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ガーディアンルポ01「最終列車」■第4回

2006年02月01日 | SF小説と歴史小説
ガーディアンルポ01「最終列車」■第4回
ガーディアンルポ01「最終列車」■第4回
(1979年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/
http://ameblo.jp/yamadabook/

■ガーディアンルポ01「最終列車」■第4回■


思わず、イヌイはしまったという顔をして
「いや、剣豪小説を読んだり、映画を見たりしてさ」
天井の上を誰かが歩いていく音が聞こえた。
「上を歩いていったぞ」
 サイトウが叫んだ。
「何上をだと、いかん」
 イヌイは通路に入ってきている武士を切り崩しながら、ドフヘ向かった。
 外から矢が射かけられる。イヌイは刀で矢を振り払い天蓋へと登っていく。
 一本の矢が、イヌイの背を貫いた。思わずイヌイはのけぞり、列車からころげ訟もそう
になる。が気を伺とかとり直し、機関車の方へ進む。矢を自らの力で抜き取る。
 天蓋の上はいわぱ攻撃目標とされる率が高い。次々と射手は矢を放つ。
 必死で駆け抜け、イヌイは先を行く武士に追い着いた。
「待て」
 呼びとめられた武士はイヌイの方を振り返った。イヌイの顔をぐっとにらみ、刀をかま
える。
[ワシは維神天膳じゃ、おぬしは」
「私はイヌイエイイチだ」
 二人は天蓋の上で切りむすび始めた。
 天童軍団の一人、中島活之助は、勇敢にもただ一騎、機関車を追い抜くと、前方へ廻り
こみ、槍を構えて、突進していく。スペシャルコマンド隊員は誰ひとりとしてこの事に
気かついていない。
 声を張りあげ、活之助は動く鉄のかたまりの真正面へ突進する。い々なきが聞こえ、血
しぶきがあがる。
 機関車が急停止した。
 その瞬間、運転席へ騎馬兵の槍がハ方から突きこまれた。
 急停止した時、列車の上にいたイヌイは振動で足をすべらした。刀を落とし、両手でへ
りにぶらさがった。ゆっくりと刀を手にした維神が目をギラつかせ、近ずいてくる。
 大東亜戦争のぱあさんが遠くから石をなげた。石は維神の顔に命中し、一瞬のスキがで
きた。その瞬間をにかさす列車の上にイヌイははい上がった。スペゾ″ルリコマンドの一
人がイヌイヘ刀を痙げた。
 列車が止まったので、武士団は勝どきをあげていたが、天蓋の上の二人に気がつき、戦
闘をやめた。軍団一の使い手維神天膳と異形の者との戦い。全員の目が天蓋の上に集中し
た。
 しかし勝負は一瞬に決まった。
 額から血を流し、イヌイめがけ維神は切りこんだ。イヌイは刀を受け取りざま、勢いを
かって上段から振りかとした。
 維神は袈裟がけにされ、動きを一瞬止めた。やがて、つっと前のめりになり、肩口から
血を吹き上がらせながら、列車から落ちた。
 返り血をあびてイヌイは、一瞬フラついたが、刀をかざし、勝ち名のりをあげた。
「イヌイェイイチ、維神天膳を撃ち取った」
 列車の全員から歓声があがった。敵の軍団からも賞讃の声があがっている。
 天童が単騎で、列車のすぐ側まで駆けてきた。天蓋上のイヌイに話しかける。
「どりしゃ、私の家来にならんか。手だれの維神を倒すとはなかなかの剛の者よ」
 イヌイは天童に言った。
「殿、私には生涯、これと定めた主君が御座います」
「ほほ、残念な事じゃ、して、その幸運な御主君の御姓名は」
フゾェイ殿で御座います」
「滋英殿、はて、あ!り聞かぬ名じゃの」
 重ねて、イヌイは言った。
「殿、か願いが御座います」
「伺じゃ、申してみい」
「どうぞ、軍勢を釦引きあげ下さい。私達には殿と争う理由はまったくございません」
 天童は首をかしげた。
「うむ、そり言われてみれぱ」
 天童達にかけられたROWの思念が、この戦闘の興奮で消去されかかっていた。イヌイ
の目が鋭く天童民江がれている。まるで魔術師の目のよりだ。
 軍団の中にも不信の声があがっていた。
 そう言われてみれぱ、天童達は々ぜ、こんなところにいて、彼ら異形の者達と戦ってい
るのかわからなかった。
 それにこのあたりは見かけない風景だった。
「イヌイ、ここは伺という所じゃ。ついぞ見かけぬが」
「ルート○七という所でございます」
「聞かぬのか、そんな名は」
 天童は少し考えていた。やがて、決心したようだ。
「わかった。どりやらワシらは伺かのまやかしにあったらしい。引き上げより」
「ありがとりございます。この御恩、イヌイ生涯、忘れませぬ」
「うむ、さらばじゃ」
騎馬軍団は旗を翻し、去っていった。彼らは出現したのと同じ場所で消滅した。
 安堵の吐息が列車の方々でかこった。サイトウは列車からとび出て、傷ついたイスイの
偏に駆け寄った。手を叩きながら、


 「すごい。君はまったく主人公さ。本当にどこで剣を習ったんだい。前にはそんな事は聞
かなかったよ」
「それがね……」
 イヌイが話しかけようとした時、スペシャルコマンドの一人が血相を変えて、飛んで
きた。
「チーフ、大変です」
イヌイが否定する。
「チーフ? あなたは何か間違いを……」
「申し訳ありません。非常事態なのです。隊長が危篤状態です」
「何、クルスが」
 その言葉でイヌイは表情を変えた。
彼は今までの自分を、その時投げ捨てたように見えた。
 サイトウは必死で叫びかけた。
「何だ、イヌイ、イヌイ」
 イヌイは答えなかった。だまって前の方へ歩いていった。サイトウは追いかけようとし
たが、彼の背中はそれを拒否しているように見えた。
 サイトウはあきらめ、扉を開け席K戻ろうとした。
 戸口Kあのばあさんが立ってサイトウをにらんでいた。
「サイトウさんとかいったね。私の眼はごまかされないよ。私はあなたが何者か知ってい
るよ!」
 サイトウは答えず、手にしていた電磁棒で老婆の頭を一撃した。老婆は叫び声をあげる
暇もなかった。
「誰かに話して訟くべきだった々」
 サイトウは老婆の死体に向かって言った。


 最先端の車両で、イヌイは俄作り述べ簡易ベットに横だわっているタルスを見守った。
「す、すみません、チーフ」
 苦しい息の下からクルスはイヌイに話しかけようとした。
 横から一人の隊員が口を出した。
「タルス隊長は、運転席でがんばってかられたのですが、急停車の時、槍ぶすまにあい・:
……」
「あ々たの正体を最期まで隠してかきたかった。しかし、私が傷ついた今、Jペシ″ル0
コマンドの指揮をとれるのはあなたしかいない」
クルスはふるえる声で言った。
「わかった。タルス、後の事は心配するな。かならずJを基地まで連れていき、地球を説
出させてみせる」
「た、頼みます。先輩のあなたなら、安心してまかせられます。ただ・::・」
 タルスは目をつぶった。
「タルス、タルス、しっかりしろ」
タルスは答えなかった。
イヌイにとってタルスは愛すべき部下であり、リュテナン地球連邦大学の後輩であった。
イヌイは二ー九六年からこの一九七九年までタイムジャンプを行ない、現地調査員の長
  として働いていたのである。
イヌイは、スペシャル=コマンドの一人に質問をした。
「Jの容態はどうだ」
[一時、意識をとりもどされたのですが、今は眠ってかられます」
「よし、基地についてから、治療を受けてもら釦う」
「電車の方はどうだ」
「いつでも、動ける状態にあります」
「よし、出発しょう。一刻も猶予はならん」
「チーフ、一つかうかがいしたいのですが」
「伺だ」
「ROWはなぜ大勢でこの列車を襲ってこないのでしょう」
「この「ルート○七の時空間」は非常に不安定だ。あまり、一度に多量の異物が出入りすると、
その異物質は自壊する恐れがある。ROWはそれを恐れているのだ」
「それでは我身のルート○七への出入りは」
「我4r t!j球人だ。その上、ここは地球上の時空間だ。ROWはこの時空間では異物なの
だ。長時間、大量の、高エネルギー物質は存在できない」
「そのために、彼らは」
「そうだ。この地球上の物体なら、地球の歴史流からひっぱり込むことかできるのだ」
「また、ROWは歴史流から我々を妨害する物体を投入できるわけですね」
「我々に時間はあまり残されていない。それにこれから先、異重時限流の橋を渡らねぱな
らない」
 急に風が吹いてきた。
「うん、天候がかかしくなってきた痙」
 風は段々勢いを増してくる。空が暗くなる。
「くそっ、ROWのしわざかもしれん。構わず出発だ」イヌイは命令する。
 列車はガタ″と揺れて、動き出し、次第に速度をあげた。
 運転席Kいたスペシャルコマンドが叫んだ。
「竜巻です。竜巻がやってきます」
「ROWめ、今度は、どうやら列車妨害に天候をあやつって」
 風は急速に強さを増し、まっすぐに竜巻は進んでくる。
 唇をかんで考え込んでいるイヌイにスペシャルコマンドの一人が声をかけた。
「失礼ですが、我々にあの竜巻をかまかせ下さい」
「何だって」
「恐らく、あの竜巻は、ROWが訟こしたエネルギー流だと思います。我々の破壊時のエ
ネルギーをもってすれば相殺できると信じます」
「自らを犠牲にして竜巻を消滅させようというのだな」
 イヌイは隊員の顔をじっとながめる。
「そうです。我々は人間ミサイル、爆弾です。もう「船」の発射時間までわずかのはずです。我々が死んでもJが脱出で
きる攻ら幸せです」船にはJ
を乗せなければならない。地球人類の鍵が。


 竜巻は近くの潅木や、樹木をなぎ倒し、巻きあげながら、恐るべきスピードで肉迫して
きた。
 隊員は列車の窓をあけ、ねらいを定め、自らを発進させた。
 竜巻の中心部で爆発がかこったようだった。しかしあいかわらず同じテンポで近ずいて
くる。別の隊員が出撃していく。さらに別の隊員が。
 乗客はもうあきらめかけていた。列車ごと竜巻にまきこまれるのではないかと。
 スペシャルコマンドは次々と死んでゆく。もう少しで橋だというのに。
 その時、竜巻の速度か急激にかちた。
「何とか、橋までたどりつけそりだぞ」
 竜巻の速度は徐々にかちてきている。
 列車はどうやら危機を脱したようだった。
 列車はついに異時限流の橋にたどりついた。この超合金で作られた橋。この
橋の下二百m下を流れているのは、しかし水ではない。
 橋の下の下は、時間流が流れているのだ。
 全地球の歴史の流れが幾重にも重なり、ありとあらゆる時間がからまり溶け合い流れて
いる。
この橋を渡り切れば「船」の発射基地なのだ。

■1979年ベトナム戦の最中
 シュート中尉はペトナム上空で、北ベトナム軍相手に戦っている最中だった。機体がガ
タンと揺れ、急にあたりの光景か一変したのに驚いた。
 彼ら三機の編隊はROWの円盤にとらえられたのだ。彼らの頭脳に、列剰隠敵という思
念が送りこまれた。
 列車に向かい双胴のプロペラ機は攻撃を開始した。
 シュート中尉は急降下を行ない、列車上空を通りすぎる刹那、中央胴体下のJポンソン
に装備されている四丁の七・六二ミリ機銃の発射レバーを押した。手答えがあった。
「チーフ、飛行機です」
「伺だと、くそっ、コイン機だ。おまけに三機もか」
「爆弾を装着しているよりです」
 列車がかしいだ。
 ロックウエルOV-10プロンコ攻撃機の一連射て、車両の一部が被弾した。列車が燃え
あがる。
 ブロンコは再度、攻撃にかかろりとする。
「反撃してこないな。よし今度は爆弾をかとすぞ、マロリー少尉」
 彼はプロンコ攻撃機僚機を呼び出した。
「か前は列車の前をねらえ」
「了解」
「しかし、中尉、この川は一体どうしたんでしょうね。何ともいえたい色ですね」
 後席のマクルーア曹長かシュート中尉に言った。彼らは異次元に飛ばされた事にはきずいていない。
「七色に変化して光を反射しているぞ」
「観察はあとにしろ」
「列車から何か発射されました。うわっ」
 一機が人間爆弾で吹き飛ばされ、時限流へ突っこんでいった。
彼らは第一次大戦下のソンムヘ落下した。
「くそっ、チャーリーの機がやられた。いくぞマロリー少尉」
「チーフ、一機体が前へ旋回しました」
「くそっ奴ら近よりすぎた」
「人間ミサイルを使えば爆風で列車か橋から落下するぞ」
 第二波攻撃が列車を襲った。
 二人の人間ミサイル、コマンドが発進した。肉弾攻撃では、操縦不能を目的に。
 一人のスペシ″ルリコマンドは一様とすれ違いざま、ヘリのコックピットめがけ手にしていた
電磁棒を投げ込んだ。
 電磁棒は前席のシュート中尉の体を貫いた。
 コイン機は、地上からの攻撃を受け易いので、後席の副操縦士が操縦できるダブル操縦
装置が施されている。後席のマクルーア曹長は、爆弾を列車に投下した。ねらいは少しは
ずれ、最後尾の車両か通りすぎたレールに命中し、橋のその部分が消え去った。最後部の
車両が猛火に包まれた。
 マロリー少尉のコイン機は超合金の橋げたに爆弾を命中させ、上空へと急上昇を行なっ
た。そこへ追撃してきたものは。
「わっ、人間ですぜ。人間が飛びあがってくる」
 後席の軍曹がわめく。
「いや、人間じゃない。サイポーグだ」
 そのサイボーグは列車に装着されていた消火器を、コックピットめがけ放った。
 コイン機は操縦不能となり、時限流に突っこんでいった。
 コマンドは時限流への落下を見届け自爆した。
「列車を止めろ、止めるんだ」


 イヌイはどなった。
 急プレーキがかかる。うめき声をあげながら列車は停止した。先程のyロリー機の爆弾
で、前方K続く橋がなくたっている。
「くそっ、もり少しといりところで」
 もう発射基地の姿がはっきり見えている。「船」がシルバーに輝き、立っている。
 足下二百m下には、まだ、七色に輝く時間流かうずまく。
「基地からの助けは」
「だめだ、向こうからは、は手か出せない」
列車は橋の上で立ち往生していた。時間はいたずらにすぎてゆく。ロケ″ト発射まで時
間はあまりない。
スペシャル=コマンドたちが数人話しあっていたが、その内の一人がイヌイのそぱへや
って来た。
「チーフ、提案があります」
「うん、言ってみろ」
「車両Kできるだけ人をつめこんでしまうのです。恐らく二両あれば、生存者を助けられ
るでしょう。機関車を入れて三輛、伺とか我々のジェット噴射で五十m程動かしてみせま
す」
「現在、君達は伺名残っているんだ」
「五名です」
「列車に15名乗り込んで、残ったのはわずか五名か」
イヌイは考え込む。
「Jのために命を捧げてくれるんだね」
「我はコマンドです。Jを助けるために、命を投げ出すより、訓練されて
きた事はあなたも御存知のはずです」
「そうだ」
イヌイは思わず涙ぐんだ。
いずこからとも知れず、誘拐されて、未来に連れてこられ、サイボーグ手術を受けた入
々。Jを助けるためのみに存在する人間ミサイル。一度発進したら爆発するまで飛び続け
ねばならない。
「やってくれるか、Jのために」


 乗客たちは車両につめこまれた。
「一体、奴ら何をしようというのだ」
「橋が吹き飛ばされたようだぜ」
「それじゃ、俺達は動けないわけか」
「もう、いいかげんに助けてくれ」
「何回も死んだような気がするよ」
「釦い、みてみろ、奴らを」
「体を列車の要所、要所に結びつけているぞ」
「ゴー」
イヌイの声がひびいた。
コマンド全員、発進する。ジェット噴射が始まる。
コマンドの体から血が吹き出している。
しかし、列車はまだ動かない。
一気に飛び出し、そして一瞬に、彼らは体を列車から離さねばならない。
 動いた。列車が動き始めた。
 全員がショ″クを感じた。ガタッという音がした。
 ドシンという音と共に落下した。
そのまま列車は基地K向かい慣性の法則で、突進していた。
 基地の車止めに列車は激突し、全員、投げだされた。乗客達すぐ列車から飛び出し、空
を見上げた。
列車が無事に到着したのを確かめたスペシャル=コマンドが空中で自爆していっ
た。
それはJを祝福する花火、祝砲のようでもあった。ズーン、ズーンと、
確かにそれは十五回なった。
人々は伺もしゃべらず、それをながめていた。
サイトウは誰にも聞こえ々い程、小さな声でつぶやいた。
「勇敢な地球人よ、さようなら」


 Jを乗せた「船」は蒼穹の彼方へと旅立っていく。列車の乗客は見送っていた。
「どうか助かってくれJ。そして未来の地球を復活させてくれ」
 そんな願いがこもっていた。
 希望を打ちくだく円盤が、空の片隅に突如出現した。
 円盤はJを乗せたロケ″トを追撃していく。
乗客の目の前で、防戦むなしく船は爆発を起こして、粉々に吹き飛んだ。
一瞬の出来事だった。人々は痙すすべもなかった。
「Jが」
 と叫ぶなり、発射基地の隊員の中にはくずれかちる者もいた。
他の人々はただただあっけにとられている。
   一九七九年から連れてこられた人々は、地球の未来K思いをはせていた。
『Jがいなければ、未来の地球はROWに完全に支配されるのか」
サイトウはイヌイをなぐさめようとした。
「あtたはベストを尽くしたんだ。そうだろう」
イヌイは、立ちすくんで体を震わせていた。サイトウはそれかイヌイのあまりの悲しみ
のためだろりと思った。しかしそうではなかった。
彼は笑っていた。


サイトウは、彼が落胆のゆえに気が狂ったのではないかと危む。
「どうしたんだ、イヌイ」
「ははっ、すまない。サイトウ。私はついに遣り遂げたんだよ、この作戦をね」
「この作戦?」
「そう、おとり作戦をね」 ’
「それじゃ、あのJは」
「偽物だ。これは地球連邦上層部の一部のものしか知らない。Jは別ルートで地球を説出した」
イヌイは笑い続ける。人々は驚きつつも、ほっとした様子だ。
「別のルートだって」
イヌイは少し考えて、小声で言った。

「ああ、君ならしゃべってもいいだろう。ロワタウエル宇宙港から小型輸送船イーグル号
で々。大周遊コースをとってオメガヘ向かっているはずだ」

 サイトウもイヌイの笑いにつられて、笑い始めた。いや、そう見えるだろう。しかしサ
イトウが笑っているのには、別の意味があったからだ。
 あのJが偽物だと判明し、さらにJの脱出ルートもわかったからだ。
サイトウは頭の中に埋め込まれた特別通信機でひそかに本部へ連絡をとった。
 サイトウが列車内でなぜ、ROW探査機に感応しなかったか。
それはサイトウの体が地球人のもので、その体に、ROWの意識が移植されていたからだ。
「ところで、僕の隣にいたばあさんを知らないかい。姿が見えないようだが」
「あ、あの大東亜戦争のぱあさんかい。騎馬団に襲われた時、槍に突かれて死んだよ」
「そうか」
「知り合いかい」
「いや、私のいい相棒だったんだよ、彼女は」
ただちに乗客をもとの時代に帰すための準備が始められた。

ガーディアンルポ1終わり(ガーディアンルポ2に続く)

■ガーディアンルポ1「最終列車」■第4回
(1979年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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