この作品は、xbox360版アイドルマスターの如月千早を主人公としたSS小説です。
ついカッとなって書いてしまいました。反省はしていません(笑)。
MVのHPには置き場所がなかったんで、ブログに掲載。挿絵もないですけど……。
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『私は生きている』(前)
■
「あ、おかえりー。千早さん!」
「ただいま、やよい。あなたはいつも元気ね」
事務所の椅子をギシギシさせて遊んでいたやよいが、俺たちの帰社に気づいて、跳ね飛んで千早にまとわりついてきた。そしてクンクンと鼻をならして、俺がぶら下げているビニール袋に気がつく。
「わ、今からお昼ですか? ずいぶん遅いお昼ですね!」
俺は帰社途中に買ってきた『お持ち帰り弁当』をビニール袋から取り出して、ソファの前の机に並べた。
「まったく千早は、レコーディングとなると休憩なしで夢中になるんだからさ」
「ですから、私などに構わずお昼に行かれたら良かったのに……」
「ばーか。お前ががんばってるのに、そんなワケに行くか」
「ふふっ。ありがとうございます」
「新曲のレコーディングはどうだったんですか? 成功? やりましたねっ、ハイターッチ☆」
ぱちーん。
千早はにっこりとして、やよいのハイタッチに応じた。いつも歌と自分に厳しく、TVでもあまり笑うことのない『氷の歌姫』と呼ばれる千早からすると、ちょっと珍しい表情だ。
「千早念願の坂本さんの曲だったからな、感激もひとしおってところでしょ」
「ええ。プロデューサーには感謝してます。私のわがままを聞き入れてくださって、坂本さんに頼んでくれて。とっても素晴らしい曲でした」
「うー? 坂本さんって誰ですか?」
やよいは弁当箱に箸をつける俺たちにまとわりついてくる。こいつ、おこぼれ狙いだな。
「今売れっ子の作曲家さん。半年前から予約してたんだ」
「Perfectってユニットの音楽プロデュースをしてる人よ」
「あー! 知ってる知ってる。ニコチャン動画でブレイクしたって律子さんが言ってたよ!」
「おいやよい、そんなに俺の弁当ばっか見るなよ」
「うー……」
やよいは俺の唐揚げをじーっと見ていた。よし、これ見よがしにパクっと行ってみようか。
「あ~! うぅ~……」
「プロデューサー! 意地悪しちゃダメですよ、大人げない。あぁ、そんなにしょげないで……、やよい。私の唐揚げあげるから」
「おい、それは千早の」
「わーい☆ ぱくっ。幸せでふ~~」
……犬が見える。こいつは尻尾を振っている犬だ。まったく。
「千早はもっと栄養とったほうがいいよ。疲れてるんだから」
「私は揚げ物はちょっと……脂っこくて」
そういいつつも、ご飯も半分くらいしか箸をつけていなかった。いつもの事だったけど、千早は食が細い。
「これで新曲はマスタリングが残るだけですし、明日からは来月のライブに集中したいですね」
「あ~、あれは大変だぞ~。なんたって生だからな~」
「そのぶんやり甲斐ありますよ」
「う~? 生って? お刺身?」
首をかしげるやよいに、俺は面倒くさそうに説明した。
「来月の千早ソロコンサートは、生バンドの演奏なんだよ。ギターとか、ドラムとかプロの人を呼んでさ。普段はカラオケテープだろ?」
「え~! なんだか豪華? 凄いです~! お金がいっぱい、いーっぱいかかりそうです~!」
「一流のスタジオミュージシャン達とのセッション、緊張しますけど、とても勉強になりそうです」
「今の千早のレベルなら、そろそろ頃合いかなと思ってさ。生演奏の楽しさと緊張感を知ってもらいたくてね」
「ええ、楽しみです!」
普通のアイドルなら、初対面の熟練の演奏家たちに気後れしてしまうところだろう。しかし今の千早に恐れるものなどない。困難な試練をも楽しんでいるかのようだった。
如月千早。15歳の高校一年生。アマチュア時代から各地ののど自慢大会やボーカルコンテストに出続け、何度か日本一になった経験もある抜群の歌唱力を誇る。難しい譜面も読みこなす音楽に対する勉強熱心さ。自分に厳しいひたむきな努力。今の千早からは、トップアイドルへの道を一直線に駆け抜けようとする勢いを感じた。俺が何も言わなくても自主トレを欠かさないし、寝坊や過食の心配もない。
まったく、よくできたアイドル様様で、プロデューサーとしては物足りないくらいだぜ。
「……で、坂本さんが仰るには……」
「千早は坂本さんばっかりだなぁ。惚れたか?」
「そうかもしれませんね。実際、ちょっとかっこいいな、と思いましたし」
「な!?」
「くすっ、冗談ですよ。あの方には妻子がいるんですもの」
「さ、妻子がいなかったらどうだって言うんだよ? 今のはアイドルにあるまじき発言だぞ~! 千早ぁ!」
「アイドルなんて知りません。私は歌手ですから。くすくすっ」
そんな風に、坂本さんについて他愛のない会話で、盛り上がっていた時。
ああ。
なんてことだろう。
その事件は否定も巻き戻しもできない、厳然たる事実として起きてしまったのだ。
「あの~、坂本さんって、あの人も坂本さんれふね?」
「え、あの人って?」
やよいは最後の唐揚げをもぐもぐさせながら、TVを指さしていた。何事かと俺と千早はソファから身を乗り出して、画面を見つめた。
顔写真が、TVに映し出されていた。
あれ?
なんだか、さっきまで、見ていたような顔、じゃないか?
淡々と、アナウンサーが原稿を読み上げていた。
『作曲家の坂本鷹雪さん(36)が運転中の乗用車が、対向車線からはみ出してきたトラックに正面衝突し……』
千早は立ち上がった。顔は慄然としていて、みるみる真っ青になっていく。
俺はなんのことか、それが何を意味するのかすぐに理解できず、割り箸を持ったまま、口をバカみたいに開けて、TVを見つめていた。
TVカメラが、車を映していた。
…………おい、なんだよその車。
っていうか、……それ、車だよな?
車『だった』ものだよな? その鉄クズはよ?
高級そうな黒いジャガーだったはずだぜ? 俺の給料じゃとても買えねぇよ。
坂本さんが言ってたよ。そのピカピカのジャガーで、娘を幼稚園まで毎朝送ってるって。
それが……。
あぁぁ……、ぐっちゃぐちゃじゃないかよ!
『……すでに即死の状態を確認されました。坂本さんは人気ユニット『Perfect』の音楽プロデューサーとして若者たちに人気で……』
「うそ……」
唇を震わせながら、そう千早は呟いた。
■
五月なのにあいにくの雨だったけれど、葬儀にはむしろ相応しかったのかもしれない。
俺は黒ネクタイの喪服で、千早は学生服で、黒い傘を閉じて、粛々と参列に加わった。
公民館の式場には芸能界の有名人も多かったし、そうでない人も多かった。一般のファンの若者たちも皆黙って参列に加わっていた。遺体はひどい状態だったらしく、死に顔は公開されなかった。
「……まだ信じられません。あの坂本さんが亡くなられるなんて……」
「まだ若いのにな。俺と同世代だし、まだまだこれからってとこだったのに……悔しいだろうな」
俺は千早の頭をぽんと叩いて、撫でた。あまり深く考えるな。
千早は少し目の下にくまを作っていた。あまり眠れなかったのだろう。
俺たちは事務所を代表してお香典を置き、焼香を済ませた。
そしてほかにすることもなく、去ろうとする千早を女性が呼び止めた。
「あの……如月千早さんですね」
「は、はい」
「坂本の家内です。先日は主人がご一緒させていただいたようで……」
「あっ…………、こ、この度は、ご愁傷さまでした…………」
千早と俺は深々と一礼した。
黒いスーツを着たソバージュの髪の夫人もまた、深々と礼をした。目はよどみ、疲れ切っているようだった。
近くにいて婦人の袖を引っ張っている女の子は……きっと娘さんだろう……ずっと俯いていた。幼いながらに雰囲気を悟っているのだろう。
「最後の主人は……どのような感じだったでしょうか……? もしよろしければ、雰囲気だけでもお教えください……」
「……さ、坂本さんは、とてもやさしくて、まだまだ至らない私を導いてくださって…………」
千早は少しの会話を交わし、夫人は満足されたようだった。
「……あなたのような若い方に、最後に何かを遺せたとしたら主人も本望だったことでしょう…………ありがとうございました……呼び止めてすいませんでした…………」
俺たちは互いにまた深く一礼して、帰路につこうと会場を後にした。
言葉にするのもはばかられるくらい、当たり前のことだけど。
とても悲しかった。
突然の、不幸なサイコロの目に遭遇したかのような、偶然の死だった。
そして残された親族は深い悲しみにしばし沈黙し、また現実に、今度は頼るあてもなく放り出されてしまうのだろう。
とても言葉が出ない。それはまだ高校生の千早が触れてしまうには、辛すぎる。
「!」
フラッシュで目がくらんだ。そして気がつくと、千早は5~6人のマスコミに囲まれていた。
「如月千早さん! 少しお話伺ってもいいですか!?」
「え……あ、あの……」
千早は戸惑っていた。俺はどうしたものかと二の足を踏んだ。
「坂本さんの最後の曲を吹き込んだのはあなただというのは本当ですか?」
「事故当日はあなたのレコーディングをしていたとか?」
「若者たちのカリスマ作曲家の遺作になるわけですよね? どう思いますか?」
「最後のレコーディングの時には、なんて言ってましたか? 最後に聞いた一言は?」
「あ、あ……」
一度に多くの事を聞かれて、千早は動転して下を向いてしまった。
「その、今はまだ、その……」
「千早ちゃん、いつもはともかく、今回くらいコメントくれたっていいんじゃないの?」
千早は取材嫌いでマスコミ受けが良くない。歌手は歌さえちゃんとしていればいい、というのが千早の持論だったから。だから突然の取材も、当然苦手なままで……。
「私は別に……。ま、まだ整理できてなくて、その……」
「ちょっと、逃げないでよ!」
確かに、逃げるように見えたのかもしれない。千早はただ、頭の中で整理できない状態では、いいかげんな事を言えないと思っただけだろうに。
(相変わらず愛想ねーんだな、あのアイドル)
「!」
そんな誰かの、ひそひそ声が聞こえた。
「……帰ります。帰らせていただきます」
千早は表情をなくして言った。そして、ぶつぶつと付け加えた。
「なんてけがらわしい……まるで死者をついばむハゲタカみたい……」
その音声を、マイクはしっかりと拾っていた。
「おい! ちょっとくらい歌に自信があるからって、その態度はないだろ!」
「さわらないでください……」
「待てよ! 小娘が!」
騒然とした。雨の中、傘も差さずに取材していたマスコミ連中も気が立っていたのだろう。大人たちの感情を刺激した。
まずい……。
この雰囲気はまずいぜ、千早……。
「ちょっと待って、すいませーん!」
「なんだよ、あんた。ジャーマネかよ。教育がなってねーぜ」
「コメントは後で公式に出しますんで、今日はこのへんで……タクシー!」
俺は強引にカメラの前に割って入った。遅すぎたと後悔しながら。そしてタクシーを拾って、765プロに逃げ帰った。
■
『「氷の歌姫」、作曲家の死にも「別に」。記者を「ハゲタカ」呼ばわり!』
『才能ゆえの思い上がりに、業界からも疑問の声多数』
『空白の半日? 作曲家の死の直前に何があったのか?』
まず最初に、スポーツ新聞や夕刊紙のバッシングが始まった。
そしてTVのワイドショーが、報道を紹介する形で、面白可笑しく風聞を垂れ流した。
映像も流れたが、千早の発言だけが悪意あるかたちで編集され、マスコミの心ない質問や追求の声はカットされていた。
いつも強調されるのは、若者にちょっと人気があるだけの『生意気な勘違い小娘の思い上がり』という、虚像だった。
「これが大の大人のやり方かよ!」
俺はスポーツ新聞を机に叩きつけて、言葉を荒げた。
「千早はまだ15歳だぞ! それを大人たちが、よってたかって……」
「プロデューサー! こんな時に、あなたが冷静にならないでどうするんですか!」
しっかり者の律子がいさめてくれた。事務所にアイドルの皆が集っているというのに、空気が重たく、皆ぽつりぽつりとマスコミや世間への恨み言を漏らしていく。皆、感情の持って行き場を探すのに苦労しているようだった。事件の張本人の千早だけがただじっと、目をつむってパイプ椅子に座っている。
俺は頭を冷やすために、ソファに座って天井を仰ぎ見る。春香が夕刊紙を眺めて言った。
「でも、これはちょっとひどすぎるな……この記事、最後に千早が何か言ったせいで、ハンドルを誤ったっていう風に読めるよ」
「訴えましょう! こんなのボクは許せません!」
「そうだよー! にーちゃん! 許せないんだかんねー!」
真が義憤に駆られる。こんなところもボーイッシュだ。亜美と真美の双子もそれに賛成する。
「まぁまぁ、ちょっと待てば騒ぎも落ち着くわよ」
年長らしくあずさは場を収めようとし、伊織はマスコミを見下した。
「そうそう、あいつらどーせヒマなだけなんだから、飽きればまた次の標的作るだけだわよ。それより見直したわ。千早もちょっとは言うようになったじゃない、『ハゲタカ』って。にひひっ☆」
伊織の悪態が今は心地よかった。しかし実際問題、じわりじわりと事務所のみんなが影響を受け始めている。沈静化するまでTVの出演は控えられたり、ラジオで騒動についてコメントを求められて返答に困ったりしているのだ。
千早の公式ブログも、心ないコメントで埋め尽くされ一時更新停止を余儀なくされた。普段はアイドルになんて関心のなかったような匿名の人間たちが、時流に乗って大挙して押し寄せ、まるで記念のように誹謗中傷の書き込みをして、常連の励ましの声や数少ない擁護の声を数の暴力で押し殺した。
水に落ちた犬は叩け、ということわざがある。人気があるうちはもてはやすくせに、一旦悪い流れが始まると、ところん落ちるところまで叩き落とす。これまで何度も繰り返されたマスコミの悪癖だ。
結局これも、悪いサイコロの目を引いちまったってことなんだろう。暇人たちの、『弱い者いじめ』という名のサイコロだ。
「まぁ、問題はあと三週間後に迫ったライブだよな……。もうすぐチケットも販売されるし……明日からはスタジオリハだし……公演をキャンセルするなら、今が最後のタイミングかもな……」
そこで千早が、沈黙を守っていた張本人が、俺の前に立ちはだかった。
「プロデューサー、お願いがあります」
「……な、なんだよ千早、改まって……」
「来月のライブに集中させてください。キャンセルできる他の仕事は全てキャンセルして、ライブに全力を傾けたいんです」
「…………ライブで、何をするつもりだ?」
「……坂本さんの最後の曲を、歌わせてください」
事務所にいた全員が、息を呑んだ。
覚悟を決めたような、無言の迫力。
「千早…………本気、なんだな?」
こくっと、俺を見つめながらうなずいた。
ああ……。始まっちまったか。
俺にはわかるぜ。
本気スイッチ、入っちまったんだな?
ふう。
俺はゆっくりと、ソファにもたれてため息をついた。そして腹を決めた。
…………わかってるよ。
お前は、そういうコなんだよ。
いつもひたむきで、まっすぐで。こんなシリアスな場面で、しゃれた冗談ひとつ言えないんだから。
こうなっちまったお前は、きっとてこでも動かないんだろうなぁ……。
俺は立ち上がり、事態の成り行きを見守っていた高木社長の前に行く。
「社長、俺からもお願いします。千早のわがままを聞いてやってください。天国に行っちまった坂本さんに、千早がお別れしたいって言ってるんです」
「むう…………し、しかし……」
高木社長は躊躇した。事務所のみんなの生活を預かる経営者として、迂闊な判断はできない。
坂本さんの遺作となった新曲の発売も、事態がこうもこじれてしまったら、いつ発売するのか、どうプロモーションしていけばいいかまだ何も決まっていなかった。いっそ千早本人がTVに出演して、世間と関係者に謝罪してしまう方法もあるだろう。
千早は黙って立っていた。それも俺の目をずっと見つめていた。
…………やれやれ、しかたがねーぜ。
俺は再度覚悟をキメて、深々と、頭がひざにつきそうなくらい、思いっきり頭を下げた。
「高木社長! 千早にチャンスを下さい! そしてプロデュースする俺を、男にしてください! 俺は、千早を一流のアイドルにするって約束してるんです。今回のわがまま、聞いてやってください! 俺の安いクビならいくらでもかけますから!」
「お、おいおい……」
社長は狼狽した。それは俺の安いクビや頭じゃなくて、俺の背中にいたみんなに、きっとたじろいだんだろう。
「社長! 千早はきっとやりたい事があるんです! 聞いてやってください!」
「うっうー! 坂本さんは千早さんにとって特別な人なんです!」
「ここは男らしく、キメちゃってください、社長!」
「そうですね、これはもうどう分析しても、しょうがないですよ、社長」
「あらあら、困っちゃいましたね社長。ここはひとつ、ご英断を」
「アンタも社長でしょー!? たまには度胸見せなさいよ、にひひっ☆」
「がおー! 千早お姉ちゃんに歌わせろー!」×2
「み、みんな……」
ずっと険しい顔をしていた千早の頬を、つうっと、透明な一筋が駆け下りていった。
次の瞬間には両目から涙が溢れ出して止まらなくなり、そして両手でそれを隠した。
「うっ、うっ、ううう~~!」
その場でしゃがんでしまい、声を出して、千早は泣いた。
春香が一番に駆け寄って背中をさすってあげて、みんなが口々に優しく声をかけた。
まったく、千早ってやつは困ったちゃんだ。
きっと、全世界が敵になってしまったかのように思っていたことだろう。
たった一人ぼっちで、世間と戦おうと、坂本さんに最後の曲を届けて送り出そうと、覚悟していたんだろう。
違うぜ、千早。全然違うぜ。
俺は、そして事務所のみんなは、最後の最後までお前の味方なんだぜ?
「…………わかった。千早くん、ライブにはTV中継が入れるよう手を尽くそう。君の誠意を、しっかりと全国のファンに、そして天国の坂本さんに伝えなさい」
「しゃ、社長!」
わっ、と事務所が沸いて、亜美真美が社長に飛びかかった。おいおい、それじゃ抱きついたっていうより、フライングボディープレスだぞ。ひっそりと事態を見守っていた小鳥さんは、うんうんとハンカチで涙を拭っていた。
まったく、みんな最高だぜ、な、千早。
しかし。
その時の俺は甘かったんだ。まさかあんな事になるなんて……。
千早が自分を限界にまで追い込むような、触れれば切れるような『地獄の三週間』が始まったんだから。
[続く]
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あとがき。
一晩で勢いまかせに書いたんで、荒かったらすいませんです。
雪歩と美希を出せませんでしたねー。中途半端にキャラを出そうとすると、こうなるのです……。あぅ。
続きでなんとか出せるかな。
来週に続きを更新します。感想コメントもらえたら嬉しいっす。
ついカッとなって書いてしまいました。反省はしていません(笑)。
MVのHPには置き場所がなかったんで、ブログに掲載。挿絵もないですけど……。
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『私は生きている』(前)
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「あ、おかえりー。千早さん!」
「ただいま、やよい。あなたはいつも元気ね」
事務所の椅子をギシギシさせて遊んでいたやよいが、俺たちの帰社に気づいて、跳ね飛んで千早にまとわりついてきた。そしてクンクンと鼻をならして、俺がぶら下げているビニール袋に気がつく。
「わ、今からお昼ですか? ずいぶん遅いお昼ですね!」
俺は帰社途中に買ってきた『お持ち帰り弁当』をビニール袋から取り出して、ソファの前の机に並べた。
「まったく千早は、レコーディングとなると休憩なしで夢中になるんだからさ」
「ですから、私などに構わずお昼に行かれたら良かったのに……」
「ばーか。お前ががんばってるのに、そんなワケに行くか」
「ふふっ。ありがとうございます」
「新曲のレコーディングはどうだったんですか? 成功? やりましたねっ、ハイターッチ☆」
ぱちーん。
千早はにっこりとして、やよいのハイタッチに応じた。いつも歌と自分に厳しく、TVでもあまり笑うことのない『氷の歌姫』と呼ばれる千早からすると、ちょっと珍しい表情だ。
「千早念願の坂本さんの曲だったからな、感激もひとしおってところでしょ」
「ええ。プロデューサーには感謝してます。私のわがままを聞き入れてくださって、坂本さんに頼んでくれて。とっても素晴らしい曲でした」
「うー? 坂本さんって誰ですか?」
やよいは弁当箱に箸をつける俺たちにまとわりついてくる。こいつ、おこぼれ狙いだな。
「今売れっ子の作曲家さん。半年前から予約してたんだ」
「Perfectってユニットの音楽プロデュースをしてる人よ」
「あー! 知ってる知ってる。ニコチャン動画でブレイクしたって律子さんが言ってたよ!」
「おいやよい、そんなに俺の弁当ばっか見るなよ」
「うー……」
やよいは俺の唐揚げをじーっと見ていた。よし、これ見よがしにパクっと行ってみようか。
「あ~! うぅ~……」
「プロデューサー! 意地悪しちゃダメですよ、大人げない。あぁ、そんなにしょげないで……、やよい。私の唐揚げあげるから」
「おい、それは千早の」
「わーい☆ ぱくっ。幸せでふ~~」
……犬が見える。こいつは尻尾を振っている犬だ。まったく。
「千早はもっと栄養とったほうがいいよ。疲れてるんだから」
「私は揚げ物はちょっと……脂っこくて」
そういいつつも、ご飯も半分くらいしか箸をつけていなかった。いつもの事だったけど、千早は食が細い。
「これで新曲はマスタリングが残るだけですし、明日からは来月のライブに集中したいですね」
「あ~、あれは大変だぞ~。なんたって生だからな~」
「そのぶんやり甲斐ありますよ」
「う~? 生って? お刺身?」
首をかしげるやよいに、俺は面倒くさそうに説明した。
「来月の千早ソロコンサートは、生バンドの演奏なんだよ。ギターとか、ドラムとかプロの人を呼んでさ。普段はカラオケテープだろ?」
「え~! なんだか豪華? 凄いです~! お金がいっぱい、いーっぱいかかりそうです~!」
「一流のスタジオミュージシャン達とのセッション、緊張しますけど、とても勉強になりそうです」
「今の千早のレベルなら、そろそろ頃合いかなと思ってさ。生演奏の楽しさと緊張感を知ってもらいたくてね」
「ええ、楽しみです!」
普通のアイドルなら、初対面の熟練の演奏家たちに気後れしてしまうところだろう。しかし今の千早に恐れるものなどない。困難な試練をも楽しんでいるかのようだった。
如月千早。15歳の高校一年生。アマチュア時代から各地ののど自慢大会やボーカルコンテストに出続け、何度か日本一になった経験もある抜群の歌唱力を誇る。難しい譜面も読みこなす音楽に対する勉強熱心さ。自分に厳しいひたむきな努力。今の千早からは、トップアイドルへの道を一直線に駆け抜けようとする勢いを感じた。俺が何も言わなくても自主トレを欠かさないし、寝坊や過食の心配もない。
まったく、よくできたアイドル様様で、プロデューサーとしては物足りないくらいだぜ。
「……で、坂本さんが仰るには……」
「千早は坂本さんばっかりだなぁ。惚れたか?」
「そうかもしれませんね。実際、ちょっとかっこいいな、と思いましたし」
「な!?」
「くすっ、冗談ですよ。あの方には妻子がいるんですもの」
「さ、妻子がいなかったらどうだって言うんだよ? 今のはアイドルにあるまじき発言だぞ~! 千早ぁ!」
「アイドルなんて知りません。私は歌手ですから。くすくすっ」
そんな風に、坂本さんについて他愛のない会話で、盛り上がっていた時。
ああ。
なんてことだろう。
その事件は否定も巻き戻しもできない、厳然たる事実として起きてしまったのだ。
「あの~、坂本さんって、あの人も坂本さんれふね?」
「え、あの人って?」
やよいは最後の唐揚げをもぐもぐさせながら、TVを指さしていた。何事かと俺と千早はソファから身を乗り出して、画面を見つめた。
顔写真が、TVに映し出されていた。
あれ?
なんだか、さっきまで、見ていたような顔、じゃないか?
淡々と、アナウンサーが原稿を読み上げていた。
『作曲家の坂本鷹雪さん(36)が運転中の乗用車が、対向車線からはみ出してきたトラックに正面衝突し……』
千早は立ち上がった。顔は慄然としていて、みるみる真っ青になっていく。
俺はなんのことか、それが何を意味するのかすぐに理解できず、割り箸を持ったまま、口をバカみたいに開けて、TVを見つめていた。
TVカメラが、車を映していた。
…………おい、なんだよその車。
っていうか、……それ、車だよな?
車『だった』ものだよな? その鉄クズはよ?
高級そうな黒いジャガーだったはずだぜ? 俺の給料じゃとても買えねぇよ。
坂本さんが言ってたよ。そのピカピカのジャガーで、娘を幼稚園まで毎朝送ってるって。
それが……。
あぁぁ……、ぐっちゃぐちゃじゃないかよ!
『……すでに即死の状態を確認されました。坂本さんは人気ユニット『Perfect』の音楽プロデューサーとして若者たちに人気で……』
「うそ……」
唇を震わせながら、そう千早は呟いた。
■
五月なのにあいにくの雨だったけれど、葬儀にはむしろ相応しかったのかもしれない。
俺は黒ネクタイの喪服で、千早は学生服で、黒い傘を閉じて、粛々と参列に加わった。
公民館の式場には芸能界の有名人も多かったし、そうでない人も多かった。一般のファンの若者たちも皆黙って参列に加わっていた。遺体はひどい状態だったらしく、死に顔は公開されなかった。
「……まだ信じられません。あの坂本さんが亡くなられるなんて……」
「まだ若いのにな。俺と同世代だし、まだまだこれからってとこだったのに……悔しいだろうな」
俺は千早の頭をぽんと叩いて、撫でた。あまり深く考えるな。
千早は少し目の下にくまを作っていた。あまり眠れなかったのだろう。
俺たちは事務所を代表してお香典を置き、焼香を済ませた。
そしてほかにすることもなく、去ろうとする千早を女性が呼び止めた。
「あの……如月千早さんですね」
「は、はい」
「坂本の家内です。先日は主人がご一緒させていただいたようで……」
「あっ…………、こ、この度は、ご愁傷さまでした…………」
千早と俺は深々と一礼した。
黒いスーツを着たソバージュの髪の夫人もまた、深々と礼をした。目はよどみ、疲れ切っているようだった。
近くにいて婦人の袖を引っ張っている女の子は……きっと娘さんだろう……ずっと俯いていた。幼いながらに雰囲気を悟っているのだろう。
「最後の主人は……どのような感じだったでしょうか……? もしよろしければ、雰囲気だけでもお教えください……」
「……さ、坂本さんは、とてもやさしくて、まだまだ至らない私を導いてくださって…………」
千早は少しの会話を交わし、夫人は満足されたようだった。
「……あなたのような若い方に、最後に何かを遺せたとしたら主人も本望だったことでしょう…………ありがとうございました……呼び止めてすいませんでした…………」
俺たちは互いにまた深く一礼して、帰路につこうと会場を後にした。
言葉にするのもはばかられるくらい、当たり前のことだけど。
とても悲しかった。
突然の、不幸なサイコロの目に遭遇したかのような、偶然の死だった。
そして残された親族は深い悲しみにしばし沈黙し、また現実に、今度は頼るあてもなく放り出されてしまうのだろう。
とても言葉が出ない。それはまだ高校生の千早が触れてしまうには、辛すぎる。
「!」
フラッシュで目がくらんだ。そして気がつくと、千早は5~6人のマスコミに囲まれていた。
「如月千早さん! 少しお話伺ってもいいですか!?」
「え……あ、あの……」
千早は戸惑っていた。俺はどうしたものかと二の足を踏んだ。
「坂本さんの最後の曲を吹き込んだのはあなただというのは本当ですか?」
「事故当日はあなたのレコーディングをしていたとか?」
「若者たちのカリスマ作曲家の遺作になるわけですよね? どう思いますか?」
「最後のレコーディングの時には、なんて言ってましたか? 最後に聞いた一言は?」
「あ、あ……」
一度に多くの事を聞かれて、千早は動転して下を向いてしまった。
「その、今はまだ、その……」
「千早ちゃん、いつもはともかく、今回くらいコメントくれたっていいんじゃないの?」
千早は取材嫌いでマスコミ受けが良くない。歌手は歌さえちゃんとしていればいい、というのが千早の持論だったから。だから突然の取材も、当然苦手なままで……。
「私は別に……。ま、まだ整理できてなくて、その……」
「ちょっと、逃げないでよ!」
確かに、逃げるように見えたのかもしれない。千早はただ、頭の中で整理できない状態では、いいかげんな事を言えないと思っただけだろうに。
(相変わらず愛想ねーんだな、あのアイドル)
「!」
そんな誰かの、ひそひそ声が聞こえた。
「……帰ります。帰らせていただきます」
千早は表情をなくして言った。そして、ぶつぶつと付け加えた。
「なんてけがらわしい……まるで死者をついばむハゲタカみたい……」
その音声を、マイクはしっかりと拾っていた。
「おい! ちょっとくらい歌に自信があるからって、その態度はないだろ!」
「さわらないでください……」
「待てよ! 小娘が!」
騒然とした。雨の中、傘も差さずに取材していたマスコミ連中も気が立っていたのだろう。大人たちの感情を刺激した。
まずい……。
この雰囲気はまずいぜ、千早……。
「ちょっと待って、すいませーん!」
「なんだよ、あんた。ジャーマネかよ。教育がなってねーぜ」
「コメントは後で公式に出しますんで、今日はこのへんで……タクシー!」
俺は強引にカメラの前に割って入った。遅すぎたと後悔しながら。そしてタクシーを拾って、765プロに逃げ帰った。
■
『「氷の歌姫」、作曲家の死にも「別に」。記者を「ハゲタカ」呼ばわり!』
『才能ゆえの思い上がりに、業界からも疑問の声多数』
『空白の半日? 作曲家の死の直前に何があったのか?』
まず最初に、スポーツ新聞や夕刊紙のバッシングが始まった。
そしてTVのワイドショーが、報道を紹介する形で、面白可笑しく風聞を垂れ流した。
映像も流れたが、千早の発言だけが悪意あるかたちで編集され、マスコミの心ない質問や追求の声はカットされていた。
いつも強調されるのは、若者にちょっと人気があるだけの『生意気な勘違い小娘の思い上がり』という、虚像だった。
「これが大の大人のやり方かよ!」
俺はスポーツ新聞を机に叩きつけて、言葉を荒げた。
「千早はまだ15歳だぞ! それを大人たちが、よってたかって……」
「プロデューサー! こんな時に、あなたが冷静にならないでどうするんですか!」
しっかり者の律子がいさめてくれた。事務所にアイドルの皆が集っているというのに、空気が重たく、皆ぽつりぽつりとマスコミや世間への恨み言を漏らしていく。皆、感情の持って行き場を探すのに苦労しているようだった。事件の張本人の千早だけがただじっと、目をつむってパイプ椅子に座っている。
俺は頭を冷やすために、ソファに座って天井を仰ぎ見る。春香が夕刊紙を眺めて言った。
「でも、これはちょっとひどすぎるな……この記事、最後に千早が何か言ったせいで、ハンドルを誤ったっていう風に読めるよ」
「訴えましょう! こんなのボクは許せません!」
「そうだよー! にーちゃん! 許せないんだかんねー!」
真が義憤に駆られる。こんなところもボーイッシュだ。亜美と真美の双子もそれに賛成する。
「まぁまぁ、ちょっと待てば騒ぎも落ち着くわよ」
年長らしくあずさは場を収めようとし、伊織はマスコミを見下した。
「そうそう、あいつらどーせヒマなだけなんだから、飽きればまた次の標的作るだけだわよ。それより見直したわ。千早もちょっとは言うようになったじゃない、『ハゲタカ』って。にひひっ☆」
伊織の悪態が今は心地よかった。しかし実際問題、じわりじわりと事務所のみんなが影響を受け始めている。沈静化するまでTVの出演は控えられたり、ラジオで騒動についてコメントを求められて返答に困ったりしているのだ。
千早の公式ブログも、心ないコメントで埋め尽くされ一時更新停止を余儀なくされた。普段はアイドルになんて関心のなかったような匿名の人間たちが、時流に乗って大挙して押し寄せ、まるで記念のように誹謗中傷の書き込みをして、常連の励ましの声や数少ない擁護の声を数の暴力で押し殺した。
水に落ちた犬は叩け、ということわざがある。人気があるうちはもてはやすくせに、一旦悪い流れが始まると、ところん落ちるところまで叩き落とす。これまで何度も繰り返されたマスコミの悪癖だ。
結局これも、悪いサイコロの目を引いちまったってことなんだろう。暇人たちの、『弱い者いじめ』という名のサイコロだ。
「まぁ、問題はあと三週間後に迫ったライブだよな……。もうすぐチケットも販売されるし……明日からはスタジオリハだし……公演をキャンセルするなら、今が最後のタイミングかもな……」
そこで千早が、沈黙を守っていた張本人が、俺の前に立ちはだかった。
「プロデューサー、お願いがあります」
「……な、なんだよ千早、改まって……」
「来月のライブに集中させてください。キャンセルできる他の仕事は全てキャンセルして、ライブに全力を傾けたいんです」
「…………ライブで、何をするつもりだ?」
「……坂本さんの最後の曲を、歌わせてください」
事務所にいた全員が、息を呑んだ。
覚悟を決めたような、無言の迫力。
「千早…………本気、なんだな?」
こくっと、俺を見つめながらうなずいた。
ああ……。始まっちまったか。
俺にはわかるぜ。
本気スイッチ、入っちまったんだな?
ふう。
俺はゆっくりと、ソファにもたれてため息をついた。そして腹を決めた。
…………わかってるよ。
お前は、そういうコなんだよ。
いつもひたむきで、まっすぐで。こんなシリアスな場面で、しゃれた冗談ひとつ言えないんだから。
こうなっちまったお前は、きっとてこでも動かないんだろうなぁ……。
俺は立ち上がり、事態の成り行きを見守っていた高木社長の前に行く。
「社長、俺からもお願いします。千早のわがままを聞いてやってください。天国に行っちまった坂本さんに、千早がお別れしたいって言ってるんです」
「むう…………し、しかし……」
高木社長は躊躇した。事務所のみんなの生活を預かる経営者として、迂闊な判断はできない。
坂本さんの遺作となった新曲の発売も、事態がこうもこじれてしまったら、いつ発売するのか、どうプロモーションしていけばいいかまだ何も決まっていなかった。いっそ千早本人がTVに出演して、世間と関係者に謝罪してしまう方法もあるだろう。
千早は黙って立っていた。それも俺の目をずっと見つめていた。
…………やれやれ、しかたがねーぜ。
俺は再度覚悟をキメて、深々と、頭がひざにつきそうなくらい、思いっきり頭を下げた。
「高木社長! 千早にチャンスを下さい! そしてプロデュースする俺を、男にしてください! 俺は、千早を一流のアイドルにするって約束してるんです。今回のわがまま、聞いてやってください! 俺の安いクビならいくらでもかけますから!」
「お、おいおい……」
社長は狼狽した。それは俺の安いクビや頭じゃなくて、俺の背中にいたみんなに、きっとたじろいだんだろう。
「社長! 千早はきっとやりたい事があるんです! 聞いてやってください!」
「うっうー! 坂本さんは千早さんにとって特別な人なんです!」
「ここは男らしく、キメちゃってください、社長!」
「そうですね、これはもうどう分析しても、しょうがないですよ、社長」
「あらあら、困っちゃいましたね社長。ここはひとつ、ご英断を」
「アンタも社長でしょー!? たまには度胸見せなさいよ、にひひっ☆」
「がおー! 千早お姉ちゃんに歌わせろー!」×2
「み、みんな……」
ずっと険しい顔をしていた千早の頬を、つうっと、透明な一筋が駆け下りていった。
次の瞬間には両目から涙が溢れ出して止まらなくなり、そして両手でそれを隠した。
「うっ、うっ、ううう~~!」
その場でしゃがんでしまい、声を出して、千早は泣いた。
春香が一番に駆け寄って背中をさすってあげて、みんなが口々に優しく声をかけた。
まったく、千早ってやつは困ったちゃんだ。
きっと、全世界が敵になってしまったかのように思っていたことだろう。
たった一人ぼっちで、世間と戦おうと、坂本さんに最後の曲を届けて送り出そうと、覚悟していたんだろう。
違うぜ、千早。全然違うぜ。
俺は、そして事務所のみんなは、最後の最後までお前の味方なんだぜ?
「…………わかった。千早くん、ライブにはTV中継が入れるよう手を尽くそう。君の誠意を、しっかりと全国のファンに、そして天国の坂本さんに伝えなさい」
「しゃ、社長!」
わっ、と事務所が沸いて、亜美真美が社長に飛びかかった。おいおい、それじゃ抱きついたっていうより、フライングボディープレスだぞ。ひっそりと事態を見守っていた小鳥さんは、うんうんとハンカチで涙を拭っていた。
まったく、みんな最高だぜ、な、千早。
しかし。
その時の俺は甘かったんだ。まさかあんな事になるなんて……。
千早が自分を限界にまで追い込むような、触れれば切れるような『地獄の三週間』が始まったんだから。
[続く]
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あとがき。
一晩で勢いまかせに書いたんで、荒かったらすいませんです。
雪歩と美希を出せませんでしたねー。中途半端にキャラを出そうとすると、こうなるのです……。あぅ。
続きでなんとか出せるかな。
来週に続きを更新します。感想コメントもらえたら嬉しいっす。
おもしれーっす。
なんか、とっても千早らしい話ですね・・・。
まさかこんなものを書いていたとは。
元々ストイックな千早が更に自分を追い込んでいき、周りも千早を追い詰めていく…
くっ…、この先の展開が気になります。
GJとしか言いようが(ry
早く続きをー!
春香の千早への呼称は「千早ちゃん」→「千早」にしました。春香と千早は同期の親友、という脳内設定ですw
>元々ストイックな千早が更に自分を追い込んでいき、周りも千早を追い詰めていく…
とことんいじめ…じゃなかった、いじり甲斐がありますよ、ちひゃーは。
自分が書くとどうしても燃え展開になっちゃうの。
…………むしろ公式!!小説版ちはやん!!!