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アリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産ー第6回

2013年12月28日 | アリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産
アリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産ー第6回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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「お前、デッキマンだね。それも新米の」
占いの巫女がミラーに言った。ここはシティの盛り場だ。

5年前、宇宙の中心星ピラトのオクマ・シティだった。ミラーが連邦宇宙大学
を卒業した頃だ。配属先は星庁の管轄下にある監視機構であった。

「そうだよ、それがどうしたのだ」いぶかしげにミラーは答える。
荒手の募金活動じゃな
いだろうな。ミラーはこの種の募金にうんざりしていた。
いわく宇宙戦役募金だの、戦争孤児募金だの、宇宙植民募金だの…

「お前にいいことを教えてあげようじゃないか」巫女はにやりと笑う。
危ないぞ、こんな奴に限ってオアシが高いのにきまっている。
「いらないよ、占いのおし売りはお断りだ」ミ
ラーは足早に立ちさろうとした。が、うしろから巫女がうむをいわさぬ調子で言葉を投げ
かけてきた。
「世界最高の宝を欲しくはないのかい」その言葉にミラーは急に振り向く

「それは何だ」興味シンシンの顔だった。
「ほほっ、興味を持ったね。教えてあげよう、特別にね」
「もったいぶるなよ」
「禁断の実だよ。それについての情報だよ」
「禁断の実だって、そいつは『新生神書』の『最後の楽園』に出てくる神話じゃないのか」

「それくらいしか、知らないのかい。見たところ、星庁に努めているらしいけど。
この言葉の深い意味もしらないようじゃたいしたことはないね。お前も、
もっと歴史をお知り、そうすれば、私がいった意味もわかるさ」軽蔑するように、首をふりながら彼女は言った。

「でも気をおつけ、その禁断の実にさわる時はね」
ミラーの方を節くれだった指でさした。
「俺は禁断の実を持てるのか」
「そうさ。おまけに、お前は古代世界をかいま見ることができるだろうがね」
「古代世界?,かいまだと、どういう意味だ」
「もう、今日はおしまいさ」気味の悪い占いの終り方だ。

「どういう意味だ。俺がそこで死ぬとでもいうのか」
「しかたがないね。おまけに、もう1つヒントをあげるよ。腐敗惑星についてお知らべ。
これで本当におしまいさ」
「なんだって、あの汚染された星か」

「いいかい、これで、私の未来の占いは終りだ」
 ミラーは10ソブリン銀貨を巫女に投げあたえた。
「いい事を聞かせてくれたな、お礼だ」
「いらないよ。今夜はサービスだよ」
巫女の姿は急に、若い女性に変身する。

「あ、おい、待てよ。消えた」
 ミラーは体をふるわす。寒気が急に襲ったのだ。
「今のは悪い夢じゃなかったのか」
が、ミラーの見たのは夢ではなかった。

●ミラーは必死で資料を探している。
ここは監視機構の研修センターである。
「ミラーくん、隣に座っていいかな」スニンがミラーに話しかける。
「あ、どうぞ、スニン先輩」
「どうだね、勉強は進んでいるかね」
「ええ、何とか、監視機構の研修についていこうと必死ですよ」
「ところで、君、何の本を読んでいるのかね」

スニンは急にミラーの読んでいる本の表紙を持ち上げようとした。慌てて、それを隠そう
とするミラー。が、表紙が見えてしまった。
「新生神書」である。

「おや、おや、君も中々信心深いようだね」
「いえ、それほどでもありません」
「君は隠れ宗教家ではあるまいな」
「まさか、そんなことはありえません」
「ミラーくん、率直に聞こう。君は、腐敗惑星へ赴任したいかね」

腐敗惑星だと、なぜだ。なぜこいつは知っている。ひょっとして、いやぐうぜんというこ
ともあるな。ミラーは、できるだけ平静を装うとした。
「続けて聞こう。君は「禁断の実」を探したいかね」

ミラーはこの言葉を聞き、顔が青ざめるのが自分でもわかった。なぜ、このスニンが、あ
の夜の占いを知っているのだ。
「ミラーくん、我々は君をスカウトしにきたのだ。安心したまえ」
やっと、ミラーの声が出た。いささかかすれていたが。

「いったい、あなたは」
「ダークサイドの人間だよ。ミラー君」
(続く)20090501改定
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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