YS_KOZY_BLOG

History, Strategy, Ideology, and Nations

12月5日

2009年12月05日 | MILITARY
 日本人は、戦争をどうしても情緒的に捉えてしまう傾向がある。
 「情緒的」というのは、言い換えれば、そこに「物語」を見出そうとすることを指しているのだが、
 要するに、他者への感情移入によって出来事を解釈してしまうメンタリティのことである。
 これは戦争を合理的、つまり「ゲーム」として認識する欧米などの感覚と異なるものであり、
 その辺の差異が、第二次大戦でも精神論で戦争指導に臨んだ日本と、
 合理主義に根差した軍事計画を立てた米国との差異に表れているのかもしれない。

 もちろん、日本の戦争観が間違っていると言いたいのではない。
 ただ、戦争とは合理的に進めることが基本であって、
 心理的・精神的要素は、その合理性を補完するものと考えることが常識的であろう。
 
 そう考えた時、そうした情緒性を排して戦争を語ったものに目を通しておくことは、
 戦争や軍事を知る上で、決してマイナスではない。

 クリス・ヘッジス/伏見威蕃訳
 『本当の戦争 すべての人が戦争について知っておくべき437の事柄』
 集英社、2004年

 本書は、一問一答形式で、ひたすら戦争に関する素朴な疑問に短く答えていくだけのものである。
 用いられているデータも簡潔で、必要最低限の情報しか与えられていないが、
 その簡潔さが逆にリアリティを高めていて、客観的に戦争を捉える視点を読者に提供している。
 専門家や研究者が読むような文献ではないが、
 政府文書には現れない現実の戦争を知りたい人には楽しく読める内容になっている。

 なお、それを歴史的な観点から取り上げたものとしては、次の文献も面白い。

 別宮暖朗
 『軍事学入門』
 ちくま文庫、2007年

 「新秩序とは、国境変更を意図したものである」など、歴史的事例を多く紹介しながら、
 そこから見える戦争の本質を分かりやすく解説している。