とてもきれいな本です。
ページをめくると、見た目和紙っぽくてざらりとした手触りの紙に
薄い桜色でタイトルがありその下のあたりに桜のはなびらがはらはらと・・・。
目次も控えめに淑やかに並んでます。
七つの短編が集められていてすべてのお話に桜がでてくるとの事
あとがきを読んで、なるほど桜ストーリーをつなげた首飾りってわけね、ふむふむ。
はじめのお話は「春の狐憑き」
細い管に狐を入れていると話すちょっと変なおじいさんと
人と関わるのが苦手な美術館に勤める女性。
公園で会うと狐のことばかり話すおじいさんに彼女は少しづつ心をひらいていきます。
ストーリー展開のおもしろさや登場人物の魅力で読ませる小説も好きですが
これは文章自体の魅力で読ませる本、といえばいいのでしょうか・・・
一行一行舐めるように読み、味わわせていただきました(笑)
クラッシックな西洋の童話から抜け出したようなおじいさんの描写
町外れの古い美術館の描写など、
ああ~うまいこと言うなあ~と思わず付箋をつけたくなります。
読んでいると、匂いや温度、ざわつきまで感じられるのです。
それぞれにやっかいな問題を抱えた人たちのそれぞれの心模様と揺れも
ああ~うまいこと言うなあ~で、上に同じ^^
七つのお話のうち映像として頭に鮮烈だったのは
「白い破片」
夜、桜並み木沿いに建つマンションの一室、
割れた窓ガラスの破片が床できらきら光り、精液が流れ、ガラスで切った掌から
赤い血が流れ、その上をカーテンをひるがえした風にのりはらはらと桜が舞い降りる・・
暗闇と光と赤のグラデーションが一枚の写真のように刻まれました。
図書館で借りて読む本のなかに、時々、買って本棚に並べたくなるものが
ありますが、桜の季節がくる度に読みたくなる本かもしれません。
といっても
来年うちの本棚にあるかどうかは神のみぞ知る^^;
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