■台湾統一地方選、与党が大敗…蘇主席は辞任へ・・・読売新聞
【台北=吉田健一】台湾の台北、高雄の両直轄市を除く23の県と市の首長(任期4年)を選ぶ統一地方選挙の投票が3日行われ、即日開票された。
「台湾独立」志向の与党・民進党は陳水扁総統側近の不正疑惑などが響き、現有10ポストを大きく割り込む6ポストにとどまり大敗した。中国との協調を重視する最大野党・国民党は馬英九・党主席(55)人気に乗り、現有8ポストに大幅に上積みし14県市を制した。
馬主席は「予想以上の勝利だ。住民は民進党に不信任を突き付けた」と勝利宣言した。
民進党は大票田の台北県など激戦区でことごとく敗北。蘇貞昌・党主席(58)は同日夜、「民進党にとって重大な挫折だ」と敗北宣言し、党主席を辞任すると表明した。
2008年総統選の前哨戦と位置づけられた今選挙での国民党大勝を受け、中国は国民党との連携を強め、陳政権に対し圧力を強めることが予想される。
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2008年に行われる総統選の前哨戦とも言われるこの台湾地方選挙ですが、与党である民進党が大きく議席を失い、国民党が躍進するという事態となりました。次の総統選までもが台湾独立を提唱する与党の民進党が破れ、中国融和策を取る国民党が勝利することになれば、日本の台湾外交などが微妙に変化する可能性がありますね。
さて、この民進党敗北について毎日新聞では地方選前ですが、以下のように選挙戦を分析しています。
■台湾統一選:国民党、汚職を追及 守勢・民進党は中台融和を批判・・・毎日新聞
台湾の23の地方自治体の首長を選ぶ統一地方選挙が3日、投開票される。最大野党の国民党のトップが馬英九主席に交代した後の初の選挙戦。08年の次期総統選に向けた前哨戦ともみられており、陳水扁総統率いる与党・民進党がどう迎え撃つかが焦点だが、民進党はスキャンダルの逆風の中、守勢に立たされている。【台北・庄司哲也】
◆「台湾を救え」デモ
選挙前の最後の日曜日となった11月27日、国民党は台北市内で、11万人(警察当局推計)を集めた大規模なデモを行った。参加者は「反汚職、台湾を救え」のスローガンを訴え、市中心部の約8キロを練り歩いた。
国民党は与党・民進党政権の「腐敗」を激しく追及している。高雄市の高速交通システム(MRT)の建設工事に絡む汚職事件で陳総統の側近だった元総統府副秘書長が汚職で起訴されたためだ。馬主席は「民進党は改革を進めてきたが、同時に腐敗も進んだ」と批判のトーンを強める。
◆「パンダ」で波紋
4年に1度の統一地方選挙では、直轄市の台北、高雄両市を除く23の県、市の首長が選出される。01年の前回選挙の政党別の内訳は民進党9、国民党9、親民党2、新党1、無所属2だった。
「パンダを台中市で受け入れたい」。台中市は人口103万人の台湾第3の都市。再選を目指す国民党の実力者、胡志強氏の発言が波紋を呼んだ。
4月末、訪中した国民党の連戦前主席が中国の胡錦濤総書記(国家主席)と60年ぶりの「国共トップ会談」を果たした。中国側は緊張緩和の象徴として、パンダの贈呈を表明。誘致先がどこになるかが関心を呼んでいる。
台中市では機械、部品などの製造業が盛んで、拠点を中国に置く業者も多い。「パンダ誘致」は、中台関係の安定化が地元経済の振興に結びつくと訴える狙いだ。
しかし、台中市には動物園がない。行政院新聞局長(閣僚)を辞職し、胡氏に挑んだ民進党の林佳龍氏は「どうやって受け入れるのだ。市民を欺いている」と批判した。
◆総統選の前哨戦
国民党の馬主席は、今回の統一地方選を08年の次期総統選での政権奪回に向けたステップと位置づけている。党の訪中成果を強調し「民進党が大敗すれば、陳総統は中台政策の見直しを迫られるだろう」と、選挙後を見据えた発言もしている。
一方、民進党は退職公務員の優遇金利カットや兵役期間の2カ月短縮など一般住民の支持拡大を狙った政策を打ち出し、巻き返しを図っている。陳総統は国民党の中台融和路線を批判し「今回の選挙は中国化か台湾化の選択だ」と訴えている。
両党が最も重視しているのは人口373万人を抱える台北県長選。民進党は陳総統子飼いの若手、羅文嘉氏で死守を目指すが、各メディアの世論調査では、国民党候補の周錫〓氏にリードを許している。民進党が敗れれば、執行部の責任論も浮上する可能性がある。
◇苦戦が予想される与党--メディア世論調査
台湾与党・民進党は00年の政権交代後は、選挙のたびに最も高い得票率を記録してきた。01年12月の立法委員(国会議員)選挙では、33.4%の得票率を集め、28.6%だった最大野党・国民党に4.8ポイント差をつけた。昨年12月の同選挙でも35.7%と得票率を伸ばし、国民党の32.8%を上回った。
しかし、台湾メディアの世論調査の結果からは、今回はかなりの苦戦が予想されている。台湾紙「聯合報」が10月に行った調査結果によると、民進党に対する満足度は24%で、国民党の35%を下回った。陳水扁総統に対する満足度も25%で、00年の就任以来、過去最低を記録している。
11月30日付の台湾紙「中国時報」は民進党が南部の台南県や高雄県など五つの県や市で有力とみられているものの、前回実績を下回りそうだと予想した。一方で、国民党は北部や中部で首長の座を奪い返し、2けたのポストを獲得する可能性があるという。【台北・庄司哲也】
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今回の地方選について国民党は民進党に対して「反汚職、台湾を救え」をスローガンにして糾弾しています。民進党では今年民進党立法委員が汚職事件を引き起こしてしまい、有罪が確定し立法委員を失職するという事件が起こっており、民進党はこれらが逆風となり、支持率も過去最低を記録しています。それに対する国民党は政権時代に自らの汚職事件で政権交代になる羽目になってしまった苦い経験があります。お前が言うなという中華思想があったりしますが、汚職による政権交代が歴史としてあるのでこの国民党スローガンは効果的であったのでしょう。
また経済状況などであまり成果が上げられなかった点もあり(国民党が拒否したということもあり思うように進められなかった点もありますが)、民進党がいくら台湾独立を提唱しても支那関係の現状維持思考がどうしても離れられない台湾国民には通じなかったのかもしれません。そんな中でこの選挙結果に大喜びな国がこちら。
■中国、台湾独立派封じ込めに拍車・台湾統一地方選・・・日経新聞
【北京=桃井裕理】中国は台湾統一地方選で中国に融和的な国民党が大勝した結果を歓迎、新華社は3日のインターネット版で「民進党は選挙で大敗したと認めた」と速報した。中国は台湾の独立阻止のため武力行使も辞さない意思をみせる一方、国民党には友好的な態度を示唆。「独立は台湾にとって不利」という雰囲気を醸し出すことで陳政権からの民意の離反を促すことに成功したといえそうだ。
中国は3月、台湾の独立を阻止するための武力行使を合法化する「反国家分裂法」を制定した。国務院(政府)台湾事務弁公室の王在希副主任は11月末のフォーラムで「台湾独立の封じ込めが今後も最重要任務」と強調。独立阻止が中国の基本方針であることに変化はない。
一方で今春には連戦・国民党主席(当時)らを招き「国共対話」を大々的に宣伝、中台の和平ムードを演出した。春節(旧正月)のチャーター便就航、台湾の果物に対する市場開放、パンダの贈呈提案など友好路線も示している。 (07:01)
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これが中国のやり方ですね。民進党陳水扁総統が対話を求めたにも関わらずシカトの挙句自分達にとって都合の良い民進党以外の政党に肩入れするこの幼稚な手法は批判されるべきはずなのですが、残念なことに多少の効果を表してしまったのかもしれません。これを成功したと支那が認識すれば今後も民進党無視の台湾外交を支那は続けていくでしょう。全く他所の選挙を喜んでいないで自国のほうにも視線を移してみては?と思ってしまうのはぼくだけでしょうか?
そんなこんなで普段は台湾無視の朝日新聞が国民党勝利と知ると以下のような報道を行っています。
■台湾民進党が地方選大敗 党主席が辞意表明・・・朝日新聞
台湾の23県市の首長(任期4年)を選ぶ地方首長選挙は3日、投票が行われ、即日開票の結果、陳水扁(チェン・ショイピエン)政権を「無策」と批判し、中国との和解促進を主張した最大野党・国民党が14県市を押さえ、現有ポストを大幅に上回った。全有権者の約2割を抱える最大選挙区の台北県でも勝利した。陳総統らが支援した与党・民進党候補の当選は6県市にとどまった。民進党の蘇貞昌(スー・チェンチャン)主席は同日夜、記者会見で「大敗」と認め、辞意を表明した。
直轄市の台北、高雄市を除く地域で、台湾の全有権者の8割近くを対象として実施された。地方選とはいえ、最終盤では「対中政策」が大きな争点になった。
中央選管によると、政党別の獲得首長ポストは、民進党6(現有10)、国民党14(同8)、親民党1(同1)、新党1(同1)、無所属1(同3)。全土を通じた投票率は前回と同じ66%。
民進党は、過去16年間、県長ポストを守ってきた台北県で敗退したうえ、伝統的に同党支持層が多く「民主の聖地」と呼ばれた北東部の宜蘭県、中部の嘉義市も失った。台南県・市、高雄県などの南部の地盤をかろうじて守った。
一方、国民党候補は選挙結果が08年総統選挙のカギを握るとされた台北県でも差をつけた。総統選有力候補の馬英九(マー・インチウ)主席を擁する同党支持者の間で、政権奪還に向けた動きに弾みがつきそうだ。
今春に連戦(リエン・チャン)国民党主席(当時)ら野党首脳が中国大陸を訪問し、胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席と会談して以降初めての大型選挙で、同党側は選挙戦でも「対中和解の促進」を訴えた。一方、対中政策などで手詰まりが続く民進党側は陳総統に近い要人の汚職疑惑も不利に働いた。「国民党による対中交流は統一への道」とも呼びかけたが、劣勢を挽回(ばんかい)できなかった。
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とまあ、朝日新聞的解釈をすると対中施策が選挙の焦点であり、汚職事件はおまけみたいなものらしいです。台湾国民は支那友好を選挙で示したのだから日本も・・・という雰囲気がにじみ出ているような気がします。主張は各紙自由ではありますが、汚職事件が民進党の支持率低下に繋がったと分析している他紙と比べてみるとどうしても朝日新聞の支那偏り報道には疑問を抱かざるを得ません。
2008年の総統選までまだ先ではありますが、民進党は今までの政策などを見直さざるを得ない状況になってしまいました。李総統の苦悩の毎日が続きます。日本にとって親日である民進党が勝つほうが好ましいのですが、台湾国民は台湾をどのような国にしていきたいのか、次の総統選に注目です。
「極東三国プラス1」への序章でしょうか。(汗)
「極東三国プラス1」ですか、そんな最悪のケースは真っ平ごめんなのですが、国家としては考慮せざるを得ないかもしれませんね(涙)
なんとか民進党には立ち直って欲しいなぁと影ながら応援しています!