goo blog サービス終了のお知らせ 

古今東西のアートのお話をしよう

日本美術・西洋美術・映画・文学などについて書いています。

三大装飾経 やまと絵展

2023-09-13 23:54:10 | 日本美術の特徴
日本美術の特徴を作品を通じて
見てみようシリーズ
第五弾は、やまと絵の系譜
『装飾経』です

平安時代の貴族はオフィシャルには密教を、日常的には法華経を信仰していた。法華経には、仏像、仏画をつくり、写経が功徳になると説かれている。法華経は女人成仏を説き、女性の信仰を集め、法華経美術に繊細優美の趣を与えた。
写経を美しく飾る事はさらに功徳があるとされ、競うように華麗で優美な装飾経』が制作された。





平家納経 1164年 国宝

平家一門がその繁栄を祈願し、厳島神社に奉納された。法華経の登場人物を女房姿であらわし、女神である厳島の神を荘厳し平清盛の海上交易の発展を祈願している。

1602年、本阿弥光悦は平家納経の修理を依頼され、当時無名の俵屋宗達を採用した。この経験が『琳派』誕生の契機になった。




久能寺経 1141年 国宝

鳥羽上皇の出家の折に制作。静岡市の久能山にある久能寺(現在は鉄舟寺)に伝来した。皇后待賢門院を中心にプロデュースされた。




慈光寺経 1206年 国宝

太政大臣の急逝を悼んだ後鳥羽上皇が、中宮宜秋門院を中心にプロデュースして制作された。
埼玉県比企郡にある天台宗の寺院、慈光寺に伝来した。

岡倉天心は、「奈良朝は理想的なる、平安朝は感情的なる、足利時代は自覚的なる、これをその形に現れると壮麗、優美、高淡」と語っているが、『装飾経』は『源氏物語絵巻』と共に、女性を対象とする、あるいは女性がプロデュースした美術で、”優美“の代表であり、『ジェンダー』を考える作品だと思う。



ランキングに挑戦中
下のボタンを2つ、ポチッ、ポチッと押して頂けると嬉しいです!
 にほんブログ村 美術ブログへ



神護寺三像

2023-09-11 22:35:16 | 日本美術の特徴

日本美術の特徴を作品を通じて
見てみようシリーズ
第四弾は、やまと絵の系譜
『肖像画』です

鎌倉時代は、肖像画が隆盛した時代でした。
肖像画のもとは、禅宗の頂相(ちんそう)で、祖師、高僧の肖像画の舶載の宋画があります。

無準師範像 中国南宋 1238年
東福寺蔵 国宝

中国の頂相、文人肖像画などを元に似絵(にせえ)が制作される
似絵は白描で画かれ、平安時代の白描画の伝統をひくもの

随身庭騎絵巻 13世紀半ば 国宝
随身(ずいじん)と貴族の外出時に警護する近衛府の官人。


伝藤原信実 後鳥羽院天皇像
13世紀半ば 国宝


蘭渓道隆像 13世紀後半

1246年に来朝した南宋の蘭渓道隆(建長寺開山)南宋での制作とされるが、日本制作かもしれない


そして、神護寺三像
有名な伝源頼朝像 大画面です
陰影、肉付のない平面的、2次元画面で背景は無いベタ塗りです
顔は裏彩色で白さが際立ち、顔の白と冠、衣装の黒が対照的です

伝源頼朝像 14世紀 国宝
143.0×112.8cm


伝平重盛像 14世紀 国宝
143.0×111.2cm


伝藤原光能像 14世紀 国宝
143.0×116.6cm

神護寺三像も『やまと絵』展に
出展されます!!




日本四大絵巻

2023-09-11 17:58:36 | 日本美術の特徴

日本美術の特徴を作品を通じて
見てみようシリーズ
第三弾は、やまと絵の系譜
『四大絵巻』です

白河院、鳥羽上皇の院政時(1086〜1221)、中国の画巻(がかん)が日本化(日本の物語)された絵巻(えまき)が流行し、四大絵巻の『源氏物語絵巻』(12世紀)が完成する。



源氏物語絵巻 12世紀


その後、後白河法皇(1127〜1192)により、四大絵巻の『伴大納言絵巻』『信貴山縁起絵巻』が制作され、『年中行事絵巻』『病草紙』『地獄草紙』『小柴垣草紙』などと共に蓮華王院(三十三間堂)に奉納される。





伴大納言絵巻 常盤光長 12世紀後半



『伴大納言絵巻』は、宮廷絵師の常盤光長(土佐派の先祖のひとり)によって描かれた、御所応天門炎上をめぐる伴善男(とものよしお)の陰謀という大事件の物語。





信貴山縁起絵巻 12世紀後半



『信貴山縁起絵巻』は、聖徳太子により創建されたと伝えられる奈良県生駒の信貴山朝護孫子寺の縁起物語。摩訶不思議なストーリーが、躍動感あふれる画面の中に次々と展開する。


これに『鳥獣人物戯画』を加えて日本四大絵巻と呼ばれる。



この四大絵巻がそろう『やまと絵』展は見逃せません








鳥獣人物戯画 やまと絵展

2023-09-08 17:00:52 | 日本美術の特徴

日本美術の特徴を作品を通じて
見てみようシリーズ
第ニ弾は、やまと絵の系譜
嗚呼絵『鳥獣人物戯画』です


鳥獣人物戯画は、甲乙丙丁の四巻からなる白描絵巻で、甲乙は平安時代の12世紀中頃、丙丁は鎌倉時代のものとされている
鳥獣戯画は画僧や絵仏師の白描図像の筆法と宮廷絵師の絵巻の要素も取り入れている


 
鳥獣人物戯画(甲巻)

誰もが一度は”本“で見たことがある甲巻、擬人化された動物が遊んだり葬式までやりだす
卓越した筆使いで、カエルやうさぎに命を吹き込み、動き出す驚嘆!!
カエルの口から吐き出された”気”のかすれた線、秋草の繊細な線を見よ




鳥獣人物戯画(乙巻)

乙巻は動物(空想も含め)を動物としてそのまま描き、描写は精緻で博物誌的、動きのある甲巻との対照が面白い





鳥獣人物戯画(丙巻)

丙巻はカエルと猿が主人公で甲巻をオマージュした前半と人間が遊ぶ様子を描く後半




鳥獣人物戯画(丁巻)

丁巻には人間だけが登場し、奔放な筆致で即興的に描かれている
丙巻丁巻は、「ばかげたおどけた」戯画、嗚呼絵(おこえ)の特徴が見られる


甲巻乙巻は、平安時代後期の高僧、覚猷(かくゆう)鳥羽僧正(1053〜1140)といわれてきたが何ら確証はない

同じく、鳥羽僧正の作品といわれる
『勝絵絵巻』は「陽物比べ」「放屁合戦」からなる、原物は既になく模倣が残されている
『勝絵』とは、勝負を競うさまを描く画題または春画(武士が武運のため春画を鎧の裏に貼った)の異称




放屁合戦絵巻 室町時代
15世紀 文安6年(1449)

『鳥羽僧正覚猷の筆と伝へらるゝ二巻の絵巻で一巻は放屁の巻、一巻は陽物くらべである、素画きの絵で人物鳥獣生々活動の趣きを写して筆致洒脱軽妙を極めてゐる、勝絵の名は、亀山院の皇后絵合せの時、勝つた方の画に名づけられたものといふ、然し今伝はるもの原本でなく模しである。』参照元『東洋画題綜覧』金井紫雲



『鳥獣人物戯画』四巻はぜひ
実見したいですね


平安時代前期は、岡倉天心によると『空海時代』で唐の密教文化を伝えた、その後『延喜時代』和風文化が起こり「やまと絵」が誕生する


その「やまと絵」が一同に会す『やまと絵』が10月11日から東京国立博物館で開催される


『鳥獣人物戯画』全四巻、『源氏物語絵巻』『信貴山縁起』『伴大納言絵巻』、『伝源頼朝像』の神護寺三像、『平家納経』を含めた三大装飾経など空前絶後の出展です








日本美術の特徴

2023-09-06 17:05:31 | 日本美術の特徴

日本美術の特徴を作品を通じて
見てみようシリーズ
第一弾は、水墨画から派生した
『禅画』です

仙厓義梵 ○△□ 19世紀


仙厓義梵 野雪隠図 19世紀

賛文の「人ハこんそふな」は、「人は来ないようだ」の意
細川護熙は、この絵を一番好きな仙厓にあげている


仙厓義梵 牛図 19世紀

賛文は「此牛妙妙」
お腹に仙厓印、牛は禅宗では悟りの象徴
それにしても妙妙です(⁠・⁠o⁠・⁠)


仙厓義梵 犬図 19世紀

「きゃふんきゃふん」とキャプションが…
子犬を繋ぐ杭は、浅くすぐに引き抜ける
『我々もすぐ引き抜いて自由になれる浅い杭に縛られているのでは』


文殊菩薩像 建武元年(1334)

仙厓が描くと
仙厓義梵 文殊師利菩薩図 19世紀
いや〜 すごいですね(⁠☉⁠。⁠☉⁠)⁠!
仙厓義梵(せんがいぎぼん)は、江戸時代後期(1750〜1837)岐阜県の農民出身で、美濃国臨済宗古月派の空印円虚について得度。武蔵国東輝院で印可。栄西創建で日本最古の禅林「博多聖福寺」の住持となり博多禅の伝統をまもる。
「厓画無法」(世の中の絵には法があるが、自分の絵には法がない)を標榜し、親しみやすい禅画を描いた。

仙厓義梵の前に、臨済禅中興の祖といわれる白隠慧鶴(はくいんえかく)がいる。白隠は、江戸中期(1686〜1769)静岡県沼津市に商家の三男として生まれた。当時、黄檗宗、曹洞宗におされていた臨済宗を復興し、現在も、臨済宗十四派は全て白隠を中興としているため、彼の著した「座禅和讃」を座禅の折に唱える。

白隠慧鶴 半身達磨図 18世紀
白隠慧鶴 慧可断臂図 18世紀

白隠は生涯一万点以上の禅画を描き「拙によって巧を超える」を標榜した。
ユルカワな禅画は日本独自です。
禅画は江戸時代以降の禅僧が描いた絵画を指します。
白隠、仙厓のユルカワ禅画の元は、室町時代の雪舟、雪村、祥啓などが描いた軽妙洒脱な水墨画ですが、平安時代に生まれた大和絵、そして画技の優れた僧侶が描いた戯画『嗚呼絵(おこえ)』とよばれる白描画にある。
さらに言えば、日本美術の最底流に流れる『縄文文化』があるような気がする。

続く

ランキングに挑戦中
下のボタンを2つ、ポチッ、ポチッと押して頂けると嬉しいです!
 にほんブログ村 美術ブログへ