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宇宙から還りし王(山稜王改題)第22回

2014年03月04日 |  宇宙から還りし王(山稜王改題)
宇宙から還りし王(山稜王改題)第22回
(1978年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/

ケインのまどろみはやがて先刻のシアリー絶壁とつながる。

 アゴルフォスは先程と同じ様に、彼を黄泉の船に乗せる。

 やがてその船は山上宮殿に辿りつく。そこはいかなる想像力もお
よばない建物であった。地球上の過去の王が作りあげた宮殿とも異
なっていた。ドーム型をしていて、中心から巨大な木がはえ出て、
ドームの上をすばらしい枝ぶりで被っているのだ。

ドームの表面はさながら宝石の様にみえた。

がそれは刻々、光ぐあい、色彩、紋様が動いていく。

そしてあきらかにそのドームの表面は生き物の様に
波うっていた。あるいは心臓の音さえ聞えてきそうなのだ。

 アゴルフォスは回廊を通り、山陵王の前につれだしていた。山陵
王は奇妙な椅子にすわっていた。その椅子もまた息づかいが感じら
れるのだ。

 ネイサンはデータの通りの顔だった。
 「君は、何をしにきたのだ」ネイサンが尋ねる。
 「私は、先刻、言いましたように山陵王に原稿をいただきに来たの
です」

「笑わすなよ、お前の顔には宇宙省のエージェントと書いてあるぞ」
アゴルフォスが言う。

 ケインは脇に装着していたメーザーガンを発射しようとする。が
メーザーガンは作動しない。
「どうしたね、私を殺すつもりだろう、リーファー君」山陵王が言う。

 リーファーだと。俺はケインだ。ケインは夢の中で叫んでいる。
そしてこの知覚が現実のものではないと知る。ケインは今、
アーなのだ。

「なぜ、私の名前を知っている、ネイサン」
「私はネイサンではない。私は山陵王なのだ」

 山陵王が眼をのぞきこむ。

 一瞬、ケインはシアリー絶壁から、ころげ落ちる、、自分の首を、、
感じた。
それはリファーの首であり、またケイン自身の首でもあった。

「うわっ」
ケインは夢を見ながら叫んでいる。

ケインは過去の自分の回想に今や、とらわれていた。
(続く)
■宇宙から還りし王(山稜王改題)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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