森繫さんのこと
生前、彼が或る劇団に、所属していた時の話。当然、新人で、ペーペーだった。劇団は、大所帯で、一芝居終わると、風呂に入る。当時は混浴で、かの有名な「杉村春子」女子もたまたま一緒だった。ねえ、チョット、チョッと、あんた、背中ながしてくれない？風呂には、2人しかいなかったので、森繫さんは、あの大幹部の彼女とはつゆ、知らず、はいと返事。彼女は、椅子に掛け、（椅子は前の方、えぐれた形になっていた）彼は、背中を流す次いで、背中の方から、お尻の方まで洗い、彼女の、ムスメの方まで、手がスベッテしまった。「あんた、何すんのよ！」かのモリシゲさんは、まさか、あの大幹部の、「杉村春子」とは露知らず、後に、彼が、少し売れてきた時分、友人との酒の席で、語っていたとか。後にも先にも、大女優のムスメを、堂々と触った、のは、俺くらいだろうと。豪語していたとか。艶聞も彼らしい。彼は、黄泉の国、確かめるすべを、私は知らない。（小糸川、岸の風景）
