PerfectPass、今でこそ競技水上スキーの第一線を退きZeroOffにその座を引き継いでしまいましたが、1998年にJack Traversのスキースクールで初めて見た時には衝撃を受けました。
その頃日本にあったPerfectPassはおそらく徳島、琵琶湖、長良川の3箇所だけだったのではないでしょうか?
その中でも徳島にあったPerfectPassは最初期型で、スピード検出方法はもちろんピトー管から、更にチップ交換でアップグレードするなんて事が考案される前のモデルでした。
2000年に学連に新艇が投入されました。 Malibu Response Closed Bowです。 この船は現在でも現役で頑張っているようです。
2000年は以前のMaster Craft Prostar 190同様のマニュアルドライビングで大会を運営していました。
2001年の大会からPerfectPassを投入しようということになり、長良川のPerfectPassを譲って頂く事になりました。
この長良川からやって来たPerfectPass、PerfectPass Proという第二世代のMaster Moduleであった為、チップ交換でVersion Upが出来る優れものでした。
早速最新Versionにアップグレードしようとしましたが、そもそもチップが外れず随分苦労しました。
河口湖のある方が器用に取り外してくれたときは「助かった~」という感じでした。
Version Upを行ったことで2001年からスラロームとジャンプはスピードメーターベースではなく、回転数ベースの制御で快適に大会運営を進めることが出来ました。
一方、トリックはスピードメーターベースですので、以前にも書きましたが制御不能で大変困りました。
ボートについているAirguideのスピードメーターを機敏に反応させる裏技(正しいかどうかは知りませんが)は、ボートを滑走させている時にピトー管から来ているゴムチューブをAirguideのスピードメーターから取り外します。 そうするとゴムチューブから水が溢れてきますので、水が溢れてきたらAirguideのスピードメーターに接続するんです。 そうするとピトー管からAirguideのスピードメーターまでの約5mぐらいのゴムチューブの中から空気をはき出すことが出来、水を満たすことが出来ます。
空気は圧縮されます。 水は圧縮されません。 つまり僅かなボート速度の変化を追う為には、ゴムチューブの中に空気があっては水圧変化(速度変化)の伝達効率が落ちてしまうのです。 そこで水をゴムチューブに満たすことで、微妙なトリックスピード調整をAirguideのスピードメーターに頼りながら右手でスロットルをコントロールしていました。
これが常識でした。
もちろんPerfectPassにも同様の事を行いました。 Master Moduleに繋がっているピトー管から来るゴムチューブに水を満たしたのです。 これが原因でした、トリックモードのスピードが制御不能になったのは。
考えてみれば当たり前で、機械式に圧力を読み取るAirguideと電気的に圧力を読み取るPerfectPass。 そりゃ電気式なのに水を入れたらおかしくなりますよね。
そこに気がつくまで1年かかりました。
それからは自転車用空気入れを船に常備し、大会前に必ずピトー管からのゴムチューブラインの水抜きを行って大会運営していました。 懐かしいですね。
その後Perfect Pass Digital Proという第三世代のMaster Moduleが発表され、ついにPaddle Wheelがボートスピードを読み取る仕組みに変更されました。 涙が出るほどうれしかったですが、直径5cmほどの穴を船底に開けなければいけなくなり、小見川の小山田さんの駐車場にドリルとホールソーを持ち込んで穴を開けたのを覚えています。
シリコンが固まるか固まらないかのところで小見川に船を下ろしたのですが、浸水したらどうしようかと本当に不安になりました。 結果、水漏れもなく完璧に装着できたのですが。
Version 6.0になった時も悩まされました。
ソフトウェアにバグがあったんです。
ジャンプで試走してタイムを完璧に合わせても、スキーヤーを引くと完全に速度がおかしくなるんです。
設定は完璧なのに何で?と本当に泣きそうになりました。
でも速度がおかしくなるのをよく観察すると法則がありました。
①ある一定の回転数相当の速度がずれる。 おおよそ150rpm相当で、42km/hでは3km/h相当、57km/hでは1.5km/h相当です。
②LetterをB以上にすると150rpm相当速度がずれる。
その場はその法則に従って大会を運営しましたが、結論はソフトウェアのバグで、スラロームモードで入力されていたSkier Weightの値がJump ModeでLetterをB以上にすると、JumpのベースラインがスラロームのSkier Adjust分だけずれてしまうというものでした。
この頃からボードジャッジ用2nd Displayを導入しはじめたので、ドライバー育成が簡単になってきました。
自分がボートジャッジで2nd Displayでスピードを監視し、Actual Timeに近づける為の必要な調整はボートジャッジが入力することが出来たので、ドライバーは運転に集中することが出来ました。
Version 6.3だったと思いますが、それまでの一行表示のシンプルな画面から三行表示の立派な画面に変更されました。
同時に2nd Displayも3行表示になったのですが、その際4つの入力キーが2nd Displayから廃止されてしまいました。
これでボートジャッジがドライバーの入力を手助けすることが出来なくなるなあと残念がったのですが、Displayケーブルの分岐コネクター(Yコネクター)をもう一本入手していたので、試しに一行表示の旧型2nd Displayも同時に接続してみたら、文字は表示されないのですが4つの入力キーは使用できることが分かりました。
そこで当面は2nd Displayを2個接続してドライバーの入力支援をする事にしました。
そうこうしている内に、大変優秀なドライバーが育ってきたので、彼に全てを任せることにしました。
今年の全日本のチーフドライバーですね。
タイのバンコクに駐在してからも何も装着されていないボートに、PerfectPassを装着しました。
ちょうどStarGazerが発売開始されたときでしたので、StarGazerを輸入しました。
One Magnet Timing SystemやGPSでのスピードコントロール等、Digital Proから改善された項目が沢山ありました。
スラロームのスピードコントロールに関しては、回転数ベースのClassic Slalomモードの引きが安定していて、GPS制御は最後まで好きになれませんでしたが。
その後2008年5月に驚くべき広報発表がなされました。
PerfectPassは2009年モデル以降のDrive-by-wire形式スロットルを搭載したボートへの工場装着を行わない。
PerfectPassは2009年モデル以降のDrive-by-wire形式スロットルを搭載したボートへの後装着キットを販売しない。
既にボートメーカーがStarGazerを採用済みの場合は、2009年モデルまでは前述の限りではない。
ZeroOffは機械式スロットル/サーボモーターコントロール形式のスピードコントロールの後装着をしない。
ここにPerfectPassの1995年から始まった水上スキー用スピードコントロールの黄金時代に終止符が打たれました。
悲しいな。 そう思いました。
ZeroOffを否定しているわけでは勿論ありません。
ただ、PerfectPassの水上スキー界に与えた功績を讃えたくて、感傷的になったのを覚えています。
その頃です。
PerfectPassのウェブサイトから「About us」のページが消えてしまったのは。
皆さん誇りを持って仕事をされていたんだと思います。
RandyさんやGaryさんには沢山のアドバイスを貰いました。
細かな補修用の部品の供給やPerfectPassの設定方法、Version変更の背景や各種設定値の考え方、沢山コミュニケーションをしました。
PerfectPassのウェブサイトからのアクセスは出来ませんが、ページは残っているのでリンク先を紹介しますね。
彼らの栄光時代を垣間見ることが出来ます。
http://www.perfectpass.com/perfect_pass_about_us.html
そんなPerfectPassですが、StarGazerのアップグレードに注力しているんです。
StarGazer発表後1年ぐらいでソフトウェアアップグレードがなされました。
大幅な変更はありませんでしたが、操作性や安定性が増しました。
そして現在、ZeroOffの引きと同じ物を目指す為、全ての機械式スロットルを使用している数多くの世界中のスキーヤーの為に、PerfectPassはソフトウェアとハードウェアの開発を進めているようです。
今年10月には非常に限られた数ですが販売開始されるようです。
価格はUS500ドル程度。
高いか安いかは別として、機械式スロットルの船で滑っている一スキーヤーとして、PerfectPassの英断を高く評価しようと思います。
http://www.perfectpass.com/perfect_pass_whats_new.html
そうそう写真はカナダ、ノバスコシア(Nova Scotia)、ダートマス(Dartmouth)のPerfectPass本社の写真です。
ノバスコシアは新垣結衣主演の映画、ハナミズキの舞台になった州です。
これからもPerfectPassが世界中のスキーヤーの為に存在し続けることを祈って。
その頃日本にあったPerfectPassはおそらく徳島、琵琶湖、長良川の3箇所だけだったのではないでしょうか?
その中でも徳島にあったPerfectPassは最初期型で、スピード検出方法はもちろんピトー管から、更にチップ交換でアップグレードするなんて事が考案される前のモデルでした。
2000年に学連に新艇が投入されました。 Malibu Response Closed Bowです。 この船は現在でも現役で頑張っているようです。
2000年は以前のMaster Craft Prostar 190同様のマニュアルドライビングで大会を運営していました。
2001年の大会からPerfectPassを投入しようということになり、長良川のPerfectPassを譲って頂く事になりました。
この長良川からやって来たPerfectPass、PerfectPass Proという第二世代のMaster Moduleであった為、チップ交換でVersion Upが出来る優れものでした。
早速最新Versionにアップグレードしようとしましたが、そもそもチップが外れず随分苦労しました。
河口湖のある方が器用に取り外してくれたときは「助かった~」という感じでした。
Version Upを行ったことで2001年からスラロームとジャンプはスピードメーターベースではなく、回転数ベースの制御で快適に大会運営を進めることが出来ました。
一方、トリックはスピードメーターベースですので、以前にも書きましたが制御不能で大変困りました。
ボートについているAirguideのスピードメーターを機敏に反応させる裏技(正しいかどうかは知りませんが)は、ボートを滑走させている時にピトー管から来ているゴムチューブをAirguideのスピードメーターから取り外します。 そうするとゴムチューブから水が溢れてきますので、水が溢れてきたらAirguideのスピードメーターに接続するんです。 そうするとピトー管からAirguideのスピードメーターまでの約5mぐらいのゴムチューブの中から空気をはき出すことが出来、水を満たすことが出来ます。
空気は圧縮されます。 水は圧縮されません。 つまり僅かなボート速度の変化を追う為には、ゴムチューブの中に空気があっては水圧変化(速度変化)の伝達効率が落ちてしまうのです。 そこで水をゴムチューブに満たすことで、微妙なトリックスピード調整をAirguideのスピードメーターに頼りながら右手でスロットルをコントロールしていました。
これが常識でした。
もちろんPerfectPassにも同様の事を行いました。 Master Moduleに繋がっているピトー管から来るゴムチューブに水を満たしたのです。 これが原因でした、トリックモードのスピードが制御不能になったのは。
考えてみれば当たり前で、機械式に圧力を読み取るAirguideと電気的に圧力を読み取るPerfectPass。 そりゃ電気式なのに水を入れたらおかしくなりますよね。
そこに気がつくまで1年かかりました。
それからは自転車用空気入れを船に常備し、大会前に必ずピトー管からのゴムチューブラインの水抜きを行って大会運営していました。 懐かしいですね。
その後Perfect Pass Digital Proという第三世代のMaster Moduleが発表され、ついにPaddle Wheelがボートスピードを読み取る仕組みに変更されました。 涙が出るほどうれしかったですが、直径5cmほどの穴を船底に開けなければいけなくなり、小見川の小山田さんの駐車場にドリルとホールソーを持ち込んで穴を開けたのを覚えています。
シリコンが固まるか固まらないかのところで小見川に船を下ろしたのですが、浸水したらどうしようかと本当に不安になりました。 結果、水漏れもなく完璧に装着できたのですが。
Version 6.0になった時も悩まされました。
ソフトウェアにバグがあったんです。
ジャンプで試走してタイムを完璧に合わせても、スキーヤーを引くと完全に速度がおかしくなるんです。
設定は完璧なのに何で?と本当に泣きそうになりました。
でも速度がおかしくなるのをよく観察すると法則がありました。
①ある一定の回転数相当の速度がずれる。 おおよそ150rpm相当で、42km/hでは3km/h相当、57km/hでは1.5km/h相当です。
②LetterをB以上にすると150rpm相当速度がずれる。
その場はその法則に従って大会を運営しましたが、結論はソフトウェアのバグで、スラロームモードで入力されていたSkier Weightの値がJump ModeでLetterをB以上にすると、JumpのベースラインがスラロームのSkier Adjust分だけずれてしまうというものでした。
この頃からボードジャッジ用2nd Displayを導入しはじめたので、ドライバー育成が簡単になってきました。
自分がボートジャッジで2nd Displayでスピードを監視し、Actual Timeに近づける為の必要な調整はボートジャッジが入力することが出来たので、ドライバーは運転に集中することが出来ました。
Version 6.3だったと思いますが、それまでの一行表示のシンプルな画面から三行表示の立派な画面に変更されました。
同時に2nd Displayも3行表示になったのですが、その際4つの入力キーが2nd Displayから廃止されてしまいました。
これでボートジャッジがドライバーの入力を手助けすることが出来なくなるなあと残念がったのですが、Displayケーブルの分岐コネクター(Yコネクター)をもう一本入手していたので、試しに一行表示の旧型2nd Displayも同時に接続してみたら、文字は表示されないのですが4つの入力キーは使用できることが分かりました。
そこで当面は2nd Displayを2個接続してドライバーの入力支援をする事にしました。
そうこうしている内に、大変優秀なドライバーが育ってきたので、彼に全てを任せることにしました。
今年の全日本のチーフドライバーですね。
タイのバンコクに駐在してからも何も装着されていないボートに、PerfectPassを装着しました。
ちょうどStarGazerが発売開始されたときでしたので、StarGazerを輸入しました。
One Magnet Timing SystemやGPSでのスピードコントロール等、Digital Proから改善された項目が沢山ありました。
スラロームのスピードコントロールに関しては、回転数ベースのClassic Slalomモードの引きが安定していて、GPS制御は最後まで好きになれませんでしたが。
その後2008年5月に驚くべき広報発表がなされました。
PerfectPassは2009年モデル以降のDrive-by-wire形式スロットルを搭載したボートへの工場装着を行わない。
PerfectPassは2009年モデル以降のDrive-by-wire形式スロットルを搭載したボートへの後装着キットを販売しない。
既にボートメーカーがStarGazerを採用済みの場合は、2009年モデルまでは前述の限りではない。
ZeroOffは機械式スロットル/サーボモーターコントロール形式のスピードコントロールの後装着をしない。
ここにPerfectPassの1995年から始まった水上スキー用スピードコントロールの黄金時代に終止符が打たれました。
悲しいな。 そう思いました。
ZeroOffを否定しているわけでは勿論ありません。
ただ、PerfectPassの水上スキー界に与えた功績を讃えたくて、感傷的になったのを覚えています。
その頃です。
PerfectPassのウェブサイトから「About us」のページが消えてしまったのは。
皆さん誇りを持って仕事をされていたんだと思います。
RandyさんやGaryさんには沢山のアドバイスを貰いました。
細かな補修用の部品の供給やPerfectPassの設定方法、Version変更の背景や各種設定値の考え方、沢山コミュニケーションをしました。
PerfectPassのウェブサイトからのアクセスは出来ませんが、ページは残っているのでリンク先を紹介しますね。
彼らの栄光時代を垣間見ることが出来ます。
http://www.perfectpass.com/perfect_pass_about_us.html
そんなPerfectPassですが、StarGazerのアップグレードに注力しているんです。
StarGazer発表後1年ぐらいでソフトウェアアップグレードがなされました。
大幅な変更はありませんでしたが、操作性や安定性が増しました。
そして現在、ZeroOffの引きと同じ物を目指す為、全ての機械式スロットルを使用している数多くの世界中のスキーヤーの為に、PerfectPassはソフトウェアとハードウェアの開発を進めているようです。
今年10月には非常に限られた数ですが販売開始されるようです。
価格はUS500ドル程度。
高いか安いかは別として、機械式スロットルの船で滑っている一スキーヤーとして、PerfectPassの英断を高く評価しようと思います。
http://www.perfectpass.com/perfect_pass_whats_new.html
そうそう写真はカナダ、ノバスコシア(Nova Scotia)、ダートマス(Dartmouth)のPerfectPass本社の写真です。
ノバスコシアは新垣結衣主演の映画、ハナミズキの舞台になった州です。
これからもPerfectPassが世界中のスキーヤーの為に存在し続けることを祈って。
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