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義経黄金伝説●第17回

2005年01月22日 | SF小説と歴史小説
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■義経黄金伝説■第17回 
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(C)飛鳥京香・山田博一 http://www.poporo.ne.jp/~manga/
http://www.geocities.jp/manga_ka2002/


第3章 一一八六年(文治2年) 平泉
■■4 一一八六年 平泉黄金都市

 平泉にある藤原秀衡の政庁である伽羅御所で、宴が開かれていた。
 秀衡が上機嫌で、招かれた西行に挨拶する。
「西行殿、今日はよう来てくだされた。お知り合いを紹介しょう」
 「この西行の知り合いですと、はて」
 秀衡はほほえみながら
 「これへ、、」
 小柄な優男が、障子の向こうから現れて、西行に深々と頭をさげる。
「西行様、義経でございます」
「おお、これは……もうやはり平泉に着いておられたか」
 西行、身繕いを正す。
「それでは、私はあちらへ……ゆるゆるとお話下され」
秀衡は気を使い、二人っきりにしてくれた。

西行は義経に深々と頭をさげた。
「私が西行、歌詠みの僧です」
「西行様、ありがとうございます」
 義経が、逆に西行に対してまた深く頭を下げる。
「これこれどうなされた。源氏の武者が、歌詠みの老人に頭を下げるとは
めんような」
「いえいえ西行様、お隠しありますな」
「これは何をおっしやる」

西行が名乗りをあげるのは、この時が始めてである。それ以外は、鬼一方
眼が義経牛若丸の相手をしている。正式な紹介は今までなかったのだ。
「昔、私が鞍馬に引き取られたのも、西行様のお働きがあったと聞いてお
ります。また商人金売り吉次殿が、この平泉に私を連れて来てくれたのも、
西行様のお口添えと聞いております」
「はて、またおかしなことを申される。私は単なる歌詠み。それほどの力
は持っておりませぬ」
「いえいえ、お隠しあるな。私の供者、弁慶が知識の糸は、日本全国に散
らばる山伏の知識糸でございます。この世の動き、知識は、世にある山伏
の、すべて口から口へと伝えられております。西行様、お礼を申し上げま
す。この平泉で秀衡様に我が子のように可愛がられたのも、西行様の口き
きのお陰。いや、またこの私が、平家を壇の浦で滅ぼすことができたのも
、十五才の折りよりこの平泉王国や外国で学びました戦術のお陰でござい
ます。すべては西行様の縁(えにし)から始まっております」

 義経はふと、十五年前の京都の鞍馬山、僧正ケ谷を思い起こしていた。
 西行はこの後、秀衡の政庁である伽羅御所の北に離れている義経の高館
へ招待されていた。
 自分の屋敷で、うって変わって弱きになる。
「のう、西行殿、私はだれのために戦うてきたのでござるのか」
義経は。急に気弱になって父親に話すがごこくである。
「何をおっしゃる。今、日本で天下無双の武者であられる義経殿が、何を
お気の弱いことをおっしゃられる」
「が、西行殿」
義経の顔がこわばっている。ある思いでが義経の精神的外傷(トラウマ)
としていつも義経の心にある。
「私の最初の……父親の膝の記憶は、何と清盛殿なのです。母、常盤が清
盛の囲い者であったからのう。養父の大蔵卿長成殿の記憶は、あまりない
のです」
「……」
「それに平泉についてからは、秀衡殿の北の方、また外祖父の基成殿の保護
をうけました。奥州藤原氏と京都藤原氏との眼に見えぬ縁あるあるいは糸が
あったのです」
「……」
西行は、ただ聴き入っている。
義経は、自らの心の闇をのぞき、自分の過去半生を知る西行におもいのたけを
打ち明けていた。
「考えて見れば、私の一生は、いろいろの人々の糸がもつれ合っております
。源氏の糸、京都藤原氏の糸、奥州藤原氏の糸、後白河法皇様の糸、眼に見
えぬ平家の糸」義経は少し考えていたのか、しばらくおいて話した
「いま考えれば、平家の糸があればこそ、平家の長者平宗盛殿、平清宗
殿を、あの戦いの折り、殺さずにおいたのじゃ。それが一層兄者頼朝を怒ら
せてしもうたとはのう。何という世の中だ」
義経、溜め息をつく。
「そして、、、最後は西行殿が糸です。西行殿も奥州藤原氏のご縁です。そ
れに加えて、西行の別の糸がございましょう」
「私の別の糸とは」
「山伏が糸。また仏教結縁の糸じゃ。いや山伏の糸といってもいいかもしれ
ませね」西行は義経の顔をみている
「私は、いろいろな糸に搦め捕られて動けませぬ」
義経は、この地で、どうやら鬱状態に入っている。
西行は思う。この和子義経は、ついに安住の地をみつけられなかったか。
背景となり保護してくれる土地がなかったのか。
私が、この地平泉に、義経殿を送り込んだのも間違いかもしれぬ。
その行為は義経殿の悩みを増大させたのかもしれぬ。
「ここ平泉が死に場所かもしれません。が、私は、清衡殿、秀衡殿のように
中尊寺の守り神となることはできぬでしょう。私は奥州藤原氏の長者ではな
いのです」
初代清衡、2代基衡の遺骸は、守り神として、中尊寺黄金堂三味壇の床下に
安置されている。
「義経殿は、みづからが、奥州藤原氏になる事をお望みか」
「いや、そうではござらぬ。拙者はやはり源氏の武者、華々しく戦って死に
とうござる。が、戦う相手が兄者ではのう」
ためいきをついている。
「迷われておられるか」
西行は、こころの奥深いところから、怒りがわき上がってきた。
「義経殿が迷いが、この平泉仏教王国を滅ぼされるぞ」
この義経の弱気が平和郷を崩壊させる。
「が、この仏教王国も元々は奥州藤原氏が造ったもの。私が、この国の大将
軍になるは荷が重うござる」
「しかし秀衡殿のお言葉がござろう」
「その言葉、仕草が重うござる。何せ戦う相手は兄者が軍勢。また相手の武
者ばらは、私が一緒に平家を滅ぼした方々。いわば戦友。その方々を相手に
、戦わねばならぬのじゃ」
(続く)
(C)飛鳥京香・山田博一 http://www.poporo.ne.jp/~manga/
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