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1日1論点1論証

やっぱり民法が好き!

債権譲渡後の物上代位の可否

2006年04月21日 | 担保物権
【問題提起】
 物上代位の目的債権が第三者に債権譲渡された後、当該債権に対して抵当権者は物上代位権を行使できるか。304条の「払渡し又は引渡し」に債権譲渡が含まれるかが問題となる。

【判例】
 「払渡し又は引渡し」に債権譲渡が含まれない。したがって、抵当権者は物上代位の目的債権が譲渡され対抗要件を備えられた後においても、自ら目的債権を差押えて物上代位することができる。
 譲渡後の債権への物上代位権の行使を認めても第三債務者の利益を害さないし、また、抵当権の効力が物上代位の目的債権に及ぶことは抵当権設定登記によって公示されているから譲受人に不測の不利益を与えるものではなく、債権譲渡によって物上代位を容易に免れるとすると抵当権者の利益を不当に害することになるからである。

【備考】
新民法学p232

物上代位の要件としての差押え

2006年04月20日 | 担保物権
【問題提起】
 物上代位の要件である「差押え」の意義はどのようなものか。物上代位の本質と関連して問題となる。

【従来の判例】
 抵当権者は自ら差押えをしなければ物上代位権を行使し得ない。物上代位は抵当権の性質上当然の権利ではなくして、抵当権者の保護のために特別に民法が認めた効力であり、差押えはそうした自己の優先権を保全するための要件だからである(物上代位権保全説)。

【最近の判例】
 第三債務者に対する物上代位権の対抗要件として、抵当権者自身による差押えが必要である。第三債務者に物上代位権の存在を知らせて二重弁済を強いられる危険から保護する必要があるからである(第三債務者保護説)。

【多数説】
 抵当権者は自ら差押えをしなくても、物上代位権を行使し得る。抵当権は目的物の交換価値を支配するものであるから、価値代表物の上に物上代位が認められるのは当然のことであり、払渡前に差押えが要求されるのは、単に代表物の特定性を維持するためにすぎないからである(特定性維持説)。

【備考】
要論p278
新民法学p232

抵当不動産から分離した物と抵当権の効力

2006年04月19日 | 担保物権
【問題提起】
 抵当権の効力は、抵当山林より分離された伐木にも及ぶか。370条本文にいう付加物の意義が問題となる。

【通説】
 及ぶ。抵当権は登記を対抗要件とする権利であるから、分離物が抵当不動産上に存在し、登記による公示に含まれている限りにおいて、抵当権の効力を第三者に対抗し得るからである(我妻)。

【他説】
 及ぶ。悪意の譲受人に負担のない所有権を取得させないためにも、第三者が分離物を即時取得するまでは抵当権の効力が及ぶと解すべきである。

【備考】
要論p270

従物と抵当権の効力

2006年03月25日 | 担保物権
【問題提起】
 宅地に抵当権を設定したとき、抵当権の効力は抵当権設定当時宅地のためにこれに付属させた債務者所有の動産にも及ぶか。明文の規定がないため問題となる。

【判例】
 付加一体物に従物は含まれないが、抵当権設定時の従物は87条2項によって抵当権の効力が及ぶ。

【有力説】
 及ぶ。従物は付加物に含まれ、87条2項、370条の両規定により、付属の時期を問わず、抵当権の効力が及ぶ。

【備考】
要論p272

消滅した被担保債権の異議なき承諾と抵当権の復活

2006年03月20日 | 担保物権
【前提】
 抵当権付債権が弁済によって消滅したにもかかわらず、債権者が右債権を抵当権付で第三者に譲渡し、これに対して債務者が異議を留めない承諾をした場合、債務者は債権の消滅を譲受人に主張できない(468条1項)。

【問題提起】
 上述の場合、弁済によって被担保債権が消滅しているので、権利の附従性により抵当権も消滅しているが、異議を留めない承諾によって抵当権は復活するか。明文の規定がないため問題となる。

【判例】
 債権の消滅を主張し得る者は抵当権の消滅も主張し得るが、債権の消滅を主張し得ない者は抵当権の消滅も主張し得ない。

【保留事項】
 本によってS8.8.18判例の評価が分かれている

【備考】
要論p266

無効な抵当権登記の新抵当権者による流用

2006年03月14日 | 担保物権
【前提】
 費用と手続の節約のため、無効登記の流用、すなわち、法律関係の消滅によって無効となった登記を類似した内容の別個の法律関係の公示方法としてそのまま利用することが行われうる。

【問題提起】
 抵当権の消滅によって無効となった登記を、その後に抵当権の設定を受けた新抵当権者が流用した場合、流用登記後の第三者は抵当権登記の欠缼を主張できるか。

【通説】
 流用登記は有効であり、第三者は抵当権登記の欠缼を主張できない。なぜなら、第三者が取引関係に入ったときには、抵当権譲渡の附記登記が存在するのだから、これにより流用の事実を知ることができ、第三者は先順位の抵当権の存在を覚悟すべきだからである。

【備考】
要論p265

無効な消費貸借契約と抵当権

2006年03月08日 | 担保物権
【問題提起】
 無効の金銭消費貸借契約を担保するために設定された抵当権の実行を、抵当債務者において否定しうるか。抵当権の成立における附従性との関係で問題となる。

【判例】
 抵当権の成立における附従性により、原則として、金銭消費貸借契約が無効の場合、これを担保するために設定された抵当権も無効である。
 しかし、金銭消費貸借契約が無効の場合、抵当債務者は不当利得の返還義務を有するのであり、この義務と、金銭消費貸借に基づく返還義務とは、経済的実質において同一であって、債務であることに変わりはない。その設定の趣旨からいって、本件抵当権は、当該債務の担保たる意義を有すると考えられるから、抵当債務者は、当該債務を弁済せずして無効の金銭消費貸借契約を担保するために設定された抵当権の実行を否定できない。

【備考】
要論p263

基本定義

2006年03月02日 | 担保物権
担保
:債権の履行を確実にする手段

担保物権
:目的物を債権の担保に供することを目的とする物権

留置権
:他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権を有する場合、その債権の弁済を受けるまでその物を留置して、債務者の弁済を間接的に強制する担保物権


先取特権
:法律の定める特殊の債権を有する者が、債務者の財産について、他の債権者に優先してその債券の弁済を受け得る担保物権

質権
:債権者が債権の担保として債務者または第三者から受け取った物を債務が弁済されるまで留置して、債務の弁済を間接的に強制するとともに、弁済されない場合にはその物の価額から優先弁済を受けることができる担保物権


抵当権
:債務者または第三者が占有を移さずして債務の担保に供した不動産につき、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることができる担保物権

仮登記担保
:仮登記担保契約(金銭債務を担保するため、その不履行があるときは債権者に債務者または第三者に属する所有権その他の権利を移転することを目的としてされた代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約その他の契約で、その契約による権利につき仮登記または仮登録できるもの)によって成立する担保

譲渡担保
:債務者または第三者に属する所有権その他の財産権を債権者に譲渡し、債務が弁済されたらその権利は設定者たる債務者または第三者に復帰するが、債務不履行の場合には確定的に債権者にその権利が帰属して、これにより債務が弁済されたこととする形式の担保