という思いがつのっていく。
この頃は家の中の物を処分するのが趣味になってきた。
先日はスティールの本箱、パネルヒーター、アイロン台、
温風扇風機を粗大ゴミに出すべく市のゴミ処理センターに申し込んだ。
それから思い切って、押し入れの奥からパソコンを出してきた。
これは粗大ゴミセンターでは受け付けてくれない。
でもネットで調べると、無料で廃棄してくれる業者がたくさんある。
数年前、パソコンをマックからウインドウズに変えたのだが、
これはその時まで使っていたもの。
２代目のマックだったと思う。
壊れてはいないのだが、使えないソフトが多かったり、トラブルが
起きた時、助けてくれる人がいなかったりしたので（ほとんどの人が
ウインドウズだった）、思い切って変えることにしたのだ。
袋をかぶせて押し入れに入れてあったというのに、いろんな
隙間に埃がびっしりと詰まっている。
いまだにパソコンを触る時はおそるおそるなのだが、
もう処分するものだから壊れてもかまわない。
竹串で乱暴に埃を掻き出した。
このまま業者に送ればデータ消去もやってくれるらしいのだが、
一応は自分で消しておいた方がいいだろうと考えた。
これかな？ え～と、ここだったけ？ と迷いながら
本体とデスクトップを繋ぐ。
おお、できたでないの！ では電源スイッチはと……、
おお、これこれ！ と指を突き出したところで気づいた。
電源コードってものがいるんじゃないの？
それをコンセントにつながないと、電気が来ないんじゃないの？
捨てたのかも、と一時はあきらめかけたが、家捜しして
それらしいものを見つけた。さっそく繋げて電源を入れる。
立ち上がりに時間がかかるだろうと思ったが、
「ジャ～ン！」という楽しげな音とともに、すぐデスクトップ
画面が出た。
なんだか目頭が熱くなった。
待ってたんだね、いつか必ず振り向いてくれると信じて、
暗い押し入れの中で、けなげに待ってたんだね……。
しかも、恨みがましさなどみじんも見せず、素直に
さくさくと動いてくれてる。
なんて無邪気なんだろう。なんて性格がいいんだろう！
懐かしさと申し訳なさで、ついに涙が溢れた。
マックよ、あんたが悪いんじゃない。
このシンプルでわかりやすい使い勝手は、ウインドウズ８
なんかよりずっと私にとってやさしい。
なのに長いことほったらかしたあげく、ついにあんたを
捨てようとしている。
無慈悲な私を、どうか許して！
泣きながら、データを次々とゴミ箱に入れ、「ゴミ箱の
中身を完全に消去する」をクリック。
それでも、しようと思えばデータ復元はできるらしいが
そうまでして誰かが欲しがるような機密は入っていない。
データ消去中。
なんというか、ほら、映画なんかで馬が転んで足を折ったり
するシーンがあるでしょ。
で、このまま苦しめるよりは、というので、その馬を
持ち主が射殺したりするじゃない。
あれと同じ事をしてるような気がして、心がきりきりと痛んだ。
別れは辛い。共にした時間がひとつ、またひとつと消えていく。
データ消去作業を終えて梱包すると、宅配業者が取りに来た。
すべてが終わってから、そういえば私はマックのノートブックも
持っていることを思い出した。どこかに仕舞ってある。
その昔、上海に一ヶ月滞在したとき、持って行ったよねえ。
結局、原稿は一行も書かなかったけど。
身辺整理はまだまだ続く……。
