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アリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産ー第5回

2015年08月27日 | アリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産

アリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産ー第5回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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 フライトデッキの中には、宇宙監視機構の監視員(ウォッチマン)が勤務についている。
彼らの役割はこの惑星から、妙な生物が生まれ出てこないのかをチェックすることだった。

この惑星に呼びおこされ、ひきこまれてしまう宇宙船には何の興味もなかった。
助けようともしながった。
その行為が、この星の生命行動だとしたらそれはそれでしかたがない。
誰にも星の生命活動を止める必要や、権利はないのだから。

 ただ問題なのは、この惑星の腐肉の内から発生してくる新生物が他の惑星や宇宙に悪影
響を及ぼすかどうかなのだ。

 フライトデッキのウォッチマンは、腐敗の風の存在には気づいていた。が、彼らのフラ
イトデッキは風の存在層のはるか上方にあり、干渉しょうとは想わなかった。
「ああっ、また堕ちていく」
 ミラーがコントロールルームにあるCRTを見ながらつぶやいた。
「今度はどこの船だ、ミラー」ラフラタが尋ねる。

「どうやら、ケンタウリのカーゴシップの様ですな。船籍α315-620。視認」

「OK、ミラー。データはインプットした」
通常業務だ。彼らには何の感情もなかった。

 ミラーと呼ばれた男、通称、ダーティ=ミラー。階級は伍長。
ここに勤務して3年になる。
彼の上官はラフラタ。階級は中尉。勤務歴10年。

 しかし、ミラーは、この山羊顔のラフラタのまなざしがずっと気になっていた。何か異
常だった。それに、なぜ、このフライトデッキに10年もいる、通例デッキマンの任期ロー
テーションは5年が限度だった。

 この腐敗惑星は、何らかの基準で、宇宙の船を呼び集めて落下させていた。どんな基準
なのかわからない。

 宇宙のローレライ。 生物を呼び集める星。

 呼び集められた生物は腐肉となっていた。

 フライトデッキのコントロールセンターに男が急に出現していた。
ラフラタがきづく。
「お前はだれだ」
「私を星に投下しろ」
男は絶叫していた。黒い服をきたこれといって特徴のない男だった。

「どこから、出現した」ミラーが叫んでいた。
「私?誰でもいい。このポッド投下装置を使わせろ」

 探査ポッドは簡単に投下できる。このコントロールセンターにあるキーボードを一押し。
「お前気でもちがったか。この星がどんな惑星かしっているのか」
「腐敗惑星だぞ」ミラーは侵入者に言う。

「わかっているさ、なにしろ、自分の故郷の星だからな」
侵入者は無表情に答える。
「故郷だと、お前はここの棲息生物か、そんなこと不可能だ。考えられん」
「そんなことがあり得るのか」
「私は故郷へもどりたいのだ」

 男は何度もつぶやく。
 忽然と、男の姿が消える。

ミラーはCRTをみてきずく
「いかん、ポッドがひとつ降下態勢に入っている」
「はやく、降下装置を解除しろ」ラフラタが叫ぶ。が、制止が効かない。
「だめです。制御レバーが動きません」
「くそっ、雲海のしたに落ちて行くぞ」 

「落下光点が消滅しました。あやつは一体」
「わからん、ミラー、星庁・監視機構の本部へ
連絡しろ。生物が発生するかもしれんな。疑似生命がな」ラフラタはミラーに言った。
「あやつはドリフィングゲートを易々と通過したのだな」

ラフラタはミラーに言うでもなくつぶやいていた。

 「ドリフィングゲート」とは、侵入者に対する防御システムである。星に呼び寄せられるの
ではなく、宇宙船の残骸を盗むために侵入してくる宇宙海賊を防ぐ為のシステムだ。確認
されない侵入者に対して光子ミサイルが次々と発射される。

「あやつは、ひょっとして死せる魂かもしれんな」ラフラタは考えぶかげにいった。
「死せる魂ですって、それは一体」
「死せる魂とは、生物でも、機械でもない。意識体、あるいは霊体である」

 ミラーは上部機構への連絡と聞いてほくそ笑んでいた。
『これはチャンスかもしれん。時がきたのだ』
 なぜ、彼がこの単調なフライトデッキを
任務地と希望したのか。

それは過去に、その訳があった。

(続く)20090501改定
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
アリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産ー
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