山崎元の「会社と社会の歩き方」

獨協大学経済学部特任教授の山崎元です。このブログは私が担当する「会社と社会の歩き方」の資料と補足を提供します。

【秋学期 3回目】<補足>面接に関する大人(?)の意見

2010-10-13 04:20:54 | 講義資料
 私のブログのコメント欄から、ご参考になるかも知れないと思ったカキコミを拾いました。結局の所、面接に簡単でマニュアル的なノウハウはないということなのかも知れませんが、お時間があれば読んでみて下さい。

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★ 就職も恋愛も同じ (エリカ)
2010-05-18 23:32:06
わたしも就活であんまり自己分析を深堀りしても
しょーがないんじゃないかと思っているうちの一人です。
山崎さんの質問はかなりベタ(=事前対策が可能なもの)ですよね。

同じコンセプト(?)で、わたしも出会って初期段階での
異性への質問はごく簡単なものにしています。
(1)好きな食べ物は何か
(2)どこに旅行するのが好きか
(3)好きな異性のタイプは
みたいな感じ。
答えの内容そのものより、答え方(スピード、ロジック等)を見る。

(3)の質問に対して「好きになった人がタイプ」と
答える人がたまにいますが、こういう人はかなり高い確率で
コミュニケーション能力が低い(=人間関係が苦手)ですね


★ やる気! (ゆうじ)
2010-05-19 00:45:40
 山崎様、いつも楽しく拝見しています。

 さて、私が四度の就職活動でアピールしたのは”やる気”でした。いかにその業種、その会社に入りたいのかを面接官に話しました。能力に自信のない私には他に頼るものがなかった訳ですが、採用する側もやる気のある職員が欲しいのだろうと思います。

 恋愛に譬えれば、「自分はあなたが好きなんです」という事を相手に伝える以上の口説き方はないと思うのですが・・・。


★ 会社の寿命 (佐藤健)
2010-05-19 02:12:24
もう随分前のことですが、会社の採用面接で落とされたことがありました。要らないと伝えられたときは当然のことながら不甲斐なさを感じました。
それから、三年後その会社の事業が傾き別の会社に吸収されたと人伝に聞きました。小さくそして創業からの期間もそう長くない会社でしたが、その話を聞いたときは不採用の知らせを受けた直後以上に落ち込みました。大きくなって生意気な口を利くようになっても、まるで会社を見る目が無かったことにガックリきました。

求職者は売り手で会社は品定めをする買い手だから採用面接はもともと厳しいはずだし、あまり正直に出ても損することがあるでしょうからつらい一方でしょう。
しかし求職者だって選ぶ自由があります。想像には限界がありますからコネを当たってどんどん気になる業界全体や会社の事業の状態を教えてもらったらいいと思います。業界内では秘密でも何でもない事でも、よそ者には全くの想定外なことって結構あると思います。
その上で採用面接に臨めたらいいですね。
そもそも会社の方だって10年後の見通しなんて正確なことは分からないですし、そんなに凄い権威なものではないはずです。お互いサバサバした気持ちでいられれば、それでいいと思います。


★ 論理力を鍛える (tomtomclub)
2010-05-19 09:45:08
 まだ時間的な余裕のある1、2年生であれば、とにかく文章を書く機会を探して、できれば大学の先生なりに添削して鍛えてもらって欲しいと思います。公務員試験や司法試験、会計士試験の講座等から専攻科目に近いものを選んで論文を書くのもいいでしょう。日本の高校・大学では文書を書く機会が少ないので、OJTで鍛えられるケースが多いと思われるのですが、書くことで意識的に論理力をトレーニングするのが望ましいですね。
 あとは、はやいうちに海外に貧乏旅行してみることを勧めます。これは就職云々だけではなくて、本当に学生時代にしかできないことなので、少し無理してでもやる価値があります(コミュニケーション力にもいい効果があると思います)。
 本当に差し迫った時期には、OB訪問でロールプレイを徹底するのも必要かもしれません。他人とのコミュニケーションのときには自分では意識していない意外な癖がでてくるものです。岡目八目といいますから、素直に指摘を受け止めましょう。
 こうしてみると、目新しい意見もないようですが、少しでも参考になればと思います。


★ 選ぶ相手がなにを求めているかを考えてみる… (おしるこ☆善哉)
2010-05-19 11:03:35
『面接では…相手に気分よく話させることの効果の方がずっと大きいような気がする』…

そのとおりだと思います。ただ、山崎さんらしい物言いですが、まじめな学生にその真意が正しく伝わるか心配です。

就活者は、選ぶ立場になく、選ばれる立場にあるのですから、選ぶ相手の求めに対して今の自分がどう応えられるのかという姿勢がいいのではないかと思います。

特に、自己アピールでは、自分のすごい『実績』を言わなければいけないと勘違いしている学生が多いようですが、採用担当者が本当に知りたいことは、その実績を出すために、『何に気づき、どう考え、どう行動したか』ではないでしょうか


★ この本にまとめられています! (Naockey)
2010-05-19 16:26:49
山崎さん

こんにちは、Naockeyです。

山崎さんのエントリーを読んで、過去に読んだ本を思い出しました。

内容がほぼ同じです!!
この本を学生さんに推薦されたらいいのではないでしょうか?

『 ロジカル面接術 2008年基本編』 (単行本)
津田 久資 (著), 下川 美奈 (著)

私はこの本を読んで、ものすごくしっくりきました。
過去に読んだ就活本が空虚に思えました。


下記の2つに分解でき、それぞれの構成要素を提示しています。

①私は御社に貢献できます(自己PR)
・問題解決力
・行動力
・コミュニケーション力

②私は御社と相性がいいです(志望動機)
・自分のやりたいことがあっている
・会社のカルチャーにあっている


★ ニュアンス (おさる)
2010-05-19 18:33:48
「こいつなら面倒見てあげてもいいかな~」と思える方を採用し、「この方にぜひ面倒見てもらいたい!」と思えるようなら気に入られるよう自らを売り込む、というシンプルな思想でやってきました。

人間どうしたって面倒や世話を他人にかけるわけですから、「かける(であろう)面倒の分よりも働きますから」というニュアンスが伝われば良いのでは?


★ 御社か、あなた(面接官)か (山崎元)
2010-05-21 17:25:11
Naockyさま

ご本の紹介ありがとうございます。

下記の2つに分解でき、それぞれの構成要素を提示しています。

>①私は御社に貢献できます(自己PR)
>・?問題解決力
>・行動力
>・コミュニケーション力

>②私は御社と相性がいいです(志望動機)
>・自分のやりたいことがあっている
>・会社のカルチャーにあっている

確かにロジカルです。
但し、人間は感情の動物であり、ガクモンの世界でもやっと行動経済学のようなものが出てくる時代です(世間では「悪用」されているようですが)。

「御社」を「あなた(面接官)」と置き換えるココロが必要ではないでしょうか。

特に転職の面接の場合、ターゲットは抽象的な「御社」ではダメです。「私を採ると貴方にとって得」で「私と貴方とは相性がいい」という事を伝染させないといけません。新卒就職の面接にも似た要素があろうかと思います。


★ コミュニケーション能力 (おさる)
2010-05-21 17:48:37
皆様がご指摘の「コミュニケーション能力」ですが、これが実に奥が深い。
いくつか考え付くままに「コミュニケーション能力」を構成すると思われる要素を考えてみました。

1.モノゴトを理解する能力(立場とか利害とか好き嫌いとか、山崎さんがご指摘のボキャブラリー・セットを理解することもこの範疇です)
2.ノウミソを使っていると思わせる回答力(どなたかのご指摘のように「好きになったヒトがタイプ」という回答には、無難さを追求したニュアンスがある分だけノウミソを使っていない感じが伝わってしまいます)
3.ウケを狙う芸人魂(面接で「笑い」が取れれば勝ちだと思います。ヒトとしての愛嬌とかサービス精神というです)
4.タニンに対する好奇心(「他人が何に興味・関心があるのか?」に対して興味・関心がゼロなヒトだと正直言ってキツイでしょう)

以上の4つなど(他にもあるかもしれませんが)を駆使してジブンを語りながら共感を得るという作業がインタビューなのでしょう。

【秋学期 3回目】 面接について(春学期5月20日の教材からの転載)

2010-10-13 02:11:45 | 講義資料
 以下の文章は、5月18日に、私のブログに書いたものです。
 面接に当たっては、特別な準備はいらないと思いますが、敢えてコツらしきものを述べるとこんな感じか、と思う点について書いてみました。
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 Twitterで、大学生の就職事情が厳しいことについて同情的なツイートを書いたら、ある方から「自分がどうありたいのか、とことん本気かどうか? あがいているか? 」というツイートが返ってきた。私は、これは学生に対するアドバイスあるいは、意見であろうかと解釈して、「自分探しよりも、会社を知ることが大事。自分にではなく、会社・仕事に興味のある人を会社は採る 」と返信した。

 思うに、面接では、自分のあれこれをアピールすることよりも、相手の話を聞くこと、それも有り体に言えば、相手に気分よく話させることの効果の方がずっと大きいような気がする。
 私の得意分野ではないが、恋愛にあっても多分そうなのではなかろうか。「ボクはこんなに凄いのだ!」と自慢するよりも、身の上話を真剣(風)に聞いたり、相手に自慢話をさせるような展開に持ち込んだりする方が遙かに好感を得られやすいような「気がする」。

 さて、受ける側から見た面接の成否は、面接官が、相手に好感を持つかどうかで決まる。人相風体や身体の動きに表れる印象も重要だろうが、会話にあっては、「あなた(=面接官様)の仰っていることを、私はよく理解しました!」という印象を与え続けて、「あなたとあなたの会社に興味と敬意を持っています」という気分を伝えることが、有力な手段になる。
 部活動で活躍した話とか、アルバイトでのエピソードなどは、学生本人にとっては唯一で貴重な経験であっても、面接官にとっては関心の湧かない「みな同じ」に聞こえやすい話だろう。まして、自分が何者であるかについてとことん考えた話など聞きたくもないにちがいない。面接は、体験告白や人生相談の場ではない。
 また、初対面の相手に突然やる気や積極性などをアピールされても鬱陶しいとか、痛々しいと思うだけだろうし、アピールに変な意外性があると(人間は「意外性」を警戒する生き物だ)「使いにくい部下(かも知れない)」だと思うかも知れないし、そう思われると多分それだけで致命傷だ。
 学校名を伏せて面接を行っても、高偏差値の大学の学生が採用されやすい事実は、おそらく言葉のやりとりの的確さにある。そして、その背景に、頭の良し悪し(この場合、主に理解力と論理性)や国語力の違いがあるのではないだろうか。
 採用する側から見ると、どちらかといえば「頭がいい」部下を採りたいだろうが、より直裁には「使いやすい部下」、「役に立つ部下」を採りたいと思っているはずだ。この感情に素速く合わせることができるのが真に頭のいいキャンディデート(候補者)ということになるだろう。

 あまり細かなテクニックを言っても気になるだけかも知れないが、面接では、先ず、「相手の言語」に素速く且つ最大限合わせることに注力すべきだ。
 面接官が使う言葉のスピードや響き、語彙の傾向などを把握して、なるべくこれに合わせようとするだけでも印象が違う。
 これは、一般的なビジネスにもいえることで、たとえば相手が使う外来語の頻度やレベルなどを素速く把握して、相手のボキャブラリー・セットに合わせて話すと効果的だ(たとえば、相手が外国語に興味を持っていないのに、原語の発音風のカタカナ語を会話に混ぜると、「有能すぎるバカ!」だと思われて上手く行かない)。
 そして、最初の二、三分で面接官が得た印象がその後の話によって大きく変わることは稀だから、最初に集中しよう。
 面接官の質問の意味を正確に聞き取って、これに答えることが大切なのはいうまでもないが、面接官にも話をさせるように仕向けるといい。聞き役ばかりを続けているのは、結構疲れるものだから、自分も少しなら話をしたいと思っている面接官は少なくないはずだし、相手に対する興味や敬意を表すには質問が効果的な場合がしばしばある(勿論、次から次へと質問するのは「やり過ぎ」だ)。
 面接官が気持ちよく話すことのできる話題に持ち込むことができればラッキーだが、やりとりのテンポが良ければ、無理をする必要はない。
 最近の就活事情は詳しく知らないが、訪問先の会社については、ホームページで分かる程度の予備知識で十分だと思う。知らないと誠意を疑われるような常識的なことは知らないとまずいが、細かな業務内容や制度については知らなくてもいいだろう。新卒採用の場合、会社側は「素材」を採るという意識のはずであり、細かな知識は求めていないはずだ。
 ほとんどの場合、相手が欲しがるのは「(自分の言うことをよく分かる)感じのいい部下」だ。「僕は感じのいい部下になりそうだから、面接官はきっと気に入るだろう」と自己暗示をかけて、「やっぱりそうだ!」という気分で相手の目を見て、相手のテンポに合わせて話を始めよう。
 面接の時間はあっという間に過ぎる。

 私は新卒の面接をそうたくさんやったわけではないが、質問のパターンをほぼ決めていた。
(1)学生時代は何を専門に勉強されたのですか?内容を分かりやすく説明して下さい。
(2)当社を志望された理由は何ですか? 他社と比較して当社のことをどう思いますか。
(3)もし当社に入社されたら、どんなことがしたいですか?
基本的な質問内容はこの三つだけだ。

 質問(1)に的確に答えられるかどうかで、採否に必要な情報の8割は分かる。自分が勉強した内容を、分かりやすい言葉で大人に説明できるのはかなり頭のいい学生であり、この意味で頭のいい学生は、問題達成に対する意欲が高いので、有能な社員になり得る。相手が学生といえども、クイズを出題して頭の良し悪しを探る、というのは相手に対して失礼というものだろう。クイズなど出さなくても、話を聞けばビジネスに使う種類の頭の良し悪しは十分分かる。
 質問(2)は、学生の志望動向に関する情報収集(内定を出したら、採用できるだろうか?、どこと競合しているのだろうか?)と、「社会性」のチェックを兼ねている。第二志望だろうが、第三志望だろうが、(嘘が交じっても)破綻のない理由を的確に言うことができるかどうか、を確かめている。
 質問3は、敢えていえば「意欲」のチェック項目だが、学生は、まだ社員として働いたことがないし、会社の中についてよく知らないはずだから、感心するような答えが返ってくることを期待してはいない。こうした無理な質問にどう答えるかで、学生の意欲や工夫の上手下手がある程度分かる。ここで、話を上手にできる学生は、意欲があるのと共に、かなりコミュニケーション能力が高いといえる。
 基本的には、上記の三つの質問のバリエーションでやり取りして、学生を判断していた。

 ちなみに、転職の面接の場合には、「(主に「今の」だが、過去のも重要)会社を辞める理由は何ですか?」が四つ目の(重要な)質問になる。
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 次の文章は、リクルート・エージェント社のウェブサイトに、「転職原論」の第7回目の記事として掲載された拙文の抜粋です。
(http://www.r-agent.co.jp/guide/genron/genron_07.html)

 転職の面接は自分という商品を売る「商談」であるという考え方を述べてみました。就職の面接とも重なる点があろうかと思いますので、読んでみて下さい。

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(転職原論:第七講) 面接の本当の達人

(1)応募書類は相手の立場に立って書く

 転職に自分から応募するとき、面接抜きに、書類選考だけで採用が決まることは、ほぼ無い。転職しようとする場合、最初に目指すのは、面接まで辿り着くことだ。通常は、履歴書と職務経歴書を送って、面接の可否の連絡を待つことになる。面接のアポイントメントが取れたら、履歴書・職務経歴書は役割を果たしたと考えていいだろう。基本的には、面接が勝負だ。
 上手い履歴書、あるいは職務経歴書の書き方として、特別なノウハウがあるわけではないが、基本的に考えるべきことは「読み手の立場に立って書く」ことで、これに尽きる。初歩的には読みやすく正確に書くということが大事だし、もう一歩先のレベルでは、先方が応募者の何を知りたいと思っているのかを推測して書くことが重要だ。自分を表現したりアピールしたりするのではなく、自分に関する情報を相手に適切に伝えるのだ、という気持ちで書くといい。
 仕事に無関係な趣味の資格などを書いても仕方がないし、応募職種にもよるが、外資系の会社に応募するのに「英検二級」なら書かない方がまだいい(どのみち面接でテストされるだろうが「英検一級」なら履歴書に書いた方がいい)。一方、募集している仕事に関係のある経験やスキルを持っている場合はそれが伝わるように職務経歴書を書こう。

(2)面接の前に準備しておくこと

 面接で先方が知りたいことは、(A)募集職種に於ける候補者の能力と経験(この人にこの仕事を任せて大丈夫だろうか?)、(B)候補者の人柄(一緒に仕事をして楽しい人だろうか?)、(C)どれくらい入社したい気持ちがあるのか(本当に来てくれるのだろうか?)、(D)将来も働いてくれるだろうか(近い将来、辞めてしまう心配はないか?)といったことだ。
 新卒学生の面接なら、「学校で勉強したことを簡単に説明して下さい」、「どうして当社に入社したいのですか」、「当社に入ったら何をしたいと思いますか」という三つくらいの質問をすることで、(A)~(C)くらいまでは短時間で分かる。たとえば、学校の専門について訊くと、どの程度まじめに勉強したか、それを他人に過不足無く分かりやすく説明できるか(素人に専門内容を説明できる人は「頭がいい」)、といったことが相当程度分かる。学生なら、上記の三つの質問に関して答えを自分のものにしておけば大丈夫だが、転職の面接の場合、もう一つ準備が必要だ。それは「(以前の、或いは、今の)会社を辞めた理由は何ですか?」という質問に対する回答だ。仕事の能力に問題がない場合、採用する側が一番聞きたいのはこの質問に対する答えだ。
 この質問で問われるのは、過去の経緯と仕事に対する考え方とと共にビジネス的なコミュニケーション能力だ。嘘を答えてはいけないし、露骨な答えや、投げやりな答えはビジネスのやりとりとして不適切だ。
 しかし、会社を辞める事に関しては、何となく疾しい感じがして必要以上に言い訳口調になったり、過去の経緯があると感情が高ぶったりすることがある。この質問を上手くこなせない場合、面接全体の出来にも影響するので、過去の転職について「辞めた理由」、これからについて「辞めてもいいと思っている理由」の二点は、あらかじめ答えを紙に書いて、自分で吟味してみるくらいの周到な準備が必要だ。

(3)いきなりお金の話はしない

 面接は、基本的に、①採用側から見て候補者が仕事とに合っているか、②候補者側から見て会社と仕事に関して疑問はないか、そして①、②について問題がないことが確認されたら、③経済的な条件を含めて条件面で合意できるか、という流れで進むと考えておこう。「仕事」が第一に重要で、給料を含めて「条件」はその次の話題、というのが尊重すべき建前だ。
 最初に質問するのは採用側だし、その後に「何か質問はありませんか?」と訊かれても、「要は幾ら貰えるのですか?」といった質問をするのは印象が悪い。ドライだと言われる外資系の会社でも、これは、そうだ。
 お金が重要でないとは言わない。しかし、仕事が何で、どのように進める必要があるのかということは、転職後の居心地と共に将来の自分の人材価値にも関わることなので、非常に重要なのだし、面接中は「仕事の内容の方がお金よりも大切だ」と思っている方が結果がいい場合が多い。

(4)面接は自分という商品を売る「商談」

 面接の服装だとか、応募書類の作り方だとか、あるいは話の仕方にしても、基本的には「面接は自分(の仕事)という商品を売るための商談なのだ」と理解しておけば良く、殆どの物事はその延長線上で判断できるはずだ。
 商談だから、時間も服装も相手に合わせる(相手に対する敬意が伝わるようにする)ことが大事だし、話の呼吸も、交渉の詰めが肝心でリスクや曖昧さを取り除かなければならないことも、転職面接の基本的な考え方は全て商談と一緒だ。
 尚、さまざまな調査で面接は、最初の1分くらいの印象で決めた結果と長時間やりとりして決めた結果とに殆ど差がないことと、誰かが好印象を持つ相手は、他の面接者が見ても好印象を持つらしいことが報告されている。最初の印象で決まるのは事実だろうが、最初が良ければ後で失敗してもいいということではないだろうし、後の準備に自信がなければ最初に好印象を与えることも難しい。
 一つの心構えに集中するとすれば「これからお互いにとって良いビジネスを作るのだ」という緊張感のある楽しみな感じを自分に言い聞かせることだろう。
 もう一言付け加えておこう。書類選考も、面接も、相手の都合で決まることだから、落選することがある。筆者も、過去の転職活動で何度も不採用を経験してきた。不採用の通告は、人間としての自分が否定されるか嫌われるかするような情けない気分になりやすいものだが、これも「あくまでも『商談』の不成立であり、自分の全人格ではなく、「ある種の労働」が商品なのだ」と割り切って気分を切り替えよう。
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