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ロボサムライ駆ける■第54回■早乙女モンドの妻マリアは倒れ、別の人格マリア・リキュールと自ら名乗り、ロセンデール卿の味方と言う。霊能師・落合レイモンは使番・夜叉丸にリキュールに退治させようと。

2019年09月15日 | ロボサムライ駆ける

RSロボサムライ駆ける■「霊戦争」後、機械と自然が調和、人間とロボットが共生。日本・東京島「徳川公国」のロボット侍、早乙女主水が 日本制服をたくらむゲルマン帝国ロセンデールの野望を挫く戦いの記録。

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ロボサムライ駆ける■第54回■早乙女モンドの妻マリアは倒れ、別の人格マリア・リキュールと自ら名乗り、ロセンデール卿の味方と言う。霊能師・落合レイモンは使番・夜叉丸にリキュールに退治させようと。

ロボサムライ駆ける■第54回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/

 

 

■第七章 血闘場(3)

「マ、マリア」

 主水は倒れて身動きできない。

「ああ…、マリア…」

「ねえさん」

 思わず、鉄が倒れたマリアの方に走っていく。

 

マリアの体に触る。

その時、鉄の脇腹に何かが突き刺さった。

電磁ナイフである。

 

そのナイフは、マリアの手から鉄の腹に深々と突き刺されたのだった。

 

「うっ、ま、まさか、ねえさん」

 信じられないものを見たような鉄。

 

「そうです、今頃気がついたのですか」

 マリア、いやリキュールは、ゆっくりと起き上がる。

「今までのすべての情報はそれじゃ…」

 つぶやく鉄。膝をつき、苦しげに鉄はマリアを見る。

 

「そうです、私リキュールがロセンデールに伝えてたのです」

「そ、それじゃ、あんまり主水のだんながかわいそうだ」

「黄色いロボット風情から、そんな言葉は聞きたくないですね」

 リキュールは、

「それから、私を姐さんと呼ぶのも気に食わないのです。私の嫌いな黄色いロボットからねえ」

 と言い置いて、握っている電磁ナイフのつかをぐっと押した。

 

電磁波が鉄の体を貫く。ビクッビクッと鉄の体が動く。恨めしげに鉄がマリアの顔を見上げる。

「ねえさん、そいつはあんましだ…」

 鉄の下半身が吹き飛んで転がる。

 

「鉄…」

 主水が唸る。

 

「夜叉丸、マリア=リキュールを倒せ」

 観客のように様子を見ていた人間の中から声が上がる。

 霊能師・落合レイモンが夜叉丸に命令していた。

「御前、わかり申した」

 

 夜叉丸が、背中から「鉾」を引き抜いて、祭壇に立っていた。

「異国の女ばら、私が退治してくれよう」

 

「ほほう、霊能師に私淑する魔道師風情が何をおっしゃる。私の腕をとくとごろうじろ」

「マリア」

  倒れた主水が、とぎれとぎれにしゃべる。

 

「ふふん、気安くお呼びでないですわ、このアジアの黄色いロボット」

「お前…」

 冷や汗がしきりと主水の顔を流れ落ちる。

 

「ふふ、そのとおり。彼女リキュールは、昔から我々聖騎士の一員だったのですよ、主水くん」

 後ろから、リキュールの肩を抱き、ロセンデール卿が勝ち誇って続ける。

 

「貴様、先刻…。くそっ、背後で糸を引くのは、やはり、ルドルフ大王か」

「陛下を、呼び捨てにしないでください!」

 

 ロセンデール卿のハンサムな顔は赤くなる。

「そうよ。ルドルフ大王は、ユダヤの血と黄色い血が一緒になって、白色帝国を脅かされるのを嫌っておいでなのよ」

 リキュールは吐き捨てるように言った。

 

「夜叉丸、薬剤タンクを投げろ」

 レイモンが夜叉丸に、自分の薬タンクを示した。

 

「ですが、御前」

「よい、このさいじゃ。後は何とかなろう。心柱をあやつらヨーロッパ勢に取られては後の祭りじゃ。まず、わしの体をより、あやつらを倒すことじゃ」

 レイモンも青い顔をしていた。

「それでは、御前、許されよ」

 

夜叉丸は、そう叫び、レイモンの背中に張り付いている薬剤タンクを掴み、最上段から投げ降ろす。

「やーっ」

 夜叉丸が、落合レイモンの薬をばらまいた。

 

祭壇は薬のほこりでまいあがっり液体があたりを濡らす。

 

「ロセンデール卿、ここは私にまかせて。この夜叉丸とかと、勝負します」

「OK、リキュール、君にまかせよう」

 ロセンデール卿はしりぞいた。

 

 夜叉丸とマリア・リキュールが対決していた。

「マリア・リキュールとやら、私の鉾は特別なのだ」

 夜叉丸は無表情に告げる。

 

「ほう、どこが特別なの。聞かせてほしいわね」

「それはこうだ」

 夜叉丸が、力を込めて鉾を投げる。

意外な展開だった。

「何よ、これは」

 

 目の前の出来事をマリアは信じられぬ表情で見る。

 

鉾は、十倍に膨らみ突き抜ける。

一瞬後、マリアの体をばらばらに吹き飛ばしていた。

 

「ま、まさか」

 ロセンデールが一瞬青ざめた。

「日本古来の鉾。この古代都市では、古来から、皆様方の霊気を集めて膨張する」

 冷徹に夜叉丸が言う。

「そうじゃ、今回はわしの薬で膨張させたのじゃ」

 

「くそ、マリア=リキュールの敵、私が貴様を倒してやる」

 主水は祭壇の所で倒れたままだ。

 

 主水は無視され、最壇上はタッグマッチの様相を呈している。

「夜叉丸よ、お前の本当の力をお見せしろ」

 

「よろしいので、レイモン様」

「よいよい、少しは皆を驚かせてやれ」

 レイモンは甲高い声で言った。

(続く)

■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(3)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所



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