◎シェアードサービスの定義
シェアードサービスとは、グループ経営の視点から、社内またはグループ企業内
で分散して行われている業務(経理や人事などの間接業務である場合が多い)を、
①ある本社または子会社に集中し
②それが本当に必要な業務であるのか、または効率的なプロセスで行われている
のか、という視点から業務の見直しを行い、さらに
③業務を標準化して処理を行う
というマネジメントの手法である。
◎シェアードサービスセンターの基本的形態
(1)タイプA 本社の一部門に業務を集中する形態
・導入事例
宇部興産(総合事務センター)、大阪ガス(経理税務センター)、サントリ
ー(グループ業務推進部)、サッポロビールHD(ビジネスサポート統括
部)、東京ガス(ビジネスサポート本部)、日清製粉グループ本社(人事給
与事務センター)など
・本社部門方式の3つの課題
①標準化・コスト削減・納期管理などの徹底的な改革が難しい
従来の業務形態を引きずる、費用予算さえ守ればいいという意識が生まれ
がち、利益以外の目標が必要
②SSCの業績測定の困難さ
コスト集計が困難、業績評価指標選択が限定される
SSCをセグメントとした内部計算を活動基準原価計算(ABC)やチャ
ージバックシステムを利用して行う必要がある
③グループ企業によるSSCへの業務依頼の拒絶の可能性
各社のデータがグループ本社に直接流れることを警戒
・本社部門方式のSSCのサービスの提供先と価格設定方針
①本社内の事業部へのサービスの提供
○取引価格を設定しない場合
人数、面積等の配賦基準により各事業部へ配賦
○取引価格を設定する場合
チャージバックシステムにより、本社管理部門の提供するサービスを、
対内的にも有料化して社内のサービス利用部門に料金を課する。コスト
センターにするときはSSCで発生するコストで、プロフィットセンタ
ーにするときは利益を付加して課金する。
②グループ会社へのサービス提供
○コスト回収的に取引価格を決定するケース
グループ会社への展開のために、各社に必要以上のコストを負担させな
いというのも重要な理由
○利益計上目的で価格を設定する方法
a:SSCで発生するコストに利益を加算して価格を決定する
b:市場価格を参考にして価格を決定する
c:シェアードサービス導入前にグループ会社で発生していたコストを
取引価格とする
※グループ会社のシェアードサービスへの促進を意図
③グループ外部の企業へのサービスの提供
○利益計上目的で価格を設定する
グループ外部から業務を受託する場合には本社部門でSSCを運営する
ケースは少ない。子会社を設立して、プロフィットセンターとしてSS
Cを運営するほうが自然。
・本社部門方式のSSCのプロフィットセンター化の4つの効果
①SSCの業務改善の促進
利益に関した指標は、よりよい数値を獲得しようという積極的なインセン
ティブを従業員に与えやすい。
②サービス利用部門への影響
本当に必要なサービスのみ依頼するようサービス部門の行動をコントロー
ルできる。カスタマイズされたサービスやイレギュラーな処理に高い価格
や追加料金等が付されていれば、標準化されているが安価なサービスに説
得力が増し、SSCでの業務の見直しや業務の標準化が促進される。
③責任会計上の位置づけの統一
対社内と対社外での価格政策の不一致を是正し、対社内的な取引を行って
いる部分をコストセンターからプロフィットセンターへ変更できる。
④子会社方式のSSC(タイプB)への移行のシミュレーション
・チャージバックシステムの課題
①チャージバックシステムを導入する本社部門の全員が会計業務に精通して
いるわけではなく、手法を理解して使いこなすまで導入推進部門による指
導と援助が必要
②現金のやりとりは生じないが、本社部門と事業部の取引になるので、見積
書の作成、請求書の作成、振替の会計上の手間が意外と大きい
③事業部の収益性が悪化すると、教育研修などの必要なサービスであって
も、本社部門のサービスを受けなくなる可能性があるので、それを防止す
る必要がある
上記のような課題はあるが、チャージバックシステムは本社SSCのもつ課題
を解決するのに有効。活動基準原価計算と融合させた業績評価の構築が必要。
(2)タイプB 子会社に業務を集中する形態
・導入事例
アサヒマネジメントサービス(アサヒビール)、NTTビジネスアソシエ
(NTT)、TDGビジネスサポート(東北電力)、コクヨビジネスサービ
ス(コクヨ)、コニカミノルタビジネスエキスパート(コニカミノルタH
D)、JPビジネスサービス(電源開発)、住金物産ビジネスサポート(住
金物産)、住友商事フィナンシャルマネジメント(住友商事)、帝人クリエ
イティブスタッフ(帝人)、ダイキンヒューマンサポート(ダイキン工
業)、ダイヘンビジネスサービス(ダイヘン)、ニチレイプロサーヴ(ニチ
レイ)、パイオニアシェアードサービス(パイオニア)、マルハヒューマン
アシスト(マルハグループ本社)、ミツカンビジテック(ミツカン)、明治
ビジネスサポート(明治製菓)など
・シェアードサービス子会社の一般的な特長
①SSCの業績を明確にできる
より詳細に業績を測定するためには、シェアードサービス子会社全体の業
績(特に損益計算書)を、顧客別や活動別にブレークダウンしてより詳細
な原価管理・収益管理を行うことが望ましい。
②従業員の意識改革によりコスト低減と業務品質の向上が達成できる
サービスを受益するグループ内の企業も、提供されるサービスに対価を支
払うことから、自社内で処理したときよりもサービスのコストパフォーマ
ンスに対して敏感になる。その結果、価格以下のコストで業務を実施しよ
うとか、顧客を満足させる品質の業務をしようといったインセンティブを
SSCの構成員が持つことになる。
③従業員の意識改革により内部顧客に対する対応が改善される
サービス提供先の子会社と同じ立場になるので、親会社という高い立場か
らの指導ではなく、低姿勢となる。
④給与総額を引き下げられる
親会社からシェアードサービス子会社に従業員を転籍させることにより、
子会社の水準まで給与レベルを引き下げる。退職者の補充をせずに従業員
の自然減により給与総額を引き下げたり、補充をしても給与の安いプロパ
ー社員の採用や派遣社員を利用したりすることで、人件費を抑制すること
ができる。ただし、引き下げのタイミングや金額によっては従業員がモラ
ールを喪失し、業務品質が低下する恐れがあるので注意が必要。
⑤内部統制強化に対する拒絶反応を緩和できる
⑥グループ本社をスリム化できる
・シェアードサービス子会社の一般的な課題
①会社を存続させるために利益を獲得しなければならない
利益を獲得するためにコストを削減しつつ業務品質も向上させねばなら
ず、トレード・オフの関係にある両者を両立させることが求められる。
②初期投資が多額である
登記費用やシステム変更のための費用など。既存の子会社からの転換の方
が現金支出額を低く抑えられる。
人員を異動させるための追加的な作業時間など、他の仕事を犠牲にする機
会費用も生じる。キャリアパスの設計なども含めて追加的な仕事量が多く
なる。
③従業員のモラールの低下
グループ企業との上下関係の発生、将来のキャリアに対する不安(親会社
とのローテーションの確立・キャリアパスの提示が必要)、特に外販をし
た場合の過重な業務の継続による疲弊など。バランス・スコアカードの活
用により従業員に目標を持たせることも解決策の1つ。
④グループ会社との間のコンフリクト
グループ会社のコスト削減要求とシェアードサービス子会社の利益獲得目
的との相反
※シェアードサービスに関するビジョンを明確にするなどグループ本社の
トップマネジメントの役割が重要。
※シェアードサービス子会社のコストセンター化、サービス受益部門への
価値の提供という観点からの評価、シェアードサービス子会社による業
務の外販、非財務的尺度の利用、バランス・スコアカードの利用などシ
ェアードサービス子会社側から自社の役割や貢献をアピールすることも
大事。
(3)タイプC 企業グループが異なる数社が業務を集中する形態
・導入事例
日立トリプルウィン(日立系上場7社)、人事サービス・コンサルティング
(住友信託銀行、松下電器産業、花王)など
・タイプCの形態の一般的な特徴
①規模の経済の追求
②参加企業間で上下関係が存在しないこと
③参加企業間では対象となる間接業務についての競争は行われないこと
・タイプCを成功させるためのポイント
計画から実行にいたる事前のプロセスを以下の3段階にわけ、企業内および
企業グループ間の意思の疎通を各プロセスで時間をかけて十分にとることが
成功への条件
①参加企業内でシェアードサービスに関する共通の認識を構築するプロセス
②参加企業間でシェアードサービスに関する共通の認識を構築するプロセス
③参加企業間で具体的な業務の実施方法を決定するプロセス
・タイプCのメリット
①より大規模な経済のメリット
②ベンチマーキング効果
③業績評価の動機づけが強い
◎シェアードサービスの目的
(1)会計上の目的
①コスト削減目的
②利益獲得目的
グループ内部の取引関係に留まっている限り、その目的はコスト削減。(利
益獲得は「外販」ありき)
(2)会計以外の目的
①顧客満足度の向上
②連結財務諸表作成のスピードアップ
③教育研修の効率化
④間接業務の品質向上
⑤内部統制の強化
⑥間接部門従業員の意識改革など
◎シェアードサービスの基本的な3つの特徴
(1)業務の集中化
・業務の集中化の効果
①重複した人や設備などの経営資源の削減
②業務1単位あたりの固定費の低下
③大量購買による単価の低下
④教育研修効果の向上
⑤内部統制の強化
・業務集中化のプロセス
第1段階:グループ本社の業務をSSCに移行する
第2段階:特定のグループ会社の業務をSSCに移行する
※規模が大きいグループ会社
※SSCに地理的に近いグループ会社など
第3段階:残ったグループ会社の業務を順次SSCに移行する
・一般に複数の間接機能をひとつのSSCに集約すると、それだけ規模は大き
くなり、SSCの組織がいくつかの機能から構成されることとなる。その場
合以下のような課題が生じる可能性がある。
①組織を統括する管理コストが増大し、新たな間接コストが発生する
②間接機能ごとに組織文化が異なるので、SSCが異なる組織文化を持つ組
織の集合体になり、組織としての求心力がなくなる
・業務の集約化の例外事項
①すべてのグループ会社がSSCに業務を委託するわけではない
集約効果のない規模の小さい会社(従業員が他の業務を兼務)、独立性の
高い上場企業、制度や言語の異なる海外企業など
②シェアードサービス化した間接機能についても、すべての領域をSSCに
委託するのではなく、グループ会社に残す部分が存在する
通常はグループ会社には戦略的な機能または意思決定にかかわる機能を残
し、SSCには標準化になじむオペレーショなるな機能を委託する
③SSCに委託する業務についても、SSCが処理プロセスのすべてを実施
するわけではない
多くの企業では取引が生じた場所(すなわちグループ会社)でデータ入力
を行い、SSCではそのデータに基づいて、データの信頼性をチェックし
た後に財務諸表を作成している。
④一部のSSCでは地理的に分散した場所で処理が行われている
一極集中化するよりも各地域の現場で実施した方が効率的な業務が相当量
存在する場合や地方勤務社員の異動の困難さ、雇用形態を変える目的等に
よる
(2)業務の見直し
・業務の見直しの2つの視点
①本当に必要な業務か
例)○慣習として作成されているが誰も利用しない書類の作成を廃止する。
○稟議書を不必要なほど多くの上司に回覧しない
○無駄な支出(不必要な手当など)の見直し
○定期券の現物支給をやめ各自が自分で定期券を購入する
○給与明細の配付を中止しグループ内Web上での閲覧に変更する
○届出内容の複数回のチェックを1回にする
②効率的なプロセスで行われているか
例)○出張経費などの現金による仮払いを廃止し口座振込に変更する
○支払給与の計算期間を月次に変更し、原価計算での調整計算をなくす
○届出書類の書式を社内Web上で提出できるようにし、記入方法に
ついてのナビゲーションを充実する
○現場での入力と承認
・業務見直しのための3つの手法
①活動基準管理(ABM)
○活動分析 → コストドライバー分析 → 業績分析
○プロセスや製品を改善することで活動を実行するための時間と努力を削
減する、不必要な活動を排除する、低コストの活動を選択する、可能で
あれば活動を共有する、未使用の資源を移動する、という視点から業務
の見直しが実施される
②リエンジニアリング
コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマ
ンス基準を劇的に改善するために、ビジネス・プロセスを根本的に考え直
し、根本的にそれをデザインし直すこと
③ベンチマーキング
内部のサービスコストを外部のプロバイダー又は業界最高水準の企業と比
較すること
・Claricaの事例
①業務の見直しをするだけであれば、活動ごとにコストを集計しなくても、
活動の分析をするだけである程度の成果を得ることができる。
②業務の見直しでは、非付加価値活動を廃止したり縮小したりするだけでは
なく、必要な業務についてはより工数やコストをかけても業務品質を向上
すべきである。
(3)業務の標準化
・間接業務の標準化は、業務品質の向上に大きく貢献。業務の標準化により、
SSCでの作業時間やミスも減少する。
・シェアードサービスは、有形財の大量生産で用いられる標準化という管理手
法を、間接業務に応用したマネジメント手法。
・業務の標準化の一般的な事例
○書式が異なる書類を同じ内容で統一された書式に変更する
○科目・細目コード・取引先などのコード体系の統一
○帳票の統一
○通勤交通費の支給月の統一、支払期間を半年に統一
○社会保険の一括適用
○給与振込元受銀行の一元化
○異動届のワークシート化
○給与の支給日・退職金支払日の統一(業務が集中するため、あえて統一し
なかった事例もあり)
○期間外手当の計算方法の統一
○給与体系の統一(実際には難しいため、複数の給与体系に対応できるシス
テムを整備する等の事例もあり)
◎シェアードサービスセンターのコスト計算(①→④へ詳細化)
①SSCで発生するコストを発生形態により区分した費目別に集計して合計額を
計算。SSC経費明細書を作成して予算管理を行う。
②SSCで発生するコストを顧客別に計算。顧客別の作業効率や収益性を把握で
きる。
③SSCに集計したコストを、ABCによりそこで行われている活動(メニュ
ー)ごとに計算。作業効率が悪い活動が明らかになり、適正な価格設定を行う
ことができる。非付加価値活動を発見して排除することで、業務の見直しに役
立てることができる。
④SSCに集計したコストを、顧客別の活動別に計算。
シェアードサービスとは、グループ経営の視点から、社内またはグループ企業内
で分散して行われている業務(経理や人事などの間接業務である場合が多い)を、
①ある本社または子会社に集中し
②それが本当に必要な業務であるのか、または効率的なプロセスで行われている
のか、という視点から業務の見直しを行い、さらに
③業務を標準化して処理を行う
というマネジメントの手法である。
◎シェアードサービスセンターの基本的形態
(1)タイプA 本社の一部門に業務を集中する形態
・導入事例
宇部興産(総合事務センター)、大阪ガス(経理税務センター)、サントリ
ー(グループ業務推進部)、サッポロビールHD(ビジネスサポート統括
部)、東京ガス(ビジネスサポート本部)、日清製粉グループ本社(人事給
与事務センター)など
・本社部門方式の3つの課題
①標準化・コスト削減・納期管理などの徹底的な改革が難しい
従来の業務形態を引きずる、費用予算さえ守ればいいという意識が生まれ
がち、利益以外の目標が必要
②SSCの業績測定の困難さ
コスト集計が困難、業績評価指標選択が限定される
SSCをセグメントとした内部計算を活動基準原価計算(ABC)やチャ
ージバックシステムを利用して行う必要がある
③グループ企業によるSSCへの業務依頼の拒絶の可能性
各社のデータがグループ本社に直接流れることを警戒
・本社部門方式のSSCのサービスの提供先と価格設定方針
①本社内の事業部へのサービスの提供
○取引価格を設定しない場合
人数、面積等の配賦基準により各事業部へ配賦
○取引価格を設定する場合
チャージバックシステムにより、本社管理部門の提供するサービスを、
対内的にも有料化して社内のサービス利用部門に料金を課する。コスト
センターにするときはSSCで発生するコストで、プロフィットセンタ
ーにするときは利益を付加して課金する。
②グループ会社へのサービス提供
○コスト回収的に取引価格を決定するケース
グループ会社への展開のために、各社に必要以上のコストを負担させな
いというのも重要な理由
○利益計上目的で価格を設定する方法
a:SSCで発生するコストに利益を加算して価格を決定する
b:市場価格を参考にして価格を決定する
c:シェアードサービス導入前にグループ会社で発生していたコストを
取引価格とする
※グループ会社のシェアードサービスへの促進を意図
③グループ外部の企業へのサービスの提供
○利益計上目的で価格を設定する
グループ外部から業務を受託する場合には本社部門でSSCを運営する
ケースは少ない。子会社を設立して、プロフィットセンターとしてSS
Cを運営するほうが自然。
・本社部門方式のSSCのプロフィットセンター化の4つの効果
①SSCの業務改善の促進
利益に関した指標は、よりよい数値を獲得しようという積極的なインセン
ティブを従業員に与えやすい。
②サービス利用部門への影響
本当に必要なサービスのみ依頼するようサービス部門の行動をコントロー
ルできる。カスタマイズされたサービスやイレギュラーな処理に高い価格
や追加料金等が付されていれば、標準化されているが安価なサービスに説
得力が増し、SSCでの業務の見直しや業務の標準化が促進される。
③責任会計上の位置づけの統一
対社内と対社外での価格政策の不一致を是正し、対社内的な取引を行って
いる部分をコストセンターからプロフィットセンターへ変更できる。
④子会社方式のSSC(タイプB)への移行のシミュレーション
・チャージバックシステムの課題
①チャージバックシステムを導入する本社部門の全員が会計業務に精通して
いるわけではなく、手法を理解して使いこなすまで導入推進部門による指
導と援助が必要
②現金のやりとりは生じないが、本社部門と事業部の取引になるので、見積
書の作成、請求書の作成、振替の会計上の手間が意外と大きい
③事業部の収益性が悪化すると、教育研修などの必要なサービスであって
も、本社部門のサービスを受けなくなる可能性があるので、それを防止す
る必要がある
上記のような課題はあるが、チャージバックシステムは本社SSCのもつ課題
を解決するのに有効。活動基準原価計算と融合させた業績評価の構築が必要。
(2)タイプB 子会社に業務を集中する形態
・導入事例
アサヒマネジメントサービス(アサヒビール)、NTTビジネスアソシエ
(NTT)、TDGビジネスサポート(東北電力)、コクヨビジネスサービ
ス(コクヨ)、コニカミノルタビジネスエキスパート(コニカミノルタH
D)、JPビジネスサービス(電源開発)、住金物産ビジネスサポート(住
金物産)、住友商事フィナンシャルマネジメント(住友商事)、帝人クリエ
イティブスタッフ(帝人)、ダイキンヒューマンサポート(ダイキン工
業)、ダイヘンビジネスサービス(ダイヘン)、ニチレイプロサーヴ(ニチ
レイ)、パイオニアシェアードサービス(パイオニア)、マルハヒューマン
アシスト(マルハグループ本社)、ミツカンビジテック(ミツカン)、明治
ビジネスサポート(明治製菓)など
・シェアードサービス子会社の一般的な特長
①SSCの業績を明確にできる
より詳細に業績を測定するためには、シェアードサービス子会社全体の業
績(特に損益計算書)を、顧客別や活動別にブレークダウンしてより詳細
な原価管理・収益管理を行うことが望ましい。
②従業員の意識改革によりコスト低減と業務品質の向上が達成できる
サービスを受益するグループ内の企業も、提供されるサービスに対価を支
払うことから、自社内で処理したときよりもサービスのコストパフォーマ
ンスに対して敏感になる。その結果、価格以下のコストで業務を実施しよ
うとか、顧客を満足させる品質の業務をしようといったインセンティブを
SSCの構成員が持つことになる。
③従業員の意識改革により内部顧客に対する対応が改善される
サービス提供先の子会社と同じ立場になるので、親会社という高い立場か
らの指導ではなく、低姿勢となる。
④給与総額を引き下げられる
親会社からシェアードサービス子会社に従業員を転籍させることにより、
子会社の水準まで給与レベルを引き下げる。退職者の補充をせずに従業員
の自然減により給与総額を引き下げたり、補充をしても給与の安いプロパ
ー社員の採用や派遣社員を利用したりすることで、人件費を抑制すること
ができる。ただし、引き下げのタイミングや金額によっては従業員がモラ
ールを喪失し、業務品質が低下する恐れがあるので注意が必要。
⑤内部統制強化に対する拒絶反応を緩和できる
⑥グループ本社をスリム化できる
・シェアードサービス子会社の一般的な課題
①会社を存続させるために利益を獲得しなければならない
利益を獲得するためにコストを削減しつつ業務品質も向上させねばなら
ず、トレード・オフの関係にある両者を両立させることが求められる。
②初期投資が多額である
登記費用やシステム変更のための費用など。既存の子会社からの転換の方
が現金支出額を低く抑えられる。
人員を異動させるための追加的な作業時間など、他の仕事を犠牲にする機
会費用も生じる。キャリアパスの設計なども含めて追加的な仕事量が多く
なる。
③従業員のモラールの低下
グループ企業との上下関係の発生、将来のキャリアに対する不安(親会社
とのローテーションの確立・キャリアパスの提示が必要)、特に外販をし
た場合の過重な業務の継続による疲弊など。バランス・スコアカードの活
用により従業員に目標を持たせることも解決策の1つ。
④グループ会社との間のコンフリクト
グループ会社のコスト削減要求とシェアードサービス子会社の利益獲得目
的との相反
※シェアードサービスに関するビジョンを明確にするなどグループ本社の
トップマネジメントの役割が重要。
※シェアードサービス子会社のコストセンター化、サービス受益部門への
価値の提供という観点からの評価、シェアードサービス子会社による業
務の外販、非財務的尺度の利用、バランス・スコアカードの利用などシ
ェアードサービス子会社側から自社の役割や貢献をアピールすることも
大事。
(3)タイプC 企業グループが異なる数社が業務を集中する形態
・導入事例
日立トリプルウィン(日立系上場7社)、人事サービス・コンサルティング
(住友信託銀行、松下電器産業、花王)など
・タイプCの形態の一般的な特徴
①規模の経済の追求
②参加企業間で上下関係が存在しないこと
③参加企業間では対象となる間接業務についての競争は行われないこと
・タイプCを成功させるためのポイント
計画から実行にいたる事前のプロセスを以下の3段階にわけ、企業内および
企業グループ間の意思の疎通を各プロセスで時間をかけて十分にとることが
成功への条件
①参加企業内でシェアードサービスに関する共通の認識を構築するプロセス
②参加企業間でシェアードサービスに関する共通の認識を構築するプロセス
③参加企業間で具体的な業務の実施方法を決定するプロセス
・タイプCのメリット
①より大規模な経済のメリット
②ベンチマーキング効果
③業績評価の動機づけが強い
◎シェアードサービスの目的
(1)会計上の目的
①コスト削減目的
②利益獲得目的
グループ内部の取引関係に留まっている限り、その目的はコスト削減。(利
益獲得は「外販」ありき)
(2)会計以外の目的
①顧客満足度の向上
②連結財務諸表作成のスピードアップ
③教育研修の効率化
④間接業務の品質向上
⑤内部統制の強化
⑥間接部門従業員の意識改革など
◎シェアードサービスの基本的な3つの特徴
(1)業務の集中化
・業務の集中化の効果
①重複した人や設備などの経営資源の削減
②業務1単位あたりの固定費の低下
③大量購買による単価の低下
④教育研修効果の向上
⑤内部統制の強化
・業務集中化のプロセス
第1段階:グループ本社の業務をSSCに移行する
第2段階:特定のグループ会社の業務をSSCに移行する
※規模が大きいグループ会社
※SSCに地理的に近いグループ会社など
第3段階:残ったグループ会社の業務を順次SSCに移行する
・一般に複数の間接機能をひとつのSSCに集約すると、それだけ規模は大き
くなり、SSCの組織がいくつかの機能から構成されることとなる。その場
合以下のような課題が生じる可能性がある。
①組織を統括する管理コストが増大し、新たな間接コストが発生する
②間接機能ごとに組織文化が異なるので、SSCが異なる組織文化を持つ組
織の集合体になり、組織としての求心力がなくなる
・業務の集約化の例外事項
①すべてのグループ会社がSSCに業務を委託するわけではない
集約効果のない規模の小さい会社(従業員が他の業務を兼務)、独立性の
高い上場企業、制度や言語の異なる海外企業など
②シェアードサービス化した間接機能についても、すべての領域をSSCに
委託するのではなく、グループ会社に残す部分が存在する
通常はグループ会社には戦略的な機能または意思決定にかかわる機能を残
し、SSCには標準化になじむオペレーショなるな機能を委託する
③SSCに委託する業務についても、SSCが処理プロセスのすべてを実施
するわけではない
多くの企業では取引が生じた場所(すなわちグループ会社)でデータ入力
を行い、SSCではそのデータに基づいて、データの信頼性をチェックし
た後に財務諸表を作成している。
④一部のSSCでは地理的に分散した場所で処理が行われている
一極集中化するよりも各地域の現場で実施した方が効率的な業務が相当量
存在する場合や地方勤務社員の異動の困難さ、雇用形態を変える目的等に
よる
(2)業務の見直し
・業務の見直しの2つの視点
①本当に必要な業務か
例)○慣習として作成されているが誰も利用しない書類の作成を廃止する。
○稟議書を不必要なほど多くの上司に回覧しない
○無駄な支出(不必要な手当など)の見直し
○定期券の現物支給をやめ各自が自分で定期券を購入する
○給与明細の配付を中止しグループ内Web上での閲覧に変更する
○届出内容の複数回のチェックを1回にする
②効率的なプロセスで行われているか
例)○出張経費などの現金による仮払いを廃止し口座振込に変更する
○支払給与の計算期間を月次に変更し、原価計算での調整計算をなくす
○届出書類の書式を社内Web上で提出できるようにし、記入方法に
ついてのナビゲーションを充実する
○現場での入力と承認
・業務見直しのための3つの手法
①活動基準管理(ABM)
○活動分析 → コストドライバー分析 → 業績分析
○プロセスや製品を改善することで活動を実行するための時間と努力を削
減する、不必要な活動を排除する、低コストの活動を選択する、可能で
あれば活動を共有する、未使用の資源を移動する、という視点から業務
の見直しが実施される
②リエンジニアリング
コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマ
ンス基準を劇的に改善するために、ビジネス・プロセスを根本的に考え直
し、根本的にそれをデザインし直すこと
③ベンチマーキング
内部のサービスコストを外部のプロバイダー又は業界最高水準の企業と比
較すること
・Claricaの事例
①業務の見直しをするだけであれば、活動ごとにコストを集計しなくても、
活動の分析をするだけである程度の成果を得ることができる。
②業務の見直しでは、非付加価値活動を廃止したり縮小したりするだけでは
なく、必要な業務についてはより工数やコストをかけても業務品質を向上
すべきである。
(3)業務の標準化
・間接業務の標準化は、業務品質の向上に大きく貢献。業務の標準化により、
SSCでの作業時間やミスも減少する。
・シェアードサービスは、有形財の大量生産で用いられる標準化という管理手
法を、間接業務に応用したマネジメント手法。
・業務の標準化の一般的な事例
○書式が異なる書類を同じ内容で統一された書式に変更する
○科目・細目コード・取引先などのコード体系の統一
○帳票の統一
○通勤交通費の支給月の統一、支払期間を半年に統一
○社会保険の一括適用
○給与振込元受銀行の一元化
○異動届のワークシート化
○給与の支給日・退職金支払日の統一(業務が集中するため、あえて統一し
なかった事例もあり)
○期間外手当の計算方法の統一
○給与体系の統一(実際には難しいため、複数の給与体系に対応できるシス
テムを整備する等の事例もあり)
◎シェアードサービスセンターのコスト計算(①→④へ詳細化)
①SSCで発生するコストを発生形態により区分した費目別に集計して合計額を
計算。SSC経費明細書を作成して予算管理を行う。
②SSCで発生するコストを顧客別に計算。顧客別の作業効率や収益性を把握で
きる。
③SSCに集計したコストを、ABCによりそこで行われている活動(メニュ
ー)ごとに計算。作業効率が悪い活動が明らかになり、適正な価格設定を行う
ことができる。非付加価値活動を発見して排除することで、業務の見直しに役
立てることができる。
④SSCに集計したコストを、顧客別の活動別に計算。