今宮祐貴 〜活動日記passion 〜

相模原市議会議員 passion for the best

「夢は枯野を」

2018-07-15 23:10:00 | 書籍
 青年時代、伊集院静さんの直木賞受賞作「受け月」を読んでから伊集院さんに強く惹かれ次に読んだのが、この「夢は枯野を〜競輪躁鬱旅行〜」でした。

 私は今も昔も競輪はしません。ギャンブルには否定的です。20台前半の頃、仕事をいくつか掛け持ちしていて、築地の日刊スポーツのレース部で短期間ですが競輪担当と盛岡競馬場の予想を打っていたことがあります。その時に競輪を知りましたが、競輪にお金をかける事はありませんでした。その時は、レジェンド級の、吉岡稔真さんと神山雄一郎さんの名前くらいは知っていましたが。今は、競技としての競輪は、オリンピックでも好きな種目です。お金は賭けませんが競輪を観ることも好きです。ツールドフランスもよくテレビで観ていました。ちなみに私は一時期自転車に乗るのが好きで、大学時代に短期間ですが自転車サークルに入り、埼玉から夜行列車に乗って仙台へ行き、面白山高原駅で自転車を下ろし新潟まで日本海沿いを1日80キロ走ったことがあります。

 私がこのエッセイを最初に読んだとき、一息に読んだ記憶があります。こんな世界があるのか。なんというか、とにかく、20代の私は旅打ちに果てしないロマンを感じました。友人から寺山修司さんを教えてもらったのもその頃で、その友人が寺山修二さんの詩の一部を引用して、「カモメは飛びながら歌を覚え、人生は遊びながら年老いていく。遊びってのは、もうひとつの人生なんだな。人生じゃ負けられないようなことでも、遊びでだったら負けることができるしね」と、久しぶりに会った時に得意げに僕に語ってくれたことがあって、そうか競輪は伊集院さんのもう一つの人生なんだ、と膝を打ちました。それから、私はもう一つの人生を持てる大人になろうと決めた記憶があります。

 この「夢は枯野を」は私の三度の引っ越しの際にも最重要なボックスに入れて運びました。疲れたとき、ふと手に取ってパラパラとめくり、伊集院さんのもう一つの人生をあたかも自分のもう一つの人生であるかのような心地で眺めることで、私はもう一つの人生で負けられて、しかもその負けは実際には痛みが伴わない夢の中で頬をつねるようなもので、実際には経験したことのないロマンの中に身を浸すことができます。夏休み、「ライ麦畑でつかまえて」もいいですが、「夢は枯野を」をオススメします。