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1日1論点1論証

やっぱり民法が好き!

示談と後発損害

2006年03月16日 | 契約法
【前提】
 示談とは、民事上の紛争を裁判によらずに当事者間で終結させる契約である。互譲がなされた場合は和解であり、互譲がなされていなければ和解類似の無名契約と解すべきである。

【問題提起】
 請求権放棄条項の入った示談締結後、後発損害が発生したとき、被害者は追加請求をすることが可能か。示談の確定効(696条)に鑑み追加請求が認められないのではないかが問題となる。

【通説】
 ①全損害を正確に把握しがたい状況のもとにおいて、②早急に、③小額の賠償金をもって満足する旨の示談がされた場合においては、示談によって被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのものみと解すべきである。よって、示談当時予測できなかった後発損害が発生した場合には、追加請求が認められる(別損害説。契約の合理的解釈によって処理)。

【他説】
 請求権放棄条項の入った示談締結後、後発損害が発生したときは、示談契約全体が錯誤無効となり、追加請求が認められる(錯誤無効説)。

【備考】
要論p348

和解と錯誤

2006年03月10日 | 契約法
【問題提起】
 法律行為である和解は、錯誤により無効となるか。95条と696条との関係が問題となる。

【通説】
 当事者が争いの目的とし合意した事項自体に錯誤がある場合には、錯誤(95条)により無効とはならない。なぜなら、この場合には、たとえ真実に反しても法律関係を確定しようとするのが当事者の意思であり、和解の確定効(696条)が働くべきだからである。
 これに対し、和解の前提ないし基礎として当事者が予定した事項、または、和解のための譲歩の手段とされた事項に錯誤がある場合には、たとえ真実に反しても法律関係を確定しようとする意思がこれらにおよんでいないことから、錯誤無効の主張が許される。

【備考】
要論p347

争いの存否と和解契約の成否

2006年03月04日 | 契約法
【前提】
 和解の成立要件は、①争いの存在、②互譲、③紛争終結の合意、である。争いとは、当事者が権利関係の存否・範囲・態様に関して反対の主張をすることをいう。

【問題提起】
 不明確な法律関係を確定する合意は和解といえるか。和解が成立するためには「争いの存在」が必要であることから問題となる。

【判例】
 不明確な法律関係を確定する合意は争いが存在しないから、和解は有効に成立しない。

【我妻説】
 権利関係の「不確実」も両当事者の理解に多少とも食い違いがあるときは「争い」と同視してよく、和解は有効に成立する。  

【備考】
要論p344