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義経黄金伝説●第18回

2005年01月23日 | SF小説と歴史小説
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■義経黄金伝説■第18回 
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(C)飛鳥京香・山田博一http://www.poporo.ne.jp/~manga/
http://www.geocities.jp/manga_ka2002/

第3章 一一八六年(文治2年) 平泉
■■5 一一八六年(文治2年) 平泉
西行は京都の松原橋の事件を思い起こしている。
義経が、源頼朝の暗殺部隊に襲われた事件だ。
「義経殿、私はこの平泉王国が好きなのじゃ。この異国の平泉が。この平泉
を私が訪れましたのは、二十六才の頃です。それは、それは、このような地
が日本にあるとは…、平泉は仏教王国、聖都です。このような平和な美しい
都が、末長く続いてほしいのじゃ。この度の、私の平泉訪問の目的も知って
おられましょうぞ」
「聞いております。法皇様は、この平泉が鎌倉と事を構えないように、お考
えになっておられるとのこと、相違ございませか」
「さようでございます」
「そのために、この義経が邪魔だと」
「そうおっしゃるでしょうな。が、義経殿、秀衡様は別の考えをお持ちじゃ」
「と、いうと」
「義経殿のお命を、平泉の沙金で買おうとなさっておいでじゃ」
「この私の命を、、沙金でと…」
「お怒りあるな。義経殿もご存じでござろう。南都東大寺が平重盛様に先年
焼かれてしまいました。その勧進使度僧を重源上人がこの私にお命じになり、
この平泉までやって参りました。私西行は平泉への途上、鎌倉へ寄り、頼朝
様にも会っております」
「兄者と…」義経、表情が変わる。
「いえいえ、心配なさるな。義経殿の扱いの提案を、秀衡様とあらかじめ書
状で取り交わしておりました」
「兄者は何と…」
「義経様も、お聞き及びでしょう。東大寺勧進が、頼朝様は金千両、それに
対して秀衡様は何と金五千両。その差四千両。これではあまりに差がつきま
す。それで秀衡様より、内密に頼朝様に金四千両の沙金をお渡しする約束で
きております。それを東大寺へお送りします」
「つまりは、私の命を、平泉の砂金四千両で買おうとうわけか」
「いえいえ、頼朝様のこと、今は四千両を受け取り、後々様子をお伺いにな
りますでしょう」
「それが平泉からの物資、必ず鎌倉を通すという約定の本当の目的なのです
か」
「さようでございます」

 西行は義経に、東大寺の重源(ちょうげん)から預かったものを渡す時が
きたと考えた。
「さあ、義経殿。やっと二人になれたところで、重源殿からの贈り物です」
 西行は義経に竹包みを差し出している。
「これはどうもありがとうございます。さて、これは…」
「まあ、まあ、開けてくだされ。それからお話しいたします」
 西行は、にこりと微笑んだようであった。
「おお、これは、建物の図面ではござりませぬか。これを私のために…」
 義経は子供のように、喜んでいた。
「そのように喜んでくだされるならば、西行いささか恥ずかしく思います。
いやいや無論、私が図を起こしたものではない。ほれ、お主も知ってござろ
う。重源様の図面なのじゃ」
「おお、あの東大寺を再建されておられる重源様の…」
「よいか、私が直々重源様に頼んだのじゃ」
「一体何故に、このような図面を」
「よいか、義経殿」
 西行は真剣な顔付きとなり、義経の方へ膝からにじり寄った。
「これはあくまでも二人だけの話ですぞ」
 義経は西行のただならぬ気配を感じ、顔色を変えている。
「奥州藤原氏を信じてはならぬ」
「何を仰せられます。あの秀衡殿が…」
「まあ、義経殿。落ち着いて聞きなさい。秀衡殿は別じゃ。和子たちが
問題なのじゃ」
「和子たちが一体私に対して企みを持っておられるといわれるのか」
「そうじゃ、義経殿。己が身の上考えて見なされい。いずれの身かわ
からぬお主を育ててくれ、勉強されてくれたは秀衡殿。が、和子たち
はお主のこと、よくは思っていまい。考えてもみなされ。お主がいる
ことで平泉が危険になっておる」
「私にこの平泉から逃れよとおっしゃるのか、西行殿。それはあまり
ではござらぬか。私と秀衡様のこと、西行殿はよくご存じではないの
か」義経は涙を流さんばかりである。
「よいか、義経殿。この地図の通り建物を建てなおされよ。そして密
かに北上川の抜け穴を作られよ」
西行は、秀衡を動かし人即に手配をさせていた。
「抜け穴ですと、私は敵に後ろを見せる訳にはいきません」
「万が一のための予防策でございます。そして、この造作にはこの男
を当てられよ」
西行は後ろから、人を呼び入れた。人影が急に義経の前に現れている。
「お初にお目にかかります。東大寺闇法師十蔵と申します。重源様か
ら命を受けて、この平泉まで参りました。どうか、この建物の作事の
支配方は、私にお任せくださいませ」

西行が一人ごちた。
「不思議な縁でござりました。平清盛殿、と私は北面の武士の同僚で
ございました。清盛殿は平家の支配を確立し、この私は義経殿をお助
けしたのです。治承・文治の源平の争いの中を、私は伊勢に草庵をか
まえ、戦いとは無関係に生き残ってこれたのも、秀衡殿のお陰です。
食扶持の費用は、秀衡殿にまかなっていただいた」
「西行様にとって、秀衡様はどのようなお方なのですか」
「そうでございますな。あれは私が二九才の折りでござったか。京都
で秀衡さまにお会い申した。そのおうた折り、佐藤家の夢を与えて下
さったのです」
「夢ですとと」
「そうです、京の戦いにもかかわらず、奥州には、この平泉のような
仏教の平和郷、極楽郷があるという夢です。私が昔、この平泉を訪れ
た時の思い出は、、この戦乱の世に、いつも、目に焼き付いていて慰
めとなるは、この束稲山の桜の姿なのです。あれが、この世にあって
は、何か平和の証しのように私には見えたのです」
「西行様は、桜の花がそれのどまでにお好きなのか」
義経がたづねる。
「私は、月と花をよく謡います。日本のしきしま道の根本なのです。
が、この何年か身近に人の死をみすぎました。その京の地に比べ、こ
の奥州平泉の地、なんと静かなことよ。100年の平和、その時期を
お作りななれた奥州藤原氏の見事さよ」
義経が深くためいきをつく。
「西行様は、秀衡さまと御同族と聞いております」
「さようでございます」
「では、藤原秀郷様の子孫ですか」
「そうです」
「兄上が西行さまに在られてごきげんはいかでございましたか」
「銀の猫をいただき歓待させました」
「藤原藤原秀郷の子孫、西行どのが、坂東新王、頼朝殿を、つまり新
しい反乱王将門(まさかど)をとどめるわけですか」
「私にとってもこの地は安住の地、が、この私の存在が、この平泉の
地を、地獄に変えるかもしれぬ」
「何を気の弱いことをもうされます。この奥州の地は敢馬の地。もと
より義経殿の戦ぶり、この地で培われたのではありませぬか」
「……」
「そのために、私はこの地を陰都(かげみやこ)としょうと考えるの
です」
「かげみやこ」
「東北の地を納める京都です。政庁には京都からどなたかをお招きし。
そして祭神は、崇徳帝様でおわす」
義経は、西行の話に引き込まれている。この平泉を救う事、また義経
を救う事を西行は話しているのである。
それには、頼朝に対して平泉の黄金をつかい、頼朝をとどめ、平泉を
安泰にするため京都から皇族をよび、崇徳を祭神として京都の陰都に
しょう。そして平泉と京都が連携し鎌倉を牽制しょうという案である。
(続く)
(C)飛鳥京香・山田博一 http://www.poporo.ne.jp/~manga/
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