「 籠釣瓶花街酔醒」
後 79日で
歌舞伎座がなくなります
昔 貯金をはたいて 出かけた尾上菊五郎の
襲名公演では 奥さんの藤純子を見かけたり
その後のお芝居では 随分 一幕見の
4階席に通いました。
最近 ちゃんと席を買ったのは
勘三郎の襲名公演でした
先代の勘三郎も大好きな役者でした
その追善公演を 最後の歌舞伎座で!
演目は籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)
夜の公演の目玉です
外にかかっている錦絵は次郎左衛門が八橋を
みそめるところと最後に斬りつける場面
このお芝居は 廓が舞台なので 華やか
花魁を玉三郎が演じるというので どうしても見たい!
そんな訳で 先月 頑張ってチケットを購入
今回は節約して 6000円の席をゲット
けど 歌舞伎座で6000円出しても 顔は遠い!
花道はちょうど 見れないアングル
でも しようがない そこは覚悟して出かけたけど
~そんな悪条件でも お芝居は最高でした!
劇場を出て しんみり思ったのは
「一流は 観る人を幸せにしてくれる」
素直に感動しました。 芸の力です。
淀川さんの言葉を思い出しました
昔 若い人達に言ってたもんです
「借金しても一流を見なさい
歌舞伎を見なさい シェークスピアを見なさい
そこには 芝居やドラマの基本がぎっしり詰まってる
全てのドラマがそこにはある・・・ってね。」
今の時代は借金したらその身が危ういから
借金まではしないけど
それでも この感動をもっと多くの人に
味わって欲しいな~
籠釣瓶かごつるべというのは 刀の名前で
この芝居は 副題が 名刀物語 或いは妖刀物語とも・・
籠というのは井戸で水を汲んだ時に 水がもれます
この刀は水もたまらず切れるという事から
籠釣瓶と言われる名刀・・・それが芝居の頭についてます
4幕7場ですが 元々はもっと長かったようで因縁話が
ついていたのでしょう。
古くは伊勢参りの客が古伊勢にある遊郭で遊ぼうとしたところ
そこの遊女に振られて 斬りつけた事件からヒントを得た
ようで 映画の題材にもなっていました
子供の頃ですが あの片岡知恵蔵が(私にとっては遠山の金さん)
内田叶夢監督の「花の吉原百人切り」という時代劇で主人公を
演じています。相手役の花魁は水谷良重・・今の水谷八重子でした
ですから この芝居は大変 有名な芝居でもあるのです
また
故 歌右衛門の得意としていた役でもあり
八橋が次郎左衛門に会った時 振り返って謎の笑みを
浮かべる場面は歌右衛門が考案したと言われている仕草
田舎者の次郎左衛門(勘三郎)が醜いあばた顔でありながら
花魁に貢ぎ とうとう身請けしようとする時に
八橋は 情夫の栄之丞(仁左衛門・・この人はこういう役が
色気があってとても良い)に次郎左衛門との縁切りを迫られて
愛想尽かしをするのです。
「わちきはつくづく嫌になったでありんす」
すると次郎左衛門の名台詞
「花魁、そりやあ あんまりつれなかろうぜ」
~と 続きます。
最後の場面に変わるとそれは断られた身請け話から
4ヵ月後 次郎左衛門は 再度廓に来て八橋を呼び出すのです
初回からまた始めようと嘘をつき 八橋も気にかけながら
座敷に出てきたところを これがこの世の別れの杯と差出して
逃げるところを斬りつけて殺してしまいます
玉三郎はゆっくりと身体を弓なりにして後ろに倒れます
実にきれいな場面で ここで拍手がおきます
次郎左衛門は 八橋を斬った後 刀をまじまじと眺め
「実によく斬れる刀だなあ~」とつぶやいて 幕となります
見所は 沢山あるけれど 配役がいいと思いました
玉三郎の花魁をみて一目で魂を抜かれてしまう場面
観客の私達も 花道で艶然と笑みを浮かべる花魁に
をクリックすると玉三郎が八橋を
演じている動画サイトへゆきます
見とれてしまいます
また 振られた次郎左衛門の悔しさ無念さがよく伝わり
最後の台詞が 主人公の狂気と悲劇を現して効果的です
さてさて ほんとに歌舞伎はドラマの宝庫ですねえ
お時間があれば 是非 一幕観(ひとまくみ)を楽しんでください
おまけですが 今回は初めて地下の食堂 花道で
おでん定食 1300円を予約して食べました
これは先日 歌舞伎通の元NHKアナの山川静夫さんが
紹介していたもので 学生時代 歌舞伎座に通われて
お金の無かった時よく幕間におでんを食べていたそうで
そのおでんがとても美味しかったと言われていたから
おでんが1300円というのは高いけど
ここのおでん定食は ほんとに美味でした
こんにゃくは唐辛子いりのピンク色で
ちょっとぴり辛 他の具材も美味しい
それに茶飯と香の物がついて 量も多目
冬の芝居の幕間にはぴったりだと思います
さて ほんとに歌舞伎は面白い
安い席でも 是非一度足を運んでください