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1日1論点1論証

やっぱり民法が好き!

売却代金と現存利益

2006年04月18日 | 事務管理・不当利得・不法行為
【問題提起】
 利得者が利得した現物を売却し、その売却代金を消費してしまった場合、損失者はいかなる範囲で利得者に対して不当利得返還請求できるか。利得者の取得代金は控除されるか。

【判例】
 損失者は売却代金の不当返還請求ができる。利得者の取得代金は控除されない。

【近江】
 損失者は物の市場価格の不当利得返還請求ができる。なぜなら、市場価値を超えた利益は、利得者の才覚に由来するものだからである。また、不当利得が物の返還請求権に代わるものであるから、取得代金は控除されない。

【備考】
近江p56

騙取金による弁済と不当利得

2006年04月17日 | 事務管理・不当利得・不法行為
【問題提起】
 債務者が第三者から騙し取った金銭で債権者に対して弁済した場合、第三者は債権者に対して不当利得返還請求できるか。被詐欺者たる第三者の損失と債権者の受益との間に因果関係が認められるか、債権者の金銭の受領に法律上の原因がないかが問題となる。

【判例】
 社会通念上、第三者から騙し取った金銭で債権者の利益をはかったと認めるに足りる連結があるときは、第三者の損失と債権者との利得との間には不当利得の成立に必要な因果関係があると解すべきである。不当利得制度は公平の観点から利益調整をはかるものであるから、因果関係も公平の観点から判断されるべきだからである。
 また、債権者が金銭の受領につき悪意・重過失がある場合には、その利得は被害者との関係においては法律上の原因がないと解すべきである。
 よって、社会通念上、第三者から騙し取った金銭で債権者の利益をはかったと認めるに足りる連結があり、債権者が金銭の受領につき悪意・重過失がある場合には、第三者は債権者に対して不当利得返還請求できる。

【補足】
 通説は、「法律上の原因なくして」を、公平の理念からみて財産的価値の移動をその当事者間において正当なものとするだけの実質的・相対的な理由がないことをいうと解している。

【備考】
双書p44

転用物訴権

2006年04月16日 | 事務管理・不当利得・不法行為
【前提】
 転用物訴権とは、ある者のした契約上の給付が契約の相手方のみならず第三者の利益になった場合に、給付者が第三者に対してする不当利得の返還請求のことをいう。

【問題提起】
 いわゆる転用物訴権は認められるか。

【判例】
 相手方と第三者との間の契約を全体としてみて、第三者が対価関係なしに右利益を受けたときに限り、第三者が法律上の原因なくして利益を受けたということができ、転用物訴権を認めることができる。

【加藤説】
 相手方が第三者の利益保有に対応する反対債権を持っていない場合であって、第三者の利益保有が相手方と第三者間の関係全体からみて無償と認められときに限り、転用物訴権を認めるべきである。なぜなら、①相手方が第三者の利益保有に対応する反対債権を持っている場合には、転用物訴権の承認は給付者に対して相手方の他の債権者に対する優先的立場を与えることになって破産法秩序の潜脱のおそれがあり、②相手方が第三者の利益保有に対応する反対債権を持っていない場合であって、第三者の利益保有が相手方と第三者間の関係全体からみて有償と認められときには、転用物訴権を認めることは第三者に二重の経済的負担を強いることになるからである。

【備考】
双書p42
百選II70

不当利得の要件としての因果関係

2006年03月27日 | 事務管理・不当利得・不法行為
【問題提起】
 不当利得の成立要件として、受益と損失との間にどの程度の因果関係を要するか。条文からは明らかでないため問題となる。

【判例】
 受益と損失との間には直接の因果関係が必要である。ただし、介入した第三者の行為が一面Aに損失を与えると同時に他面Bに利得を与えるものである場合、介入した第三者の損失を与える行為と利得を与える行為とが別個のものであっても、損失者の所有に属する物をもって利得者に利得をあたえた場合、転用物訴権の場合にも因果関係に直接性を認めている。

【通説】
 因果関係を直接的なものにかぎることは、公平の観念に基づく不当利得制度を硬直させるから適当ではなく、社会観念上、損失と受益との間に因果関係ありと認められればそれで十分とするべきである。

【備考】
双書p39

第三者に交付された貸付金の返還

2006年03月22日 | 事務管理・不当利得・不法行為
【問題提起】
 消費貸借契約の借主が貸主に対して貸付金を第三者に給付するように求め、貸主がこれに応じた場合において、後に借主が当該契約を取消したとき、貸主は借主に対して不当利得返還請求できるか。貸付金が第三者に交付された場合にも借主が利益を受けたといえるかが問題となる。

【判例】
 特段の事情のない限り、借主は貸付金の価額に相当する利益を受けたものとみるべきであり、貸主は借主に対して不当利得返還請求できる。なぜなら、そのような場合に借主と第三者との間には事前に何らかの法律上または事実上の関係が存在するのが通常だからである。また、その場合、借主を信頼してその求めに応じた貸主は必ずしも借主と第三者間の事情に通じているわけではないので、貸主に両者の関係および借主が受けた利益につき主張立証を求めるのは困難を強いるのみならず、借主が給付を受けた上で第三者に給付した場合と比して衡平に反するからである。

【備考】
百選II71

準事務管理

2006年03月17日 | 事務管理・不当利得・不法行為
【問題提起】
 準事務管理とは、他人の事務を自己のためにする意思をもって管理し、利益を上げた者がいるときは、本人は管理者の計算義務を主張してこれらの行為によって得られた利益の引渡を請求できる、ドイツ民法上の制度をいう。そのような規定のないわが国の民法において、解釈上認められるかどうかが問題となる。

【平井説】
 この点に関して、客観的他人の事務を自己のためにする意思をもって管理したとき、および、事務管理が本人の意思または利益に反することが明らかなとき、に準事務管理として事務管理の規定を類推適用すべきとする見解がある。
 しかし、他人の事務を悪意で自己のために管理した場合に、本来利他的な行為を保護するための事務管理制度を準用するのは筋違いであって、不当利得または不法行為における損失・損害の合理的な認定によって処理すべきである。
 また、管理者がその才能によって異常な利益をおさめたときは、それはむしろ返還させないほうが公平であり、適法な事務管理の場合でもこのような才能は一種の費用として本人から償還すべきであるから、両者に不均衡は生じず、準事務管理を認める必要がない。 

【備考】
双書p24

事務管理と代理

2006年03月11日 | 事務管理・不当利得・不法行為
【問題提起】
 事務管理として法律行為が行われた場合において、それが管理者の自己の名においてなされたときは、効果は本人に帰属しない(判例)。では、法律行為が本人の名でなされたときは、効果は本人に帰属するか。事務管理者に当然に代理権が認められるかが問題となる。

【通説】
 事務管理者に当然には代理権は認められず、事務管理が本人の名でなされた場合も、効果は本人に帰属しない。事情によって本人の黙示的追認を認めて公平な解決を図ればよい。

【備考】
双書p20





未成年者に責任能力がある場合の監督者の責任

2006年03月05日 | 事務管理・不当利得・不法行為
【問題提起】
 責任能力ある未成年者の不法行為について監督責任者が責任を負うか。714条の文言上、「責任無能力者が責任を負わない場合」と規定されているため問題となる。

【判例】
 未成年者が責任能力を有する場合であっても、監督義務者の義務違反と未成年者の不法行為によって生じた損害との間に相当因果関係が認められるときは、監督義務者につき709条に基づく不法行為が成立する。

【平井説】
 709条と714条とが融合した新しい複合型不法行為の類型によって、監督義務違反責任が発生する。なぜなら、監督義務違反は基本型不法行為における過失とは性質を異にし、親権者の教育監督義務であって714条と同様であり、一方、原告が監督義務違反を立証しなければならない点は709条と同様だからである。

【備考】
平井p215