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ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(2)

2005年12月10日 | SF小説と歴史小説
■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(2)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/


■第七章 血闘場
(2)
「この古代の神殿祭壇の上が勝負どころぞ」 主水は叫んでいた。
「舞台にとって不足なしですね。わたしはこのゲルマンの剣で戦います。我が神に祝福あれ」
 ロセンデールの顔も晴れ舞台での戦いであり、上気している。青い目がキラリと光る。 大空洞の外から、急に稲光がひらめく。ガーンという言葉が後から響いて来た。
「主水、貴公をこの刀のさびにしてくれましょう。それはとても名誉なことですよ」
 ロセンデールは誇りを旨に、戦いに望んでいる。
 電磁サーベル、ゲルマンの剣を抜き放つ。 再び、稲光がひらめく。光が回りに満ちた。 剣からは、またクサナギの剣とはことなる威力がある。
「この戦い、望むところ。クサナギの剣の力、お見せする」
 主水も、剣を抜く。ぴしーん霊気が放たれた。
「だ、旦那は大丈夫ですかね、ねえさん」
 鉄は、びびって隣にいるマリアに尋ねる。マリアは普通に戻っていた。
「私にだってわかるものですか」
 ロセンデールはマリアの方を見てにこりとする。
「主水、お主が倒れれば、レイモンもマリアも刀のさびにしてあげましょう。心して打ちかかっていらっしゃい。私は、我が聖騎士団の者ほど、腕は甘くはありませんよ」
 サーベルがビュウと唸った。
 ロセンデールは、ヨーロッパの剣技大会でもトップレベルの腕だといわれている。
 サーベルは突きが基本といわれているが、ロセンデールの技は単調ではない。なぎ、払うもテクニック中に含まれている。
 おまけに手にするは、ゲルマンの剣。古来より伝わる名剣。神聖ゲルマン帝国の守り神である。
 戦いは思わぬ方向に進んでいる。主水は防御の構えに入っている。ロセンデールが攻勢なのだ。
 レイモンにしても、マリアにしても気が気ではない。
「えーい、主水ったら、肝心なときに剣技がさえないのですから、だらしがないですわねえ、どうしたのですか」
 味方のマリアがいらだち、罵声が飛んでいた。
「うるさい、マリア。サーベルに対しては、お前ほどではないんだ」
 そういった主水の頭がグラリと揺れる。視覚装置がおかしくなった。体のバランスが取れない。
「ウ、いかん…」
 どうしたことか、主水の持病が肝心なときに出てしまった。
「いかん、この大切な時に」
 足毛布博士が額に手をあてる。主水の様子に足毛布博士が気付く。
「主水の様子いかがいたしました」
 徳川公廣が尋ねる。
「例の病気がでよった」
「えっ、こんなときに……」
 徳川公が唸る。
 主水に、意識の空白が襲ってくる。
「どうした、主水君」
 ロセンデールがニヤリと笑っている。
「私の腕に恐れを感じたのかね」
 主水はふらふらし、ゆっくりと右腕が止まってしまう。
 意識がフェイドアウト。
 その姿のままで、主水はぎこちなくバッタリと神殿の床に倒れた。が、クサナギの剣は、手に握られたままである。
「ほほっ、口ほどにもない人ですね。主水君」「主水、危ないわ」
 後ろからマリアがすくっと立って、自分の愛刀サーベル「ジャンヌ」を手にしていた。「いい、ロセンデール。ヨーロッパの恨みをこの日本で晴らします」
 マリアの顔はキッと厳しくなっている。
「おやおや、麗人マリア。美しい愛の世界の姿ですねえ。が、所詮君は女ロボットです。現在のヨーロッパチャンピオンの私を倒せるとお思いですか。おまけにこれは、ゲルマンの剣ですよ」
「それは勝負してみてからいってほしいですわね」
 ロセンデールはあることに気付く。
「そうだ、マリア、私の目をよく見てごらんなさい」
 ロセンデールが声高かに叫んでいた。悪魔の表情である。
「いかん、マリア。ロセンデールの目を見るな」
 主水はロセンデールの狙いに気付く。ころがり、のたうつ主水は、マリアに叫んでいるつもりだ。が、いかんせん、その声は今マリアには届いていない。
「まずいのう。マリアの別の人格が浮上するかもしれん」
 徳川公がポツリとつぶやいた。
 マリアは別人になりつつあるのだ。観戦している人々からどよめきが起こる。
「別の人格ですと」
 今度は足毛布が尋ねる。
「そうなのです。マリア=リキュール=リヒテンシュタインは二つの心を持つロボットなのです。もう一つの心はリキュール。マリアの肉体にあるもう一人の人格」
 徳川公はボソボソとしゃべる。
「こんな時に…」
 ロセンデールの剣が、あっという間にジャンヌの剣をたたきわり、続いてマリアの胸を貫く。
「うっ」
 と叫ぶ。
「マ・リ・ア」
 主水も叫んでいる。
 ロセンデールは、ゲルマンの剣を、瞬間抜き取る。
 どっと祭壇上に倒れるマリア。剣はマリアの中枢をついていた。
「ふふん、マリアも口ほどにもありませんねえ。手応えがありませんねえ。こんな晴れ舞台なのにねえ」
 ロセンデールはゲルマンの剣をビュウと振った。

(続く)
■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(2)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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