ちょうど1年くらい前かな。
冬晴れの日曜日。
少し前に「秘密のケンミンショー」で見た「くずシャリシャリ」という葛菓子が気になって、少し離れた町まで買いに行こうと張り切っていた。
まあくんと弦はそれぞれ出かけていて、悠季がたまたま家にいたのでドライブに誘い出した。
中学になって部活が始まってからは、休日に家族で出かけることがめっきり減ってしまって、悠季と出かけるのは部活の遠征やピアノなんかの送迎の時くらい。
だから私はちょっとウキウキしていた。
途中で電気屋さんに寄って、英語で使うCDラジカセを買った。
一緒に選びたいのに、悠季はどんどんゲーム売り場に行っちゃって、ひとり寂しくあれこれ選んでいた。
でも、最終的に悠季も一緒に選んで買ったんだよね。
そして目的のくずシャリシャリのお店に向かう。
悠季は助手席でいつものようにカーナビをチョビチョビ触っていたと思う。
車の狭い空間は、家族の距離をぐーーんと縮める。
お互い向き合ってない分言い易いのか
普段、話さないようなことも話してくれたりする。
小さい頃SLを見によく来た国道を抜け、山道をぐーんと上って行くとお茶畑が広がっている。
いつかはお茶摘み体験もしたっけ。
お茶畑と青い空しかない中をまっすぐ走る
。
カーナビを頼りに山道を下っていく。
JRの線路沿いに走っていくと駅が見えた。
お店は駅前にあるって。
あ、ここだ。
そんなに大きくもなく小さくもない和菓子屋さん。
駐車場に車を停めて、お店に入るドアのところで貼紙を見つけた。
「くずシャリシャリは只今予約での販売のみとなっており、店頭での販売はしておりません」
ええええええーーーーー
どうやらTVで放送されてから注文が殺到して製造が追いついていないらしい。
「あらら。がっかりだね。」
でも折角来たので、お店の中を物色してどら焼きを買って帰ることにした。
何種類もの生どら焼きはこのお店のもう一つの名物らしかった。
弦にはフルーツ
お父さんには生クリーム
ばーばには和栗だったかな。
悠季は栗と抹茶ですごーく悩んでいたよね。
結局どっちにしたんだっけ?
葛シャリシャリは残念だったけど、またリベンジで来ようね
って言ってたのに。
帰り道。
どこかに寄って、お茶ソフトクリームでも食べて帰ろうかって言ったけど、きみは
「コンビニのアイスでいいよ」
って言うから、コンビニでアイスを買った。
車の中で食べる時は、「クーリッシュ」って決めてた悠季が助手席でおいしそうに食べてたのを思い出すよ。
あの冬のドライブ。
どんな話をしたのか
そもそもそんなに話をしたのか
全然覚えてないのが残念だけど、でもあの日2人で過ごしたあの雰囲気を忘れることはないと思う。
近々、リベンジしにあのお店に行ってみようかな。
悠季と走った道を思い出して。
きっと隣に乗っていると思うから。