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「なみだ石を探して」第7回

2013年03月17日 | 「なみだ石を探して」
「なみだ石を探して」第7回
(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
 

第7回

「私が、代表者です。名前はリーラです」

 それから、ゆっくりと僕の存在をわかり、みつめ、悲しそうな顔をした。
「やっばり、来てしまったわね。ミユー。間違いだったわ、あなたに会ったのは。これで
最後だと思いあなたに会った。失敗だったわ。私は、あなたをつれていくことは、、やはり、できないのですも
の」
 
リーラ、そうだ。
彼女はリーラだった。
ミユー。それが私、日待明の本名?

僕の、、いや、私の頭の中で何かが爆発した。

私の記憶の総てが急激に、、甦ってきた。

リーラ、彼女は私の妻だった。
いや、今も私ミユーの妻だ。

 はるか昔、我々は、この地球に降り立った。

我々は目的遂行のため、この地球に一定期間、滞在することになっていた。

だが、第10次探険隊長の私ミユーは、ふとしたことで、この地球上で罪を犯してしまったのだ。

私達の星の法律及び裁判に依り、私はこの星への追放刑に処せられた。

第10次探険隊長の私ミユーは、この地球に,永遠に住まざるを得ないのだ
そして同時に、私の記憶は分解された。
偽りの記憶が埋め込まれたのだ。

 1年前に、「リーラ」に会い、別れの記念に「涙石」を与えられた。
その涙石が、ここで記憶をとりもどすきっかけとなった。

今の自分に戻った私の意識。

 滝が、リーラ達にむかい、何かを必死に訴えている。
が、私は、私自身の過去の記憶を、何とかたぐりよせる事に努力し、
上の空だった。

「私は地球防衛機構を代表して話している。君達は、なぜ地球人をつれさろうとするのだ。
すでに多くの地球人が、いままでに君達によってつれさられている」
滝という名の男の声が耳に入ってきている。

 リーラは、ゆっくりと微笑んで、余裕のある態度で返事をかえす。

「滝さん。いい。ですか」
リーラは、回りに不安げにたたづむ人々を両手でしましながら、諭すように言った。

「この人達は地球では住めない人達なの。善良すぎて。この汚れた梅球ではね」

「ふつ、善良すぎるだと?リーラ。ここは我々の星だ。そして彼らは我々人類の仲間なのだ」

「ねえ、滝さん、彼らがこの地球を去るかどうかは、自分達がきめる事よ」

 私の、今までの記憶、過去はすべて造られたものだった。
この村で生まれ、育ったということ。それもすぺて彼女らに、つまり仲間遠に作られた記憶だ。

 私達が、この星地球をはじめて見た時のことを私。ミューは思い出す。

地球は本当に美しかった。
そうなのだ。
夜空の中に浮ぶ「なみだ石」のようだった。

 あれから何年たってしまったろう。
今まで20才であると思っていた僕「日待明」は、地球の上で少
なくとも2000年暮らしていた私「ミュー」を発見する。

 裁判の決果、有罪と決めつけられた私は、何人分もの地球人の人生を一人で,歩んできたのだった。
仲間は私の体に特殊処置を施した。

私は私個有の記憶をなくし、地球人幾人分かの生と死を味わったのだ。
今の今まで、私自身を忘れさっていた。

 あの日記、このなみだ石のことを書いた父の日記は誰のものだろうか。

おそらく私はリーラがそう仕掛けたと思う。

副隊長であったリーラは、自分達、第10次探険隊が引きあげる時が近づいたことを知せるためにだ。この20才の僕「日待明」の人格、頭屋村の生まれであるという記憶が、最後に作られていたのもりーラのしわざだろう。

「地球追放刑」を受けた私を、彼女の旅立ちの時に、涙岩のところまで来させたかったのだろう。
たてまえとしては、来させてはいけないのだが、彼女の本音は、やはり、ここに、別れに来てほしかったに違いない。

 滝は、本当の名前は知らないが、まだ、必死でりーラ達と話をしていた。彼女達をとめようとしていた。

涙岩の上で、涙をながさざるをえないような心のやさしい人達、今の地球に住むには心やさしすぎる地球人達、そんな人達を、我々の星に連れてかえるのが私
達の使命だ。しかし、そんなことは、今の私には、かかわりあいがない。

 滝は、地球防衛組織の一員だ。そしてどういうきっかけかはしらないが、私が地球人ではないことを知り、「涙岩」の場所をつきとめるために、私について、この神立山に来たのだろう。

かわいそうな地球人たち、、、私は常に思う。

どうやら、滝は力にうたえるらしい。

近くの森の上を旋回していたヘリ5機が、急速に近づいてきた。草原と涙岩と人々の間に、ヘリからのサーチライトの光条が飛び交う。

 それまで輝いていた「涙岩」がもっと光を増しはじめた。
 一瞬、涙岩からの閃光が私の目を射た。
そして、大きな音が聞こえ、衝撃が襲う。

(続く)●090921改訂●
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」





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