YS_KOZY_BLOG

History, Strategy, Ideology, and Nations

12月6日

2009年12月06日 | NEWS & TOPICS
 鳩山首相のダッチ・ロール状態が相変わらず続いている。
 外交よりも国内の政局を優先する政治姿勢は、すでに米国からの信頼を完全に失墜させた上、
 経済対策も具体的に動いている様子はなく、日経平均株価は一向に好転の気配を見せない。
 今日発表された最新の世論調査では、内閣支持率が60%に落ちてきたが、
 これまでの実績や成果を見ている限りでは、それでも60%の支持率と言わざるを得ない状況である。
 
 米ソ冷戦が終結し、バブル経済が弾けた後、
 日本は進むべき方向性を見失ったと言われることがある。
 確かに1990年代以降の政治や経済の動きを見ていると、
 そこには新しいビジョンや構想を求め続けて苦悩する日本の姿がある。
 アメリカニズムを大胆に取り入れるか、アジアの一員としての立場を強くするか、
 あるいは、日本としてのプライドを回復することこそ優先すべきなのか。

 どの立場が良いとか悪いとかいうものではない。
 多分、いずれも今後の日本の行く末を思った時に進むべき道筋を思い描けば、
 色の三元素のように、この三つの立場を状況に応じてブレンドしていくしかあるまい。

 だが、そうすることによって失われるものもある。
 すなわち、それは是々非々に応じるしかない指導者のリーダーシップである。
 一貫した方針が見えず、多様化した国益の中で、多くの問題にリーダーシップを問われ始めると、
 人々はそこに必ず矛盾を見出し、それをリーダーの不誠実と解釈して、
 徐々にリーダーシップへの疑問を示すようになる。
 
 そこで急いでリーダーは国民への説得が試みられることになるが、
 立場の矛盾に気づいているリーダーは、その矛盾を一つ一つ説明することができない。
 そのため、必然的に包括的で抽象的な言葉で矛盾を糊塗するしか手立てを失ってしまうのである。

 鳩山首相は、きっと現在の立場が矛盾に満ちたものであることを知っているのだろう。
 だからこそ「友愛」に象徴される曖昧で空想的な言葉を用いざるを得ないのである。
 世間では、それを「八方美人」という便利な表現で揶揄したりする。 
 なるほど、鳩山首相が八方美人的な言動を繰り返していることは間違いない。
 その軽はずみな言動を止めない限り、今後もダッチ・ロール状態から抜け出すことは難しいだろう。

 だが、リーダーが抱える矛盾をいかにして克服するかについて、具体的な処方箋などあるわけがない。
 従って、多くの者は、それを「沈黙」によって矛盾の存在を無視してきたのである。
 しかし、その処方箋のヒントは、おそらく論理を超えた部分に隠されているように思われる。
 大衆が見ているのは、政策のロジックや客観的な評価ではない。
 リーダーが問題に取り組む「真剣さ」を見ているのである。
 
 鳩山首相が今後、力強いリーダーシップを発揮したいと望むならば、
 往々とした政策論議を重ねるよりも、事態解決に向けた「真剣さ」を前面に押し出すことである。
 逆に、リーダーシップが他人によってお膳立てしてもらうものだと考えているのなら、
 内閣への信頼性はさらに大きく落ち込むことだろう。
 いよいよ鳩山首相は正念場に立たされつつある。