ヲノサトル責任編集・渋東ジャーナル 改

音楽家 ヲノサトル のブログ

新作舞台、上演間近。

2015年09月14日 | ニュース

Co.山田うん 新作公演 『舞踊奇想曲 モナカ』いよいよ今週開幕。

このカンパニーとは昨年の『ワン◆ピース 2014 / 十三夜』の2作品同時制作で初コラボレーション。今回が3作品目となるわけだが。

前回の制作方法は、「ダンスの型と伝達」 に書いた通り、自由に振り付けしてもらってそこに後から音楽をつけていく、というものだった。

それはそれで斬新な効果があったのだが、ダンサーにとっては精神的にも肉体的にも相当キツい方法にちがいない。なにしろカウントだけとりながら音もなく「純粋ダンス」を長い時間練習し、その後から予想もしなかった音楽が鳴りひびき始めるわけだから。

「今回は去年とやり方を少し変えましょう。新人ダンサーもいますし、先に音を作っていただきたい」主宰/振付の山田うんさんから、そんなリクエストを受けて初夏に始まったこのプロジェクト。

それが公演1週間前になってもまだ作曲制作を続けているという、プレッシャーかかりまくりの状況で……(涙目)

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うんさんの作品制作では、断片的な場面を作っては直しながら、それらをパズルのパーツのように組み合わせていく。

16名のダンサーそれぞれの動きで、ソロから全員群舞まで様々な「断片」をつくり、それを時間軸上に並べたり、同時進行させたり。フーガのように時間をずらして組み合わせたり。

それは生身の肉体による、チェスのような頭脳戦。試行錯誤を繰り返しながら徐々に全体を練り上げていく、時間のかかる作業だ。

公演まで一ヶ月を切ったあたりでパズルのピースが組み合わされ、全体像はようやく見えてきたものの、振付は毎日のように変わっていく。動き、流れ、スピード、タイミング、あらゆることが日々試され、作品が成長していく。

当然、音楽の所要時間やダンスとの重なり合い、聴こえ方も変わっていくし、それに応じて毎日のようにリミックスや微調整を繰り返す。果てしない作業だ。

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それにしても便利な時代だと思うのは、共同作業ツールとしての映像とネットだ。

諸事情あって毎日稽古場に通うことはできないので、通し稽古の様子を撮影してもらい、ネットで送ってもらう。その映像を参照して各場面の長さを計測したり、動きのタイミングをみたりする。そうやってバージョンアップしたサウンドをネットで送り、また翌日の稽古で使ってもらう。

こういった作業を連日くりかえす。もちろん要所要所、現場に立ち会って生の空気と圧倒的な情報量を受け取ることも不可欠なのだが、ダンス音楽の制作では細かい尺(時間)が最も知りたい要素なので、映像記録は本当に便利だ。


こんな進行表を作ってタイムを書き込み、ひたすらメモをとって音楽をバージョンアップ。

ともあれ、ようやくベータ版と呼ぶべき音楽の初期バージョンが完成した。

これから劇場に入ったら入ったで、空間の大きさや質感によってダンスはまた変わるだろう。それに対応するため、今度は劇場に持ち込んだ機材でリミックスしながら本番直前までバージョンアップやバグフィックスの作業が待っている。時間との戦いは、幕が開く直前まで続く。

そして、これだけの時間とエネルギーをかけた作品も、わずか4日間の上演が終われば消えてしまう。あとは、この時間と空間を共有した人たちの記憶の中だけの存在となる。いつも思うことだが、舞台芸術とははかない夢のようなものだなあ。

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Co.山田うん 新作公演 『舞踊奇想曲 モナカ』
振付/演出:山田うん 音楽:ヲノサトル
9.17(木)- 9.20(日)神奈川芸術劇場 大スタジオ
公演詳細


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