頼る?と考えたとき、和ちゃんの頭の中に恒兄ちゃんと静子姉ちゃんが浮かんだのでしょう。
「私行く。佐世保に行く!」
和ちゃんのところに向かう。
もうあのときみたいな後悔はしたくない。
届かなかった冬子の手紙とドロップ。
あの頃はまだ幼かった2人だけれど、今は大人になった。
もう後悔はしない。
冬子は強い決意を持って佐世保に向かいます。
ところで、恒兄ちゃん、静子姉ちゃんとは。
初登場は2週から。
弘子姉ちゃん(当時19)の右で見切れてるのが恒兄ちゃん。
冬子と関わりが深まったのは8週、中学校でパンを売ったとき。
その後12週に、静子姉ちゃんと結婚して佐世保に旅立ちます。
静子姉ちゃんもまた2週から12週までの登場。
照子と春男が佐世保で暮らしていた頃(1週)、お世話になっていた下宿先のお嬢さん。
そもそも12週では静子姉ちゃんのお母さんが倒れてしまって、静子姉ちゃんが佐世保に帰らないといけない、ならば一緒に(この間にまた感動のドラマがあるんですが詳しくはリンク先を)という経緯で、2人は佐世保にいます。
●再会、藤井の叔父さん
冬子、佐世保に来ました。
ドラマの映像として佐世保が登場するのは、1週、昭和26年以来です。
なんで佐世保か?と言うと、そもそも春男がパン修行をしていたのはこの佐世保の地。
(雑に扱われている赤さんが春子)
佐世保には亡きヨネさんの弟さん、藤井の叔父さんがいました。
春男の叔父で、冬子からは大叔父。
銀行員を辞めてパン屋になる決意をした春男は、佐世保の米軍基地内に勤める叔父さんの世話になり、パン作りの修行をはじめます。
まだ幼い子を連れての新生活、下宿から仕事まで世話をしてくれた恩人の方。
いわば、『はじまりの地』とも言えるのかもしれません。
春男と照子が佐世保を離れた後、『空天歌バーガーショップ』を開き、佐世保バーガーの礎を築いた叔父さん。
時を経て佐世保に引っ越し、春男のつてから藤井の叔父さんのお店に勤めている恒兄ちゃんたち。
物語のつながりをかんじます。
「姉さんのお葬式以来やな」
とっても何気ない台詞なのですが、姉さんとはヨネさんのこと。
ヨネさんが亡くなった15週、葬儀の様子こそ描かれてはいませんが(ていうかヨネさん幽霊になって現れたけどwww)弟の叔父さんも大阪にきて参列したのでしょう。
15週では滝子叔母さん(春男の妹)が1週以来に登場していたりもしましたが。
画面に映っていなくても台詞はなくても主人公たちと同じ時間を『登場人物が生きている』ことを実感させてくれる一言でした。
何があったのかという恒兄ちゃんの質問に、うまく答えられない冬子。
まあまずは自慢のハンバーガーを食べてくれ、と藤井の叔父さんが佐世保バーガー
ってその佐世保バーガーを待っている最中。
冬子爆睡。
佐世保に行くと決めた夜にそのまま夜行で来たという話もあったことから、不安で眠るどこではなかったのでしょう。
優しく見守る空天歌の面々が温かい。
●一体何が起きているのか
大阪・池田の面々も和ちゃんの身を案じていました。
シャトーの店内。
「しかし和人君はあの子たちをどうするつもりなんですかね…」
子どもを連れていたのでは身動きが取れないはずだ、と心配するのは米原さん。
また場面は変わり、工場。
喜介が来ていました。
「そしたら和人は仕事探してほしい言いましたんか?」
「恒夫のいてる店で働きたい言うたんと違うんですか?」
恒夫にも子どもたちのことは隠している和ちゃん。
そもそも恒夫に対しても「(春男たちに)連絡するな」と言っていました。
「なにやったか知らんけどあの政也があかんねん」
しかし事の発端である政也はどうしているのか。
喜介さんが持っているのは風車。
子どもの頃によく遊んでいた空き地にいつもあったあの風車。
12週、和ちゃんと再会したときに持っていた風車。
まわりまわって喜介さんが大事にとっておいてくれたんでしょうね。
米原さん、春子、秋子。
春男、工場長、喜介。
それぞれの会話のやり取りの中で和ちゃんの状況が視聴者側にも明かされます。
ところで喜介に「喋っているのなら手伝ってくれ」、と工場長。
「冬ちゃんの店はわしらで守らな!」
店主(本当は春男なんだけど)が不在でも守ってくれる人がいるの温かい。
●冬ちゃん、ごめんな
爆睡していた冬子が目覚めたとき。
空天歌に和ちゃんから連絡が来ていました。
和ちゃんが電話で恒兄ちゃんに伝えたのは、勤め先の件はもういいという話。
状況がわからない恒兄ちゃんは、とりあえず冬子が来ていることを伝えます。
冬子は電話を替わるのですが……
「冬ちゃん…何で来てん?冬ちゃんは何も心配せんでええね」
突き放すような、でもどこか寂しそうな和ちゃんの言葉。
これに対して冬子は
「そんなん無理やわ」と強く返しました。
和ちゃんが会ってくれるまでここにいる、と。
頑なな和ちゃんは「関わらない方がいい、そのまま大阪に帰ってくれ」と話すものの。
「和ちゃん。もう誰かてほっとかれへんね」
恒夫も春男もみんな心配している。
秋子も春子も工場長も喜介も米原さんもみんな心配している。
ここまできて放っておくことなんてできやしない。
しかし和ちゃんは「ごめんな」と、受話器を置いてしまいました。
落ち込みを隠せない冬子。
とりあえず働く先が見つかったのならだから、と安心させる恒兄ちゃん。
せっかく佐世保に来たのだから美味しいものを食べていってほしいと静子姉ちゃん。
今は冬子の身体も疲れ切っていること、や冬子一人では動きようがないことがわかったんでしょうね。
ここもまた家族ではない大人の存在がありがたい。
冬子は静子に連れられて商店街にやってきました。
港町の賑わう様子を見て少し気分が晴れたようです。
トンネル市場、戸尾市場街。
戦時中、防空壕だったことから、奥行きのある作りになっています。
戦後から始まって高度経済成長期を走り抜けていく物語ですが、たまに戦争が挟まれるのが時代の連続性を感じさせます。
おいしそうな魚介類。
初めて見る防空壕跡。
それでも気になる和ちゃんの行方。
「和ちゃん、どこにいてんの…?どこに…」
ナレーションではない、冬子の心の声が響きます。
●薪割上手の和ちゃん
いい加減和ちゃんはどこにいるのか、というと。
どこか島っぽいところで、薪割をしていました。
和ちゃんは子どもたちと一緒にいました。
少しガラの悪そうな親父さんは浅月昇(ポール牧)。
それにしても錦戸さん、薪割るの上手。
●信用していい大人たち
シャトーでは米原さんが、冬子からの連絡がないことを気にしていました。
「すいませんでした。大人の私がついておきながら…なんとかしとけばよかったんです」
21週米原さんは、子どもたちとも会っていました。
和ちゃんだけでなく子どもたちも心配でずっとコーヒーを飲んでいる。
ほんっとに平野のおっちゃん…!(違う
そのとき。
店の外に現れたのは政也でした。
慌てて逃げるも、すれ違いざまに転んでしまい……
政也、大人を信じて。
この人たちは信用していい。
毒見をするような目で見ることなんてない。
●政也、真実
春男がどうにかつかまえて、そのまま工場のほうに連れていかれる政也。
政也は冬子を探してシャトーに訪れていました。
和ちゃんたちは佐世保に行ったこと。
それを追った冬子も佐世保に行ったこと。その佐世保には、恒夫という男がいること。
「おまえも子どもの頃に会うてるはずや」
恒夫に会っているはずだ、と工場長。
桑原兄弟が幼く、賢作兄ちゃんもまだ健在だったころ、政也も岩田製パンに来ていたかもしれません。
あるいは桑原父の葬儀のとき(6週)かもしれません。
問い詰められて政也は話し始めました。
亡くなった知人の子ども2人を預けたこと。
お金も一緒に預けたこと。
喜介と春男がそのお金の部分を追及すると…
「悪いやつらから…盗ったんや!」
子どもたちの父親が仕事中に命を落としたこと。
ろくな補償もされなかったこと。
自分も尽力したがどうにもならなかったこと。
子どもたちがパンの耳を食べていたこと。
自分たちが重なるその背中。
盗んだのは警察には被害届を出せない裏金。
違法の雇用で溜め込んだ裏金。
仲間何人かで盗んで、子どもたちの母親にその額面まるごと渡せば引き取ってくれるはずだ。
政也もまた親の愛を知らないのかもしれません。
もしかしたら和ちゃんよりずっと知らないのかもしれません。
男と逃げた母親でも、お金があれば引き取ってくれるはずだ。
子どもたちを守ってくれるはずだ。
時代の闇に翻弄された桑原兄弟の心中が思いやられます。
しかし信じていた仲間たちからも嵌められ、盗んだ金の大半は失った。
罪を着せられることになり、悪い連中に追われることになった。
和人には『盗んだ金』だとは教えずに預けた。
21週では、
「この子らの親父がこの子らのために一生懸命貯めてた金や」と伝えていました。
しかし追っ手は迫っていた。
追い詰められたクリスマスの日、プレゼントを持っていたせいで、和ちゃんと子どもたちの住所を知られてしまった。
「そやから『はよ逃げ』てそれだけ言うたんや。『捕まったら何されるか分からへん』て」
政也をじっと見つめる春男の顔が険しくなり──
●激昂
「アホンダラ!なんで和人に渡してん?!なんで弟巻き込んだんや!」
「どんだけ努力して就職したんか分かってんのんか?」
「あいつはどんなに困っても人に甘えたりせえへんね。…でけへんね!!」
「おまえがいつまでたってもしっかりせえへんから、あいつそんなふうになってしもたんや…!」
春男激昂。
なんということをしてくれたんだ。
一連の経緯の中で連中が和ちゃんの会社にも行ってしまった。
苦労して就職した会社をクビになってしまった。
あれだけ悩んで、あれだけ苦労して就職したというのに。
和ちゃんの気持ちだけじゃない。
春男の送り出した気持ちも全て、全て水泡に帰してしまった。
19週、悩んで悩んで、迷って迷った末に、大手製パン会社への就職を決めた和ちゃん。
その姿を一番近くで見ていたのは春男でした。
ライバルになるかもしれない、けれど和ちゃんの人生に関わったことを素直に喜んでいた春男。
岩田春男というキャラクターは、ここまで温厚な人物として描かれていました。
そりゃあ浮気もしたり(9週)、夏子の上京を反対したり(11週)もしたけれど。
ここまでの激怒は多分ドラマ中初めて。
春男から伝え聞く弟の話に涙がこぼれそうなくらいにハッとしている政也。
工場長が止めなければ、今にも殴りそうな春男。
●「和人君の友達」
政也と春男たちのやり取りは外で米原さん、秋子、春子も立ち聞きしていました。
工場を飛び出そうとする政也を止めたのは米原さん。
「あなたが行く場所はそこではないと思いますね」
「和人君の友達です」
和人にしたこと、和人の無実を証明できるのは政也だけ。
そこを忘れてはならない。
落ち着いた米原さんの言葉が響きます。
「後のことは春男さんに任せればいい。そのほうが和人君のためになります」
しかし政也は再び逃げ出してしまい──。
この政也が現れてからの一連のやりとりは、2回にはしごして描かれます。
『てるてる家族』には珍しいサスペンスな内容。
裏金、犯罪、春男の怒り。
しかしどこか涙ぐんでしまうのは、登場する大人たちが皆「和ちゃんを心配している」からでしょう。
苦労して頑張ってきた和ちゃんを知っている。
幸せになってほしい。
だから春男は激怒する。
喜介は無言で睨みつける。
工場長は殴ろうとする春男を止める。
いつも陽気なイースト隊と大将が、怒るときは怒る『大人』をしている。
みんな、和ちゃんのことを息子のように思っているから。
みんな、イースト菌だから。
その中で一人違ったのが米原さん。
「和人君の友達だ」と、政也側にアプローチをかける。
政也と米原さんは当然ながらこのときが初対面です。
しかし米原さんは「和人君のことを思うなら」と、まるで政也の心を見透かしたように政也を止めます。
(なんとも米原さんらしい)
どうか、和ちゃんだけではなく政也も救われてほしい。
政也だって根は悪いヤツじゃないはずだ。
本当に悪いヤツならば、照子に再会したときあんな喜び方はしないはずだ。
(21週)
本当に悪いヤツならば、幼い頃の冬子に「根は悪くない」とは言われないはずだ。
(6週)
本当に悪いヤツなら、子どもたちにクリスマスプレゼントなんて用意しないはずだ。
誰か、政也を救ってくれる大人がいることを願う限りです。
●静子姉ちゃんは泳ぎが上手
ちょっとヘビーな状況が続いたので、軽く。
冬子は静子姉ちゃんに連れられて、かつて春男と照子が世話になっていた静子姉ちゃんの実家にやって来ました。
小林の大家さん!懐かしい!
1週にも登場している静子姉ちゃんの実家。
ここで冬子は恒夫夫妻の子どもに会うのですが。
「うちに似て泳ぎも上手かとよ」
「えっ静子姉ちゃん泳げんの?!」
シドニー五輪、競泳銀メダリストだもんなあww
久十九島を泳いで巡ったっていう冗談が冗談に聴こえないwww
●よっしゃ、粛清や
多忙を極める夏子。
バタバタとした局内で再会したのは…
なべおさみ。
駆け出しのころ、コント番組に多く出演していた時期の監督。
(14週)
あの頃夏子を怒鳴り散らして、追い込んだなべおさみなのですが。
「いわたなつこ、成長の人役を私買えて嬉しいと思っております」
調子の良いこと言いやがってこんにゃろめ。
と思ったら。
「もう二度とあの人と仕事するの嫌やわ」
夏子も大概にひどいwww
散々いじめられたことやバカにされたこと。
調子のいいなべおさみを流しつつも、恨みは忘れない夏子。
うんうん、本当に成長したね。
と思ったら。
「よっしゃ」
おまえはやめんか照子ww
何が「よっしゃ」だww
●若いイケメンがいい
さて、本筋の和ちゃんです。
和ちゃんはとある島の旅館にいました。
手伝いをしている子どもたちと和ちゃん。
「どがんすっとか?」と不信感をあらわにしているのはポール牧演じる主人。
何か訳ありだったらどうする?
兄弟とは言っているけど、とても兄弟には見えない。
さらには文無しときたもんだ
「後でやんぐらしかことになるたい」
「そいけん『食べさしてもらうだけでよか』て言うとらすやなかね」
おう、佐世保ネイティブ。
とにかく面倒事は避けたいというニュアンスでしょうか。
ご主人は気にする反面、女将さんはさして気にしていない様子。
というのも。
「わがはすぐに若かよか男ば見っと親切になっとやもう!」
「そぎゃんことなかと!」
若いイケメンにばかり親切にして!って言われちゃってるけど女将さんお気持ちわかりますよ。
和ちゃんみたいな子連れの子犬、放っておけないですよね。
そんなことない!と言った矢先。
さっそく取り立て出来立てのおつくりを和ちゃんにあげちゃう女将さんwww
●佐世保バーガー
その近くの空天歌にて。
冬子は佐世保バーガーを味わっていました。
っとに飯テロだなあ!!
肉、調味料、食材の厚さなどすべてが絶妙なバランスでできているという。
「この絶妙なバランスを見つけ出すのに長い時間がかかったんやで~」
「日本人の好みに合うバランスいうのがこの店のモットーなんやね」
ふと店名が気になって聞いてみたら、『空天歌←食うてんか』の駄洒落だと明かされて笑う冬子。
やっと少し気持ちが落ち着いてきたかな、とホッとするワンシーン。
●お兄さんとおっさんの再会
冬子が落ち着いたとき、何やらにぎやかな声が。
「大将!」
「恒!」
「あはははは!」
「恒や!恒や!」
グルグル抱っこしながら入店。
恒ちゃん顔www
冬子が来た翌日の夜行。
政也に激怒した日の夜行で来たという春男。
激怒シーンと同日15分の放送でこのテンション振り切れっぷりwww
と、ちょうど静子姉ちゃんも帰ってきました。
静子姉ちゃんから冬子に、手紙が渡されます。
それは和ちゃんからのものでした。
「宿の人も親切でみんな幸福です」
「冬ちゃんに会えば、拓雄にも充希にも宿の人にもみんなに心配かけてしまいます」
「どうかそのまま大阪に帰ってください」
……和ちゃん、その顔で「幸福です」はねえよ。
ていうか春男も冬子もここまで来ちゃって、「心配するな」は無理だ。
どこの島からかは書いていないけれど、宿のある島は黒島しかないという静子姉ちゃんのローカル情報。
そこまで迷惑かけられているのなら…と躊躇ってしまう冬子。
しつこくしすぎて拒絶されてしまうのなら、それが和ちゃんのためにならないのなら。
冬子らしくない言葉に、思わず彼女の心労が心配になります。
しかし春男がいました。
政也の事情を知っている春男。
「迷惑でもいかなあかんねん」
佐世保の地。
春男が銀行員からパン屋に再起をかけた土地。
多くの人にお世話になった土地。
この地で、桑原兄弟を助ける。
春男の決意がにじみます。
●いざ黒島
黒島への漁船の中、あのお金の真相を知る冬子。
弱音も吐かずに真面目に生きてきた和ちゃん。
家族のように大事にしてくれる人たちに出会った。
それを捨てても守りたいものは、唯一残された肉親。
きっと政也を守るために子どもたちと逃げた。
「ただただ政也との約束守ってあの子ら隠そうとしてんねん」
火サスか?崖に追い詰められるのか?
後半はこちら。
『てるてる家族』22週その2.鐘の音降り注ぐ教会で
22週目のネタバレ感想レビュー。
時代の闇に翻弄された桑原兄弟と、大人の仕事をする大人たち。
後半はこちら。
『てるてる家族』22週その2.鐘の音降り注ぐ教会で
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・結構ゲスいテレビっ子の備忘録まとめ<NHK系>
『重版出来!』『天皇の料理番』『新釣りバカ日誌』など民放ドラマ、映画などなどのまとめ
・テレビっ子の備忘録まとめ。<民放系>
●その日の夜に
政也を黒塗りの高級車が囲み、「まさかその夜そんなことが起きるなんて、私は思いもしませんでした」という不穏ナレで終わった21週、楽しい楽しいクリスマス。
さて今週は……
「今すぐ逃げ!」
「堪忍や、和人」
政也ああ!!!!
政也の落とした包みから顔をのぞかせるミニカー。
かつて和ちゃんが「車を作りたい」と言っていたように、木塚兄弟もまた車の製造へのあこがれを離していたのでしょうか。
自分たちと重なる幼い兄弟を思って買ったのであろうクリスマスプレゼント。
黒塗りの高級車に踏みにじられた政也の思い。
政也が和ちゃんに電話をかけるのに少し遅れて、岩田家の電話が鳴ります。
「冬ちゃんに来るな言うて下さい」
「絶対来させんといてください!」
和ちゃんからの電話でした。
しかし冬子はもう家を出て和ちゃんのアパートに向かっていて……
冬子を待っていたのは和ちゃんと木塚兄弟ではなく、政也を追いかけていた893もんたち。
咄嗟のことに驚き立ちすくむ冬子を物陰に引っ張ったのは、大家のおばちゃんでした。
「和ちゃんは?」
「さっき出ていった」
おばちゃんにファインプレー大賞。
すぐに春男が到着し、怖い大人たちも出ていって安心する冬子でしたが。
和ちゃんの部屋はひどく荒らされていました。
「あれまあこれはひどい!はあ~どないすんねんなこれ!」
3人で楽しく飾り付けていたクリスマスツリーは倒れ、飾り付けも無残に散り。
ストーブは倒されていて。
政也から電話を受けた和ちゃんは急いで身支度をしたのでしょう。
拓夫と光樹を急かしながらも、火の始末はしっかりしていったのでしょう。
消されたストーブ、部屋の惨状が気になる大家さん。
ひとつひとつの描写がとてもリアルで、緊迫感を与えます。
●私らが和ちゃん助けてあげなあかんて思う
和ちゃんの行方はわからないままいったん帰宅した冬子と春男。
状況が状況なだけに警察に知らせるべきだと春子と秋子は言いますが、そうも出来ない事情がありました。
「和ちゃんな、政兄ちゃんからお金預かってんねん」
それが何かよくないお金だったら、和ちゃんが疑われるのではないかと不安を隠せない冬子。
そういえば21週半ば、和ちゃんが政也からお金を受け取った時、その出どころを不審がっていました。
和ちゃんはそのお金が何なのか知らないのなら大丈夫だとは思う。
だが現実に和ちゃんは逃げてしまった。
何のお金か分かった上で、政也と子どもたちを守るために身を隠したのではないだろうか、と。
それにしてもこの見上げるようなカメラアングル。
届かなかったケーキ、括りつけられた風船。
3人の安否が心配になります。
困ったときは相談すると和ちゃんは言っていた。
何かあったら自分か春男に相談してくれるはずだ。
そんな『他人』のようには思っていないはずだ。
そんなのは嫌だ、と冬子。
「私は信じたいね!」
「私らが、和ちゃん助けてあげなあかんて思う!…思いたいね」
冬子の言葉に、ずっと黙っていた春男が頷きました。
「わかった…ほな待つか」
和ちゃんだって心配していることをわかっているはずだ。
そのまま心配させておくほどの『薄情者』ではないはずだ。
まずは、待とう。
和ちゃんと冬子に全幅の信頼を置く春男が頼もしい。
それを見守る春子と秋子も温かい。
雪の降るホワイトクリスマス。
てるてる坊主に願いを込めて。
●社会の厳しさ
和ちゃんから何の音沙汰もないまま、そのまま年が明けました。
昭和44年。
春男が訪れたのは、和ちゃんの勤め先。
しかしそこで聞いたのは、無断欠勤のため解雇されたという事実でした。
「待てと言われてもねえ。本人が無断で休んでいるようじゃ待ちようがありませんな」
当たり前の社会の厳しさ。
大人としてスーツで訪問する春男
厳しいけれど、これが当たり前の描写。
●休憩コント
※少しハードモードですが、ここでコントをお楽しみください。
街の話題はすっかり『ブルーライトヨコハマ』。
床屋夫婦も来る客来る客に「知ってるか?」と話を振るのですが。
「ほんだらいわたなつこ、知ってはるやろ」
「誰やそれ」
「あら!あんたこの町の者ちゃうな。えっこらタダでな出られる思うなよ!」
ちょっと待ってwww
誰このお客さんwww
何このお客さんwww
今度は萩原さんがご来店。
「街の灯りがとてもきれいな横浜」
「きれいね」
「はっ?」
「きれい『ね』」
「わしか?!」
ちげえよww
一文字間違えてんだよwww
一方松本書店でも宣伝は怠らず。
この夫婦はどこにアピールしてんのwww
●スターたるもの
場面は変わり東京の照子と夏子。
『ブルー・ライト・ヨコハマ』の売上は上々です。
その実感を自らかみしめる夏子。
「ほんまのスターいうもんはどこにおってもスターなんや」
どこで歌っていてもスターはスター。
『あまちゃん』のアイドル論につながるような照子の言葉。
夏子の活躍の立役者でもう一人忘れてはならないのがこの人。
「夏子ちゃんが初舞台に立った時の輝きを僕も最近よく思い出すんです」
7週で夏子を発掘した、マネージャーの斎藤さん。
冬子や春男が和ちゃんを信じるように、斉藤さんやミッキーカーチスは夏子を信じてくれている。
家族ではないけれどあたたかい絆がありがたい。
と、喫茶店に流れる有線に『ブルー・ライト・ヨコハマ』。
誰がリクエストしてくれたんだろうね、嬉しいね、って夏子と斉藤さんが話していると。
照子おまえかwww
喫茶店で本人プロモーションするんじゃないよwww
●佐世保へ
和ちゃんたちの身が案じられる矢先、佐世保の恒夫兄ちゃんから電話がかかってきました。
「『大将には言わんといてくれ』言われたんですけど、何や心配で」と春男に連絡をした恒兄ちゃん。
和ちゃんたちの居場所が分かった。
右も左もわからないところに行くよりも、ひとりでも知り合いのいるところがいい。
じゃあ誰を頼る?と考えたとき、和ちゃんの頭の中に恒兄ちゃんと静子姉ちゃんが浮かんだのでしょう。
「私行く。佐世保に行く!」
和ちゃんのところに向かう。
もうあのときみたいな後悔はしたくない。
届かなかった冬子の手紙とドロップ。
あの頃はまだ幼かった2人だけれど、今は大人になった。
もう後悔はしない。
冬子は強い決意を持って佐世保に向かいます。
ところで、恒兄ちゃん、静子姉ちゃんとは。
初登場は2週から。
弘子姉ちゃん(当時19)の右で見切れてるのが恒兄ちゃん。
冬子と関わりが深まったのは8週、中学校でパンを売ったとき。
その後12週に、静子姉ちゃんと結婚して佐世保に旅立ちます。
静子姉ちゃんもまた2週から12週までの登場。
照子と春男が佐世保で暮らしていた頃(1週)、お世話になっていた下宿先のお嬢さん。
そもそも12週では静子姉ちゃんのお母さんが倒れてしまって、静子姉ちゃんが佐世保に帰らないといけない、ならば一緒に(この間にまた感動のドラマがあるんですが詳しくはリンク先を)という経緯で、2人は佐世保にいます。
●再会、藤井の叔父さん
冬子、佐世保に来ました。
ドラマの映像として佐世保が登場するのは、1週、昭和26年以来です。
なんで佐世保か?と言うと、そもそも春男がパン修行をしていたのはこの佐世保の地。
(雑に扱われている赤さんが春子)
佐世保には亡きヨネさんの弟さん、藤井の叔父さんがいました。
春男の叔父で、冬子からは大叔父。
銀行員を辞めてパン屋になる決意をした春男は、佐世保の米軍基地内に勤める叔父さんの世話になり、パン作りの修行をはじめます。
まだ幼い子を連れての新生活、下宿から仕事まで世話をしてくれた恩人の方。
いわば、『はじまりの地』とも言えるのかもしれません。
春男と照子が佐世保を離れた後、『空天歌バーガーショップ』を開き、佐世保バーガーの礎を築いた叔父さん。
時を経て佐世保に引っ越し、春男のつてから藤井の叔父さんのお店に勤めている恒兄ちゃんたち。
物語のつながりをかんじます。
「姉さんのお葬式以来やな」
とっても何気ない台詞なのですが、姉さんとはヨネさんのこと。
ヨネさんが亡くなった15週、葬儀の様子こそ描かれてはいませんが(ていうかヨネさん幽霊になって現れたけどwww)弟の叔父さんも大阪にきて参列したのでしょう。
15週では滝子叔母さん(春男の妹)が1週以来に登場していたりもしましたが。
画面に映っていなくても台詞はなくても主人公たちと同じ時間を『登場人物が生きている』ことを実感させてくれる一言でした。
何があったのかという恒兄ちゃんの質問に、うまく答えられない冬子。
まあまずは自慢のハンバーガーを食べてくれ、と藤井の叔父さんが佐世保バーガー
ってその佐世保バーガーを待っている最中。
冬子爆睡。
佐世保に行くと決めた夜にそのまま夜行で来たという話もあったことから、不安で眠るどこではなかったのでしょう。
優しく見守る空天歌の面々が温かい。
●一体何が起きているのか
大阪・池田の面々も和ちゃんの身を案じていました。
シャトーの店内。
「しかし和人君はあの子たちをどうするつもりなんですかね…」
子どもを連れていたのでは身動きが取れないはずだ、と心配するのは米原さん。
また場面は変わり、工場。
喜介が来ていました。
「そしたら和人は仕事探してほしい言いましたんか?」
「恒夫のいてる店で働きたい言うたんと違うんですか?」
恒夫にも子どもたちのことは隠している和ちゃん。
そもそも恒夫に対しても「(春男たちに)連絡するな」と言っていました。
「なにやったか知らんけどあの政也があかんねん」
しかし事の発端である政也はどうしているのか。
喜介さんが持っているのは風車。
子どもの頃によく遊んでいた空き地にいつもあったあの風車。
12週、和ちゃんと再会したときに持っていた風車。
まわりまわって喜介さんが大事にとっておいてくれたんでしょうね。
米原さん、春子、秋子。
春男、工場長、喜介。
それぞれの会話のやり取りの中で和ちゃんの状況が視聴者側にも明かされます。
ところで喜介に「喋っているのなら手伝ってくれ」、と工場長。
「冬ちゃんの店はわしらで守らな!」
店主(本当は春男なんだけど)が不在でも守ってくれる人がいるの温かい。
●冬ちゃん、ごめんな
爆睡していた冬子が目覚めたとき。
空天歌に和ちゃんから連絡が来ていました。
和ちゃんが電話で恒兄ちゃんに伝えたのは、勤め先の件はもういいという話。
状況がわからない恒兄ちゃんは、とりあえず冬子が来ていることを伝えます。
冬子は電話を替わるのですが……
「冬ちゃん…何で来てん?冬ちゃんは何も心配せんでええね」
突き放すような、でもどこか寂しそうな和ちゃんの言葉。
これに対して冬子は
「そんなん無理やわ」と強く返しました。
和ちゃんが会ってくれるまでここにいる、と。
頑なな和ちゃんは「関わらない方がいい、そのまま大阪に帰ってくれ」と話すものの。
「和ちゃん。もう誰かてほっとかれへんね」
恒夫も春男もみんな心配している。
秋子も春子も工場長も喜介も米原さんもみんな心配している。
ここまできて放っておくことなんてできやしない。
しかし和ちゃんは「ごめんな」と、受話器を置いてしまいました。
落ち込みを隠せない冬子。
とりあえず働く先が見つかったのならだから、と安心させる恒兄ちゃん。
せっかく佐世保に来たのだから美味しいものを食べていってほしいと静子姉ちゃん。
今は冬子の身体も疲れ切っていること、や冬子一人では動きようがないことがわかったんでしょうね。
ここもまた家族ではない大人の存在がありがたい。
冬子は静子に連れられて商店街にやってきました。
港町の賑わう様子を見て少し気分が晴れたようです。
トンネル市場、戸尾市場街。
戦時中、防空壕だったことから、奥行きのある作りになっています。
戦後から始まって高度経済成長期を走り抜けていく物語ですが、たまに戦争が挟まれるのが時代の連続性を感じさせます。
おいしそうな魚介類。
初めて見る防空壕跡。
それでも気になる和ちゃんの行方。
「和ちゃん、どこにいてんの…?どこに…」
ナレーションではない、冬子の心の声が響きます。
●薪割上手の和ちゃん
いい加減和ちゃんはどこにいるのか、というと。
どこか島っぽいところで、薪割をしていました。
和ちゃんは子どもたちと一緒にいました。
少しガラの悪そうな親父さんは浅月昇(ポール牧)。
それにしても錦戸さん、薪割るの上手。
●信用していい大人たち
シャトーでは米原さんが、冬子からの連絡がないことを気にしていました。
「すいませんでした。大人の私がついておきながら…なんとかしとけばよかったんです」
21週米原さんは、子どもたちとも会っていました。
和ちゃんだけでなく子どもたちも心配でずっとコーヒーを飲んでいる。
ほんっとに平野のおっちゃん…!(違う
そのとき。
店の外に現れたのは政也でした。
慌てて逃げるも、すれ違いざまに転んでしまい……
政也、大人を信じて。
この人たちは信用していい。
毒見をするような目で見ることなんてない。
●政也、真実
春男がどうにかつかまえて、そのまま工場のほうに連れていかれる政也。
政也は冬子を探してシャトーに訪れていました。
和ちゃんたちは佐世保に行ったこと。
それを追った冬子も佐世保に行ったこと。その佐世保には、恒夫という男がいること。
「おまえも子どもの頃に会うてるはずや」
恒夫に会っているはずだ、と工場長。
桑原兄弟が幼く、賢作兄ちゃんもまだ健在だったころ、政也も岩田製パンに来ていたかもしれません。
あるいは桑原父の葬儀のとき(6週)かもしれません。
問い詰められて政也は話し始めました。
亡くなった知人の子ども2人を預けたこと。
お金も一緒に預けたこと。
喜介と春男がそのお金の部分を追及すると…
「悪いやつらから…盗ったんや!」
子どもたちの父親が仕事中に命を落としたこと。
ろくな補償もされなかったこと。
自分も尽力したがどうにもならなかったこと。
子どもたちがパンの耳を食べていたこと。
自分たちが重なるその背中。
盗んだのは警察には被害届を出せない裏金。
違法の雇用で溜め込んだ裏金。
仲間何人かで盗んで、子どもたちの母親にその額面まるごと渡せば引き取ってくれるはずだ。
政也もまた親の愛を知らないのかもしれません。
もしかしたら和ちゃんよりずっと知らないのかもしれません。
男と逃げた母親でも、お金があれば引き取ってくれるはずだ。
子どもたちを守ってくれるはずだ。
時代の闇に翻弄された桑原兄弟の心中が思いやられます。
しかし信じていた仲間たちからも嵌められ、盗んだ金の大半は失った。
罪を着せられることになり、悪い連中に追われることになった。
和人には『盗んだ金』だとは教えずに預けた。
21週では、
「この子らの親父がこの子らのために一生懸命貯めてた金や」と伝えていました。
しかし追っ手は迫っていた。
追い詰められたクリスマスの日、プレゼントを持っていたせいで、和ちゃんと子どもたちの住所を知られてしまった。
「そやから『はよ逃げ』てそれだけ言うたんや。『捕まったら何されるか分からへん』て」
政也をじっと見つめる春男の顔が険しくなり──
●激昂
「アホンダラ!なんで和人に渡してん?!なんで弟巻き込んだんや!」
「どんだけ努力して就職したんか分かってんのんか?」
「あいつはどんなに困っても人に甘えたりせえへんね。…でけへんね!!」
「おまえがいつまでたってもしっかりせえへんから、あいつそんなふうになってしもたんや…!」
春男激昂。
なんということをしてくれたんだ。
一連の経緯の中で連中が和ちゃんの会社にも行ってしまった。
苦労して就職した会社をクビになってしまった。
あれだけ悩んで、あれだけ苦労して就職したというのに。
和ちゃんの気持ちだけじゃない。
春男の送り出した気持ちも全て、全て水泡に帰してしまった。
19週、悩んで悩んで、迷って迷った末に、大手製パン会社への就職を決めた和ちゃん。
その姿を一番近くで見ていたのは春男でした。
ライバルになるかもしれない、けれど和ちゃんの人生に関わったことを素直に喜んでいた春男。
岩田春男というキャラクターは、ここまで温厚な人物として描かれていました。
そりゃあ浮気もしたり(9週)、夏子の上京を反対したり(11週)もしたけれど。
ここまでの激怒は多分ドラマ中初めて。
春男から伝え聞く弟の話に涙がこぼれそうなくらいにハッとしている政也。
工場長が止めなければ、今にも殴りそうな春男。
●「和人君の友達」
政也と春男たちのやり取りは外で米原さん、秋子、春子も立ち聞きしていました。
工場を飛び出そうとする政也を止めたのは米原さん。
「あなたが行く場所はそこではないと思いますね」
「和人君の友達です」
和人にしたこと、和人の無実を証明できるのは政也だけ。
そこを忘れてはならない。
落ち着いた米原さんの言葉が響きます。
「後のことは春男さんに任せればいい。そのほうが和人君のためになります」
しかし政也は再び逃げ出してしまい──。
この政也が現れてからの一連のやりとりは、2回にはしごして描かれます。
『てるてる家族』には珍しいサスペンスな内容。
裏金、犯罪、春男の怒り。
しかしどこか涙ぐんでしまうのは、登場する大人たちが皆「和ちゃんを心配している」からでしょう。
苦労して頑張ってきた和ちゃんを知っている。
幸せになってほしい。
だから春男は激怒する。
喜介は無言で睨みつける。
工場長は殴ろうとする春男を止める。
いつも陽気なイースト隊と大将が、怒るときは怒る『大人』をしている。
みんな、和ちゃんのことを息子のように思っているから。
みんな、イースト菌だから。
その中で一人違ったのが米原さん。
「和人君の友達だ」と、政也側にアプローチをかける。
政也と米原さんは当然ながらこのときが初対面です。
しかし米原さんは「和人君のことを思うなら」と、まるで政也の心を見透かしたように政也を止めます。
(なんとも米原さんらしい)
どうか、和ちゃんだけではなく政也も救われてほしい。
政也だって根は悪いヤツじゃないはずだ。
本当に悪いヤツならば、照子に再会したときあんな喜び方はしないはずだ。
(21週)
本当に悪いヤツならば、幼い頃の冬子に「根は悪くない」とは言われないはずだ。
(6週)
本当に悪いヤツなら、子どもたちにクリスマスプレゼントなんて用意しないはずだ。
誰か、政也を救ってくれる大人がいることを願う限りです。
●静子姉ちゃんは泳ぎが上手
ちょっとヘビーな状況が続いたので、軽く。
冬子は静子姉ちゃんに連れられて、かつて春男と照子が世話になっていた静子姉ちゃんの実家にやって来ました。
小林の大家さん!懐かしい!
1週にも登場している静子姉ちゃんの実家。
ここで冬子は恒夫夫妻の子どもに会うのですが。
「うちに似て泳ぎも上手かとよ」
「えっ静子姉ちゃん泳げんの?!」
シドニー五輪、競泳銀メダリストだもんなあww
久十九島を泳いで巡ったっていう冗談が冗談に聴こえないwww
●よっしゃ、粛清や
多忙を極める夏子。
バタバタとした局内で再会したのは…
なべおさみ。
駆け出しのころ、コント番組に多く出演していた時期の監督。
(14週)
あの頃夏子を怒鳴り散らして、追い込んだなべおさみなのですが。
「いわたなつこ、成長の人役を私買えて嬉しいと思っております」
調子の良いこと言いやがってこんにゃろめ。
と思ったら。
「もう二度とあの人と仕事するの嫌やわ」
夏子も大概にひどいwww
散々いじめられたことやバカにされたこと。
調子のいいなべおさみを流しつつも、恨みは忘れない夏子。
うんうん、本当に成長したね。
と思ったら。
「よっしゃ」
おまえはやめんか照子ww
何が「よっしゃ」だww
●若いイケメンがいい
さて、本筋の和ちゃんです。
和ちゃんはとある島の旅館にいました。
手伝いをしている子どもたちと和ちゃん。
「どがんすっとか?」と不信感をあらわにしているのはポール牧演じる主人。
何か訳ありだったらどうする?
兄弟とは言っているけど、とても兄弟には見えない。
さらには文無しときたもんだ
「後でやんぐらしかことになるたい」
「そいけん『食べさしてもらうだけでよか』て言うとらすやなかね」
おう、佐世保ネイティブ。
とにかく面倒事は避けたいというニュアンスでしょうか。
ご主人は気にする反面、女将さんはさして気にしていない様子。
というのも。
「わがはすぐに若かよか男ば見っと親切になっとやもう!」
「そぎゃんことなかと!」
若いイケメンにばかり親切にして!って言われちゃってるけど女将さんお気持ちわかりますよ。
和ちゃんみたいな子連れの子犬、放っておけないですよね。
そんなことない!と言った矢先。
さっそく取り立て出来立てのおつくりを和ちゃんにあげちゃう女将さんwww
●佐世保バーガー
その近くの空天歌にて。
冬子は佐世保バーガーを味わっていました。
っとに飯テロだなあ!!
肉、調味料、食材の厚さなどすべてが絶妙なバランスでできているという。
「この絶妙なバランスを見つけ出すのに長い時間がかかったんやで~」
「日本人の好みに合うバランスいうのがこの店のモットーなんやね」
ふと店名が気になって聞いてみたら、『空天歌←食うてんか』の駄洒落だと明かされて笑う冬子。
やっと少し気持ちが落ち着いてきたかな、とホッとするワンシーン。
●お兄さんとおっさんの再会
冬子が落ち着いたとき、何やらにぎやかな声が。
「大将!」
「恒!」
「あはははは!」
「恒や!恒や!」
グルグル抱っこしながら入店。
恒ちゃん顔www
冬子が来た翌日の夜行。
政也に激怒した日の夜行で来たという春男。
激怒シーンと同日15分の放送でこのテンション振り切れっぷりwww
と、ちょうど静子姉ちゃんも帰ってきました。
静子姉ちゃんから冬子に、手紙が渡されます。
それは和ちゃんからのものでした。
「宿の人も親切でみんな幸福です」
「冬ちゃんに会えば、拓雄にも充希にも宿の人にもみんなに心配かけてしまいます」
「どうかそのまま大阪に帰ってください」
……和ちゃん、その顔で「幸福です」はねえよ。
ていうか春男も冬子もここまで来ちゃって、「心配するな」は無理だ。
どこの島からかは書いていないけれど、宿のある島は黒島しかないという静子姉ちゃんのローカル情報。
そこまで迷惑かけられているのなら…と躊躇ってしまう冬子。
しつこくしすぎて拒絶されてしまうのなら、それが和ちゃんのためにならないのなら。
冬子らしくない言葉に、思わず彼女の心労が心配になります。
しかし春男がいました。
政也の事情を知っている春男。
「迷惑でもいかなあかんねん」
佐世保の地。
春男が銀行員からパン屋に再起をかけた土地。
多くの人にお世話になった土地。
この地で、桑原兄弟を助ける。
春男の決意がにじみます。
●いざ黒島
黒島への漁船の中、あのお金の真相を知る冬子。
弱音も吐かずに真面目に生きてきた和ちゃん。
家族のように大事にしてくれる人たちに出会った。
それを捨てても守りたいものは、唯一残された肉親。
きっと政也を守るために子どもたちと逃げた。
「ただただ政也との約束守ってあの子ら隠そうとしてんねん」
火サスか?崖に追い詰められるのか?
後半はこちら。
『てるてる家族』22週その2.鐘の音降り注ぐ教会で
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