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封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第7回●●

2018年02月16日 | 飛鳥京香 小説工房

封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第7回●●
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
山田企画事務所
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北の詩人は考えていた。

私はどこへ行くのだろう。

北の詩人は、ユニコーンから降りて、大球と小球をつなぐ「コード」の中間地点である通路に腰かけていた。

やがて、北の詩人は、通路の奥、つまり「小球」側に近い所から大きな音が響いてくるのを聞いた。

何だろう。

北の詩人は、すぐに立ち上がると、ユニコーンに音のした方向へ進むように命じた。

 ゴーストトレインは、倒れているアー・ヘブンの体をさぐる。

かま首をヘブンの体にあてる。

鼻先から黒い舌の様なものが飛びでる。

どうやら、今までにむさほり食った新機類のたぐいではないらしい。

端をすこしばかり、かじってみる。

 表面は固いクチニン質で被われている。

この舌ざわりは、ゴーストトレインにが木というイメージ語を、意識巣から思いおこした。

 同時に、レール。枕木という単語が、意識巣から、頭の中に、こぼれ落てくる。

 このイメージはすぐさま、ゴーストトレインの支配者である[天宮]へ送られた。

 天宮は木というイメージ語から、自分の体を構成するモノとの相似に愕然とした。

「木だと。誰なんだ。誰かが、私に何かの信号を送っているのかもしれん。

私は長い間、眠りについていたのだ。私の覚醒におびえている者がいるかもしれん』

 天宮はコードにいるゴーストトレインに命令する。

『ゴーストトレインよ。その侵入者を食べるな。侵入者を積み込み、大球へ戻ってこい』

北の詩人は、ようやく、その場所へ辿りついていた。目の前でゴーストトレインが何かを食べようとしていた。

よく見るとゴーストトレインは、その何かを噛まずに、飲み込もうとしていた。

北の詩人にとって、飲み込これたものの姿は、彼のイメージ脳をいたく刺激した。

 北の詩人の眼から、いつしか温いものが流れていた。

「この液体は! ああ、そうだ、「涙」というんだったな」

 北の詩人は独りごち、手で涙をぬぐう。

『なぜ、涙が流れるのだろう。それにこの心の奥から湧いてくる切ない気持はなんだろう』

 さわりたい。

あのアー・ヘプンの体にふれてみたいと北の詩人は思う。

 なぜか、北の詩人は、その物体がアー・ヘプンという名を持つ生合体である事を知っていた。

 北の詩人の手は、ゴーストトレインの半透明々体を貫き、すでに消化器に入っているアー・ヘブンの体をなでまわした。

 ゴーストトレインは、いつの間にか詩人が現われた事や、さらに自分の体の中の生合体をさわって泣いている事に驚いていた。

 ゴーストトレインは、北の詩人を見た。一体どうしたのだという表情で。

『いったい、この侵入者は伺なのだろう。

かつて、大球と小球をつなぐコードにある透視層を突き破った生命体はいなかった。それになぜ北の詩人が泣いているのだ』

 ゴーストトレインは、不思議に思った。

「ねえ、北の詩人、君は、この生合体を知っているのか」

「いや」 北の詩人は首を振る。そして続けた。

 「知らない。が、とてもなつかしい気がするんだ。この侵入者に触れてみ
たかったんだ」

 「なつかしいだって? どんな気分々のか、俺にはわからないなあ。とにかく、俺は「天宮」さまから命令を受けている。この生物を「大球」までつれて帰れとね」

 ゴーストトレインは、寂びしそう力顔をしている北の詩人に尋ねた。

「俺と、一緒に来るかね」

「いや、僕はユニコーンに乗せてもらうよ」

「そうか、それじゃ、俺は先にいくぜ」

北の詩人は、後をふりかえってユニコーンを呼んだ。

ユニコーンは、対のふたつに分かれた死体のそぱにいた。ユニコーンは無心に死体にしゃべりかけていた。

「君は、どうして、僕と一緒に実体化しなかったのだろう。僕は待っていたんだよ。いつの間にか君が僕達を追いこして、コードにはいっていたなんて……」

「ユニコーン、こっちに来てくれ」

 今度は、北の詩人の声が聞こえたらしくユニコーンは、北の詩人の側にやってきた。

北の詩人の様子に驚く。

 「どうしたんだい、泣いているのかい。何か、悲しいことでもあったのかい。そう泣かないでかくれよ。僕も、彼女が死んでいるのを見て驚いているんだ」

 北の詩人が、心配そうに尋ねた。

「彼女だって、あのユニコーンか」

「そうなんだ。情報ユニット「ユニコーンの旅」とは、僕と彼女の小球への旅々なんだ」

「そうか。悪い事をしたんだね、僕は」

 北の詩人は、また泣き出した。

「しかたがないよ。もう彼女は生き返りはしない。早く、僕の背中に乗りなよ。ゴーストトレインを追いかけるんだろう」

「頼むよ」

「でも、なせ、ゴーストトレインに乗せてもらわなかったんたい」

 北の詩人は答えす、首を左右にふった。

「わかったよ、泣かないてくれよ。僕もとても悲しいよ」

 アー・ヘブンは、ゴーストトレインの腹腔で、徐々に回復しつつあった。

傷ついた表皮は復原機能が働き、元に戻りつつあった。

 アー・ヘブンは自分の体が、振動しながら移動していることに気づく。

体が空中に浮かんでいる。

 空気が高密度に収斂し、動いている。

空気の構成因子が膨張し、実体化され、ゴーストトレインという一つの生体機械を作り出しているのだ。 

ゴーストトレインの車体部分はほとんど古代の動物そのものであり、しかも半透明だった。

 アー・ヘブンは腹腔の中にとらえられたままでいようと思った。

そうすれば、天宮の元まで、おのずと連れて行ってくれるだろう。

(続く)
●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第7回●(1987年作品) 
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