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封印惑星第3回●恒星「タンホイザー=ゲイト」にハーモナイザー、巨大″木″が浮遊する。彼は異変がある「小球」に自分の分身、アーヘブンを派遣する

2019年11月14日 | 封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)

CP封印惑星・封印された新地球で、情報収集端子である一角獣・新機類は、天空の光矢を見る。 それは新地球の解放者、世界樹の出現する予兆であった

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第3回●恒星「タンホイザー=ゲイト」にハーモナイザー、巨大″木″が浮遊する。彼は異変がある「小球」に自分の分身、アーヘブンを派遣する

封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第3回●

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

山田企画事務所

 

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●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第3回

 

一つの恒星がある。

 

名前を「タンホイザー=ゲイト」という。

 

星の中心部に緑色の液体で充たされた空間があった。

 

そこに巨大な″木″が浮遊していた。

 

″木″は意思の集合体であり、自らをハーモナイザーと呼んでいた。

 

虚空からの信号をハーモナイザーは受けた。

 

彼はその信号を分析し、推理した。その信号は「小球」にある「生命球」

の消滅を意味していた。

 

同時に一つの決意が、彼の意識の中で生まれた。

 

ハーモナイザーの末端部へ、中央神経叢を通じ、一つの刺激が送られた。

 

ハーモナイザーの末端部には、数多くの個性群体が付着していた。

 

それぞれは、小さな球体であり、それがまるで根に付着しているように群体を構成していた。

 

個性群体のひとつである「アー・ヘブン」は夢みている。

 

たゆとう羊水の中で夢みる事を楽しんでいる。

 

アー・ヘブンの個性がいつ、どこの星で生まれ、また、いつハーモナイザーに同化されたのか、その記憶は消え去っている。

 

『アー・ヘブン、目ざめよ』

 

突然、声がアー・ヘブンの体の中に響いていた。

 

誰だ。この快いまどろみの中で私をめざめさせるものは。

 

アー・ヘブンは怒りを感じた。

 

『アー・ヘブン。使命を与える。すぐに旅立つのだ』

 

使命を与えるだと、

 

誰が、いったい、何の権利があって、

 

私を目ざめさせるのだ。

 

おまけに旅に出ろだと、何を言っているのだ。

 

『アー・ヘブン、それが、お前の運命なのだ』

 

運命だと、そんなものなど、とっくの昔に忘れてしまった。

 

私に何をさせようというのだ。

 

『アー・ヘブン。お前は一つの世界を作るのだ、私の代理人として』

 

世界だと、

 

世界とは何だ。

 

それにそんなに価値を持つものなのか、世界を作ることが。

 

『アー・ヘブン。動け。分前が自ら動こうとしないのなら、私が動かす』

 

あー、やめてくれ、私はこの羊水から離れたくがいのだ。

 

しかし、無情にもアー・ヘブンの球体は末端部から切り放され、ハーモナイ

 

ザーの導管に吸い込まれた。上へ上へと扱いあげられる。

 

 

 

アー・ヘブンの球体の上から何かが、かぶせられたのを、アー・ヘブンの意識は感じた。

 

何かをかぶせられたまま、導管の内にあるアー・ヘブンの体は急激に加速度を増し、

 

羊水の外、さらにはタンホイザー・ゲイトの外へとはじきとばされた。

 

アー・ヘブンの体を包んでいるのは「胞子」と呼ばれる飛翔体だ。

 

アー・ヘブンの体は、タンホイザー・ゲイトから離れてゆく。

 

アー・ヘブンは、自分の故郷、タンホイザー=ゲイトを観察する。真中に緑色の輝きが見えた。

 

羊水湖の輝きだ。

 

私はあの中で眠っていたのか。できれば戻りたい。そうアー・ヘブンは思った。

 

しかし、「胞子」は回転しながら、太陽光流に乗り、銀河を横切って行く。

 

長い旅路になるだろう。

 

そうアー・ヘブンは感じ、そして、自らの体を冬眠状態においた。

 

アー・ヘブンも、また一つの運命を荷っているのだ。

 

(続く)

●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第3回●(1987年作品) 

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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