ミッドナイトヴァージン Production Note

WEBノベル『ミッドナイトヴァージン』の本条靖竹のブログです。

賀東招二のバランスの良さとわかりやすさ ~『ドルアーガの塔 the Aegis of URUK』

2008年04月21日 01時24分46秒 | Weblog
今期新作アニメで最も関心を持ちながら眺めているのは『ドルアーガの塔』です。まだ二話までしか見れていないので勿論総合的な評価はできませんが、それなりに意図を持って作られた良作の予感はあります。

「ニコニコ動画」や「死亡フラグ」といったネット文化を妙に意識していて、薄ら寒さが目立った第一話については、あまりキレのよろしくない演技・演出の問題だろうかと思っています。第二話では主人公ジルやカーヤに多少の関心を引かせるストーリーテリングのうまさを感じました。弱そうなジルが実は頑丈だったり、カーヤのマイペースぶりですね。
(第一話ではジルを含めたキャラクターが記号的にしか描写されず、ちっとも魅力的でなかったのが問題ですね。ドルアーガの塔のモンスター達は懐かしかったけど…)

今作のポイントはなんといっても賀東招二さんです。シナリオ主導の展開はやはり楽しみです。(もちろん、遠藤さんの世界観も好きです)
「フルメタルパニック」シリーズを何冊か読んだかぎりでは、とってもバランスが良い文章を書かれる方だという印象があります。冗長な説明を省き、アニメ的なセリフ劇で進み、文体ではなくキャラクターで読ませる。簡潔明快で読みやすく、魅力的なキャラクターと設定がある。学園ラブコメと戦争とロボット。三角関係。まさにいたれりつくせりで、ライトノベルのお手本のような方だと思います。

さすがライトノベル草創期から現在に至るまでシリーズを続けているだけある、と畏敬の念すら覚えます。鬼才・天才などという単語から最も遠い技術と努力の人かなと思いますし(勿論褒め言葉です)、実際文章技術の参考になる方だと思います。

バランスの良さ・わかりやすさ。まさにアマチュアとプロを分かつであろう最も重要なこのポイントが、僕は最近妙に気になっています。なぜかというと……。

ちょっとわかりにくい、謎めいた作品のほうが面白くないですか?

例えばエヴァとかひぐらしとか。ウテナとか放送回シャッフルしたアニメ版ハルヒとか。攻殻機動隊とか。最近のヒット作ってわかりにくい、謎めいていたり説明不足だったり、あえて解釈の余地を残した作品のほうが目立つと思うんです。

そもそも、アニメは映像作品です。映画批評家・蓮見重彦ふうに言えば、映像は映像で語ればいい。説明なんかいらない、というわけです。

説明。わかりやすい事。そのこと自体が、映画が映画であること、アニメがアニメであること、小説が小説であることを阻害してはいやしないか。僕もわかりやすさこそ技術力の証明だ、と思っていたのですが……。
その疑問に対し、尊敬すべき先達として賀東さんから何らかの回答が得られることを、この作品に勝手に期待していたりするのです。

#アニメで説明を省いた良さがわかりやすく現れた作品として『シムーン』があります。設定も物語も謎めいていてあまり説明がないのに、なんか良い雰囲気なんですよ。作り手のやりたい事がなんとなくわかるっていうか。『まなびストレート』『アイドルマスターゼノグラシア』も同様ですね。語りたいことはセリフや文字でなく映像で語る、その潔さが気持ちいいのです。

このアニメ版『ドルアーガの塔』はこれからも注意深く見ていきたいと思います。

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