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ブルー・オーシャン戦略(W・チャン・キム+レネ・モボルニュ著)

2009-03-29 20:51:04 | 経営
◎戦略の比較:レッド・オーシャンとブルー・オーシャン
 ○レッド・オーシャン戦略
  ・既存の市場空間で競争する
  ・競合他社を打ち負かす
  ・既存の需要を引き寄せる
  ・価値とコストのあいだにトレードオフの関係が生まれる
  ・差別化、低コスト、どちらかの戦略を選んで、企業活動すべてをそれにあわ
   せる

 ○ブルー・オーシャン戦略
  ・競争のない市場空間を切り開く
  ・競争を無意味なものにする
  ・新しい需要を掘り起こす
  ・価値を高めながらコストを押し下げる
  ・差別化と低コストをともに追求し、その目的のためにすべての企業活動を推
   進する


◎ブルー・オーシャン戦略の6原則
 ○算定の原則
  ①市場の境界を引き直す     (↓探索リスク)
   ・代替材や代替サービスを提供する業界に注目する
   ・業界内のほかの戦略グループから学ぶ
   ・業界の買い手グループを定義しなおす
   ・業界の枠組みを超えて補完材や補完サービスを見渡す
   ・業界の機能志向と感性志向を切り替える
   ・将来を見通す(外部トレンドを形成する)

  ②細かい数字は忘れ、森を見る  (↓プランニング・リスク)
   ○目を覚ます
    ・現在の戦略をチャート化して、競合他社のそれと比べる
    ・戦略を変えるべきかどうかを見極める
   ○自分の目で現実を探る
    ・みずから最前線に足を運んで、ブルー・オーシャンを創造するための6
     つのパスを探る
    ・代替財や代替サービスの優れた点を見極める
    ・さまざまな競争要因について、廃止、追加、変更などの必要性を判断する
   ○ビジュアル・ストラテジーの見本市を開く
    ・ステップ2(自分の目で現実を探る)での洞察に基づいて、新しい戦略
     キャンパスを描く
    ・既存顧客、他社の顧客、さらには潜在顧客から、新しい戦略へのフィー
     ドバックを得る
    ・フィードバックを活かして、戦略案をさらに練り上げる
   ○新戦略をビジュアル化する
    ・新旧の戦略を1枚のチャートで表し、一目で比較できるようにする
    ・新しい戦略の実現に役立つプロジェクトや施策のみを推進する    

  ③新たな需要を掘り起こす    (↓規模のリスク)
   ・非顧客層は3つのグループに分けられる
    ①市場の縁にいるが、すぐに逃げ出すかもしれない層
     →他業界に去った人の共通点を探してみる
    ②あえてこの市場の製品やサービスを利用しないと決めた層
     →あえて使わずにいる共通の理由を探してみる
    ③市場から距離のある未開拓の層
   ・いずれか1つのグループだけに目を奪われるのではなく、3グループすべ
    てを見渡すのが望ましい。あくまでも規模の最大化を目指すのがルール。
     
  ④正しい順序で戦略を考える   (↓ビジネスリスクにまつわるリスク)
   ・ブルー・オーシャン戦略の策定手順
    ○買い手にとっての効用・・・この事業アイデアは比類ない効用をもたら
                  すだろうか?
                 ※顧客経験の6つのステージ
                  購入…検索時間、購入場所、安心して取引
                     できる環境、すぐに購入できるか
                  納品…納品までの期間、簡単に梱包が解け
                     るか、配送の手配の有無、コストと
                     手間
                  使用…研修や専門家の支援の要否、保管の
                     容易さ、機能・特徴の優位性、余計
                     な機能・部品
                  併用…他の製品への依存の有無とそのコス
                     ト、時間、大きな骨折り、入手容易性
                  保守管理…外部委託の要否、保守や更改の
                       容易さ、保守管理コスト
                  廃業…廃材の有無、廃棄の容易性、環境や
                     法律の制約、廃棄コスト
                 ※効用を生み出す6つのテコ
                  顧客の生産性、シンプルさ、利便性、リス
                  ク、楽しさや好ましいイメージ、環境への
                  優しさ
     ↓
    ○価 格・・・多くの人々によって手を伸ばしやすい価格か?
           ※顧客の密集する価格帯を見極める
            同じ形態、形態は異なるが機能は同じ、形態・機能とも
            異なるが目的は同じ
           ※顧客の密集する価格帯の範囲内で価格を決める
            ・高めの価格設定…法規制や特許によって強く保護され
                     ている。模倣が難しい。
            ・中くらいの価格設定…法規制や特許によってある程度
                       保護されている。
            ・低めの価格設定…法規制や特許による保護が弱い。模
                     倣しやすい。
     ↓
    ○コスト・・・価格競争力を保ったうえで利益の出る水準までコストを下
           げられるか?
     ↓
    ○実現への手立て・・・このアイデアを実現する上での障害は何か?事前
               に対策をとっているか?
     ↓
     商用に耐えうるブルー・オーシャン・アイデア
 
 ○実行の原則
  ⑤組織面のハードルを乗り越える (↓組織面のリスク)
   ○4つのハードル
    ・大胆な変革の必要性を従業員に理解させるうえでの、意識のハードル
     →業務の最も悲惨な一面を従業員に直視させる、憤懣やる方ない顧客の
      声にじかに耳を傾ける
    ・企業にはつきものの経営資源のハードル
     →重点領域に経営資源を振り向ける、非重点領域から経営資源を引き揚
      げる、資源交換(部門間の余剰資源の交換)
    ・従業員がやる気を損なう士気のハードル
     →「中心人物」(中心人物だけに働きかける)
      「金魚鉢のマネジメント」(中心人物の行動がすべて見通せるように
                   する。公正なプロセスを根づかせる。)
      「細分化」(あらゆる階層の人々が行動を起こせるように目標を具体
            的なレベルで設定する)
    ・社内外からの変革への抵抗という政治的なハードル
     →守護神(戦略変更による最大の受益者)に頼り
      大敵(戦略変更により最大の損失を受ける層)を黙らせ
      経営陣にアドバイザーになってもらう

  ⑥実行を見据えて戦略を立てる  (↓マネジメント・リスク)
   ・公正なプロセスを用いると、最初から従業員を巻き込んで、実行を見据え
    た戦略を立てられる。従業員たちは平等に扱われると感じて、自ら進んで
    戦略の実行に力を尽くそうとする。
   ・公正なプロセスは関与(Engagement)、説明(Explana
    tion)、明快な期待内容(clarity of Expectation)の
    3つのEで支えられる。

◎新しい価値曲線を描くための4つのアクション
 ・取り除く
  業界常識として製品やサービスに備わっている要素のうち、取り除くべきもの
  は何か
  (例)イエローテイル
     ワインの専門用語や等級表示、熟成、マスマーケティング
  (例)シルク・ドゥ・ソレイユ
     花形パフォーマー、動物によるショー、館内でのグッズ販売、隣接する
     いくつもの舞台での同時ショー
 ・減らす
  業界標準と比べて思い切り減らすべき要素は何か
  (例)イエローテイル
     深みのある味わいや香り、品種、ぶどう園の格式
  (例)シルク・ドゥ・ソレイユ
     笑いとユーモア、危機やスリル
 ・増やす
  業界標準と比べて大胆に増やすべき要素は何か
  (例)イエローテイル
     デイリーワイン並みの価格、小売店との連携
  (例)シルク・ドゥ・ソレイユ
     個性あふれる独自のテント
 ・付け加える
  業界でこれまで提供されていない、今後付け加えるべき要素は何か
  (例)イエローテイル
     飲みやすさ、遊びやすさ、楽しさと冒険
  (例)シルク・ドゥ・ソレイユ
     テーマ性、洗練された環境、複数の演目、芸術性の高い音楽とダンス

◎優れたブルー・オーシャン戦略に共通する3つの特徴
 ①メリハリ
 ②高い独自性
 ③訴求力のあるキャッチフレーズ

◎ブルー・オーシャン戦略の模倣をはばむ障壁
 ・従来の理屈をもとに考えたのでは、バリュー・イノベーションは理解できない。
 ・ブルー・オーシャン戦略は、他社のブランド・イメージとは相容れない可能性
  がある。
 ・自然独占によって、2社目の参入が成り立たない場合が少なくない。
 ・特許や法規制が模倣を防ぐ例がある。
 ・バリュー・イノベーションを実現した企業は、規模の拡大を通してコスト優位
  性を築き、模倣者の参入意欲をくじく。
 ・ネットワークの外部性が模倣をはばむ。
 ・模倣を実践するには往々にして、業務オペレーション、社風、社内政治のあり
  方などを大幅に改める必要がある。
 ・バリュー・イノベーションを成し遂げた企業は、ブランド人気が沸騰して顧客
  から高いロイヤルティを得るため、他社は模倣しづらくなる。


経営戦略の基本(経営戦略研究会)

2009-03-28 22:32:01 | 経営
1.経営戦略の特徴と役割

・経営戦略の目標と打ち手は4層(基本理念、ビジョン、戦略、仕組み)に分けら
 れ、一貫性が求められる。

・基本理念とは、企業経営上の拠り所となる普遍的で半永久的な方針・価値観
 ①企業としての最終的な目標を示す(存在意義、ミッション(使命)、バリュー
  (価値))
 ②企業が打ち手を実行する際に従うべき姿勢・規範を示す(経営姿勢、行動規範)

・ビジョンは基本理念を(時間軸を設定して)具体化した中長期の目指す姿・方向
 性(経営戦略の目標)、イメージしやすい財務数値の目標や事業の展開範囲(ド
 メイン)等

・「施策(戦術)」は「戦略」を短期的(月次、日次など)・局所的(「現場単
 位」など)なレベルまで分解したもの

・経営戦略の意義
 ①中長期の目標を実現するための打ち手(「思い」や「夢」を具体化するもの)
 ②日々の施策を実行する際の目標(「現場」や「日常」の方向性を示すもの)
  →企業経営に整合性を与えるカギ

・対象範囲によってとるべき経営戦略は変わる
 ①全社戦略…企業内の複数の事業について、どのように資源配分をし、打ち手を
       実施するか
 ②事業戦略…特定事業において、どのように資源配分をし、打ち手を実施するか
 ③機能別戦略…事業遂行上の個別機能において、どのように打ち手を実施するか

・意図的戦略と創発的戦略
 ①意図的戦略…経営環境の分析をもとに戦略を策定、策定された戦略をもとに施
  策を策定し、業務を遂行する。
 ②創発的戦略…日々の業務の積み重ね・環境との相互作用から戦略が形成される。


2.経営戦略の理論を俯瞰する
 
・経営戦略のポイント
 ◎企業の目的
  事業継続、収益獲得、成長を実現する
    ↑
 ◎経営戦略のポイント
  持続的に優先性を構築する、優先順位(メリハリ)をつける、全体を整合させる
    ↑
 ◎経営における制約
  経営環境が大きく変化して不確実性が増している
  打ち手に投入できる経営資源・時間は有限である

・基本戦略策定の流れ
 ◎基本理念共有
    ↓
 ◎ビジョン策定
    ↓
 ◎環境分析
  外部環境分析…PEST分析、5Forces分析
  内部環境分析…VRIO分析、SWOT分析
  外部・内部環境分析…3C分析、バリューチェーン分析
    ↓
 ◎事業領域(ドメイン)設定
  マーケティング近視眼(レビット)、CFT(エイベル)
    ↓
 ◎戦略策定
  事業戦略…3つの基本戦略(ポーター)、競争地位別の戦略類型(コトラー)
  全社戦略…成長ベクトル(アンゾフ)、PPM(ボストン・コンサルティン
       グ・グループ)、コア・コンピタンス(ハメル、プラハラード)
    ↓
 ◎仕組み構築
 
・戦略策定に必要なロジカルシンキングの技術
 ①論理展開
  事象と事象のつながりに理屈をつける技術
  ※演繹法
   事象をルールや常識等の全員で共有している前提に照らし合わせ、事象がそ
   の前提に合っているかどうかで結論を出す手法
   【落とし穴】社内・業界常識の呪縛、間違った情報、論理の飛躍
  ※帰納法
   いくつかの事象の共通点に着目し、ルールや法則を結論として導出する手法
   【落とし穴】情報の偏り、間違った情報、論理の飛躍
 ②因果関係分析
  事象の「原因」と「結果」を正しく把握する技術
  ※相関関係はあるか →(NO)→ 相関関係なし
   ↓(YES)
   因果関係はあるか →(NO)→ 共通した新の原因があるか→(NO)→単純な因果関係
   ↓(YES)            ↓(YES)
   ↓            共通の原因で起こった事象同士(因果関係があると勘違いしやすい)
   ↓
   相互に因果関係があるか→(NO)単純な因果関係
   ↓(YES)
   卵と鶏の関係(単純な因果関係と勘違いしやすい)   
 ③構造化
  複雑に絡み合う事象を要素分解し要素間の関係を明確にすることで事象の全体
  像を理解する技術
  ※MECE
   情報を「モレなく、ダブリなく」整理するための手法
  ※ロジックツリー
   大きな概念を下位概念に分解。因果関係把握とMECEの組合せで構築できる。

2.経営戦略の理論を俯瞰する
◎PEST分析
 ①政治(Politics)
  法律(規制・税制・補助金等)
  政府・官公庁の動向、公正取引委員会の動向
  訴訟問題のトレンド
  外圧・海外政府・国連の動向等
 ②経済(Economy)
  景気、物価、失業率の動向
  為替、金利、株価の動向
  産業構造の変化等
  個人消費、輸出入の動向等
 ③社会(Society)
  社会問題、事件、自然災害等
  人口構成、出生率の動向等
  ライフスタイル、価値観の変化等
  トレンドの動向等
 ④技術(Technology)
  技術革新の動向
  特許の動向
  大学、研究機関の研究のテーマのトレンド等
  自社関連技術、代替技術の動向

◎5Forces分析
 ①業界内の敵対関係
 【業界内の敵対関係が強い業界の特徴】
  競合企業が存在し、その規模が同程度
  業界の成長率が低迷
  業界内での差別化が困難
  固定費が高いコスト構造
  業界から撤退することが困難
 ②新規参入の脅威
  脅威の大きさは参入障壁の大きさや既存企業の報復行動によって影響される
 【主な参入障壁】
  規模の経済性(競争力の確保に大量生産が必要な場合)
  製品の差別化(既存企業の製品・サービス価値の高さが顧客に認知されている
         場合に差別化に多額の広告宣伝費が必要)
  仕入先を変更するコスト
  流通チャンネルの確保(既存企業によって業界内の流通チャンネルが整備され
             ている場合に多額の販促費が必要)
  規模とは無関係なコスト面での不利(既存企業が独占的な製品技術を保有した
                   り原材料を抑えている場合)
  政府の規制(政府の許認可が必要、特定の要件の充足が必要)
 ③代替品の脅威
 ④供給者の交渉力
 【供給者の交渉力が強い業界の特徴】
  供給業者の業界が寡占状態にある
  供給業者の商品・サービスを代替するものがない
  供給業者にとって業界の重要度が低い
  供給業者を替えるコストが高い
 ⑤顧客の交渉力
 【顧客の交渉力が強い業界の特徴】
  顧客の商品・サービスに関する知識が豊富
  商品・サービスが差別化されていない
  顧客にとって、その業界の重要度が低い
  顧客が仕入先を替えるコストが低い 
  
◎バリューチェーン分析(価値連鎖)
 ・ポーターが企業活動をMECEに分解したもの。分析対象業界の特性にあった
  要素に分解して分析すればよい。
 ・企業の活動を大きく2つに区分
  ①主活動
   購買物流、製造、出荷物流、販売・マーケティング、サービス
  ②主活動を支援する活動
   全般管理、人事・労務管理、技術管理、調達活動
 ・バリューチェーンと成功要因(KFS…Key Factor for Success)
  ○調達…大量購入による価格交渉力、原料確保、相場対応
  ○開発…デザイン、設計開発のスピード、特許での技術攻防
  ○生産…生産コスト、精密加工、品質管理
  ○マーケティング…広告宣伝、品揃え、ブランドイメージ
  ○販売…販売頻度、営業員数、顧客の組織化
  ○物流…迅速さ、小口対応、エリアのカバー
  ○サービス…クレーム対応、定期点検、24時間サービス
 

◎VRIO分析
 ①経済価値(Value)
  企業が外部環境における機会をうまくとらまえることに貢献するか、脅威を少
  なくすることに貢献できるか否かで、経営資源を評価する視点
 ②稀少性(Rarity)
  その資源を保有しているのが、ごく少数の競合企業かどうかで経営資源を評価
  する視点
 ③模倣困難性(Inimitability)
  競合他社が容易に模倣できるか否かで経営資源を評価する視点
 ④組織(Organization)
  その経営資源を十分に活用できるような仕組みが整っているかどうかで評価す
  る視点

    価値があるか →(NO)→競争劣位(弱み)
      ↓(YES)
    稀少か?   →(NO)→競争均衡
      ↓(YES)
    模倣困難か? →(NO)→一時的な競争優位
      ↓(YES)
    持続的な競争優位
      ↓
    組織は適切か?→(NO)→資源が成果につながらない
      ↓(YES)
    資源が成果につながる

◎3C分析
 ①顧客(Customer)
  市場概要の把握、購買行動の動向、ニーズ・購買要因の把握、セグメント別の
  動向
 ②競合(Competitor)
  競合の特定、概要把握、成功企業の動向、成功要因、強み・弱みの分析
 ③自社(Company)
  強み・弱みの分析、KFSと強みの融合、KFSとのギャップ

◎SWOT分析
 ①分析結果を整理する。 
           +要因              -要因
    外部環境  Strength(強み)     Weakness(弱み)
    内部環境  Opportunity(機会)  Threat(脅威)

 ②打ち手の方向性を具体化する
  ・自社の強みを活用できる市場機会を発見することにより勝ちパターンを構築
   できないか
  ・自社の強みで市場の脅威を回避できないか
  ・自社の弱みで市場機会を逃がさないための対応策はないか
  ・自社の弱みで市場の脅威が現実のものとならないような打ち手はないか

◎各分析の関係性
 ・分析の視点がPEST分析→5Forces分析→3C分析の順にマクロから
  ミクロへ
 ・バリューチェーン分析とVRIO分析は、3C分析の自社分析、競合分析の際
  に用いられるフレームワーク
 ・これらの分析結果を4つの視点で整理するものがSWOT分析

◎3つの基本戦略
 ①コスト・リーダーシップ戦略
  業界全体の広い顧客をターゲットにし、他社のどこよりも低いコスト実現する
  ことにより競争に勝とうとする戦略。
  ※戦略の焦点
   他社よりも低いコストをいかに実現するか
  ※実現の方法(例)
   規模の経済の実現、経済曲線効果の活用、仕入価格削減、オペレーションコ
   スト削減
  ※リスク
   ・コスト・リーダーシップ戦略を維持するのに投資等の負担がかかる
   ・規模の経済や経験曲線を超えるイノベーションが起き、低コストの優位性
    が崩れる
   ・業界の成功要因が差別化に移行し、差別化戦略をとる企業の後塵を拝す
   ・コスト集中戦略をとる企業との競争に敗れ、複数の市場で低コストの優位
    性が崩れる
 ②差別化戦略
  業界全体の広い顧客をターゲットにし、他の企業が持たない特徴で他社との差
  別化を実現することにより競争に勝とうとする戦略。
  ※戦略の焦点
   競合他社といかに差別化して、顧客からの評価を獲得するか
  ※実現の方法(例)
   製品の差別化、サービスの差別化、チャネルの差別化、プロモーションの差
   別化
  ※ポイント
   自社固有の価値があり、稀少で模倣困難な資源を活用して持続的な差別化を
   実現すること
  ※リスク
  ・コスト・リーダーシップ戦略をとる企業とのコスト差が拡大する
  ・他社に模倣されると差別効果が持続しない
  ・差別化集中戦略をとる企業との競争に敗れ複数の市場で差別化の優位性が崩
   れる
  ・顧客ニーズの変化、代替品の出現により差別化ができなくなる
 ③集中戦略
  業界の特定市場に的を絞って経営資源を集中し競争に勝とうとする戦略。具体
  的には、特定市場でコスト優位に立って競争に勝とうとする「コスト集中戦
  略」、特定市場で差別化を実現し競争に勝とうとする「差別化集中戦略」がある。
  ※戦略の焦点
   企業では経営資源の分散を防ぐためどのセグメントに経営資源を集中するか
  ※優位性構築の方向性
   コスト集中 OR 差別化集中
  ※リスク
   ・絞り込むメリットより規模のメリットが大きくなり、業界全体をターゲッ
    トとしている企業とのコスト差が増大する
   ・競合がより効果的なセグメントの切り口で経営資源を集中する
   ・絞り込んだセグメントが縮小する

◎競争地位別の戦略類型(ポーター)
 ①リーダー
  特徴:業界トップであり、質的にも量的にも競合により優位な資源を保有
  戦略の方針:全方位
  戦略定石:周辺需要拡大、同質化、非価格対応
 ②チャレンジャー
  特徴:業界上位だが、リーダー企業に比べて相対的に経営資源が劣位
  戦略の方針:差別化
  戦略定石:リーダー企業の制約をつくような差別化戦略
 ③ニッチャー
  特徴:業界上位ではないが、特定領域において独自の地位を築けるだけの技を保有
  戦略の方針:集中化
  戦略定石:特定セグメントに特化して、その中でミニ・リーダーとなる
 ④フォロワー
  特徴:量的にも質的にも競争優位を発揮できるような経営資源を持たない
  戦略の方針:効率化(模倣)
  戦略定石:上場企業の模倣による効率的利潤確保、将来に向けた経営資源蓄積

◎アンゾフの成長ベクトル
 ①市場浸透戦略
  企業が現在展開している市場において、既存製品群の売上を拡大することによ
  って成長をめざす戦略。既存顧客の製品使用量や使用頻度の増加をうながす、
  競合から顧客を奪うといった打ち手を検討する。
 ②新製品開発戦略
  企業が現在展開している市場に対し、新製品を導入することによって成長をめ
  ざす戦略。研究開発等により、新たな技術を開発してその技術を活用した製品
  を導入する、色や大きさを変えた新たな製品ラインを導入する、既存製品に新
  たな機能を追加するといった打ち手を検討する。
 ③新市場開拓戦略
  既存製品群を新たな市場に導入することによって、成長をめざす戦略。いまま
  で販売していなかったエリアに進出する、新たな市場セグメントに進出すると
  いった打ち手を検討する。
 ④多角化戦略
  新製品を新たな市場に導入することによって成長をめざす戦略。多角化戦略
  は、「関連多角化戦略」と「非関連多角化戦略」に大きく分類できる。関連多
  角化戦略とは、新しく開始する事業の製品と市場とは異なっても、研究開発活
  動、原料、生産設備、流通チャンネル等、何らかの関連性のある分野での多角
  化。非関連多角化とは、関連性のない分野での多角化。
  ※多角化の効果
   事業間のシナジー効果、企業内の未使用資源の活用、事業バランスの是正に
   よるリスク分散と収益安定、魅力的な市場機会の確保

◎PPM
 キャッシュフローの観点から複数の事業を分類し、企業全体として効率のよい資
 源配分を検討するうえでの示唆を与えてくれるフレームワーク
 ①スター
  相対的な市場シェアが高く、市場成長率が高い事業。競争力があるために利益
  は大きいものの、成長期にあるため、市場で競合に打ち勝つために多額の投資
  が必要になる。現段階では、この業からは多額のキャッシュ創出が見込めな
  い。しかし、将来的に市場が成熟期に入れば、必要となる資金が減少し、キャ
  ッシュを生む事業になることが予想されるので、現在の相対シェアの拡大・維
  持がこの象限にある事業の命題になる。
 ②金のなる木
  相対的な市場シェアが高く、市場成長率が低い事業。競争力があるために利益
  が多いだけではなく、成長のための多額の投資も必要ない。現段階において、
  この事業からは潤沢なキャッシュを得ることができる。しかし、事業全体の成
  長率は落ちているので、将来的にこの事業が創出するキャッシュは減少してい
  くことが予想される。したがって、将来の柱となる他の事業を育てるために
  も、現在のシェアを維持してキャッシュを獲得し、研究開発、新規事業開発、
  「問題児」に分類される事業に投入する資金の原資を確保することが金のなる
  木事業の命題となる。
 ③問題児
  相対的な市場シェアが低く、市場成長率が高い事業。この事業は競争力が低い
  ため、低収益となる。また成長期にあるため、市場で競合に打ち勝つために多
  額の投資が必要になり、現段階でのキャッシュフローは大きくマイナスにな
  る。しかし、市場成長率は高いので、相対市場シェアをあげることができれば
  スターになる可能性がある事業ともいえる。一方、相対的市場シェアを上げる
  ことに失敗すれば、どんどん全社のキャッシュを食いつぶし、全社経営に悪影
  響を及ぼす可能性もある。したがって、事業の将来性の見極めによる「選択と
  集中」が問題児事業の命題となる。
 ④負け犬
  相対的市場シェアが低く、市場成長率が低い事業。この事業は競争力が低いた
  めに低収益となる。また、市場成長率は低く、成長に向けた投資もほとんどな
  く、資金の流出には少ないとされている。現段階でも収益は上がらず、将来的
  にも大きな飛躍が期待できない負け犬事業については、撤退をけんとうする必
  要がある。

◎PPMの限界
 ①PPMの縦軸(プロダクトライフサイクル)に対する問題点
  ・「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4段階を必ずしも経ない。
  ・再び成長する可能性のある事業への投資を怠ったことにより、さらなる成長
   の機会を逸するリスクもある。
  ・単に定量的な数字から事業の成長を判断するのではなく、再成長のポテンシ
   ャルの検証が必要。
 ②PPMの横軸(相対的市場シェア)に対する問題点
  ・イノベーションの可能性を押さえていない。
  ・差別化戦略にあてはまらない。(高コストでも高収益をあげるケースもある)
 ③各事業間でのシナジーが考慮されていない
 ④長期的な成長に必要な新規事業開発の方向性に関する示唆がない

◎PPMの限界を克服する新たな手法・考え方
 ・ビジネススクリーン
  事業地位(市場における地位、競争上の地位、相対的収益率に関する指標から
  の評価)と業界魅力度(市場規模と成長率、産業の収益性、インフレ、海外市
  場の重要性に関する指標から評価)の組合せで判断。ただし客観性に欠ける。
  ①いずれも中以上でいずれかが高…投資増強→成長
  ②いずれも中以上かいずれかが高…見極め→選択的投資
  ③いずれも中以下でいずれかが低…収穫・撤退
 ・コア・コンピタンス
  他社にはマネできない独自の価値を顧客に提供する企業の中核能力
  ①競争相手が模倣困難であること
  ②顧客に対する価値創出につながること
  ③多様な市場への展開を可能にすること

3.戦略を動かすための仕組みづくり
(1)計画
   戦略で成し遂げたいことの整理、複数のゴールの認識
    ↓
   複数のゴールに対する計画作り
   6W2Hの活用・・・誰が、いつ、どこで、何を、誰に、どうやって、いく
             らで、なぜ(意義)
    ↓
   適切なサイズになるまで計画を細分化

(2)評価
  ◎3つの視点
   ・比較することが可能か・・・過去と現在、自社と他社、A部門とB部門な
                 どで比べられるか?
   ・客観的に測定できるか・・・主観が入り込まない、数値データなどを用い
                 ているか?
   ・比較的簡単に入手することができるか?・・・必要なときに、指標を入手
                         する見通しが立っているか?

  ◎バランス・スコア・カード
   過去的視点  財務業績視点・・・売上・利益等に関する指標
          
          顧客視点  ・・・顧客数・顧客満足度等に関する指標
   現在的視点  
          内部事業プロセス視点・・・自社業務の状態やサプライチェ
                       ーン等に関する指標

   未来的視点  学習と成長視点・・・社員能力、教育・教育研修等に関する
                    指標

   ※以上からKPI(Key Performance Indicato
    r)を考える
   ※指標を入手する仕組みを整える・・・POSシステム等
   ※「指標」で人と組織を動かしていく
   ※「評価」で人と組織の動きを促進する・・・目標管理制度など
   ※戦略を継続的に管理・修正し、戦略のPDCAを回す

(3)組織
  ◎戦略のために組織を整えるフロー
   組織構造の検討・・・「職能別組織」「事業部制組織」「マトリックス型組織」
    ↓
   必要に応じて、タスクフォースチームの組織
    ↓
   経営資源の獲得・・・「内製化」「市場取引」「提携」

  ◎経営資源獲得の3つの形態
   ①内製化
    【長所】
     ・経営資源の集中的管理を実現できる
     ・他社の影響を排除できる
    【短所】
     ・経営資源の管理コストが増大する
     ・経営資源獲得に時間がかかりすぎる
     ・最終的に獲得できないリスクがある
    【視点】
      長期的
   ②市場取引
    【長所】
     ・必要な経営資源を選ぶ幅が広い
     ・柔軟さ、経営資源を保有しない身軽さがある
    【短所】
     ・多数の企業から取引先を探し出すことがむずかしい
     ・貴重な資源を持つ企業に対して立場が弱まる
    【視点】
      短期的
   ③提携
    【長所】
     ・独特な経営資源の獲得可能性が高い
    【短所】
     ・信頼関係を構築するために時間やコストが発生する
    【視点】
      中期的

プロフェッショナルの条件(P・F・ドラッカー著)その2

2009-02-01 15:15:37 | 経営
Part4 意思決定のための基礎知識

第1章 意思決定の秘訣
   ・成果をあげる意思決定を行ううえで必要とされる5つのステップ
    ①問題の多くは基本に関わるものであり、原則や手順についての決定を通
     してのみ解決できることを認識する
     ※問題は4種類ある。
      「基本的な問題の兆候に過ぎない問題」
      「当事者にとっては例外的だが、実際的には基本的、一般的な問題」
      「真に例外的、特殊な問題」
      「何か新しい種類の基本的、一般的な最初の現われとしての問題」
     ※真に例外的な問題を除き、あらゆる問題が基本の理解に基づく解決策
      を必要とする。一度正しい原則を得るならば、同じ状況から発する問
      題は、すべて実務的に処理できる。
     ※意思決定の成果をあげるには、まず時間をかけ、問題が4種類のいず
      れであるかを知らなければならない
    ②決定が満たすべき必要条件を明確にする
     ※「その決定の目的は何か」「達成すべき最低限の目標は何か」「満足
      させるべき必要条件は何か」を明らかにしなければならない
     ※必要条件を簡潔かつ明確にするほど、決定による成果はあがり、達成
      しようとするものを達成する可能性が高まる。
     ※一度行った決定をいつ放棄するかを知るためにも、必要条件を明確に
      しておくことが必要である。
     ※必要条件を明確に理解しておくことは、もっとも危険な決定、すなわ
      ち万一都合の悪いことが起こらなければうまくいくかもしれないとい
      う決定を識別するうえで必要である。
    ③決定が受け入れられやすくするための妥協を考慮する前に、正しい答え
     すなわち必要条件を満足させる答えについて徹底的に検討する
     ※決定においては何が正しいかを考えなければならない。やがては妥協
      が必要になるからこそ、最初から誰が正しいか、何が受け入れられや
      すいかという観点からスタートしてはならない。満たすべき必要条件
      を満足させるうえで何が正しいかを知らなければ、正しい妥協と間違
      った妥協を見分けることはできない。
    ④決定に基づく行動を決定のプロセスに組み込む
     ※決定を行動に移すには、「誰がこの意思決定を知らなければならない
      か」「いかなる行動が必要か」「誰が行動をとるか」「行動すべき人
      間が行動するためには、その行動はいかなるものでなければならない
      か」を問わなければならない。
    ⑤決定の適切さを結果によって検証するために、フィードバックを行う

   ・決定によって成果をあげるためには、評価測定の基準についてもいくつか
    の選択肢が必要である。それらの中から、最も適切な基準を選び出さなけ
    ればならない。

   ・成果をあげるには、以下の3つの理由から意見の不一致を生み出さなけれ
    ばならない。
    ①組織の囚人になることを防ぐ、②選択肢を与える、③想像力を刺激する
    意見の不一致は、もっともらしい決定を正しい決定に変え、正しい決定を
    優れた決定に変える。

   ・「意思決定は本当に必要か」を自問しなければならない。「何もしないと
    何が起こるか」という問いに対して、「何も起こらない」が答えであるな
    らば、手をつけてはならない。

   ・正しい決定のための原則はないが、指針とすべき考え方はある。第一に得
    るものが犠牲やリスクを大幅に上回るならば行動しなければならない、第
    二に行動するかしないか、いずれかにしなければならない。

   ・「もう一度調べよう」の誘惑に負けず、先延ばしし過ぎないようにしなけ
    ればならない。


第2章 優れたコミュニケーションとは何か

   ・コミュニケーションの4つの原理
    ①聞く者がいなければ、コミュニケーションは成立しない。
    ②われわれは知覚することを期待しているものだけ知覚する。
    ③コミュニケーションは常に受け手に対し何かを要求する。
    ④コミュニケーションと情報は別物である。

   ・目標と自己規律のマネジメントこそ、コミュニケーションの前提。目標と
    自己規律によるマネジメントにおいては、「自分はいかなる貢献を行うべ
    きであると考えているか」が明らかにされ、上司と部下の知覚の仕方の違
    いを明らかにすることができる。

   ・コミュニケーションを成立させるには経験の共有が不可欠である。


第3章 情報と組織

   ・情報型組織は、高度の自己規律を要求するがゆえに、迅速な意思決定と対
    応を可能にする。さらに柔軟性と多様性を内包する。

   ・情報型組織のこのような利点は、組織内に相互理解と共通の価値観、なか
    んずく相互信頼があって初めて現実のものとなる。

   ・情報型組織には、現場からトップにいたるまで、自己規律と責任のうえに
    立つリーダーシップが必要である。


第4章 仕事としてのリーダーシップ

   ・リーダーたることの要件
    ①リーダーシップを仕事と見ること
     リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持
     するものである。
    ②リーダーシップを、地位や特権ではなく責任と見ること
     優れたリーダーは常に厳しい。ことがうまくいかないとき、その失敗を
     人のせいにしない。
     真のリーダーは、自らが最終的に責任を負うべきことを知っているがゆ
     えに、部下を恐れない。部下の成功を脅威とせず、むしろ自らの成功と
     捉える。
    ③信頼が得られること
     リーダーの言うことが真意であると確信をもてること。真摯さに対する
     確信。リーダーシップは一貫性に支えられる。


第5章 人の強みを生かす

   ・成果をあげるためには、強みを中心に捉えて異動を行い、昇進させなけれ
    ばならない。人事においては、人の弱みを最小限に抑えるよりも、人の強
    みを最大限に発揮させなければならない。

   ・人に成果をあげさせるには、「自分とうまくやっていけるか」を考えては
    ならない。「どのような貢献ができるか」を問わなければならない。強み
    に焦点を合わせることは成果を要求することである。

   ・組織とは、強みを成果に結びつけつつ、弱みを中和し無害化するための道
    具である。

   ・成果をあげるためには、上司の強みも生かさなければならない。


第6章 イノベーションの原理と方法
   ・なすべきこと
    ※イノベーションを行うためには、「7つの機会」を徹底的に分析しなけ
     ればならない。
     ①予期せぬこと、②ギャップ、③ニーズ、④構造の変化、⑤人口の変
     化、⑥認識の変化、⑦新知識の獲得
    ※イノベーションとは、理論的な分析であるとともに知覚的な認識であ
     る。
     イノベーションを行うにあたっては、外に出、見、問い、聞かなければ
     ならない。
    ※イノベーションに成功するには、焦点を絞り単純なものにしなければな
     らない。一つのことに集中しなければならない。

   ・なすべきでないこと
    ※凝りすぎてはならない。イノベーションの成果は、普通の人間が利用で
     きるものでなければならない。
    ※多角化してはならない。散漫になってはならない。一度に多くのことを
     しようとしてはならない。
    ※未来のためでなく、現在のためにイノベーションを行わなければならな
     い。

   ・イノベーション成功のための3つの条件
    ①イノベーションは集中でなければならない
    ②イノベーションは強みを基盤としなければならない
    ③イノベーションはつまるところ、経済や社会の変革を目指さなければな
     らない

   ・イノベーションは、どこまでそのリスクを明らかにし、小さくできるかに
    よって、成功の度合いが決まる。


Part5 自己実現への挑戦

第1章 人生をマネジメントする

   ・知識社会では、成功が当然のこととされる。だが、全員が成功することは
    ありえない。失敗しないことがせいぜいである。成功する人がいれば失敗
    する人がいる。そこで一人ひとりの人間及びその家族にとっては、何かに
    貢献し、意味あることを行い、ひとかどになることが、決定的に重要な意
    味を持つ。第二の人生、パラレル・キャリア、篤志家としての仕事をもつ
    ことは、社会においてリーダー的な役割を果たし、敬意を払われ、成功の
    機会をもつということである。

第2章 “教育ある人間”が社会をつくる

   ・われわれが真に必要とするものは、多様な専門知識を理解する能力であ
    る。そのような能力をもつ者が、知識社会における教育ある人間である。

   ・われわれは専門知識のそれぞれについて精通する必要はないが、それが 
    「何についてのものか」「何をしようとするものか」「中心的な関心ごと
    は何か」「中心的な理論は何か」「どのような新しい洞察を与えてくれる
    か」「それについて知られていないことは何か」「問題や課題は何か」を
    知らなければならない。

第3章 何によって覚えられたいか

   ・自らを成長させるためにもっとも優先すべきは、卓越性の追求である。そ
    こから充実と自信が生まれる。能力は仕事の質を変えるだけでなく、人間
    そのものを変えるがゆえに重要な意味をもつ。能力がなくては、優れた仕
    事はありえず、自信もありえず、人としての成長もありえない。

   ・誰もが自らに対し「組織と自らを成長させるためには何に集中すべきか」
    を問わなければならない。

   ・成長するということは、能力を修得するだけでなく、人間として大きくな
    るということである。責任に重点を置くことによって、より大きな自分を
    見られるようになる。うぬぼれやプライドではない。誇りと自信である。
    一度身につけてしまえば失うことのない何かである。目指すべきは、外な
    る成長であり、内なる成長である。

   ・仕事から学び続けるには、成果を期待にフィードバックさせなければなら
    ない。仕事の中で、さらには生活の中で、重要な活動が何かを知らなけれ
    ばならない。それらの活動において何を期待するかを書きとめて置かなけ
    ればならない。九ヵ月後、あるいは一年後に、成果とその期待を比べる。
    そうすることによって、自分は何をうまくやれるか、いかなる能力や知識
    を必要としているか、いかなる悪癖をもっているかを知ることができる。

   ・成長のプロセスを維持していくための強力な手法を三つあげるならば、教
    えること、移ること、現場に出ることである。
    第一に、うまくいったことをどのように行ったかを仲間に教えることであ
    る。聞き手が学ぶだけでなく、自らが学ぶ。第二に、別の組織で働くこと
    である。そこから新たな選択の道が開かれる。第三に、一年に何度か現場
    で働くことである。

   ・「何によって覚えられたいか」は自らの成長を促す問いである。


プロフェッショナルの条件(P・F・ドラッカー著)その1

2009-02-01 13:46:08 | 経営
Part1 いま世界に何が起こっているか

第1章 ポスト資本主義社会への転換

   ・産業革命、生産性革命、マネジメント革命の3つの段階をへて、社会の重
    心が知識へ移行し、知識の意味も「一般知識」から高度の専門知識への変
    化した。

   ・一般知識から専門知識への重心の移行が新しい社会を創造する力を与え、
    その新しい社会は、専門知識と専門家たる知識労働者を基礎として構成さ
    れ、かれらに力が与えられる。


第2章 新しい社会の主役は誰か

   ・今日の先進社会の特性であり、力の源となっている社会の多元性は、単一
    目的の専門化した無数の組織が機能することによって、初めて可能とな
    る。それらの組織は、専門化した独立の存在として、社会やコミュニティ
    の全体についてではなく、狭い範囲の使命、ビジョン、価値観をもつと
    き、はじめて大きな成果をあげる。

   ・組織が機能するためには、変化のためのマネジメントを自らの構造に組み
    込まなければならない。まず、すべての組織が取り組まなければならない
    活動は、①絶えざる改善、②成功しているものについての新しい応用法の
    開発、③イノベーションの方法の学習である。これらの活動のあと、体系
    的な廃棄の段階に戻り、新しいプロセスを最初から始める必要がある。


Part2 働くことの意味が変わった

第1章 生産性をいかにして高めるか

   ・知識労働の生産性を上げるには、目的の定義、目的への集中、仕事の分
    類、仕事のプロセスの分析、働く人たちとのパートナーシップ、継続学習
    (成功していることをさらにうまくやる)、自らが教えることで学ぶ、が
    必要である。

   ・知識労働の生産性の向上を図る場合にまず問うべきは、「何が目的か。何
    を実現しようとしているか。なぜそれを行うか」である。手っ取り早く、
    しかも、おそらくもっとも効果的に知識労働の生産性を向上させる方法
    は、仕事を定義し直すことである。特に行う必要のない仕事をやめること
    である。

   ・知識労働の生産性を高めるには、その仕事が、成果に関して、いずれの範
    疇(①質を成果(研究所の仕事など)、②質と量のいずれも成果(デパー
    トの店員など)、③量を成果(保険金支払いなど))に属するかを知って
    おく必要がある。何に取り組むべきかが明らかになり、知識労働のそれぞ
    れについて生産性の意味を明らかにできる。

   ・情報化時代にあっては、いかなる組織も学ぶ組織、同時に教える組織にな
    らなければならない。


第2章 なぜ成果があがらないのか。

   ・知力や想像力や知識は、あくまでも基礎的な資質である。それらの資質を
    成果に結びつけるには、成果を上げるための能力が必要である。

   ・4つの現実が仕事の成果をあげ、業績をあげることを妨げようと圧力を加
    えてくる。
    ①時間はすべて他人にとられる。
    ②自ら現実の状況を変えるための行動をとらないかぎり、日常業務に追わ
     れ続ける。
    ③組織で働いているという現実がある。ほかの者が彼の貢献を利用してく
     れるときのみ、成果をあげることができる。
    ④組織の内なる世界にいるという現実がある。しかるに組織の中に成果は
     存在せず、すべて成果は外の世界である。

   ・仕事や成果を大幅に改善するための唯一の方法は、成果をあげるための能
    力を向上させることである。1つの重要な分野で強みを持つ人が、その強
    みをもとに仕事を行えるよう、組織をつくることを学ばなければならな
    い。仕事ぶりの向上は、人間の能力の飛躍的な増大ではなく、仕事の方法
    の改善によって図らなければならない。知識についても同様である。

   ・成果を上げることは1つの習慣である。習慣的な能力の集積である。そし
    て習慣的な能力は、習慣になるまでいやになるほど反復し、常に修得に努
    めることが必要である。


第3章 貢献を重視する

   ・貢献に焦点を合わせることによって、専門分野や限定された技能や部門に
    対してだけでなく、組織全体の成果に注意を向けるようになる。成果が存
    在する唯一の場所である外の世界に注意を向けるようになる。自らの専門
    や自らの部下と組織全体や組織の目的との関係について、徹底的に考えざ
    るをえなくなる。経済的な財、政府の施策、医療サービスなど組織の産出
    物の究極の目的である客や患者の観点から、ものごとを考えざるをえなく
    なる。その結果、仕事や仕事の仕方が大きく変わっていく。

   ・「どのような貢献ができるか」を自問することは、自らの仕事の可能性を
    追求することでもある。

   ・あらゆる組織が3つの領域(①直接の成果、②価値への取り組み、③人材
    の育成)における成果を必要とする。この3つの領域における貢献をあら
    ゆる仕事に取り込んでおかなければならない。

   ・貢献に焦点を合わせるということは、責任をもって成果をあげるというこ
    とである。

   ・知識労働者が貢献に焦点を合わせることは必須である。必要なことはゼネ
    ラリストをつくることではない。知識労働者が彼自身と彼の専門知識を活
    用して成果をあげることである。言い換えれば、自らの産出物たる断片的
    なものを生産的な存在にするために、それを利用する者に「何を知っても
    らい」「何を理解してもらわなければならないか」を徹底的に考えること
    である。

   ・自らの貢献に責任をもつ人は、その狭い専門分野を真の全体に関係づける
    ことができる。

   ・われわれは、貢献に焦点をあわせることによって、コミュニケーション、
    チームワーク、自己啓発及び人材育成という、成果をあげるうえで必要な
    人間関係に関わる基本条件を満たすことができる。


Part3 自らをマネジメントする

第1章 私の人生を変えた7つの経験

   ・7つの経験
    ①目標とビジョンをもって行動する
     目標とビジョンをもって自分の道を歩き続ける。失敗し続けるに違いな
     くとも完全を求めていく。
    ②神々が見ている
     神々しか見ていなくても、完全を求めていかなければならない。
    ③1つのことに集中する
    ④定期的に検証と反省を行う
    ⑤新しい仕事が要求するものを考える
     新しい任務で成功するうえで必要なことは、卓越した知識や卓越した才
     能ではない。それは新しい任務が要求するもの、
     新しい挑戦、仕事、課題において重要なことに集中することである。
    ⑥書きとめておく
     何か重要な決定をする際に、その期待する結果を書きとめておく。一定
     期間のあと実際の結果とその期待を見比べる。「自らの強みは何か」
     「それらの強みをいかしてさらに強化するか」「自分には何ができない
     か」を知ることができる。
    ⑦何によって知られたいか。

   ・成果をあげるための方法
    ①ビジョンをもつこと。努力を続けることこそ、老いることなく成熟する
    コツ。
    ②仕事において真摯さを重視する。誇りをもち、完全を求める。
    ③日常生活の中に継続学習を組み込む。常に新しいことに取り組む。何を
     行うにせよ、自らに対し、常により優れたことを行うことを課し、新しい方法
     で行うことを課す。
    ④自らの仕事ぶりの評価を、仕事そのものの中に組み込む。
    ⑤行動や意思決定がもたらすべきものについての期待を、あらかじめ記録
     し、後日実際の結果と比較する。そのようにして自らの強みを知り。改
     善や変更しなければならないことを知る。得意でないこと=他の人に任
     せるべきことを知る。
    ⑥新しい仕事が要求するものについて徹底的に考えるべきこと。
    ⑦成果をあげ続け、成長と自己変革を続けるには、自らの啓発と配属に自
     らが責任をもつこと。


第2章 自らの強みを知る

   ・フィードバック分析により自らの強みを知る。

   ・フィードバック分析から明らかになる行動すべきこと
    ①明らかになった強みに集中すること
    ②その強みをさらに伸ばすこと
    ③無知の元凶ともいうべき知的な傲慢を正すこと
    ④自らの悪癖を改めること
    ⑤人への対し方が悪くて、みすみす成果をあげられなくすることを避ける
     こと
    ⑥行っても成果のあがらないことは行わないこと
    ⑦努力しても並にしかなれない分野に無駄な時間を使わないこと。強みに
     集中すべき。

   ・自らがいかなる仕事の仕方を得意とするかを知っておく必要がある。人は
    得意な仕方で仕事の成果をあげる。

   ・仕事の学び方についても知っておくべきである。

   ・今さら自分を変えようとしてはならない。それよりも自分の得意とする仕
     事の仕方を向上させていくべき。

    ・優先すべきは自らの価値観。

    ・最高のキャリアは、自らの強み、仕事の仕方、価値観を知り、機会をつか
     むよう用意したものだけが手にできる。


第3章 時間を管理する

   ・時間を管理するには、まず自らの時間をどのように使っているかを知らな
    ければならない。

   ・時間をどのように使っているかを知り、続いて時間の管理に取り組むに
     は、まず時間を記録する必要がある。

   ・継続して時間の記録をとり、その結果を毎月見ていかなければならない。
     最低でも年2回ほど、3、4週間記録をとるべきである。記録を見て日々の
    日程を見直し、組み替えていかなければならない。

   ・時間の使い方を自己診断するための方法
   ①する必要のまったくない仕事、すなわち、いかなる成果も生まない完全
    な時間の浪費であるような仕事を見つけ、捨てなければならない。
    ②「他の人間でもやれることは何か」を考えなければならない。
   ③他人の時間を浪費しているケースは、聞くことにより、自らがコントロ
    ールし、自らが取り除くことのできる時間浪費の原因を排除しなければ
    ならない。

   ・ただちに改善すべきマネジメント上の欠陥に起因する時間の浪費
     ①システムの欠陥や先見性の欠如からくる時間の浪費。ここにおいて発見
      すべき兆候は、周期的な混乱、繰り返される混乱。
     ②人員過剰からくる時間の浪費。組織の上層部が時間のある程度以上を人
     間関係、反目や摩擦、担当や協力に関わる問題にとられているならば人
     員過剰の確実な兆候。
     ③組織構造の欠陥からくる時間の浪費。その兆候は会議の過剰。

    ・成果をあげるためには、自由に使える時間を大きくまとめる必要がある。

    ・時間の管理は継続的に行わなければならない。継続的に時間の記録をと
    り、定期的に仕事の整理をしなければならない。自由にできる時間の量を
    考え、重要な仕事については、締切を自ら設定しなければならない。


第4章 もっとも重要なことに集中せよ

    ・成果をあげる人は、多くのことをなさなければならないこと、しかも成果
    をあげなければならないことを知っている。したがって、自らの時間とエ
     ネルギー、そして組織全体の時間とエネルギーを一つのことに集中する。
     もっとも重要なことを最初に行うべく集中する。

    ・集中するための第一の原則は、もはや生産的でなくなった過去のものを捨
     てること。そのためには自らの仕事と部下の仕事を定期的に見直す必要が
    ある。古いものの計画的な廃棄こそ、新しいものを強力に進める唯一の方
    法である。

    ・実は本当に行うべきことは優先順位の決定ではない。劣後順位の決定、す
    なわち取り組むべきでない仕事の決定とその決定の遵守である。
 
    ・優先順位の決定については、いくつかの重要な原則がある。
     ①過去ではなく未来を選ぶこと
     ②問題ではなく機会に焦点をあてること
     ③横並びではなく自らの方向性をもつこと
     ④無難で容易なものではなく、変革をもたらすものに照準をあわせること

    ・集中とは、「真に意味あることは何か」「もっとも重要なことは何か」と
     いう観点から、時間と仕事について、自ら意思決定する勇気のことであ
    る。この集中こそ、時間や仕事の従者となることなく、逆にそれらの主人
     となるための唯一の方法である。



影響力のマネジメント(ジェフリー・フェファー) 

2008-12-21 14:51:54 | 経営
1.決定と実行
  ・何が正しいことかを知っているだけではリーダーとして不十分だ。リーダー
   はその正しいことを実行する能力がなければならない。
   【マネジメント・プロセス:パワーからとらえる】
   ①あなたの目標は何か、あなたが何を達成しようとしているのかを決めよ。
   ②依存と相互依存のパターンを診断せよ。あなたの目標を達成する際に、影
    響力がある重要な人物は誰なのか。
   ③そうした人たちの見方はどうなりそうか。あなたが行おうとしていること
    について、彼らはどう思いそうか。
   ④彼らのパワーの基盤は何か。彼らの下す決定については、誰の影響力が強
    いのか。
   ⑤その人のパワーと影響力の基盤は何か。置かれている状況をよりコントロ
    ールできるようになるために、あなたがつくりだせる影響力の基盤は何
    か。
   ⑥パワー行使のための多種多様な戦略と戦術の中で、あなたが向き合う状況
    に、最も適切で効果的だと考えられるものはどれか。
   ⑦すでに述べた①~⑥に基づき、物事を実行するための具体的な行動シナリ
    オを選択せよ。

2.パワーはいつ使われるのか
  ・組織の本質は相互依存である。だから、職務を成し遂げるには、みんな誰か
   の助力を得なければならない。

3.パワーと依存関係を診断する
  ・ものの見方が違わず、衝突が存在しないときは、パワーは使われない。
  【相互依存性を診断するための問いかけ】
   ①自分が意図していることを達成するためには、誰の協力が必要なのか。適
    切な意思決定を下し、実行するためには、誰の支援が必要なのか。
   ②自分が実行しようとしていることを遅らせたり、妨げうるのは誰の反対
    か。
   ③自分が達成しようとしていることで影響を受けるのは誰か。影響の先は
   (a)その人のパワーや地位か
   (b)彼らの評価のされ方や報酬の受け方か
   (c)彼らが自分の仕事をするやり方か。
   ④自分の目から見て、影響力のある人々の中で友人や同盟者は誰か。

4.パワーはどこから生まれるのか
  ・状況要因が変われば、影響力があり有能であることに要求される特性も変わ
   る。

5.資源、提携、新しい行動基本原理
  ・実質的に何もないところから資源をつくりだす技術は、知れば知るほど驚く
   べきものだ。

6.コミュニケーション・ネットワークのどこにいるか
  ・どこに座っているかで、自分の相互行為の質と量は大きく変わってくる。

7.公式権限、評判、実績
  ・リーダーはフォロワーが権限を信じる姿勢になっていない限り、権限をもっ
   てはいない。ある意味で、リーダーシップとは部下から授けられるものなの
   だ。

8.適切なユニットにいることの重要性
  ・どのサブユニットも平等に生まれるわけではない。影響力のあるところとな
   いところがある。
  ・組織構造のどこにいるかはパワーの源のひとつである。
  ・サブユニットのパワーは、統一性をもち、一貫した形で行動する能力、重要
   課題の近くにいること、そうした課題を処理する能力、専門知識と問題解決
   能力によって独占的な地位を占めること、からもたらされる。

9.パワーの源泉としての個人特性
  ・誰からも好かれたいと思う人は、コンフリクトに向き合おうとはしないもの
   だ。
  ・人にパワーをもたらす特性を考えるときには、組織にはほぼ確実に相互依存
   性という特性があり、個人間及びサブユニット間の競争と対立の闘技場とな
   ることを忘れてはならない。だから、支持や同盟を手に入れる能力と関連す
   る特性、例えば、感受性、柔軟性、必要なときに自分のエゴを隠せる力が、
   パワーの源として重要になるのだ。同じように競争の激しいアリーナで生き
   残る能力と関連する特性、例えば、集中力、活力とスタミナ、対立に取り組
   む意欲も、個人のパワーの明らかな源泉となる。

10.フレーミング:物事をどう見るかが、物事をどう見えるかを左右する
  ・間違った理由で正しい決定を下すよりは、正しい理由で間違った決定を下す
   方が、なにやら上等でさえあるかのように見える。
  【対照性】
   我々は自分たちの出す提案がその前に出したものと対比されることの利点を
   活かし、同時に十分に注目されるよう目立たせる必要がある。
  【コミットメント・プロセス】(心理的コミットメントの原理・・・心理的な自
   由を制約する)
   ①外からの圧力がほとんど、または、まったくない中で自発的に選択する行
    為
   ②目に見え、公然としているため、責任を無視できない行為
   ③とり返しがつかず、簡単には変更できない行為
   ④自分たちの態度や価値観、あるいは後の行動についての意味合いが明確
    な行為
  【希少性】
   物事がどう見えるかは、それがどれくらい希少かということにも左右される
  ・決定と活動は、毎日新しく始まっているのではない。コミットメントの履
   歴、現在の事象を評価する状況に作用する過去の選択の履歴、何を見るか、
   どのように見るかに作用する、認知のレンズにある履歴に気づく必要がある
   のだ。


11.対人影響力
  ・対人影響力のいろいろなテクニックを、マーケティングのトリックとか、正
   確な判断を行う能力を歪めるもののように片付けたくなるのも確かだ
   が、・・・正しくない。
  ・我々は同僚の言動による影響を受け(社会的証明効果)、相手に好かれよ
   う
  ・好印象をもたれようとして見せる行動に左右される。それだけでなく、社会
   的舞台(組織)で生み出され、そこで利用される感情にも影響される。
  ・状況に関する他の人の定義を受け入れ、協力的な相互作用を守る行動ルール
   に従う能力を持つことは非常に重要だ。対人影響力に関するこうした戦略
   は、社会的、相互依存的世界の産物であると同時に、個人の有効性にも組織
   の有効性にも貢献しうる重大な要因である。

12.タイミングがほぼすべて
  ・遅延は偶然に見せかけて行われることも多いが、故意にあからさまに使われ
   ることもある。
  ・十分にタイミングを見計らった行為は成功しても、同じ行為が不適当なタイ
   ミングでなされれば、成功のチャンスがまったくないかもしれない。
  ・タイミングに関する戦略の考察
   ①早期に最初のアクションをとることの優位性とコスト
    デメリット・・・遅らせれば相手の見解のより多くを学習でき、その知識を
           使って成功率のより高い戦術の策定が可能
           自分の姿をさらすことになる
    メリット・・・立場を固めること、元に戻しにくいアクションをとること
          で、後続をこちらの立場に合わせづらくする。
          サプライズの優位性(相手に備えがないのを気づかせる可能
          性がある)
   ②遅延に関する戦略
    遅延はある状況でなされようとしていることへの抗争で使われることが多
    い戦術である。
    a発案者がその努力をつづけるのに嫌気をがさす
    b継続に疲労が蓄積しだすことに加えて支援者が離れていく
    c遅延が効果的なのは決定自体に期限が設定されていることが多いため、
     遅延が拒否の原因になる。  
   ③待機をパワー形式とパワー表示に使う方法
    自分が到着するのを相手に待たせる手段
   ④期限が決定内容に及ぼす効果
    期限は物事を達成するための有効な手段であり、緊急性や重要性といった
    感覚をつたえ、だらだら遅らせる戦略への効果的な対抗策となる。
   ⑤決定内容が検討順序に与える効果
    検討の順序は人々の物事に対する感じ方に影響するだけではない。アジェ
    ンダは決定の流れを代理する。  
   ⑥機が熟したときに介入する重要性

13.情報と分析の政治学
  ・知的能力だけで優れた決定がもたらされるのなら、ベトナム戦争にはほとん
   どミスはなかったはずだ。
  ・パワーは、まったく目立たぬときに、最も効果的に使われる。合理的な分析
   プロセスや合理的に見える分析プロセスを使うことは、パワーの影響力の行
   使を目立ちにくくするのに役立つ。
  ・組織生活においては、常識や常識的判断が、いわゆる事実や分析よりも重要
   だという結果になることがしばしばある。
  ・意思決定過程に合理性が求められることで、そのプロセスがもともと曖昧な
   場合には、個々人には自分や部署に有利な基準を選択的に主張する隙間が生
   まれる。
  ・組織においてパワーを行使するのに情報と分析の利用を躊躇すべきではな
   い。

14.パワーの統合・強化のために構造を変える
  ・独立したユニットの解体やパワーの削減は、必ずといってよいほど、集権化
   された位置にあるユニットのパワーを強める傾向がある。
  ・構造的パワーは、資源、情報、公式権限が豊富な部署のコントロールを入手
   することによって形成されるが、自分の対抗馬がこうした構造的パワー基盤
   を入手するのを防ぐことでも形成される。ある部署のコントロールを握る
   と、そこの影響力の範囲を拡張するのに構造的な組織再編を使えるようにな
   り、それによって、組織内の競合する部署を利用してパワーを強化すること
   になる。
  ・組織におけるパワーと影響力の行使には、システムの持つ公式構造の重要性
   を認識することと、設計と再設計を活用する能力をいかに活用するかが重要
   である。

15.象徴的行為:言語、儀式、舞台
  ・大きなデスクは権限を示唆し、訪問者と聞き役を隔てる溝になってしまい、
   相手が自由に話しにくくなると考えたのである。
  ・言語や儀式のように、背景設定もパワーの影響力の行使において大切なの
   で、設定は慎重に検討し、戦略的に利用すべきである。
  ・言語、儀式、背景設定が影響力の行使にとって非常に重要だという理由のひ
   とつは、我々が自分たちに対してもつこれらの効果をほとんど意識しないこ
   とが多いからである。

16.強者も衰退する―――パワーはいかに失われるか
  ・パワーのある人たちは、異議をつきつけられたり、悪いニュースを伝えられ
   ることがまれだし、意見具申があっても、自分に合わない情報を拒否する傾
   向がある。
  ・パワー喪失を避けるために、環境の微妙な変化に、折に触れ注意し、特定の
   スタイル、特定の活動セット、特定のアプローチが効果的なのは、特定の時
   代の慣習や関心とあっているからなのだと認識する必要がある。また、新し
   い現実に適応するためには、慣れ親しんだ習慣を捨て、自分の行動を順応さ
   せる柔軟性もいる。
  ・長期の生き残りを考えるなら、速やかに自分の立場を活用してパワーの他の
   源泉を構築すべきであり、地位だけで見かけ以上の安全が保障されるなどと
   は決して思わないことだ。
  ・組織には相互依存性がある。そんなパワーや地位にも、他の人たちへの依存
   症は残る。自分が必死に働いて獲得したパワーであればこそ、また多大な犠
   牲を払って得たものであればこそ、喜び浮かれる誘惑は強い。しかし、性急
   に過大なメリットを求めるのは、自分のパワー基盤を間違いなく損ねる。
  ・我々が学びたいのは、早まってパワーを失うことを避ける方法と優雅に地位
   を去る方法である。組織が動き、統治されるシステムにおける自分たちの役
   割を理解することが、この二つの目標の達成に役立つ。

17.政治的なダイナミクスを生産的に管理する
  ・「諸君、計画とは昨年自分のやったこととは違うことを来年やろうとするこ
   とではないのかね」
  ・課題は組織のパワー分布をシフトさせがちな新しい視点や新しい構想を、組
   織を壊すような大きなトラウマや混乱を招かずに、いかにしてプロセスに組
   み込んでいくかにある。
  ・政治的ダイナミクスに潜む問題と機能不全は、組織の段階とプロセスによっ
   て異なる。パワーや影響力から発生する潜在的問題に対する感受性、さまざ
   まなトレードオフの考慮、組織の意思決定の段階への気づきは役に立つもの
   の、こうしたダイナミクスを生産的に管理するために必要な洞察に必ずつな
   がるわけではない。
  ・パワーと政治性は環境の状況変化に組織を適合させるのに役に立ち、必要か
   もしれないが、そのプロセスが必ずうまく機能する保証はない。さまざまな
   参加者の間の政治的スキルと利益の分布状況に依存することがほとんどであ
   る。

18.パワーによるマネジメント
  ・問題は、われわれが世界を善玉悪玉がはっきりわかれた崇高な道徳劇と見た
   がることだ。パワーを獲得することは必ずしも魅力的なプロセスではなく、
   その利用も同じだ。
  ・パワーによるマネジメントとは、下記の諸概念を知り、その知識を使って物
   事を実行する意思を持つことである。
   ①どの組織にも、さまざまな利害があることを認識すること。
    我々が第一にすべきことは、政治的状況を診断し、かかわる利害が何か、
    そして組織を特徴づける重要な政治的サブユニットがどれかを理解するこ
    とである。
   ②そうした人間やサブユニットが、自分の利益に絡む課題をどう見ているか
    を理解することである。また、そうした視点の裏にある理由も理解する必
    要がある。
   ③物事を成し遂げるためにはパワーがいるということ、しかも抑えなければ
    ならない相手よりも大きなパワーが必要だということであり、そのために
    は、パワーがどこから来て、そうしたパワー源はどうしたらつくれるのか
    を理解することが不可欠である。
   ④組織において形成され利用されるパワーを使った戦略と戦術を理解するこ
    とである。これにはタイミングの重要性、構造の利用、コミットメントや
    他の形態の対人影響力に関する社会心理学が含まれる。

実践する経営者(P・F・ドラッカー)

2008-12-14 13:58:13 | 経営
第Ⅰ部 成長と戦略

第1章 不確実性時代のプランニング・・・トレンドを利用せよ
    ・すでに起こった変化に強みを合わせることからプランニングが生まれ
     る。そうすることによって、会社は予期せぬことを自らの優位に転ずる
     ことができる。そのとき、不確実性は脅威ではなく機会となる。
    ・ただし、1つ条件がある。機会に応えられるだけの知識と人材を用意し
     ておかねければならない。これは未来のための予算を別途用意(=景気
     の状況にかかわらず支出額の10~12%)しておかなければならない。

第2章 よい成長と悪い成長・・・成長戦略の基本は何か
    ・成長戦略の基本は、機会に備えて資源を自由にしておくことである。
    ・成長するためには、競争に負けたもの、陳腐化したもの、生産性の低く
     なったものを捨てる仕組みをもたなければならない。
    ・成長戦略は、機会のあるところに的を絞らなければならない。自らの強
     みが異常なほどに大きな成果を生む分野に集中しなければならない。
    ・成長戦略は、市場、人口、経済、社会、技術に注目し、予期される変化
     とその方向性を知らなければならない。「すでに起こった変化のうち、
     長期的なインパクトをもつものは何か」を検討しなければならない。
    ・成長戦略は成長を脂肪(=生産性を向上させず低下もさせない量の増
     大)や癌細胞(=量の増大が全体としての生産性の低下をもたらす)と
     区別しなければならない。 
    
第3章 成長が悪夢を招くとき・・・5つの処方箋
    ・中小企業がコントロール不能とならずに、成長の危機による深刻な傷を
     負わないための5つの処方箋
     ①成長は新たな資金を要求することをしらなければならない。
      →利益よりもキャッシュフローを重視する。
     ②成長企業とくに中小企業は、少なくとも二年後ないし三年後の財務構
      造と資金調達先を予定しておかなければならない。
     ③成長に伴う危機を避けつつ成長するには、将来必要となる情報(特に
      市場で起こっていることの情報)は何かを予期しておかなければなら
      ない。
     ④成長を欲するならば、技術、製品、市場を集中させなければならな
      い。(雑木を切り払って、身を軽くしなければならない。)
     ⑤中小企業は通常、チームとしての経営陣に恵まれないものである。そ
      のため、成長するつもりであるならば、かなり早くからチームとして
      の経営陣を用意しておかなければならない。
    ・中小企業が成長していくには、「事業にとって最も大切な活動は何か」
     を問わなければならない。そして「誰がそれらの活動のための担当者と
     して適任か」を問い、さらに「適任者がいない場合は、誰に兼任しても
     らうか」を問わなければならない。
    
第4章 ゼロ成長企業における経営の心得・・・ゼロ成長を当然としてはならない
   ・重要なことは、人材、特に経営管理者や専門家の質を維持し、向上させつ
    づけることである。
   ・ゼロ成長時といえでも、若い人たちを惹きつけ、仕事のできる者を引きと
    めておくには、昇進の機会を与えなければならない。
   ・成長できないのであれば、事業の内容をよくしなければならない。組織に
    は挑戦すべき目標が必要である。
   ・安易な多角化は失敗する。
   ・ゼロ成長を当然のこととしてはならない。ゼロ成長企業の経営にあたって
    は、「われわれの強みは何か。その強みは、人口、市場、流通、技術の変
    化によって生ずる機会のどこに適用できるか」をとわなければならない。
    人的資源の能力を維持し、その生産性を向上させ続ける会社は、必ずや大
    きな成長の機会に出合う。

第5章 規模は必要か・・・大きさのハンデはなくなった
   ・大企業は、よりよいものになるのではなく、より独特のものにならなけれ
    ばならない。大きいことによる相乗効果は期待できなくなる。企業は、一
    つの製品分野ないし一つの市場に焦点を合わせるほど、よりうまく事業を
    マネジメントできる。
   ・異なる技術や市場へのアクセスのための多角化は、企業買収や新規開発よ
    りも、パートナーシップ(提携)、合併、少数株式保有などの戦略的提携
    のほうが成功するようになった。
   ・多様な製品、技術、市場をもつ企業にとって、分権化はもはや十分ではな
    い。それぞれの部門を別個の事業として分離しなければならない。

第6章 同族会社の経営・・・同族会社は繁栄を続ける秘訣は何か
   ・一族でない者と同等の能力をもち、同等以上に働く者でない限り、同族会
    社で働かせてはならない。
   ・一族の者がどれだけいようと、またいかに有能であろうと、経営陣のポス
    トの一つは一族でない者を充てなければならない。
   ・同族会社といえども、まったくの中小企業を除き、専門的な地位(生産、
    マーケティング、財務、研究開発、人事など)には一族でない者を必要と
    する。
   ・後継者問題にかかわる意思決定は、利害関係のない、一族でない者にゆだ
    ねること。


第Ⅱ部 パートナーシップの時代

第7章 ネットワーク社会における経営・・・自らをマーケティングする
   ・パートナーシップにおいても、マーケティングの考え方(「彼らは何をし
    たいか、彼らの目的は何か、彼らの価値は何か、彼らのスタイルは何
    か」)が必要である。
 
第8章 パートナーシップに成功するには・・・問題はうまくいったとき起こる
   ・パートナーシップを組む前に、全当事者が自分たちの目的と子供の目的に
    ついて徹底的に検討しておかなければならない。
   ・パートナーシップをいかにマネジメントするかについても前もって合意し
    ておかなければならない。
   ・誰がパートナーシップをマネジメントするかを決定しておかなければなら
    ない。合弁事業の場合には経営が独立していなければならない。経営の任
    に当たる者は、その合弁会社を成功させるべく動機づけられていなければ
    ならない。
   ・パートナーシップの責任を組織内に公に位置づけておかなければならな
    い。最善の方法は、パートナーシップ関係はすべて経営陣の一員に任せる
    ことである。
   ・意見の不一致をいかに解決するかについて、事前に合意しておかなければ
    ならない。パートナーシップにおいてはトップダウンの指示は機能しな
    い。大きな権限をもつ調停者を事前に決めておかなければならない。

第9章 企業買収を成功させる5つの原則・・・成功する買収と失敗する買収
   ・企業買収は、買収する側が買収される側に何を貢献できるかを考えて、は
    じめて成功する。
   ・企業買収による多角化は、他のあらゆる多角化と同様、共通の核(市場、
    技術、文化)があってはじめて成功する。
   ・いかなる企業買収であれ、買収する側の人間が、買収される側の製品、市
    場、顧客に敬意をもっていなければ買収は成功しない。企業買収には体質
    の一致がなければならない。
   ・買収した側は買収された側に対して、ほぼ一年以内に経営陣を送り込まな
    ければならない。経営陣を買えると思うことがそもそも間違いである。
   ・買収した最初の一年間は、買収した側と買収された側の人間を大勢境界を
    越えて異動させ、昇進させなければならない。そうすることによって、双
    方の人間に対し、買収が機会であることを確信させなければならない。


第Ⅲ部 マーケティングと情報
 
第10章 起業家が経済を救う・・・ハイテク、ローテク、ノーテクの役割
   ・ハイテクは重要である。ビジョンを与え、進歩を生み、興奮を呼び、未来
    をつくる。しかし、ハイテクは今日の担い手としては取るに足りない。
   ・雇用を創出しているのは、ハイテクならぬローテクでありノーテクであ
    る。

第11章 外を歩き回ることによる経営・・・市場を知るには経営者自身が外へ出よ
   ・社内を歩き回ることに頼るならば、経営者は間違った安心感に陥る。自分
    が知らされたことは、部下が耳に入れようとしたものであるにすぎないに
    もかかわらず、必要な情報はすべて手にしているものと思う。
   ・今日では、経営者に対する正しい助言は外を歩き回れである。

第12章 小売業における情報革命・・・果てしなき進化
   ・新しい小売業は、双方向テレビによる無店舗販売を考えている。

第13章 大事なのは外の世界・・・内部データは情報ではない
   ・経営者がコンピューターに精通してきたために直面した問題
    ①情報ユーザーたる経営者自身が、いかなる情報が必要かを知らなければ
     ならない。意思決定、とくに戦略的な決定を行ううえで最も必要になる
     のが、外の世界についての情報である。
    ②市場外の情報、すなわち、人口、競争相手、技術、経済、為替レートに
     ついて、いかにして入手するか、いかにして検証するか、いかにして既
     存の情報システムと統合するかという問題に、あらゆる組織が直ちに取
     り組まなければならない。
    ③マネジメント・インフォメーション・システムと会計システムとの結合


第Ⅳ部 イノベーションと生産性

第14章 イノベーションする会社・・・イノベーションに成功するには
   ・イノベーションに優れた会社は、イノベーションがアイデアから始まるこ
    とを知っている。アイデアのほとんどが意味あるものにならないことを知
    っており、これらを意味のあるもの、可能性のあるもの、機会にするには
    何が必要かを考える。
   ・イノベーションに優れた会社は、新しいアイデアの最大の市場は予想外の
    ところにあることを知っている。
   ・イノベーションに優れた会社は、予算からスタートしない。会社が生き残
    るには、どれだけのイノベーションが必要かを明らかにするところからス
    タートする。製品、サービス、工程、市場のすべてが陳腐化しつつあり、
    しかもその速度が速いことを前提とする。
   ・さらに賢明な会社は、イノベーションを生むのは金ではなく人であること
    を知っている。
   ・しかしそれらの会社は、イノベーションのためのアイデアの半分以上が、
    当初はいかなる成果ももたらさないことを知っている。そこで彼らは、イ
    ノベーションのための企画、予算、計画、管理を既存の事業とは別に扱
    う。
   ・イノベーションに優れた会社は、イノベーションのための活動を厳しく管
    理する。古いもの、陳腐化したもの、もはや生産的でないものを廃棄する
    仕組みをもっている。
   ・手の引き方には、①新たな努力はいっさいやめ、利益を生む間だけ事業を
    維持していく、②競争優位に立つための新しい方法や市場を見つける「展
    開」、③廃棄がある。
   ・陳腐化したものの計画的な廃棄こそ、自らの人材のビジョンとエネルギー
    をイノベーションに集中させる唯一確かな方法である。

第15章 研究開発にかかわる10の原理
   ①新しい製品、プロセス、サービスは、損益分岐点に達したその日から陳腐
    化が始まる。
   ②自らの製品、サービス、プロセスを自ら陳腐化させることが、競争相手に
    よる陳腐化を防ぐ唯一の手立てである。
   ③研究開発を純粋と応用にわける区分には意味がない。
   ④物理、化学、生物、数学、経済学は、それ自体研究の対象とすべき体系で
    はない。いずれも手段である。
   ⑤研究開発は三つの活動(カイゼン、展開、イノベーション)からなる。
   ⑥狙いは高くしなければならない。
   ⑦効果的な研究開発には長期と短期の成果がある。投入すべきエネルギーが
    大きいだけに、短期的な成果で満足してはならない。あとに続く長期的な
    プロセスへの第一歩とならなければならない。
   ⑧研究開発は作業としては独立していても、機能としては独立していない。
    製品、販売、サービスに研究成果を転化するための開発活動は、研究開発
    と手をたずさえて進めなければならない。加えて製品、販売、サービスの
    仕事のすべてが研究開発に影響を与えるとともに、研究開発の成果がそれ
    らの仕事に影響を与えなければならない。
   ⑨効果的な研究開発を行うには、製品、プロセス、サービスのみならず、研
    究プロジェクトそのものまで体系的に廃棄していくことが必要になる。
   ⑩研究開発もまた他のあらゆる活動と同じように、量的な評価を受けなけれ
    ばならない。

第16章 知識労働の生産性をあげる4つの方法・・・知識労働者の自己実現をはかる
   ①知識労働者自身に責任をもたせる
    →(組織に対する)貢献に焦点をあわさせる
   ②知識労働者が自らの貢献を評価できるようにする
   ③知識労働者に本来の仕事をさせる 
    →書類づくりでセールスにいけないセールスマンを作らない
   ④知識が高級な資源であることを認識する
    →成果を生み出す人材がどこにいるかを知るために知識労働者と機会の棚
     卸をする必要がある
          
第17章 アウトソーシングを行う本当の理由・・・生産性をあげる唯一の方法
   ・仕事の生産性を向上させるには、仕事を立派に行うことによって経営陣に
    まで昇進できなければならない。これが可能となるのは、外部のアウトソ
    ーシング先が仕事を行う場合だけである。

第18章 恒久措置としてのコスト削減・・・本命はコスト予防
   ・コスト削減に着手するに当たっては、通常、「いかにしてこの仕事を効率
    的にできるか」を問うが、これは間違った問である。正しい問いは、「こ
    の仕事をやめたならば屋根が落ちるか」でなければならない。答えが「落
    ちはしないだろう」であれば、その仕事を廃止すればよい。
   ・必要な仕事についてもその「貢献」「目的」を問うべき。
   ・費用効果上優れた仕事というものは、一つの目的しかもたない。一つの仕
    事に二つ以上の目的を相乗りさせることは、非効率とコスト増をもたら
    す。(目的は一つに絞らなければならない。)
   ・コスト削減の次のステップは、最小のコストを実現するための情報システ
    ムの構築である。
   ・コスト削減は始まりにすぎない。コスト予防が必要。コスト予防とは、具
    体的な改善目標をもって、毎年あらゆる仕事に生産性の向上をはかること
    である。

第19章 為替レートの変動から身を守る・・・為替レートがコストになった


第Ⅴ部 利益と経営の評価

第20章 利益の幻想・・・利益とはコストである
   ・利益とは、資金なる名の重要資源の正真正銘のコストである。
   ・利益とは、あらゆる経済活動に付随するリスクと不確実性に対する定量化
    可能な保険料である。
   ・利益とは、明日の雇用と年金の資金である。
   ・いかなる会社であれ、事業を営む限り、これら3つのコストをカバーしな
    ければならない。
   ・利益と社会的責任は対立しない。真のコストをカバーする収入をあげるこ
    とは、会社の経済的、社会的責任である。

第21章 犯してはならない5つの大罪・・・業績はこうして悪くなる
   ①利益幅と創業者利益を過信すること。
    利益幅を信奉すれば競争相手に市場を提供することになる。最大の利益を
    もたらす利益幅こそ求めるものである。
   ②市場が受け入れる限度一杯に価格を設定すること。
    強力な特許をもっていたとしても競争相手にリスクのない機会を提供す
    る。
   ③コストを中心に価格を設定すること。
    しかし、有効な価格政策とは、価格を中心にコストを設定すること。
   ④昨日の祭壇に捧げるために明日の機会を屠ること。
   ⑤問題に餌をやり、機会を飢えさせること。
    問題を解決しても、得られるのは損失を抑え込むことだけである。成果と
    成長を生み出してくれるのは機会である。
    したがって、まずはじめに、機会をリストアップし、適切な人員配置をし
    なければならない。かつ適切に支援しなければならない。その後はじめて
    問題をリストアップし、それらに対する人員配置に悩めばよい。

第22章 経営能力を採点する・・・4つの領域における成果
   ・経営の質をチェックすることは必要。業績とは事業の成果であり、事業の
    成果とは昨日の経営の成果である。
   ・今日の経営の成果が明らかになるのは明日である。事業の明日は、次の四
    つの分野(経営の試験紙)における今日の経営の成果に左右される。(そ
    れぞれの成果と期待を比べる必要がある。)
    ①投資の決定
     必要なものは、決定時の目論見に責任をとる姿勢であり、決定の成果を
     正面から受け止める真摯さである。
    ②人事の決定
     今日の決定が明日実を結ぶかは、人材の育成と配置にかかっている。
    ③イノベーションの成果
     研究に着手したときの約束や期待との比較も可能である。同じことは、
     新事業、新製品、新市場、イノベーションについてもいえる。
    ④計画の成果
     計画とは、今日の資源を明日のために使うプロセスである。したがっ
     て、計画の能力は明日をつくるという経営上の責任を果たすうえで欠か
     すことはできない。当然その能力の評価は、経営者の仕事ぶりを評価す
     るうえで不可欠である。
   ・ただし、間違った事業に携わっていたのではどうしようもない。
 
第23章 自社の業績を評価する・・・5つの計器によるチェック(トレンドを見る)
   ①市場地位
    市場における地位は上がっているか、下がっているか。大事な市場で市場
    シェアは改善しているか。
   ②イノベーション
    イノベーションの成績は市場における地位に見合っているか、それともそ
    れ以下か。 
   ③生産性
    人、物、金という三つの生産要素の投入と、それらの生産要素が生み出す
    付加価値との関係を示す。
   ④キャッシュフロー
    キャッシュさえあれば、利益が出なくとも長い間何とかやっていける。
   ⑤収益性
    収益性を測るには、三ヵ年のローリング方式によって経常利益を見ていけ
    ばよい。

第Ⅵ部 組織と人
 
第24章 情報中心の組織をつくる・・・情報化が階層をフラットにする
   ・情報化組織に必要なのは、「誰が、いかなる情報を、いつ、どこで必要と
    しているか」を問う意思である。
   ・情報化組織は、組織内の個人と部門が、自らの目標、優先順位、他との関
    係、コミュニケーションに責任をもつときのみ機能し、高度の自己規律を
    要求する。だからこそ迅速な意思決定と対応を可能にする。多様性と柔軟
    性が可能となる。
   ・情報化組織が必要とするのは、現場からトップにいたるまでの自己規律と
    責任のうえに立つリーダーシップである。

第25章 チームの種類と使い方・・・野球型、サッカー型、テニス・ダブルス型
   ・野球型
    メンバー一人ひとりを評価し、目標と責任をもたせることができる。他の
    メンバーに調子を合わせる必要がない。ただし、柔軟性がない。
   ・サッカー型
    柔軟性を実現する。しかし、サッカーの監督が指示する戦術のような「仕
    様書」が必要となる。あらゆるメンバーがチームのリーダーに従う。
   ・テニス・ダブルス型
    少人数である。個々のメンバーの仕事は柔軟であっても、チーム全体の目
    標は明確でなければならない。

第26章 スタッフの肥大化を阻止せよ・・・スタッフに関する5つの原則
   ①スタッフは重要度の高い、長期の問題に専念させなければならない。
   ②スタッフが取り組む仕事は限定しなければならない。
   ③スタッフの仕事には、目標と期限を決めさせなければならない。
   ④いくつかの現業の仕事、できれば二つ以上の機能別部門において実績のな
    い者をスタッフとしてはならない。
   ⑤スタッフの仕事を一生の仕事にさせてはならない。

     
第Ⅶ部 リーダーシップと企業文化

第27章 行動様式を変えるための4つの方法・・・企業文化は利用せよ、捨てるなか
    れ。
   ①いかなる成果が必要かを明確にすること
   ②行動様式の変化に必要なことは、すでにそれを行っているところはどこか
    を問うこと
   ③組織の文化に根ざし、かつ成果をあげる行動を奨励すること
   ④行動様式の変化をもたらすには評価と報償を変えること
     
第28章 リーダーにカリスマ性はいらない・・・リーダーシップへの誤解
   ・リーダーシップはカリスマ性に依存しない。
   ・リーダーシップとは仕事である。
    効果的なリーダーシップの基礎とは、組織の使命を考え抜き、それを目に
    見える形で明確に定義し、確立することである。リーダーとは目標を定
    め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する者である。
   ・リーダーシップとは責任である。
    失敗を人のせいにしない。真のリーダーは、自らが責任を負うべきことを
    知っているがゆえに、部下を恐れない。
   ・リーダーシップとは信頼である。
    信頼するということは、リーダーの言うことが真意であると確信できるこ
    とである。それは真摯さというものに対する確信である。
 

自滅する企業(ジャグディッシュ・N・シース)

2008-11-30 09:57:19 | 経営
【診断書1】現実否認症

 ○発症のきっかけ
  ・新しいテクノロジーの否認
  ・消費者嗜好の変化の否認
  ・新たなグローバル環境の否認

 ○主な症状
  ・「我々は違う」症候群・・・「我々は違う。だからそんなことが我々に起こる
                はずがない」
  ・「自前主義」症候群・・・誰か他の人がもっといい方法を思いついたと認める
                のは、プライドが許さない。
  ・「正当化」症候群・・・自分の状況を無視する、正当化する、または他人のせ
               いにする。

 ○治療法
  1 探す
    他社の失敗に対する反応を分析する。
    偏見、根拠のない選り好み、改革に対抗する部署はないか、自社の製品と
    工程と社員をよく観察する。
    管理職の言うことを注意深く聞き、正しい情報が得られるか、確認する。
  2 認める
    現実否認の兆候を見つけたら、病気にかかっていることを認めなくてはな
    らない
  3 評価する
    どれだけ深く現実否認にはまっているか測定する。
  4 変える
    現実否認へのはまり方が深ければ深いほど、変革は難しい―だが不可能で
    はない。成功事例(特化して生き残ったテクトロニクス)を参考にする。



【診断書2】傲慢症

 ○発症のきっかけ
  ・異例の業績が今日の現実に対する認識をゆがめる
  ・ダビデがゴリアテを倒す
  ・誰もまねできない製品やサービスを開拓する
  ・他の人より頭がいい

 ○主な症状
  ・話を聞かない
   すべてわかっていると思い込み、顧客、従業員、投資家、消費者団体、行政
   の言うことに耳を傾けていない。
  ・自らを誇示する
   成功をやたらと見せびらかしたがる。
  ・人を威嚇する
   会社の内でも外でも、いじめっ子のような振る舞いをする。
  ・横暴になる
   誰も自分たちの事業を規制はおろか問題視さえできないと思っているので、
   ルールや手順を守らない。
  ・同意ばかり求める
   自分たちの考えを正当化する人たちをひいきにし、批判的な人間は排除する。
  ・自社開発主義(自前主義)症候群
   「自社開発でない」ものは、よいわけがないと信じている。

 ○治療法
  1 管理職に定期的に新しい挑戦の機会を与える
    管理職にチャレンジさせる。ただし失敗しても許す。失敗は謙遜を教えて
    くれる。
  2 従来とは違う後継者選びを実行する
    職種、部門、市場の枠を超えて候補者を昇進させることを考える。
  3 さまざまな教育機関、国籍、人種から採用し、人材プールを多様化する。
    人材の遺伝子を多様化することで、強い会社にする。
  4 外部の考え方を取り入れる
    外部の考え方を採用し、傲慢の壁を打ち壊す。
  5 リーダーを変える
    社外の人間を招くことを考える。


【診断書3】慢心症

 ○発症のきっかけ
  ・過去の成功が規制下の独占によるものだった
  ・過去の成功が流通独占の上に成り立っていた
  ・成功するべく政府から「選ばれる」
  ・政府が企業を所有している、または経営している

 ○主な症状
  ・意思決定を急がない
   企業文化全体が動きの遅いギアに入っている。急ぐのは性に合わない。
  ・意思決定プロセスがひどく官僚的である
   意思決定が委員会参加者の横暴によって妨げられている。
  ・ボトムアップ、分権、合意の文化である
   意思決定に、全員を参画させる必要がある。
  ・高コスト構造になっている
   コストのかかるやり方をしている。
  ・完全な垂直統合の企業構造である
   すべて社内でまかなっている。
  ・機能、製品、市場、顧客の相互補助がさかん
   社内では平均コストと平均価格が指標の主流になっていて、利益を得られて
   いない部門が把握できていない。

 ○治療法
  1 リエンジニアリング
    高品質を実現し、無駄を省き、非効率を抑制する。
  2 組織改革
    製品または地理などを基準に事業部門を再編成することで、利益と損失を
    分散管理する。
  3 ノン・コア事業を切り捨てる
    競争力のない事業はやめる。
  4 ノン・コア事業をアウトソースする
    コアとなる事業でないのなら、アウトソースする。
  5 会社に新しい活力を吹き込む
    会社の文化を改革するのに必要なのは、常にチャンスをうかがっている積
    極的で強く新しいリーダーである。


【診断書4】コア・コンピタンス依存症

○発症のきっかけ
 ・研修開発への依存
 ・デザインへの依存
 ・販売への依存
 ・サービスへの依存

○主な症状
 ・会社を変える努力が実っていない
  リエンジニアリングや組織改革を試みたが、何も変化が起こっていない。
 ・わくわく感が消えた
  会社が意気消沈しているようだ。
 ・ステークホルダー(利害関係者)が逃げ出している
  投資家、取引業者、顧客の忠誠心が消えた。

○治療法
 1 新しい用途を見つける
   同じコア・コンピタンスから新しい価値が生まれるような、新しい用途を見
   つける。
 2 新しい市場を見つける
   同じコア・コンピタンスの価値がそのまま生きる、新しい市場を見つける。
 3 バリューチェーンの上流、下流へ進出する
   バリューチェーンの上流か下流に進出することで、コア・コンピタンスの幅
   を広げる。
 4 新しいコア・コンピタンスを開発する
   新しいコア・コンピタンスを育成し、その事業を伸ばす。
 5 経営資源投入の選択と集中
   労力と経営資源の投入先を、成長し高収益が得られる可能性が高い分野に変
   える。


【診断書5】競合近視眼症

○発症のきっかけ
 ・産業の自然な進化
 ・クラスター(産業集積)現象
 ・業界ナンバー・ワンで、かつパイオニアでもある場合
 ・反対のシナリオ―二番手がトップを追いかける場合

○主な症状
 ・小さなニッチ企業の共存を許している
  大手のことばかり気にしているので、ニッチ企業を脅威と見ていない。
 ・供給業者の忠誠心を、新進の競争相手に奪われている
  供給業者が「競争要因」になりうることに気づいていない。
 ・顧客(または流通パートナー)の戦略が「買う」から「作る」へ転換する
  顧客が上流に進出して製品をつくり、競争相手となる。
 ・新規参入企業、とくに新興経済国からの脅威を見くびっている。
  新参者の脅威を認識していない。
 ・代替技術に対して無力である
  脅威は常に存在していたのだが、対応が遅かったので降伏するしかない。

○治療法
 1 市場勢力図を見直す
   周辺部もくまなくチェックして、自分の弱点を見極める。
 2 自社の製品や市場の範囲を広げる
   既存製品の市場を広げるか、逆に、既存市場に出す製品ラインナップを拡張
   する。
 3 統合して余分な供給能力を絞る
   業界の過剰な供給能力を削減して、買い手の交渉力を弱める。
 4 新進のライバルに反撃する
   特異な競争相手に対して、相手の縄張りを攻撃することによって逆襲する。
 5 コア事業にもう一度集中する
   限られた経営資源を最も強い分野に集中させる。


【診断書6】拡大強迫観念症

○発症のきっかけ
 ・高利益率のパイオニア企業
 ・急成長する天才
 ・規模のパラドックス
 ・予期せぬ義務の足かせ
 ・政府の取り分

○主な症状
 ・ガイドラインのない場当たり的な支出
  興味深くて意欲をそそられることがあり、コストの管理がおろそかになる。
 ・コストセンター中心の組織
  効率ばかりが有用性さえも失われているかもしれないのに、常にコストを全社
  レベルで算出している。
 ・内部相互補助の文化
  1つの事業部の成功で別の事業部の失敗を隠すことを許している。
 ・数字の真実
  監査役、株価、業界アナリストが、業績がおもわしくないことを教えている。

○治療法
 1 どこにコストがかかっているのか確認する
   収益費用のバランスをとる。
 2 コストセンターをプロフィットセンターへ転換する
   あらゆる部門をプロフィットセンターへと再編できる可能性がある。
 3 最小事業単位で損益分散を管理する
   営業費用や資本コストをも含め、損益を各部門単位で管理する。
 4 垂直統合から「仮想統合」へ移行する
   とくに得意な1つか2つの領域に集中して、残りは外部に委託する。
 5 ノン・コア業務をアウトソースする
   ノン・コア業務を、規模の経済が効く外部専門業者に適切に委託することに
   よって、効率を上げ、コストを削減する。
 6 経営管理者を削減する(または適切な数にする)
   管理者階層を最小限にし、指揮系統を短縮する。
 7 費用プロセスのリエンジニアリング
   費用効率を上げるために自動化と統合を行う。
 8 マス・カスタマイゼーションへ移行する
   需要と供給のバランスをとり、無用な拡大を防ぐ。
 9 原価企画を導入する
   コストを最初から確定しておき、利益を確保するために、そのコストを維持
   あるいは削減する。
 10 世界一流の顧客になる
   供給業者を搾取するのではなく、生涯のパートナーにする。


【診断書7】テリトリー欲求症

○発症のきっかけ
 ・企業の象牙の塔
 ・決められた方針と手順が優先される
 ・創業者の文化が、より大きな企業に組み込まれる
 ・企業文化が特定の部門に支配される

○主な症状
 ・不和
  一人の強力な将軍の代わりに大勢の強情な副官がいる。
 ・優柔不断
  意思決定が非常に困難、あるいは不可能なプロセスである。
 ・混乱
  各部門が、ちぐはぐな行動を取っている。
 ・不快感
  誰も満足していない。とくに一般社員は不幸だ。

○治療法
 1 効果的なインターナル・マーケティングの展開
   リーダーは、部門を越えた関係者全員を、同じ目的のもとに団結させなくて
   はならない。
 2 管理職を象牙の塔から押し出す
   社員にさまざまな部門や地域を経験させる。
 3 恒久的な部門横断チームをつくる
   あらゆる部門からの代表者を巻き込んだ恒久的な経営チームを組織する。
 4 機能や地域ではなく、顧客や製品を中心に組織を再編する
   損益の管理単位を変更することによって、機能や地域による縦割り組織に起
   こる内輪もめを鎮める。
 5 自動化と統合
   コンピューター化によって、業務・組織・プロセスを統合する。


【体質改善指導法】・・・健康な組織を育成し、会社の寿命をのばすための予防策

1 現実否認症
  ・事業の前提や正当性を絶えず問題にする制度をつくる。
  ・管理職に将来の見据え方を教える実践的リーダーシップの講座を設ける。
2 傲慢症
  ・傲慢の落とし穴を絶えず指摘してくれるプロのエグゼクティブ・コーチを持
   つ。
  ・個人が露出する広報活動を制限する。
  ・誰か一人が絶対的な権力を持つことがないように、抑制と均衡のプロセスを
   確実に定着させる。
3 慢心症
  ・慢心レベルを常に定量的に判定する評価指標、できれば数値で示される評価
   指標を開発する。
  ・人事考課制度として業績給を導入する。
  ・ローテーション制度を導入して、リーダーにさまざまな職務を経験させる。
4 コア・コンピタンス依存症
  ・現行技術から次世代技術へと、常に先行して移行する。
  ・コア技術を他の製品や市場に広げる。
  ・コア・コンピタンスを別の市場や市場区分に多角化する。
  ・買収と統合による成長戦略を立案する。
5 競合近視眼症
  ・独立した調査部門をつくる。
  ・代替技術や競合技術に単独で投資する。
  ・パラダイム変換を起こす可能性がある周辺企業やニッチ企業を、定期的に探
   し出して買収する。
  ・これから競合企業と現れそうな新興市場に参入する。
6 拡大強迫観念症
  ・販売部門に、顧客別の収益性に基づく報奨制度を確立する。
  ・購買を管理機能ではなく戦略機能にする。
  ・多品種企業の場合、利益の高い新製品を絶えず精力的に製品ラインナップに
   加える。
7 テリトリー依存症
  ・わかりやすい透明な手法で後継者を育成し、管理職には、さまざまな職種を
   経験させる。
  ・部門間に上下関係をつくらない文化を築く。
  ・社外の要因に会社の焦点をおくことで、従業員を共通の目標に向けて一体化
   させる。
  ・必然的に支配的な文化が社内にある場合、その支配的文化に染まった人間に
   さまざまな部門を回らせる。


不祥事の法則(佐々島宏)

2008-11-30 09:51:00 | 経営
◎事業パートナーに必要な条件
 ・仕事の分野を明確にわけ、双方の業務不干渉を是とする
 ・プライベートは相互不可侵を貫く
 ・パートナーは動と静のように対照的なキャラクターがいい
 ・つねにコミュニケーションが取れる体制をつくる(両者間の風通しがいい)
 ・相手の人格を尊重し、それを意識的に外部にアピールする(プロパガンダ効果)

◎不祥事の大きな原因
 ・見逃し・・・「オハク」(=頭でっかち、コミュニケーション不得手社員)が幅
       をきかせていることで不祥事の芽を見逃す。
 ・見送り・・・無関心やコミュニケーション不足による不祥事の芽の見送り
 ・見過し・・・気づいていながら、わかっていながらの見過し

◎ヨヨヨの法則
 ・たがいの役割を確認できたり、たがいの存在を認識したり、目的や優先順位を
  確認できる仕組み、これこそが不祥事の「素」とも言える「見逃し」「見送
  り」「見過し」に対抗する最大の方策。「予知」「予見」「予防」の「ヨヨヨの法則」
  が肝要。
 ・あえて初歩的な約束事も「マニュアル化」して、積極的に人事制度まで波及さ
  せ「役」や「筈」をシステムとして導入していくべき。

経営学(小倉昌男)

2008-11-23 14:12:45 | 経営
第3部 私の経営哲学

○組織の活性化
 
  企業が成長すれば、時と共に組織は肥大化し、官僚的になる傾向がある。経営
 者は常に組織の肥大化を防ぎ、活性化の道を探さなければならない。

・戦後の組織論―ライン・スタッフ制
  本来の目的は、製造や販売の第一線部門から間接業務を取り除き、機能を純化
 して組織の機動的な活動を進めるものだった。だが、実際には、間接業務を担当
 するスタッフ部門が頭でっかちになり、ライン部門に対して過剰な報告を求めた
 り、企業の意思決定に時間がかかる欠点も見られるようになった。いずれにせ
 よ、製造業を対象とした組織論だった。

・事業部制の流行
  本社を持株会社化することが認められるようになって、状況は大きく変わっ
 た。商品種別ごとに経営のスピード化を図り、自主責任を貫徹するのが目的であ
 る事業部は、可能であれば、独立した子会社にしたほうが良い。

・個人償却制
  形式上は会社の所有としながら、実質的には社員個人に車両を持たせ、かつ、
 管理させる制度。道路運送法にも労働基準法にも抵触。個人タクシーにも認めて
 いるのだから規制撤廃すればいいと考える。要はコミュニケーションの問題。

・ピラミッド組織からフラットな組織へ
  組織というものは必ず自己増殖して、肥大化する傾向を持つ(パーキンソンの
 法則)。実力主義を妨げる年功序列主義。フラットな組織は、利益責任を第一線
 に近いところまで下げることを意味する。それによって、社内のコミュニケーシ
 ョンがよくなり、経営にスピードが出るとともに、第一線の社員のやる気が起き
 てくる。特にサービス業はフラットな組織が望ましい。

・人事考課の制度
  上司の目は頼りにならない。「下からの評価」「横からの評価」により、人柄
 に関する評価を取り入れるべき。


○経営リーダー10の条件

1.論理的思考
 ・経営は論理の積み重ねである。
 ・経営にはいろいろな場面で計画が必要である。重大な決定をする場合には、や
  はり計画の段階での予測が重要となる。試行錯誤のやり方にも留意し充分な検
  討が必要。
 ・自分の頭で考えないで他人の真似をするのが一番危険な人。情緒的に物を考え
  る人は経営者には向かない。
 ・論理的に物を考える人は、その結論を導き出した経緯について、筋道立てて説
  明することができる。また、説明をしているうちに、考え方を論理的に整理す
  ることもある。他に対して説明する能力も経営者にとって大事な資質である。

2.時代の風を読む
 ・企業は社会的な存在であり、その時代時代の社会の変化に強く影響される。経
  営者は時代の風がどちらへ吹いているか、的確に読み取らなければならない。

3.戦略的思考
 ・経営には「戦術」=日常の営業活動において競争に勝つための方策と「戦略」
  =経営目標を実現するための長期的な戦略がある。
 ・会社にとっていま何が本当の第一かを判断し、それを指示するのが経営者の役
  割。第一を強調するためには第二を設定すればよい。
 ・経営はトレードオフの連続(人件費削減VS営業力、サービスVSコスト)であ
  り、経営者には経営者でなければできない戦略的判断が、常に求められてい
  る。

4.攻めの経営
 ・経営は攻めの姿勢が大事。守りの経営(護送船団方式など)ではジリ貧になる
  のは明らか。 
 ・現在、経営者にもっとも求められているのは、「起業家精神」である。

5.行政に頼らぬ自立の精神
 ・役人の一番いけないところは、結果に責任を持たないことだが、世間知らずの
  役人の言うことを聞く経営者も悪い。

6.政治家に頼るな、自助努力あるのみ
 ・できないことははっきり断るのも経営者の資格の一つ。ただし、断り方が大事
  で、よく話を聞き、誠意を持って断ることで依頼者に不愉快な思いをさせない
  で帰ってもらうようにしなければならない。

7.マスコミとの良い関係
 ・宣伝と広報は違う。経営者は優れた広報マインドをもって積極的にマスコミと
  接触すべきである。

8.明るい性格
 ・経営者は常にプラス思考をする必要がある。
 ・新日本製鐵の稲山嘉寛名誉会長は、「ねあか」の人であると同時に「謙虚」な
  人であった。他人の人格を尊重し、長所を見つけて認めるという点で、経営者
  の大事な資質について教えられた。

9.身銭を切ること
 ・経営者はもらうべきものはもらい、部下に飲ませるときにはポケットマネーで
  払うようにしなければ、社員から尊敬される経営者にはならない。

10.高い倫理観
 ・企業が永続するためには、人間に人格があるように、企業に優れた「社格」が
  なければならない。人格者に人格があるように会社にも「社徳」が必要であ
  る。
 ・「真心」と「思いやり」をいつも忘れずに。
 ・経営トップがひとり高い倫理を誇っても、社徳の高い会社にはならない。社員
  全員の倫理性が高くてこそ、社徳の高い会社といえるのである。それにはま
  ず、トップが先頭に立ち、高い目標を目指して歩まなければならないのであ 
  る。



稲盛和夫の実学(経営と会計)

2008-11-23 14:03:29 | 経営
1.会計学の基本的な考え方
 ・原理原則に則って物事の本質を追求して、人間として何が正しいかで判断する
 ・減価償却と原理原則による判断(法定耐用年数は必ずしも正しくない)
 ・常識に支配されない判断基準
 ・売り上げを最大に、経費を最小に
 ・値決めは経営

2.経営のための会計学
 ・キャッシュベース経営の原則
 ・一対一対応の原則…モノ・お金の動きと伝票の対応は1:1、売掛金・買掛金
  の消し込みも事柄ごとに
 ・筋肉質経営の原則…中古品で我慢、健全会計に徹する(セラミック石ころ
  論)、「固定費」の増加を警戒、投機は行わない、「当座買い」(必要なとき
  に必要なもののみ買う)の精神
 ・完璧主義の原則…常に100%を目指す(厳しいチェックでパーフェクトを目指
  す)
 ・ダブルチェックの原則
 ・採算向上の原則…時間当たり採算制度、付加価値を追求するアメーバ経営(外
  部との競争を意識)
 ・ガラス張り経営の原則…公明正大な経理、社内に対するコミュニケーションの
  重要性、公正さを補償するための1:1対応の原則