ロスジェネの発言

-Weblog of 三四郎日記

大江健三郎の講演の内容(だいたいこんな感じ)

2005-02-28 16:01:57 | 憲法「改正」問題(9条問題)
横浜での「九条の会」の講演で、大江健三郎が述べたことをメモ的に書きます。

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この前、NHKで「憲法九条を考える」という番組にでた。それに対して、抗議の電話が来て「お前なんか千円札にもなれないようなダメな小説家だ」といわれた。それはそうだ。千円札の夏目漱石は私とは比べものにならないほど偉大だからだ。私は、漱石は五千円でもいいと思っている。

ところで漱石は、日本の「開花」ということを考えていた小説家だった。漱石が言ったのは、西洋の「開花」は内発的なものであったのに対し、日本の「開花」は外側から持ち込まれてきたものだということだった。

漱石がこのような発言をしたのは1911年のことだった。それから35年後の1946年に丸山真男は「漱石がこの発言をしてから35年たっても日本には内発的開花をした知識人が現れなかった」といった。その35年間(1911-1946年)のあいだに、大正デモクラシーの時代からナショナリズム・軍国主義の時代にほんの短期間で変化してしまった。これは恐ろしいことだ。

軍国主義の時代には「近代の超克」ということがさかんに言われた。「近代の超克」は、「近代」を乗り越えて新しい日本を作ろうという思想で、軍国主義・ナショナリズムの支柱になった。しかし、丸山はこの「超克」がいかにゆがんだものであったかということを批判し、もう一度「近代」に立ち戻ろうと主張した。

1945年8月15日というのは、われわれにとって原点と言っていい。全てはここから始まっている。日本人が、「これからは民主主義(デモクラシー)の時代になる」と信じた原点がこの日なのだ。

1960年5月20日に国会前に「安保反対」で10万人もの市民がデモに集まった。中曽根康弘は「あれは安保条約の中身を知らないで集まった」と言っているが、それは違う。あのときは、まだ戦争が終わって15年しか経っていなかった。15年前に「これからやっと民主主義の時代が始まる」と思ったのに、5月19日に国会で民主主義を踏みにじるような暴挙(強行採決)が行われた。人々は、それを見て「民主主義が壊される」と危機感を抱き、デモに参加したのだ。(つづく)

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