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やっぱり民法が好き!

期限の利益喪失約款付割賦払債権の消滅時効の起算点

2006年03月23日 | 民法総則
【問題提起】
 契約違反があれば直ちに残債権額を請求できる旨の特約が付されている割賦払債権について、一回の不履行があったときは、その時から残債務全額の消滅時効が進行するか。166条の「権利を行使することができる時」の意義が問題となる。

【判例】
 この点につき、通説は、債務不履行が生じた時点で残債務全額を請求できることから、即時に時効が進行すると解している(即時進行説)。
 しかし、一回の不履行があっても、各割賦払金額につき約定弁済期の到来毎に順次消滅時効が進行し、債権者が特に残債務全額の弁済を求める旨の意思表示をした場合に限り、その時から全額について消滅時効が進行するものと解するべきである(債権者意思説)。なぜなら、債務不履行が生じたときでも、債権者が一時払いを求めずなお割賦払いを求めるにとどめる場合もあり、そのような場合に全額について即時に時効が進行するとなると、かえって債権者に酷な結果となるからである。

【備考】
要論p278

自己の物の時効取得

2006年03月18日 | 民法総則
【問題提起】
 所有権に基づいて物を占有する者についても162条の取得時効は成立するか。162条が「他人の物」と規定していることから、問題となる。

【通説】
 所有権に基づいて物を占有する者についても162条の取得時効は成立する。なぜなら、時効取得制度の趣旨は、永続する事実状態の尊重及び立証の困難さの救済にあるところ、所有権取得の証明が困難な場合や、所有権取得を第三者に対抗できない場合に取得時効を認めることは、時効取得制度の趣旨にかなうからである。

【備考】
要論p268

土地賃借権の時効取得

2006年03月12日 | 民法総則
【問題提起】
 土地賃借権を時効取得することができるか。163条の「所有権以外の財産権」に土地賃借権が含まれるかが問題となる。

【通説】
 土地賃借権は、目的物の占有を伴う権利であるから、163条の「所有権以外の財産権」に土地賃借権が含まれ、取得時効の対象となり得る。よって、①継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、②それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときには、土地賃借権を時効取得することができる。

【備考】
要論p275

取得時効と登記

2006年03月06日 | 民法総則
【問題提起】
 不動産の時効取得は、登記をしなければ第三者に対抗できないか。177条が取得時効による物権変動にも適用されるかが問題となる。

【判例】
 不動産の時効取得は、時効取得完成前に登記を経由した第三者に対しては、登記をしなくても時効取得をもって対抗することができるが、時効取得完成後に登記を経由した第三者に対しては、登記をしなければ時効取得をもって対抗することができない。なぜなら、取得時効が完成したのに登記を怠っていた者は、不利益をうけても仕方がないからである。

【参考】 
 取得時効と登記の問題についての判例の準則
①時効取得者は原所有者に対しては登記なくして対抗できる
②時効取得者は時効完成前の第三者に対しては登記なくして対抗できる
③時効取得者は時効完成後の第三者に対しては登記なくして対抗できない
④時効期間の起算点は必ず占有開始時から起算する
⑤③が適用されるときでも第三者の登記の時からさらに時効期間を経過すれば占有者はその第三者に対して登記なくして対抗できる

【備考】
要論p272

時効完成後の債務の承認

2006年02月28日 | 民法総則
【問題提起】
 時効完成後に債務の承認をした債務者は、その後改めて消滅時効を援用できるか。146条の文言上明らかでないため、問題となる。

【通説】 
 時効完成後に、債務者が時効完成に事実を知って債務の承認をしたときは、時効利益の放棄となる。そこで、時効完成の事実を知らなかった場合であって、債務承認したときには、時効完成の事実を知って債務承認したものと推定し、時効利益の放棄があったものとする見解がある。
 しかし、かかる推定は経験則に反しており、妥当でない。一方、債務者が債権者に対して債務の承認をした場合、債権者は、債務者がもはや時効の援用をしない趣旨であると考えるのが通常である。
 よって、信義則(1条2項)に照らし、時効完成後に債務の承認をした債務者は、その後改めて消滅時効を援用できないと解すべきである。

【備考】
要論p255