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源義経黄金伝説■第13回★

2012年12月13日 | 源義経黄金伝説
源義経黄金伝説■第13回★
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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広野から見えるその山は、荒錆びた様子で噴煙をあげている。富士山である。
「おうおう、何か今の時代を表わしているような…」

 一人の旅装の僧が、目の前の風景に嘆息をしている。心のうちから言葉が吹き出していた。その歌を書き留めている。詩想が頭の中を襲っている。

湧き上がる溢れんばかりの想い。僧は、もとは武士だったのか屈強な体つきである。
 勢い立ち噴煙を上げているは富士の山。富士は活火山である。

『風になびく 富士のけぶりの空に 消えて行方も知らぬ 我が思いかな』

「我が老いの身、平泉まで持つかどうか。いや、持たせねばのう」

 老人は、過去を思いやり、ひとりごちた。
 豪奢な建物。金色に輝く社寺。物珍しそうに見る若き日の自分の姿が思
い起こされて来た。あの仏教国の見事さよ。心が晴れ晴れするようであっ
た。みちのくの黄金都市、平泉のことである。

「平泉だ、平泉に着きさえすれば。藤原秀衡(ひでひら)殿に会える。それに、美しき仏教王国にも辿り着ける」
僧は、自らの計画をもう一度思い起こし、反芻し始めた。

 平泉にある束稲山(たばしねやま)、その桜の花、花の嵐を思い起こしている。
青い空の所々が、薄紅色に染まったように見える。
その彩は、絢爛たる仏教絵巻そのものの平泉に似合っている。
それに比べると都市(まち)としては鎌倉は武骨である。

「麗しき平泉か、、そうは思わぬか、な、重蔵(じゅうぞう)殿」言葉を後ろに投げている。

後ろの草茂みにいつの間にか、黒い影が人の形を採っている。

東大寺闇法師、重蔵である。

「西行(さいぎょう)様はこの風景を何度もご覧に」

「そうよなあ、、吾が佐藤家はこの坂東の地にねづいておるからな」

西行ー佐藤家は藤原北家、そして俵藤太をその祖先とする。平将門の乱を鎮めた秀郷(ひでさと)である。

「重蔵殿、まだ後ろが気にかかられるか。はっつ、気にされるな。結縁衆(けちえんしゅう)の方々だ。ふう、鬼一法眼(きいちほうがん)殿が、良いというのに後詰めにつけてくだされた」 
一息。
「さてさて、重蔵殿、鎌倉に入る前、いささか、準備が必要だ、御手伝いいただけるかな」

しっかりとした足取りで、西行は歩きはじめた。

続く2010改訂
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