鞄に演劇をつめこんで

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アンケートの考察 100団体のアンケートからみる質問内容 (連載その3)

2020年03月16日 | 小劇場演劇の考察

連載3回目は、アンケートの核心ともいえる感想・評価に関連した質問の分析です。

質問その3 感想(要望や意見)・評価

ほとんどの団体が感想や評価を求める質問を設けています。感想は自由記述、評価は選択肢で回答するアンケートがほとんどです。
また作品全体だけでなく、照明や音響など個々について求めるものや、印象に残ったシーンや役、出演者へのメッセージなどに関する質問があります。

■ 感想・評価1 感想を自由記述で書かせる
「ご感想・ご意見をご自由に記入してください」など自由記述で回答を求める団体は94団体。
「裏面もお使いください」まで記載するほど、団体や出演者が一番知りたい内容といえるでしょう。

 さて、自分は字を早く書くのが苦手なうえ、「自由に」と言われると何を書いていいのか直ぐに浮かびません。もちろん「面白かった」「良かった」と薄いことはかけますが、「何が」そう思ったかを自分の言葉として整理して伝えるほど振り返れるスピードを持ち合わせていません。「惜しい」「残念」「面白くなかった」ならなおさらで、それこそ「何が」と伝えてあげたいが、書ける余裕がありません。アンケートを書く気がおきない理由の一つには、そういうことがある気がします。
そこで感想・評価2にあるように選択肢による評価を採用する団体があります。

感想を匿名で公開していいか 

自分の感想がSNSなどで流れることは、団体にアンケートが伝わっていることがわかるし、演劇との距離が縮まる感じがします。2団体が採用。感想に対して団体がコメントを入れると記入した人との距離が更に縮まるはずです。
また公開は公式ブログなどだけでなく、例えば出演者による動画配信なども考えられます。
いずれにしても団体には相当の負担のかかる作業でしょうが、コメントを貰った人がリピーターになる可能性もあり、集客につながる一つの手法かもしれません。

■ 感想・評価2 作品の評価を選択肢にする。

●選択肢がポイント

「この作品の満足度は」「本日の公演はいかがでしたか」などの質問に対し、回答を自由記述ではなく、選択肢による評価で求めるのが特徴です。
具体的には
・とても面白かった、まあまあ面白かった、つまらなかった 
・最高、良い、やや不満、とても不満
・期待以上、期待どおり、普通、微妙、不満、最低、なにも感じない

などの選択肢を用意し、3段階~7段階で評価を求めています。

そのほか、
・面白い ←------------→ つまらない にして適当なところに○をつけさせる団体もあります。

感想の表現の仕方が、単に「面白い」「つまらない」だけでなく、「期待」「最高」「微妙」「感じない」など多岐にわたるのが注目で、「何も感じない」にはなるほどと思いました。

■ 感想・評価3 舞台や照明、音響など個別に評価を求める

作品全体の評価ではなく、舞台美術や照明、音響など個々に評価を求めるアンケートが11団体ありました。

●評価を求める項目

評価を求める項目は、舞台美術・音響・照明に絞った団体がある一方で、演出・脚本、衣装小道具、舞台美術・音響・照明、チラシ・パンフ、演技役者、衣装、ホスピタリティ など幅広くたずねる団体もあり、中には、会場の立地やチケットの価格、会場の空調まであげる団体も。
このほか、カフェ公演・バー公演では「朝食・ドリンク」、「店内の居心地」に絞ってたずねる団体があります。

観劇をしていると作品の内容や役者にばかりに目が向き、舞台セットや音響・照明にまで届かないこともあるので、こういう質問があると、観劇の視点を広げる一助になります。

●評価の方式

その1 満足度を5段階~7段階で数値化する 4団体

その2 良い・悪い 1団体
<実例>
良かったものに○、悪かったものに×を教えてください、
脚本( )、演出( )、役者(  )、衣装( )・・・

とシンプルに○×の2者択一にさせます。
「普通」がないところが面白く、作品の感想には良いか悪いかのどちらかしかないという団体の姿勢を感じます。しかし、「響かない」「感じない」という感想もありそうです。

 その3 選択肢の中から良かったものに○をつける 5団体

<実例>
・当公演で気に入ったところを教えてください
・以下の中から良かったと思う項目に○をおつけください
・今回の公演で一番良かったところはどこですか?
・今回の公演で良かったと思うセクションと、その理由をお答えください

という質問で、選択肢に

 脚本、演出、役者(    )、舞台、小道具、照明、音響、衣装、宣伝美術、制作、WEB、チラシ などがあり、該当する項目に○をつけます。

評価としては大まかですが、限られた時間で記入させるには有効です。 

■ 感想・評価4 次の公演を観たいか            

3団体が採用し、
<実例>
・次回も観たいと思いますか
・次回公演をやってもいいと思いますか
・今回のような公演の2回目があったら観たいですか

と率直にきいています。

わかりやすい質問ですが、「観たくない」回答があるからといって、次の公演をしないわけではないでしょうし、氏名を記入する方は正直に選ばないことも考えられるので、正確な数字が得られるかも疑問です。

■ 感想・評価5 観劇料金の価格設定はどうですか         

<実例>
この公演の価格設定は高いと思いますか?安いと思いますか。

と質問する団体が1団体ありました。
作品に自信がないようにもみえますし、「安い」回答が多ければ値段を上げるのかという思惑もみえます。しかし「高い」回答が多ければ値段を下げるのかというとそうでもないと思います。
観劇の値段は、個々の作品の劇場費、出演者の拘束時間、舞台美術の製作費などを加味して団体が判断して設定するべきものです。そして設定した値段を「払って良かったと満足されるような作品」づくりに励んでほしいと思います。
なので、評価を引き出す質問にスペースを割いたほうがいい気がします。

■ 感想・評価6 印象に残ったセリフ・シーン

●質問の仕方
<実例>
・印象に残ったシーン
・本公演の中で一番印象に残ったシーンはどこですか?
・印象に残った出演者、シーンがありましたら記入ください
・劇中、印章に残ったセリフ、俳優などをお書きください
・今回の作品のご感想、印象に残ったシーン、役者などありましたらお書きください
・お好みのコントはございましたか
・好きなシーン、キャスト、演出などがありましたらご自由に記入ください。
・印象に残ったキャラクター、エピソードがありましたら教えてください。
・あなたのお気に入りシーンは?
・どのシーンが一番面白かったですか

などです。

自由記述方式で感想と一緒に聞く団体と、感想とわけて質問する団体があります。
記入する内容が指示され書きやすいうえ、作品を振り返れる質問ですが、短い時間の中で、印象に残ったシーンを記入し、更に感想も記入することは相当負担です。
なので、回答を選択肢にする負担が少ない回答方法を工夫したいところです。

■ 感想・評価7 印象に残った役・役者

●質問の仕方
<実例>
・本公演を観て印象に残った役者はいましたか?
・印象に残った役(もしくは俳優)はございますか?
・今回の作品のご感想、印象に残ったシーン、役者などありましたらお書きください
・印象に残ったキャスト
・印象に残った役者(役名)がおりましたらお書きください。理由なども添えて頂けると幸いです。
・好きなキャラクターがいた方は○をつけてください

で、印象に残ったシーンと同様で、自由記述で感想と一緒に質問する団体と、感想とは別に質問する団体があります。
ほとんどの団体が自由記述のなか、2団体が役名と役者名を列挙して○をつける方法を採用しています。
自由記述ですと、お目当ての出演者の名前のみを挙げやすいので、選択肢から選ぶことを通じてお目当ての役者以外の出演者の名前に目を向けさせるいい方法だと思います。

■ 感想・評価8 作品の内容から連想させる質問(自由記述)    
<実例>
・どの役と姉妹になりですか(三人姉妹)
・あったらいい超能力をあげてください
・あなたはどの登場人物に似ていますか

など作品の登場人物やテーマなどに関連づけて質問しています。6団体が採用。
この手の質問は、考えることで作品との距離を縮められるのですが、終演後の限られた時間で、ここまで考えるのは正直厳しいです。

■ 感想・評価9 出演者へのメッセージ
<実例>
・今回の感想・ご意見・出演者へのメッセージなどをお書きください。
・ご意見、ご感想、メッセージなどご自由にお書きください。
・ご感想、出演者へのメッセージがございましたら、お書きください。
・役者・スタッフにメッセージがありましたらご記入ください。

など。
これも自由記述の感想とあわせてきく団体がほとんどで、独立した質問項目にしているのは1団体。
出演者に感想などを伝える機会に終演後の面会があります。しかし、伝えたい役者さんと面識がない方は話しかけにくいでしょうし、こういう質問があると伝えやすい感じがします。
なので、感想とわけて質問した方が書きやすいと思います。
また匿名で伝えるよりも誰のメッセージか記入者の名前がわかる方が、出演者さんが観客を覚えることや、次の予約に繋げるきっかけになると思います。ただ、こうした出演者個人にあてたメッセージは、その役者だけが読むのか、その役者も含めた出演者全員で回し読みするのか。団体の扱いに興味があります。

次回でいよいよ質問の分析は最後です。その4に続きます。

アンケートの考察 100団体のアンケートからみる質問内容 (連載その4) へ
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