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インザダスト■第3回■下の世界に落とされた私は記憶を消され老人として暮らし始める。Z88と記号をあたえられ農作業に。が自殺者を発見する。

2021年03月30日 | インザダスト
Dインザダスト■私Z88は自分の記憶をなくして、何かの牢獄に入れられている。ここはどこか、 いつの時代なのか記憶がないのだ。しかしそこは階級社会であった。
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インザダスト■第3回■下の世界に落とされた私は記憶を消され老人として暮らし始める。Z88と記号をあたえられ農作業に。が自殺者を発見する。
 

インザダスト第3回(1986年)SF同人誌・星群発表作品

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube

 

 

男の生活史は消去されているはずなのだが、かつての栄光の影が心の

どこかに残っているのだろう。

 

 私は疑問を感じ、男に尋ねた。

 

「それじゃ、あんたは伺を目的として生きているんだ。誰も目的な

しには生きてはいられないだろう」

 

 男はしばらく考えていて、やがてニヤリと笑って答えた。

 

「上の世界の奴らへの復讐さ。例えば、俺達がまだ生きのびている

という事が、生存そのものが奴らへの復讐でもあるのさ」

 

 男はそれ以上しゃべりたくないようだった。

 

「まあ、今日、一日は休んでいるがいいさ。明日からは、色々、覚

えてもらわなきやならん事があるからな」

 

 私は一つ、聞き忘れている事に気がついた。自分の名前は?

 

「名前だって。ここは下の世界、そんなものは上の世界でしか通用

しない。ここでは我々は単なる記号でしか呼び合わたい。俺はD25。

お前さんの記号はそれだ」

 

 D25は私のペンダントを指さした。

 

「Z88だ」

 

 

■部屋の外の世界は拡々としてどこまでも、無限にさえ続いている

ように見えるのがせめてもの救いである。私はやがてゆっくりとそ

の青空をながめた。

 

この上に世界があるのか。

 

 私は考えていた。そして疑問が心を占めていた。ここが問題のプ

ラノテーノョンだというのか。第一印象ではそうは見えない。

 

 私、Z88が行なう作業は、確かに単調なものだった。

 

 私は作業用ロボノトを一体連れて、「収穫の塔」を離れ、収穫用キ々

リヤーであたりの植物群の成育状態を調へるという作業を行なって

いた。

収穫キャリヤはホーパークフフトであり、その運転にはすぐなじむ。

 

 この農場の外周をなす森林群もまたどこまでも果てしなく続くよ

うに思われる。

 

まるで今の私の心情のようたった。不破かな目的を持つ男、

そしてその目的に疑問を抱く男。

 

 私はキャリヤを運転しながら考え悩んでいた。

 

私はやはり目的を遂行すべきなのだろうか。

 

私のこの世界への疑問。いや危惧といった方かいいたろうか。

私はこの世界の支配者というものを疑わざるを得ないのだ。

 

 警告音がなっていた。私は我にかえった。キ々リヤーのコノクピ

ノト内レーダーが異物の存在を告げていた。かなり大きな物体だ。

 

近くの低木の繁みにそれは隠されていた。打ち棄てられたキ々リヤ

ーだ。誰かの力で破壊されている。私はまわりを見渡した。

 

ようや

く、私は少し離れた所にある木にぶらさがっている物体に気づいた。

 それは人間だった。人間の体だったものと言った方がいいだろう。

かなり腐敗が進んでいた。

 彼はくびれて死んでいた。明らかに自殺だろう。

 私はD25の言葉を思い出していた。

 

 この男は、この世界に絶望し、自ら、首をくくるという古典的作

業で、自らの最期をしめくくったのだ。

 

 私はレイ=ガンをホルスターから引き抜き、出力を落として、彼

の死体のぶらさがっている枝を焼き切った。

 

大地へ軽やかな音をたてて、それは落ちてきた。

 

私はその体を仔細に調べた。ペンダyトの番号は読めなかった。

 

そして気がついた事かあった。

 

 私はまわりに火が移らないように気をつけ、出力をあげたレイ

ガンで火をつけて彼の体をきれいに焼いた。

 

煙はこの世界から上の世界を目ざしているようであった。

すべてか灰になる。灰は一陣の風で吹き飛ばされた。

 

後に小さな器具か残っていた。私はそれを拾いあげた。

それから私は打ち壊わされたキ々リヤーの方も調べた。

 

 彼は自らに絶望し、一人でこの森林へ入り、自殺した。が何に絶

望したというのだ。今の私以上に絶望している者があるだろうか。

 

 D25が言ったように、この世界へ落ちてきた人間はかなり白最し

ているに違いない。

 

 役に立たない人間になったと思って。が誰かがわざと絶望させて

いるのかもしれない。

 

下の世界での緩慢な死か、あるいはもっと早く単純

な解決法を選ばせているのではないだろうか。

 

インザダスト第3回(1986年)SF同人誌・星群発表作品

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube



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