ゆみなのteatime

飼い猫なっちゃんの写真 淀川長治映画友の会で育った映画好き 全国一の宮神社巡り などなど・・・

空海

2018年02月05日 | 映画

   「空海」

 
 2017年 日中合作映画 角川映画
 監督 チェン・カイコ―

 キャスト 染谷 将太
      ホアン・シュアン
      チャン・ロンロン

  

 中国映画が大々的に宣伝されて 主要な映画館で
 観られるのは 嬉しいが・・
 (日中合作で原作が夢枕獏だからかな!)

 しかし・・ 字幕ではなくて全部吹き替え版というのは!
 少し違和感があるね・・特に映画ファンには・・

 原作は作者本人がド傑作と言っているように
 とても面白いのだけれど~
 う~んん!

 お話は複雑で盛りだくさん・・
 それに夢枕獏の世界は 基本的におどろおどろしい
 場面が多くなる
 監督は おどろどろしいシーンは全く取り入れなくて
 楊貴妃も 最後まで きれいなまま・・
 宴のシーンも夢のように処理しているから
 昔の角川映画みたいじゃなく・・

 ファンタジーのような映画になっているが
 その分 映画としては 伝えるべきもののない
 軽い物になってしまったかもしれない

 原作は 楊貴妃を取り上げて時代の残酷さ
 人の世の無常さ 憎しみの連鎖
 その憎しみが生む様々な悲劇 
 近親相姦 親子で殺しあう また男女の愛の
 哀しさ 辛さ などなど・・・
 諸行無常の世を見た空海が最後に

 密教の教えを得て
 深い悟りをその身につけ 
 人々を救うために 
 いざ 日本へ と戻るまでを

 ドラマチックに描いてゆくのだけど

 楊貴妃の数奇な人生が全く描かれずに
 歴史の表面だけだから 
 ドラマに深みがないよね

 阿倍仲麻呂は実は 楊貴妃を日本に逃がすための
 役割を与えられたと原作ではなっているけど
 映画では なんだか 中途半端な役割で・・
 それもこれも 黄鶴を表舞台に出さない
 からで・・

 この黄鶴が実は 黒幕で すごい役割
 小説では 彼が中心になって物語が進んでゆく

 小説の ~鬼と宴す~ の鬼とは
 この黄鶴を指すのだと思う

 それくらい重要なキャラだけど 映画では
 全く無視して 話を大きく簡略化してるので
 それで 只々 きれいきれいで終わっているのね

 淀川さんはどんな映画でも見るべきところは
 あるといってたから~

 取り上げるとしたらセットの豪華さ 衣装の華麗さ
 ファンタジー映画としてはよくできている

 でも これを読んでいるあなた!

 是非是非
 「沙門空海 唐の国にて鬼と宴す」 全部で4巻

  読んでください

 映画の10倍は面白い!
 それと 空海が好きになります

 でもそれにしてもイップマン
 もっと全国的に上映してよ!

 映画としては イップマンのほうが絶対
 印象に残ると思うけどね・・

 
 


 
 
 

スリービルボード

2018年02月03日 | 映画

   「スリービルボード」

 2017年制作 
 FOX SEARCHLIGHT 制作 アメリカ映画
 第75回 ゴールデングローブ賞4部門受賞
   (主演女優 助演男優 脚本 作品)
 第42回トロント国際映画賞 観客賞受賞
 第74回ベネチア国際映画賞 脚本賞受賞


 監督・脚本・制作:マーティン・マクドナー
  音楽      カーター・バーウェル

 キャスト:フランシス・マクド―マンド
      ウディ・ハレルソン
      サム・ロックウェル


 

  久しぶりに 映画を堪能した!!
 淀川さんは 映画の導入部分とラストが大事 と
 教えてくれたけど・・
 その二つがいい!導入部分から うん!これは・・
 と思わせる。
 無駄がなく しかも丁寧に登場人物の背景を
 描いてみせる。
 音楽も 映画に溶けこんで上手ね
 映画はアンサンブル バランスだと感じさせて
 くれる

 娘を殺された母親のいら立ち 
 それが3枚の大きな広告看板に描き出される
 がんを患って余命いくばくもない警察署長
 複雑なキャラを演じるサムロックウェルの
 ディクソン役・・

 アメリカの田舎町の保守的で閉鎖的な雰囲気
 人種差別 偏見 憎しみ  そして怒り
 小さな町だが そこには 世界が抱える
 問題が 縮小されて 混然とわきあがって
 くるような感覚がある。

 監督のM・マクドナーは英国出身 舞台の戯曲で
 ローレンスオリヴィエ賞を受賞している
 その後 短編映画でアカデミー賞を受賞しているが
 長編映画では 「ヒットマンズ・レクイエム」という
 作品しかない 今回は2作目ということかな?
 彼のシナリオが素晴らしい 
 映画は 重いテーマをいくつも抱えているにも
 関わらず 暗くならず スムーズに
 紡がれてゆく 見事だなあ・・と感じるより
 ほかない。

 主演のF・マクドーマンドはコーエン兄弟の「ファーゴ」
 で身重の婦人警官を演じた女優さん
 ファーゴでは良かったねえ・・あれでアカデミー賞を
 もらった人。 年をとって更に演技に磨きがかかってる
 彼女 いいです! 

 それとほんとに良くできたシナリオのおかげだと
 思うけど・・ ディクソンのいらだちと苦悩と
 そして 署長の手紙を読んでからと
 自分が暴力をふるった相手から差し出される
 オレンジジュース! その後の彼の変貌ぶり

 さりげなく 彼がゲイだとわかり そのいら立ちに
 納得がいく 経過~

 ラストのミルドレッドとディクソンの
  二人の会話がいい!

  あの締めくくりはなんて上手なんだろう

 ここでも会話の中に さりげなく 二人の
 ドライヴの結果を いれてゆく


  そこで  エンド!

  映画を良く見てるファンは まさかこのラストで
  「あの後 二人はどうするの?」なんていう
  バカな質問は しないと思うけど・・


 この映画は 犯人を追いかける映画じゃない
 この作品のテーマは 今を映し出している

 アメリカの抱える 人種 性 離婚 そういった
 差別や 内面に問題を抱える 傷ついた人達の
 おそらく癒しになってくれるような気がする

 少し 原田マハの小説の読後感に似ているかな

 この作品 あそらくアカデミー賞に限りなく
 近いかもしれないね

 話題作です! 是非是非 映画館でみてください
 それほど 長い期間 やらないかもしれませんよ