On楽工房奮戦記byよっさん@アコギ

わたしの音楽活動、楽器、PA、読書についての勉強を綴ります。

「隠蔽捜査」今野 敏

2008年02月17日 | 読書
吉川英治文学新人賞受賞の警察小説

おもしろい小説である。警察小説としては少し毛色が変わってる。
最初読み始めて前半、主人公は、とてもいやなエリート意識丸出しの警察庁課長で、家族や廻りから変人扱いされている。絶対に東大でないとダメでという学歴意識がもうバシバシ出てきて、官僚の出世意識もまるだし。ところがそれが少しずつ変わってくるのだ。清廉潔白、国や警察のために命を投げ出しても惜しくないという本当の意味での公僕意識が余りにも強く、権限を行使して組織をまとめたい意識から権限の獲得、ひいてはそのための東大エリート意識になってる人物であることがわかる。そして有る事件をキッカケに彼はその意識が少しずつ変わっていくのだが、いやな野郎は段々読み手にとってヒーローの用に思えるような人物になっていく。彼は基本的に元もとそういう人物であり、ただ出世の上の方しか見ていなかっただけなのである。こういう人物像が警察小説に出てくるのはおもしろいね。作品中人物で幼なじみのキャリア刑事部長がいるんだが、どっちかというとこれまでなら彼が主人公なんだろう。
この主人公は作中「唐変木」と妻から云われている。警察小説の主人公が云われるにしてはおもしろい表現やね。
読後感の非常によい小説であった。彼の活躍が今後楽しみだ。
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竜崎伸也、四十六歳、東大卒。警察庁長官官房総務課長。連続殺人事件のマスコミ対策に追われる竜崎は、衝撃の真相に気づいた。そんな折、竜崎は息子の犯罪行為を知る―。互いに自らの正義を主張するキャリアとキャリアの対立。組織としての警察庁のとるべき真の危機管理とは。


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