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夢の傑作映画館・高島与一

ドラマ・映画のシナリオ、ルポ、ドキュメンタリー、構成台本、小説、エッセーなどの執筆とドラマ論、脚本指導

蛍の光、窓の雪

2011-12-27 07:00:46 | コメディ
みなみなさま 新年への祈り

いよいよ年の瀬は押し詰まり、政治も押し詰まり…良き年をただ祈るのみ…。


☆脱力・脱原発人情爆笑劇場「蛍の光・父と娘の会話」 

                      作:高島与一


◎居間にて

   父と娘が、電気コタツでミカンを食べながら

天才桃尻娘「天才インテリの父よ!」

天才バカボンパパ「どうしたのだ、改まって…物知りインテリアの桃尻娘よ!」

桃尻娘「真似すんな! 昨日は夜中に、コソコソ家を抜け出して、どこへ行っていたん だ? 朝帰りやろ!」

バカボンパパ「バレタか…。蛍を採りに、川まで行ってたのだ」

娘「蛍? 今、冬だぞ! 蛍は夏だ、気は確かか!?」

パパ「知ったかブリブリブリッコ娘よ! いつ決まった? 談合か?」

娘「昔からだよ、バカッ!」

パパ「それでは困るのだ…。節電ができない…」

娘「ハッ?」

パパ「パパは考えたのだ。電力会社が節電しろと言うから、蛍を一杯集めて、その灯で夜中に読書することにしたのだ」

娘「アホッ! なんで、そんな面倒くさいこと考えるねん! 夜中は寝たらいいの。寝たら電気はいらん! もともと、本なんか読んでるの、見たことないぞ!」

パパ「お前は天才か!」

娘「お前がアホじゃ! だいたいやな、電力会社の節電キャンペーンに騙されてるんじゃ、ボケッ!!!」

パパ「そいじゃあ、来年の夏に蛍を探しに行くことにする」

娘「違うやろッ!」

パパ「♪蛍の光~窓の雪~書(ふみ)読む月日重ねつ~つ~…そうかッ! 冬は雪明りで読書するのだった!」

娘「夜は寝なさいッ!!!」 

パパ「♪いつしか年も~すぎのとを~あけてぞ今朝は 別れゆ~く」

娘「卒業式か!」

パパ「物知り桃尻娘よ!  『あけてぞ今朝は』の『あけ』は夜明けの『明け』なのか、戸を開けるの『開け』なのか?」

娘「たまにはエエこと言うがな…。それはやな、年も『過ぎ』と、木の『杉』が掛け言葉で、『杉の戸』を『開けて』と夜が『明けて』とが掛け言葉や。昔の言葉遊びやな」

パパ「お前は天才か! さすが、オレの娘や!」

娘「お前は、ただのアホ親父や! 遺伝子の連続性に恐怖を感じる今日この頃(ブツブツ)…もらい子であってくれれば(ブツブツ)…」

パパ「そんな冷たいこと言うな! お前はオレの実の娘や! 間違いない! あの日、酔っ払って帰って来んかったら、今日のお前はない…」

娘「ガ~ン!!!」

パパ「♪とま~るも~行く~も 限りと~て~互(かた)みに思う 千万(ちよろず)の~心のはし~を ひと~ことに~幸(さき)くとばか~り 歌うな~り~」

娘「それはやな、こういう意味や…。ふるさとに残る者も、ふるさとから出る者も、今日限りでお別れということで、互いに思う何千、何万という心の端々を、たった一言、『無事で』とばかりに歌うのである…」

パパ「……(ウルウル)」

娘「おっさん! 何を泣いてんねん?」

パパ「(顔がクシャクシャ。鼻水をすすり上げ)それって、福島の人たちのこと歌ってんねんやろ…」

娘「(しんみり)もうエエから、寝なさい…。蛍も雪も心配せんとな…。明日起きたら、きっと一面の銀世界やで、お父ちゃん!(ハンカチを渡す)」

パパ「ウン…(思い切り、鼻をかむ)…。ほんなら寝るわな…」

娘「(優しく)明日、また遊ぼな…親父…蛍の夢でも見ィや…オシッコしてから寝るねんで…」

パパ「(急に元気に)♪ホッ、ホッ、蛍、来い! アッチの水は汚染水、コッチの水は冷却水! ホッ、ホッ、放射能!(踊りながら部屋を出て行く)」

娘「(独白)やっぱ、天才と紙一重や…」

         おわり 

 








自虐の詩(うた)

2011-09-30 01:48:10 | コメディ
◎脱原発コント『父と娘の会話~自虐の詩(うた)』

茶の間にて


桃尻娘「お父さん、冬の節電どうすんの?」

天才バカボンパパ「バカ、バカ、バカ! お前ね、夏も電気消しまくってたけど、完全に電力会社の節電キャンペーンに乗せられとんねん。もっと学習をせんとやね、原発推進勢力に太刀打ちできんぞ! あいつらは騙しのプロやからな。分かっとらんな、情けない」

桃尻娘「ちゃうで、そんなこと分かっと~よ。お父さんの稼ぎが悪いさかい、電気代ちょっとでも安くしょ思て苦労しとんねん。娘の苦労も知らんとから…。分かっっとらんな、情けない…。やぶ蛇やったな」

天才バカボンパパ「……(シュン)」

桃尻娘「携帯料金、ちゃんと払いや。原発停める言うてるけど、自分の携帯停められて、どうすんの?」

天才バカボンパパ「……(ムカムカ)」

桃尻娘「貧しさに~負けた~ いえ~世間に負けた~♪(『昭和枯れススキ』)」

と、電気、テレビを消す。

天才バカボンパパ「じゃかましッ! 負けた、言うなッ! ワシはその言葉が一番嫌いなんじゃ!(卓袱台返し)」

桃尻娘「よ~し! その意気! それでこそ、地震・原発・津波・台風や!」

天才バカボンパパ「地震・雷・火事・親父じゃ! なんで親父を外すねん!」

桃尻娘「カッカしなって! ハイ、冷温停止!」


ドジョウが首相になるて、ホンマ?

2011-08-30 01:27:01 | コメディ
なんか、オレには理解できんことが起こるな…。

どうも、ドジョウがニッポンの首相になるとかいう街の噂???

野原の田んぼのドジョウがニュルニュルやて…。

意味分からんわ…。

柳の下で3匹目のドジョウを探してた言う人もおるし…。

ドジョウで地震予知ができるんかいな…?

ナマズの間違いとちゃうのんか…。

ドジョウで土壌汚染がどないかなるんかいな…。

脱小沢とか親小沢とか言うてた思たら、ドジョウ掬い踊るんか…。

会議は踊る、されど…いうのん止めてや、ホンマ。

オレには分からん…。

脱原発か親原発か、の間違いとちゃうのんかと考えてたんやけど…。

小沢て原発のことなんか…?

なんか深い意味が、ありそでなさそで、ウッフン! とか言うのとちゃうやろな…。

もうちょっと末端にも分かり易くして欲しいわ…。

『黒い雨』井伏鱒二

2011-08-20 07:00:41 | コメディ
高橋はるみ北海道知事が、泊原発3号機営業運転にゴーサインを出した。泊3号機の営業運転は再開され、彼女の悪名は、これで歴史に刻まれることになった。

今回の泊原発3号機の再開問題で、高橋はるみ知事がどんな人物か知らなかったので、ネットで調べてみた。

推進派のエースですね。まさに強打のピンチヒッター。

保守政治家2代目、一橋大から通産省へのエリート、経済産業省の北海道地方局で人脈を作り、ゼネコン業界や北海道電力に結びつき、北海道選出の自民党の“大物”議員、町村信孝の引きで知事選立候補、全国ワーストスリーに入る公共工事の落札高価格(税金の無駄遣いとゼネコンへの奉仕)、談合疑惑、北海道電力幹部からの献金…もうあらゆる条件が揃っている、いや揃いすぎwww

ホントに、推進派が泊で再開できなかったら、いったいどこで再開できるんだ、というくらいの条件。阪神タイガースが甲子園球場で勝たなかったら、どこで勝つんだというようなもんです。違うか…。

まだ調べたわけではありませんが、原発立地県に経済産業省出身の知事が多いとネットに書いていました。一度調べてみなければいけません。新潟もそうですが、ここは原発再開には厳しい態度表明をしています。一般的に、中央官僚出身知事は、自治省出身者がダントツだったのが、経済産業省出身知事が増えて肉薄しているらしい。

経済産業省が財務省・外務省などと対抗して省益拡大に奔走して来たその中心政策が原発推進と原発プラント輸出だったということが、「原発官僚~漂流する亡国行政」(草思社)に非常に分かり易く書かれていました。彼らにとっては、主観的には、“省益”=“国益”なんでしょうが…。

福島原発水素爆発の映像を見ながら、元通産省のある幹部は「まずいな…」と呟いたそうです。その理由は、福島県民の安否を心配したのではなく、「これで、日本の原発輸出は致命的なダメージを受ける…」ということだったそう。

経済産業省出身の知事は、同省の省益を拡大するエージェントであり、中でもエース級の高橋知事は、まさに“原子力村”の村民であった。8月12日だかに、高橋が地元軽視だと怒りを露わにしたと報道されましたが、あれは臭い芝居です。あの時、彼女は屁をしてます。彼女は首長だから、道民の反発を買うと支持が下がり、地位が危うくなる。易々と経済産業省の言いなりになったのではない、地元の意向への配慮を求め出身省に歯向かったというポーズ。出来レースだね。

九州の玄海では“やらせメール”でしくじり、福井県の大飯の調整運転から再開へが致命的な緊急炉心冷却装置のトラブルで自滅し、原発再開への最後の切り札が泊=高橋だったということですね。

「泊は“再開”ではない」という経済産業省の解釈が、いったいどういう意味なのか、よく理解できなかったのですが、朝日新聞18日社説を読んで、そういうことを言っていたのかと、やっとこさ理解できました。こう書いてありました。
「泊3号機は、震災後初の営業再開というよりも、震災前の検査基準で再開した最後の原発と考えた方がいい」。
「考えた方がいい」だってさ。苦しい表現だね。無理筋でもなんでも、とにかく納得しろっていう表現です。日本語の解釈としては、そういうこと。
いいことね~よ!

泊3号機は1月5日から定期検査に入り、3月7日から調整運転に入っていた。つまり3月11日以前に調整運転に入っていた。フル出力で既に発電をしていた。3月11日以前から動いていたのであって、3月11日以降に止まったのではない。だから、福島原発事故後に定期検査で停止中の原発再開基準云々の原発には該当しないのだ、と朝日新聞は解説しているわけです。徹夜で考えたのかね…。

停止中の他の原発の再開については、ストレステストとか新しい検査基準の適用が必要だけれど、泊は“福島事故後の再開”ではなく、既に動いていたんだから“再開、再稼動”にあらず。“再開”じゃないんだから、“再開のための新しいルール”は適用しなくていいんだ、例外、特別扱いしていいんだ、こういう理屈だったのですね。
「ご高説、ありがとう」

分かり易く譬えれば“駆け込み乗車”を認めろってことになるのかな。電車のドアが閉まりかけて、みんな危険だからドアの前で立ち止まったのに、後ろの方からダッシュして来た奴が一人だけ飛び乗ったようなもんか。

泊「みんな止まったからいけないんだよ。オレはずっと階段の所から走り続けて、止まらずに駆け込んだんだ」

天才バカボンパパ「自慢するんじゃないよ! 泊さん、そういうのが一番危険なんだよ!」


話は突然変り、ここは、経産省附属原発中学校。
1時間目の理科の授業が終わった。泊君だけは、休憩時間も理科の勉強をしている。2時間目の国語の授業が始まった。日の丸不起立の国語の教師が、泊君を指名した。

国語の教師「泊君、34ページの『黒い雨』を読んでみて…」

泊「水素と酸素が化合して水ができるときの化学反応式は…」

国語の教師「あのね、泊君、理科はもう終わったの。休憩時間が終わって、授業が再開したら2時間目、国語でしょ!」

泊「先生! 僕は休憩していません。再開じゃないですから僕だけは理科なんです。科学技術は永遠に不滅です!」

玄海「泊! お前だけ、エエカッコすんな! 長嶋の真似かよ。巨人軍の不敗神話も、なんとかの安全神話もウソばっかだよ。オレだって国語は嫌いだけど、やらせメールがバレて職員室で立たされてたんだからな…メール書くのにも国語力が要るんだぜ」

大飯「オレだって下腹が緊急冷却で下痢しちまってよ、学校中、トイレ探し回ったんだけど、この学校、トイレが無いんだ、よくよく考えてみりゃあよ…。六ヶ所村の便所まで行ってられないじゃん。ウンコしたら尻拭けって言うけど、ウンコができないんだぜ。廃棄物をどこに捨てるんだよ、ホント!」

国語の教師「八月六日ー 朝五時半、能島さんのトラックが来て、疎開荷物を運ぶ。古江町で閃光と轟音。広島市街に噴火のような黒煙」(『黒い雨』井伏鱒二)



朝日新聞は「泊再開は認められない」と言えなくて(言う気がなくて)、経済産業省に寄り添って“再開合理化”の屁理屈解説と自己弁護に努めているわけです。

屁が理屈を言うようになったらお終いだよと朝日に言ってやりましょう。“朝日は、つまり屁だ”と自己告白しているんですから…。権力に対して、屁の突っ張りにすらならないジャーナリズムは“朝屁新聞”と改名した方がいい。


高濃度汚染コント

2011-07-02 07:00:01 | コメディ
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1744816506&owner_id=14249195

☆父と娘の会話

◎循環注水冷却、トラブル続く

桃尻娘「循環注水冷却って何よ? 壊れてバッカじゃん」

天才バカボンパパ「注水、漏水を繰り返してるやろ。ちゃんと循環しとる」

桃尻娘「そういう意味とちゃうやろ! 肝心の冷却は?」

天才バカボンパパ「なんでも冷却期間が要るんや!」

桃尻娘「アホッ! 夫婦喧嘩の話とちゃうわ! 原発の話や!」

天才バカボンパパ「一緒やないか! 原発も結婚も、と~に安全神話は崩壊しとんじゃ! お前も結婚に幻想を持つな」

桃尻娘「……」


◎玄海原発再開容認

桃尻娘「玄海原発の安全性の確認がクリアできたて、どういうことやねん、ホンマ!」

天才バカボンパパ「海江田が、国が責任を持つって言うたやろ。私が責任持ちますとは口が裂けても言えんしな。地面はすぐに裂けるけど…」

桃尻娘「ウチら、国なんか信用してへんで」

天才バカボンパパ「お前もカシコなったな。さすがワシの娘や。世の中で一番信用ならんのが国や。死んだお祖父ちゃんが言うとった。国とユッケは信用すんなって」

桃尻娘「そんなんやったら危険やんか!?」

天才バカボン「そうなのだ! 危険を承知でやってまうから、できちゃった婚になんねん。お前も安全性の確認を厳密にクリアせ~よ。日本のコンドーム技術を過信するな、娘よ!」

桃尻娘「……」


◎節電キャンペーン

桃尻娘「節電キャンペーン、メッチャ、ムカつく!」

天才バカボンパパ「お前、最近ようムカつくな…。ツワリか?」

桃尻娘「ブチ殺すぞッ!」

天才バカボンパパ「中絶は止めなさい。産んで何とか育てよ」

桃尻娘「シバクゾッ!」

天才バカボンパパ「もっとシバイてッ!」

桃尻娘「キショ!!」

天才バカボンパパ「節電キャンペーンは、止まってる原発を再開せな、電気が足りなくなるよって巧妙なマインドコントロールをかけとんのや」

桃尻娘「たまにはマトモなこと言うやん」

天才バカボンパパ「そらイントロやもん」

桃尻娘「イントロ・クイズかッ! それも言うならインテリ! 京大の小出さんが、過去の最大電力需要を見ても、火力と水力の合計以上になったことはないって書いてた」

天才バカボンパパ「その人もインテルやな」

桃尻娘「インテルはパソコン!」

天才バカボンパパ「7月24日が地デジ移行やろ。戦後の民間テレビ放送と原発は、快適モダンライフを支える車の両輪として、讀賣の正力松太郎によって推進されたんや。もう、テレビも原発も終わりにせなあかん。テレビと原発の断末魔の声を聴けッ!」

桃尻娘「アレッ! ホンマにインテリや…。節電キャンペーンを垂れ流すテレビも新聞も腐ってるわ」

天才バカボンパパ「うちの冷蔵庫の中のもんも腐ってるで」

桃尻娘「冷蔵庫の電気切ったんか!?」

天才バカボンパパ「ピンポ~ン!…節電キャンペーンに負けてしもた…。貧しさに~負けた~ 表に打ち水して来るわ」

桃尻娘「逃げんのかッ!」

天才バカボンパパ「スダレとウチワ買うてこ」

桃尻娘「スダレは頭だけにしとけッ! ステテコで表へ行くなッ!!」

天才バカボンパパ「国が責任を持つクールビズや」

桃尻娘「もう親子の縁切るぞッ! コラッ! 勝手にテレビ切るなッ!!」

命がけの映画

2011-01-29 03:00:38 | コメディ
◎父と娘の会話

桃尻夢子「アバター、見た?」

夢小路屁之丸「あのサンデーとかいうのんか?」

夢子「サンディは日曜日。3D(スリーディ)やろ! オッサン!」

屁之丸「誰がオッサンや! お父上と言え! ただの飛び出す映画やろ。そんなもん昔からあるわ」

夢子「何をボケとんねん。これからは映画もテレビも3Dの時代や」

屁之丸「アホか! 立体映画やろが。オレの子どもの頃からあるちゅうてんねん」

夢子「ウッソー! マジ!?」

屁之丸「シネラマちゅうのがあったんや」

夢子「なんやのん、それ?」

屁之丸「お前のお祖父ちゃんが言うとった。シネラマちゅう凄い映画がある。画面から飛び出してくるんや。列車が客席に向かって走ってくる。西部劇でガンマンがピストルをこっちへ撃ったら、弾が客席へ向かって飛んでくるさかい、お客さんは弾をよけながら映画を観てるって…命がけの映画や」

夢子「ウッソー! マジ!?」

屁之丸「ウソや。お祖父ちゃんは他人から話を聞いただけで、実際に観たことなかった」

夢子「なんやねん!」

屁之丸「しかし、まんざらウソやない。お父さんはホンマに観に行った。初めて行ったのは大阪梅田のOS劇場。シネラマ直営館やな。日本に2館しかなかった。やってたのは『西部開拓史』や。弾はこっちに飛んでこんかったけど、スクリーンが恐ろしくでっかくてカーブしてる。立体的に見えるんや。3台のカメラで撮影して、3台の映写機で映す。せやから、よう見たら映像は3つに分かれてて、縦に2本の線が入ってる。つまり継ぎ目があるんや。そんだけ横長の映像がカーブしてて立体的に見えるわけ」

夢子「なんやよう分からんわ。それで、そのシネラマはどうなったん?」

屁之丸「消えてしもた。制作にごっつい金がかかり過ぎる。それに、上映するのにでっかい専用の映画館がいる。スクリーンが馬鹿デカイから劇場も大きい。客席も広い。年に2本くらい作ってても、客席が埋まらん。それに大型スクリーンやったら、70ミリいうのができたからな」

夢子「今は、デジタル時代や。そんな大層に金をかけんでも、メガネかけるだけでええねん」

屁之丸「メガネかける立体映画も、昔あったがな」

夢子「ウッソー! マジ!?」

屁之丸「お前、それしか言えんのか。片一方は赤、片一方は青のセロファン紙貼ったメガネをかけて見るんや。一時の流行りで、すぐ廃れた。人間が考えることって、その程度のことや。まったく新しいもんなんて、そうそうできるもんやない。なんか目新しいことしようと考えて、昔流行ったことの焼き直しをする。ただ技術が発達しただけ。新しい技術を使って、二番煎じ、三番煎じをやってるだけ。技術は目くらまし。内容は度外視。技術のゴマカシで、新たな欲望を喚起する。つまり、消費欲やな。欲望肥大化社会のやりそうなことや」

夢子「そうかな~」

屁之丸「3D見たら、眼が疲れるからいうて、3D用目薬いうのも、もうすぐ発売されるやろ。商売、商売! やることミエミエですわ。みんな物珍しがって騒いでるだけ。見世物や」

夢子「なんやそれ?」

屁之丸「見世物小屋や。歴史を勉強しなさい」

夢子「説教かい!」

屁之丸「歴史を知らんかったら、騙されて踊らされるの」

夢子「せやけど、内容も面白かったで」

屁之丸「立体映画のアバターは、アバタもえくぼなの」

夢子「なんやそれ?」

屁之丸「辞書引きなさい」

夢子「ウットー! もうええわ。レンタルビデオ屋へ行ってこう」

屁之丸「ウッディ・アレンの『カイロの紫のバラ』でも借りといで。俳優がスクリーンから歩いて出て来るから。これがホンマの立体映画や。俳優と観客が双方向で会話すんねん。これこそデジタルや。技術で誤魔化すのとちゃう。夢と人生の現実との乖離を描いた秀作や。小手先で観客の心を揺さぶる映画が作れるか(ぼやいている)」

夢子は、もう飛び出して行っていない。

   END