ハイジの実写映画が日本で上映されるというだけでも気になるのに、アバドとの共演も多く親交も深かったブルーノ・ガンツさんが "おんじ" の役で出演しているとなったら観に行かないわけにはいかない
本国スイスで完全実写化されたのは2015年。
原題は "Heidi"。
スイス・ドイツ合作。
ハイジ: アヌーク・シュテフェン
アルムおんじ: ブルーノ・ガンツ
クララ: イザベル・オットマン
ペーター : クィリン・アグリッピ
ロッテンマイヤー: カタリーナ・シュトラー
監督: アラン・グスポーナー
ヨハンナ・シュピリの原作に忠実に描かれているのは間違いないのだろうけど、高畑勲監督のアニメ版の影響もかなりあったと思う。
それくらい登場人物の一人一人が違和感なくイメージ通りにすんなりと入ってきた。
ガンツさんのおんじは、人づきあいが苦手な頑固で無愛想な雰囲気がよく出ていて、微妙な心の動きを映し出す表情の演技が光る。
ハイジとペーターは、なんと地元の一般の子供を起用したというからびっくりだが、その素人っぽさがかえってよかったかもしれない。
ハイジはどのシーンでもとっても愛らしく、ペーターは少ないセリフの中で不器用さがよく出ていて時折クスッと笑えた。
クララやロッテンマイヤー女史、その他のゼーゼマン家の人たちも理想の配役って気がする。
馬車が往来するフランクフルトの街の姿の再現も見応えあり。
実写ならではの楽しみのひとつでもあった山の風景も期待通りで嬉しかった。
ロケ地はスイスのグラウビュンデン州。
アバドのお墓参りに訪れたエンガディンの山と湖によく似た景色に何度も胸がキュンとなった
それにしても、このハイジという作品の物語としての完成度の高さってすごいな、と改めて思う。
普通の子供だったら、フランクフルトの大富豪であそこまでお嬢様扱いされたら
「もう山になんて帰らないわ。クララの座を奪ってやるー!」
ってなってもおかしくないだろうに^^;、ハイジはこれ以上ないほどの恵まれた環境の中にあっても幸せを感じない。
それどころか、毎日アルムの山とおじいさんが恋しくて夢遊病にまでなってしまうんだから、本当にどこまで野生児なんだー!
いや、きっとハイジは大自然の中で生活する魅力を知り尽くしてしまっていたのだろうな。
主人公だけじゃない。
誰もが人を思いやりながら自分に与えられた運命の中で生き抜いていく。
ひとつひとつのキラキラとした出来事が繋がって壮大なストーリーになっているので、この歳になっても大切な宝箱を開けるような気持ちで楽しむことができる心から愛すべき作品。
現在、神奈川県で上映されているのは横浜のミニシアター「シネマ・ジャック&ベティ」のみ。
客席は思っていたよりも埋まっていて、自分と同じくらいの世代が多かった。
久しぶりに伊勢佐木町の商店街を懐かしく歩いたりもできた。
ランチで入ったイタリアンでは、ハイジのチラシを持っていたらお店の方が「もうチケットは購入されていますか?」とわざわざ聞いてきて下さって、デザートをサービスしてもらえた
ありがとう、ハイジ