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古今東西のアートのお話をしよう

日本美術・西洋美術・映画・文学などについて書いています。

エゴン・シーレ展 その2

2023-01-31 16:25:59 | 絵画(レビュー感想)

エゴン・シーレ展は、シーレと同時代の作品が数多く展示されている


クリムト、ゲルストル、ココシュカを見てみよう



(写真は全てネット画像借用)


第6章 リヒャルト・ゲルストル 表現主義の先駆者


リヒャルト・ゲルストル(1883〜1908)

リヒャルト・ゲルストルはウィーンの裕福なユダヤ人商人の家に生まれる、エゴン・シーレより7歳年上

15歳でウィーン美術アカデミーに入学も反抗的で退学させられる
クリムトのウィーン分離派のスタイルには飽きたらなかった
1903年20歳で退学し、23歳で自分のアトリエを持つ

リヒャルト・ゲルストル
半裸の自画像 1902〜04年

キリストの受難に自身を模す
新たな表現に向ける意志とその後の受難を感じる背景と表情に不安と緊張も見せる

1907年24歳のゲルストルは、同じ建物に住んでいた、音楽家のアルノルト・シェーンベルク夫妻と親交を結ぶ
ゲルストルは音楽にも造詣が深く、シェーンベルクも絵画を描き、新たな芸術に意気投合した

シェーンベルクは、1899年に発表した「浄められた夜」で既に有名で後に「月に憑かれたピエロ」で20世紀を代表する作曲家となる

「浄められた夜」は、リヒャルト・デーメルの詩「浄夜」に基づく、弦楽六重奏の音詩(標題音楽)

詩の内容は、
月夜に男と女がいる。女は告白する。「私のお腹には赤ちゃんがいるが、それはあなたの子ではありません」

男は苦悩するが、やがて「その子は私たちの子として育てようではないか」と女を赦す。


【参考】

リヒャルト・ゲルストル
マティルデ・シェーンベルクの肖像

シェーンベルクの妻マティルデをモデルに何枚かの絵画を描く

24歳のゲルストルと30歳のマティルデは恋仲となり、1908年の夏、夫と娘を残して出奔する


リヒャルト・ゲルストル
田舎の二人 1908年

大胆な色彩、粗い筆はゴッホのようでドイツ表現主義の先駆者に相応しい

マティルデは、シェーンベルクの弟子ウェーベルンの説得もあり、その年の10月に夫の元に戻った

ゲルストルはマティルデに去られ、仲間からも非難され孤立した

1908年11月4日、ゲルストルはアトリエで作品を燃やし、鏡の前で首を吊り命を絶った
 

鬼畜な行いにも関わらず、生前に時代の寵児となり、病に倒れた
エゴン・シーレ

才能に恵まれながら、運命の出会いにより、自ら死を選んだ
リヒャルト・ゲルストル

「浄められた夜」と
「半裸の自画像」はなんと
暗示的だろう


第4章 クリムトとウィーンの
風景画


グスタフ・クリムト(1862〜1918)
シェーンブルン庭園風景 1916年

クリムトには珍しい風景画
印象派の明るい色彩


クリムトについて、後に作曲家マーラーの妻となるアルマとの恋

第10章 オスカー・ココシュカ“野生の王”


オスカー・ココシュカ 
ピエタ(「殺人者、女たちの希望」のポスター) 1909年


ココシュカについて、クリムト→マーラー→ココシュカを虜にした、ファム・ファタール(魔性の女)、アルマ・マーラー

19世紀末から20世紀初頭のドイツ、オーストリアには綺羅星の如き
芸術家が生きていた



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エゴン・シーレ展

2023-01-27 23:56:02 | 絵画(レビュー感想)


エゴン・シーレ(1890〜1918)



初日、若い女性が比較的
多いかな
(佐伯祐三展はすくなかった)

男性は、シーレを気取る
若きナルシスト?! 

来場者はそこそこ…

エゴン・シーレ(1890〜1918)


16歳のエゴン・シーレ

オーストリア・ハンガリー帝国ウィーン近郊の中産階級の家庭に生まれる
父親は帝国鉄道の鉄道員で後に駅長にもなっている
15歳の時、父親が梅毒で死亡
16歳でクリムトと同じウィーン工芸学校に入学
この頃4歳下の妹、ゲルトルーデ(ゲルティ)をモデルに裸体デッサンを行い、肉体関係もあったらしい
ウィーン美術アカデミーに進学したが、19歳で旧弊なアカデミーに失望し退学、グスタフ・クリム(1862〜1918)に師事する
ウィーン分離派には参加しなかったが、クリムトのウィーン工房に職を得る

20歳頃、少女の裸体画、自画像を多数制作する
21歳、妹ゲルティとの関係がギクシャクしだした頃、クリムトから紹介された17歳のモデル、ヴァリー・ノイツィルと同棲
22歳の時に14歳の少女を誘拐したと訴えられるが、誘拐は冤罪も家宅捜索で少女ヌードが摘発され1ヶ月の禁錮となる
幼児性愛者と画壇から非難され苦境にたつが、恋人ヴァリーの支えで制作を続ける
25歳の時、アトリエの向かいに住む鉄道関係で中産階級の姉妹の妹ハルムス・エディットと結婚を決め、ヴァリーと別れる
第一次世界大戦に召集される
姉のアデーレともエディットが妊娠中関係した
28歳の時、妊娠していたエディットがスペイン風邪に罹り死亡、3日後にはエゴン・シーレも同じ病で死亡した

イケメンで女性にモテまくったようですが、なんとも酷いゲスぶりです

全115点中エゴン・シーレの作品は50点
19世紀末から20世紀初頭のウィーン分離派まで

(第9章 風景画を除き撮影不可のためネット画像を借用)

エゴン・シーレ 装飾的な背景の前に置かれた様式化された花 1908年

銀と金の顔料で琳派の箔を模している 葉が螺旋を描く

エゴン・シーレ 自分を見つめる人Ⅱ (死と男) 1911年

エゴン・シーレ ほおずきの実のある自画像 1912年

服は指で絵の具を塗っている
表現主義的自画像の代表作

エゴン・シーレ 悲しみの女 
1912年

いわば糟糠の妻であったヴァリー・ノイシィルがモデルで後ろの男性はシーレ
「少女誘拐事件」の年に描かれた
どうしようもないゲス男に捧げる“悲しみの女”

こちらも同年の作品
子供の驚いたような表情、拒絶する手が語るものは…

エゴン・シーレ 縞模様のドレスを着て座るエディト・シーレ 
1915年


社会的信用がある中産階級で自分と同じ鉄道関係の家に生まれ妻となったエディット



第9章 エゴン・シーレ 風景画
ここのみ撮影OKでした

エゴン・シーレ 吹き荒れる風の中の秋の木(冬の木)

第7章 アイディンティティーの探求

エゴン・シーレ 裸体自画像
1912年

エゴン・シーレ 背を向けて立つ裸体の男 1910年

第13章 裸体

エゴン・シーレ 赤い靴下留をして座る裸婦、後ろ姿 1914年

エゴン・シーレ 頭を下げてひざまずく女 1915年


エゴン・シーレ 肩掛けを羽織る裸婦、後ろ菅盾(《回心Ⅱ》の断片)
1913年

裸体ではこの絵に惹かれた
脚の線がベルナール・ビュフェ(1928〜1999)の風景画のよう

第14章 新たな表現、早すぎる死

第一次世界対戦から帰還したシーレはウィーン分離派展ではメイン展示を飾るまでに成功していた

エゴン・シーレ カール・グリュンヴァルトの肖像 1917 年

この頃から表現主義的荒々しさから
具象的要素が増える

エゴン・シーレ 横たわる女 1917年

扇情的ポーズの割に変態性はむしろ薄い、自然な肉体表現

エゴン・シーレが「私に才能はありますか?」とクリムトに問うと、
クリムトは、
「いや… ありすぎる」と答えた
私生活がこれ程、
ゲスな男はなかなかいない、
神は彼に美貌と才能を授けた、
短い人生と引き換えに…

★★★★★

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佐伯祐三展 東京ステーションギャラリー

2023-01-25 10:41:03 | 絵画(レビュー感想)





佐伯祐三(1898〜1928)
ソース顔のイケメン
槐多、関根に比べると顔もアカデミック


大阪市出身で寺の3男、1917年東京川端画学校で藤島武二に師事する、1918年東京美術学校(現東京芸術大学)、在学中に結婚1子、1924年パリ留学、1927年パリ留学、1928年パリに死す(結核)30歳


同世代に村山槐多(1896〜1919)、関根正二(1899〜1918)がいる

村山槐多(1896〜1919)

関根正二(1899〜1918)

村上槐多が22歳、関根正二が20歳の早逝より若干長い30歳で亡くなるが、ほぼ独学で絵を描いた二人に比べると画家としてのキヤリアでは圧倒的にアカデミックである


ヴラマンク 赤い樹のある風景
1906年

パリでフォービズムの画家モーリス・ド・ヴラマンク(1876〜1958)に絵を見せると、「このアカデミックめ!」と一蹴されたという逸話は、日本で正統的絵画を学んだ証ともいえる

20世紀初頭のパリは、フォーヴィズム、キュビスム、表現主義など新しい表現を求める芸術家が世界中から集まるエコール・ド・パリの時代

展覧会の構成は、
プロローグ 自画像
1ー1 大阪と東京:画家になるまで 1ー2 大阪と東京:〈柱〉と坂の日本ー下落合と滞船
2ー1 パリ:自己の作風を模索して
2ー2 パリ:壁のパリ
2ー3 パリ:線のパリ
3  ヴィリエ=シュル=モラン
エピローグ 人物とトビラ

日本とパリでの制作に大別した構成になっている
やはり佐伯祐三がその真価を発揮できたのはパリの風景と時代の熱気だったのだろう
2ー1、2ー2は1924年の1回目の渡仏、2ー3からは1927年の2回目の渡仏から死までの作品が並ぶ


レジュドノエル 1925年

第一回目の渡仏ではパリの街の色々な風景を描くが、絵のフォルム(内容)マチエール(材質)の模索があり、その後の「壁」「線」というモチーフに行き着いたようです


ピコン 1927年

赤い看板?と街路樹の線が印象的


ガス灯と広告 1927年

くすんだ石壁に貼られた広告ポスターの文字の羅列 猥雑な熱気を感じる 大竹伸朗の「貼り紙作品」の原型のようだ



工場 1928年

デフォルメされた建物はキュビスムの影響があるのか?



煉瓦焼 1928年

力強い屋根の三角形の線 強烈な色彩 壁、煉瓦と青い空の対比 ヴラマンクでもマティスでもない佐伯祐三の個性が出ているような気がする



郵便配達夫 1928年

煉瓦焼の人物版と言えるのでは




佐伯祐三の作品は、大阪中之島美術館、和歌山県立近代美術館に収蔵品が多く東京ではなかなか実物を
目にする機会がない
今回の展覧会では、143点の全画業をほぼ網羅する

★★★★☆

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小説 エゴイスト

2023-01-24 10:00:23 | 本(レビュー感想)

映画「エゴイスト」は鈴木亮平主演で2023年2月10日公開


映画を見る前に原作の小説を

読んでみた





作者は、

高山真(1970〜2020)


エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。

著書に『エゴイスト』『羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界』など。

ゲイであることを公言している。2020年10月1日、肝細胞癌で死亡。




物語はゲイの恋愛を描いていますが、本質的なテーマは「母を恋うる記」であり、「忍ぶ恋」です





ストーリーは(映画公式ページより)

『14 歳で⺟を失い、⽥舎町でゲイである⾃分を隠して鬱屈とした思春期を過ごした浩輔。今は東京の出版社でファッション誌の編集者として働き、仕事が終われば気の置けない友人たちと気ままな時間を過ごしている。そんな彼が出会ったのは、シングルマザーである⺟を⽀えながら暮らす、パーソナルトレーナーの龍太。

自分を守る鎧のようにハイブランドの服に身を包み、気ままながらもどこか虚勢を張って生きている浩輔と、最初は戸惑いながらも浩輔から差し伸べられた救いの手をとった、自分の美しさに無頓着で健気な龍太。惹かれ合った2人は、時に龍太の⺟も交えながら満ち⾜りた時間を重ねていく。亡き⺟への想いを抱えた浩輔にとって、⺟に寄り添う龍太をサポートし、愛し合う時間は幸せなものだった。しかし彼らの前に突然、思いもよらない運命が押し寄せる――。』




自伝的作品のようですが小説として上手く出来ており、一気に読ませてくれます



この小説は江戸時代、鍋島藩の山本常朝が武士の生き方、心構えを記した(口述した)「葉隠(はがくれ)」の影響を感じる


「葉隠」には、武士道と衆道、忍ぶ恋について、「究極の恋は相手に恋心の負担を感じさせない恋闕(れんけつ)の情というものである」ということを、何度も強調している

ここでいう「恋闕の情」とはアガペー(キリスト教的「愛」)とエロス(性愛)を峻別しない感情



「エゴイスト」は「恋闕の情」を

描き、ジェンダー、家族を超えて、生きる力を与える作品


★★★★☆



さて、映画はどのように究極の恋を描いているのか… 楽しみです





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重要文化財の秘密 東京国立近代美術館

2023-01-19 15:37:14 | 絵画(レビュー感想)

大竹伸朗展のあと常設展をのぞく


今日のお気に入りを製作年順に

並べてみた



岸田劉生(1981〜1929)
道路と土手と塀 1915年

坂道が生き物めいて盛り上がる…


村山槐多(1896〜1919) 
バラと少女 1917 年

スペイン風邪により22歳で夭折
 
バラのピンク、赤が少女の帯、襦袢、頬の茜色を祝福しているようだが、空間は不穏な気配


関根正二(1899〜1919)
三星(さんせい) 1919年

結核により20歳で夭折

三星とはオリオン座の中央に並ぶ三つ星 左が姉、右が恋人、中央が正二 死の年に制作


神原泰(たい 1897〜1997)
スクリアビンの「エクスタシーの詩」に題す 1922年

色彩に惹かれます


古賀春江(1895〜1933)
海 1929年

川端康成が盟友と評価している


靉光(あいみつ 1907〜1946)
眼のある風景 1938年

中国に出征し、かの地で病死



吉沢岩美(1912〜2000)
プルトーの娘 1950年

プルトーはローマ神話における冥界の神


星野眞吾(1923〜1972)
失題・歯車 1952年

パウル・クレーを思う


山下菊二(1919〜1986)
あけぼの村物語 1953年

山梨県の山村で起こった事件に取材して、関係者と事件の経過を戯画的にモンタージュした作品



三上誠(1919〜1972)
冥 1959年


縄、漆喰、布、釘、墨を素材とする



須田悦弘(よしひろ 1969〜)
百合


杉本博司とのコラボレーションでお馴染みの須田悦弘(木彫作家)

近代美術館で作品を見たのは初めて



3月17日から
東京国立近代美術館
70周年記念展
「重要文化財の秘密」開催



『近代美術の重要文化財、全68件中51点が全国から集結』するらしい!

皆さんが好きな作品は?

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