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源義経黄金伝説■第32回

2017年09月18日 | 源義経黄金伝説

源義経黄金伝説■第32回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
Manga Agency山田企画事務所
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第4章 一一八六年 足利の荘・御矢山みさやま


下野しもつけ国足利荘は、奥州平泉から続く奥大道が坂東にはいる陸奥
の国との国境にある。頼朝が平泉を攻めるなら前線基地となるところである。

この場所で、頼朝の命にしたがう坂東の武者たちがあつまり、神事として武
威を見せる祭りは坂東武者への示威を狙っている。
足利荘は、北東部に小高い丘陵地が綱なり、遠く奥州山脈に繋がっている。

その丘のひとつが御矢山みさやまであり、武神を祭る御矢神社が、近在
の武士の信仰を集めていた。その山懐の一角が、御祭りを行う、御矢神社競
技所が設けられていた。

この御矢神社御祭りでは、頼朝の命により、近在の所領を持つ地頭、御家人
に輪番で、頭役を命じていた。

御祭り御矢神社競技所には中央に広場があり、石の祠を中心に、長径390メー
トル、短径260メートルの競技場状に作られていて、その周りを、間隔
10メートルの土壇が10段北部斜面に向かって伸び上がっている。

土壇は、御家人各家の桟敷である。その並び方によって、鎌倉に対する
忠誠心と権力構造がわかるようになっている。

むろん中央には、源頼朝家族、そして舅の北条時政を中心とする北条家が
とりかこむ。天皇家勅使御桟敷があり、坂東の主な名家が、千葉氏、和田氏
、佐々木氏、梶原氏、足利氏、小山氏等が取り囲んでいる。

御神事が行われた後、武技である、弓戯、相撲が夫々に郎党の参加により行
われている。

有名な神事ゆえ、日本全国から、この祭りを目指して商人たちが集まってい
た。参道には、商人が日本各地の珍しい産品を広げ口上を述べている。白拍
子、道化師、放下師、曲芸師などが、歌を歌い、話芸を行い、面白おかしい
娯楽を、一般庶民にも与えている。

日本の軍旗である長旗(流れ旗)が、各家の家紋や、信仰対象である八幡菩
薩の文字などをあしらい、空風にはためいている。競技場に参加する華やか
な装束の騎射武者があたりを駆け抜けている。

通例祭りは五日間ぶっ通しで行われ、白拍子の舞、猿楽、田楽などが行われ
た後、武芸競技が行われるのである。

 「小笠懸」「相撲すまい」「草鹿」「武射」「競馬くらべうま
などが、主な種目であった。このため五千人くらいの人々が、集まる。山
の中の儀式なので、宿泊のための仮小屋が、あちこちの丘上に立てられて
いる。屋根は尾花で葺かれている。

競技場の周りには、弓矢をしつらえた北条家騎馬騎士が警護している。西行
の荷駄隊は、頼朝との約束とうり、この御矢神社御祭りにたどりついている。

黒田の悪党との取引は、矢文とうり、この祭り跡で行われる。

黄金荷駄隊は、この祭りに集まる武家たちとは異彩を放っている。
鎌倉の御家人は、平家を先年滅ぼした勢いのある時期の鎌倉殿の祭りとはい
え、源頼朝は、まだ征夷大将軍の位を、京都の後白河法皇からいただいてい
ない。その源頼朝に、完全に承服はしていないのだ。それゆえ、何かの一大
事に備えて各家の騎射武者を武装させて、待たせている。御祭り会場は、一
種異様な緊張状態であった。

競技場からは、御家人たちの観戦のどよめきが聞こえてきた。その絶え間
ない歓声が、声が津波のように繰り返し、近在の山々にこだましている。

続く2010改訂
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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