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古今東西のアートのお話をしよう

映画 昼顔


蓮見重彦の“伯爵夫人”を読んでいて、なぜかカトリーヌ・ドヌーヴの“昼顔”が頭から離れなかった…

BELL DE JOUR昼顔は
1967年のフランス映画
監督は、シュルレアリスム映画の
金字塔“アンダルシアの犬”
サルバドール・ダリと共に撮った
ルイス・ブニュエル
(1900〜1983)
主演は1963年の
“シュルブールの雨傘”のヒロイン、
カトリーヌ・ドヌーヴ
(1943〜)
ドヌーヴは、17歳の時に監督の
ロジェ・ヴァディムと同棲し、
19歳でシングルマザーとなり、
撮影当時は23歳で、イギリス人の
写真家と結婚していた

昼顔は、ジョゼフ・ケッセルが1928年に発表した同名小説を原作にしている。ブニュエルは、監督のオファーがあった時、原作を「ソープオペラ」のような通俗的作品と考え、映画化に乗り気ではなかったが、フロイト的な解釈で再構築しようと監督を引き受けたようだ。

フロイトは、動物の食事は生命維持の為の食物摂取であり、性行為は生殖のため発情期にだけに行うもの。
動物の「本能」に対して、人間は、より美味いものを求め“料理”し、いつも発情し、生殖から逸脱している。結果、人間の「欲動(リビドー)」の向かう対象・発現は流動的で多様であり、動物の「本能」に対してすべてが倒錯的である事を表現している。
人間の「欲動」を、“正常と異常”という二項対立から脱構築した映画

この映画の見どころは、映画という媒体を真にアバンギャルドに使ったルイス・ブニュエルの芸術、21歳でディオールのチーフデザイナーになった天才イブサンローランの衣裳=美術センス、23歳のカトリーヌ・ドヌーヴの清楚な容姿でありながら熟れたエロティックな裸体のファム・ファタール!!


物語の始まりは…
ハンサムな外科医の夫と何不自由なく暮らすセブリーヌ(ドヌーヴ)、鈴の音が鳴る馬車に乗って、優雅なドライブ
突然、夫がセブリーヌの「不感症」をなじり、馬車から引きずり降ろす
馭者に命じ、セブリーヌを木に吊るし、鞭打ちを命ずる
馭者にセブリーヌを犯させる、恍惚とするセブリーヌ…
それは、セブリーヌの妄想だった
セブリーヌは頻繁に、被虐的(マゾヒスティック)な妄想に囚われる。
もちろん、夫はセブリーヌにそんなに性癖があるとは思っておらず、清楚で貞淑な妻を愛しいと思っている。
ある時、セレブ仲間の知人が娼婦をしていることを友人から聞く、
セブリーヌは、なぜかその秘密の娼館に異常な興味を覚え、引き込まれるように娼館の扉を開く
娼館の女主人と会い、上品なセブリーヌを気に入った女主人と、午後2時から5時まで働き、
源氏名を “belle de jour” 昼顔とすることを決める

セブリーヌは、体を売ったショックもあり、店を無断で休んだが、数日後、「欲動」に衝き動かされたように娼館に向かう
再び、昼顔となったセブリーヌ
レスラーのような東洋人の客を取る、東洋人は不思議な箱を見せ、鈴を鳴らす
事後、娼館のメイドが「乱暴な客で難儀でしたね」と言うと…

「最高だったわ…」とつぶやく

ある日の娼館、スペイン人の“若い殺し屋”が客となる
その野卑なセックスに、セブリーヌは性の喜びを感じ、それを見た殺し屋はセブリーヌに勘違いの“恋”をする…
セブリーヌはまた妄想の世界に入る
柱に縛られたセブリーヌは、友人と夫から、「売女、ブタ…」と罵られ、泥をかけられ恍惚となる

再び娼館
若いスペイン人は、セブリーヌに夜も会いたいと執ようにせまる
そして、ついに、スペイン人はセブリーヌの自宅を突き止め、自宅に上がり込み、セブリーヌに交際を迫る、
当然、セブリーヌは拒否する

スペイン人は夫を待ち伏せし、拳銃で夫を撃つ…
スペイン人は警官に撃たれ死亡

夫は、一命をとりとめるが、下半身不随、盲目の車椅子生活になる
セブリーヌは夫を甲斐甲斐しく介護し、しばし平穏な時間が流れる




・・次のシーンで、突如、夫が立上り、テーブルまで歩いて、テーブルの飲み物をセブリーヌに勧める

誰も乗っていない馬車の映像
鈴の音が聞響く

身震いがするほど、
清々しいラストシーン、

男女の性を超え、人間の「欲動」
そして「魂」の解放の物語(映画)

★★★★★


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