カレー屋(EXA)

エキプロ5で遊ぶブログでした。もはやその名残りはほぼない。

鶴声九皐

2020-12-18 21:00:00 | スポーツその他
カレーです。

年末だから今年1年を振り返り始めていて、
“個人的なベストバウト候補”をつらつら論っていく日々に
片足を突っ込んでいます。

そしてまあ、4月あたりの振り返りに入ると、
今年は緊急事態宣言の発令もありましたので、
しばし“チョコプロ”一強の時期があったなあ…

なんて振り返り始めて“チョコプロ #3 紺乃美鶴vs水森由菜”について
論った直後。

…タイムラインは時に残酷ですね。

目に飛び込んできたニュースは、これでした。





紺乃美鶴選手はデビュー現時点で5年目、
我闘雲舞所属のプロレスラー。

2015年に後楽園大会を開催した我闘雲舞の同大会を、
特にこれまでプロレスに接したことがあるわけでもなく
たまたま会場に足を運び…
代表であるさくらえみ選手がセミファイナルで敢行した
二階からのニャンニャンプレス(450°スプラッシュ)に
衝撃を受け…何故か一足飛びに“プロレスラーになろう”と
思い至って、我闘雲舞の門を叩くと、
仕事を続けながら練習を続け、
2016年10月4日に新木場で行われた、
さくらえみ40歳バースデー大会でデビュー。

デビューした時点で27歳のバリバリの社会人。
その後も仕事を続けながら予定の合う範囲で市ヶ谷大会に参戦を続ける一方で、
仲がいいのか悪いのかわからない、
同期だけど一度も一緒にご飯に行ったりしたことのない
アーサ米夏をバッキバキに意識しながら、
少しずつ少しずつ地力をつけ、試合を積み重ねていきました。

さくらさんからの言いつけを忠実に守り、
デビューから1年以上に渡って現在何試合目であるかの記録をつけたり、
ある意味ではとても愚直で美鶴さん、
最初の印象は、真面目で綺麗なお姉さん。
同期のアーサとは経験値で差をつけられ、
勝ち星に中々恵まれない日々を続けながら。








[そうはいっても仲いいような悪いような、妙に瞬発力とコンビネーション抜群な奇妙な関係がとても好きでした]


…しかし。

そんな逆境が、彼女の本性を剥き出しにさせることになりました。



不定期参戦だった美鶴さんでしたが、
2017年春頃からでしょうか。

次第に毎週、毎回、定期的に参戦をし始めるようになり
「仕事を(プロレスのために)変えまして」とサラリ。

で、12月。

合同練習で「大人と小学生くらい」動きに差を感じた悔しさを
言葉にした美鶴さんは。

「私…仕事変えました!!」





[自分のツイートからサルベージしました]


このあたりから徐々に徐々に明らかになる美鶴さんのヤバめのエピソードの数々。

そのうち割と好きなのが、

学生のころアルバイトしていたファミレスで
髪型について客からクレームを受けた際、
客側の言い分に賛同した店長に腹を立て、
その場で「辞めます」と宣言しクレーム客の眼前に座り、徹底抗戦した

…という、なんか、ヤバめのエピソード。

そして翌春には4月にはもういっそ開き直ったように爽やかに。

「紺乃美鶴、仕事、辞めましたーーっ!!

…えー…

…まぁ…

…この思い切りの良さは、
なんというか、
レスラーになるべくしてなったというか。

言葉を選べばとても情動的。
もう少し緩めると感情系クレイジーレスラー。
もっと緩めるとある種のキ※※イ(私の中ではレスラーへの褒め言葉)。

この思い切りのよさや、感情の強さは、
個人的に考える紺乃美鶴というプロレスラーの、
とてもとても強い魅力の一つであったと思います。



そんな美鶴さんですが、
キャリアを積む我闘雲舞の中ではとても激動というか、
ちょうど過渡期を過ごすこととなり。

デビューして1年目、2年目は
さくら、里歩、帯広、「ことり」、アーサに次ぐ、
1番の新人であったはずでしたが、
2017年末の「ことり」卒業、
アーサの病気療養、のちにプロレス卒業を経て、
水森由菜、駿河メイのデビューに伴い、
ほんの数ヶ月で一転して「新人」から「先輩」として
振る舞うことを余儀なくされることとなりました。

さらに2019年には団体のエースたる里歩が我闘雲舞を離れることとなり、
帯広さやかが怪我による欠場と復帰を繰り返している状況からも、
一気に先頭に立つ立場となることにもなりました。

プロレスラー・紺乃美鶴の魅力は、
そんな激動の中でも“なりたい姿”を口に出し、
エースに、ベルトに、リーダーに。


[2019.8:リーダー宣言]


貪欲に求めながら…
でもどこか、手の届かなかったり、悩ましかったりする、
言うなればもどかしさ、もっと曖昧な言葉にすると、
“人間らしさ”にもあったように思ってます。

師匠であるさくらさんをして「本当に不器用」と評され、
しなやかな身体を生かした美しい技も持つ一方で、
タッグマッチでのダブルチョップすら何度練習してもうまく行かなかったり。

それでも時折、感情が爆発的に乗った試合では、
その感情だけで相手を殺せるのではないかというほどの殺気を放ち…
ともすれば、本格的に恐くて、
それでもなお魅力的なプロレスラーでした。



個人的な美鶴さんのお気に入りの試合は、
2017.9.22 vs沙紀&瑞希(パートナー・アーサ米夏)
2019.7.2 vs志田光
2019.12.30 vsクリス・ブルックス
2020.4.7 vs水森由菜
2020.6.28 vsさくらえみ


[2019.7.2:試合の記憶、ないらしい]


…あとはアントーニオ本多との熾烈な 
“お絵描きデスマッチ”シリーズ。



また、チョコプロで7月に行われた
vs駿河メイ
vs水森由菜
vsバリヤン・アッキ
はどれも素晴らしく、
特にvs駿河メイについては、
“プロレスを楽しいと思ったことがない”プロレスラーである紺乃美鶴をして
あまりに晴れやかな笑顔をのぞかせた、
…ある意味で、
あまりにも美しすぎる“最終回”のような試合でした。

…そして、この“最終回”があまりにも美しかったがゆえに。

この度の欠場から、4ヶ月を経て“卒業”を口にすることは、
なんとなく頭のどこかでは起こりうることとして、
身構えていた部分でもあり。

「泣いていいのか笑っていいのか」
わからないまま続けたという卒業発表会見動画で、
藤田プロレス☆スクールYou Tubeチャンネルから
「プロレスで楽しかったこと」を問われた美鶴さんは、
“楽しいと思ったことがないプロレス”を、
時間をおいて振り返ることで、その4年間全てが「楽しかった」と
言い切ることになりました。

その答えを美鶴さんが得たことは、
やっぱり一つのゴールだったのかもしれません。

会見の中ですでに新しい生活への準備に入っていて、
その楽しみを口にしていた美鶴さん。
そしてまた、今しばらく“紺乃美鶴”として居続けてくれることに、
とてもとても大きな感謝の気持ちがあります。

…それでも。

プロレスラー・紺乃美鶴が、試合を経て、「楽しかった」と。
自信を持って言える姿も、見てみたかった。

プロレスラー・紺乃美鶴が、もっと見たかった。



さくらさんが会見の中で「3年後くらいに戻ってくるかもしれないし」
といって、二人で笑顔を見せる場面がありました。

そういう日が来るかもしれないし、
来ないかもしれないし。

でも希望としてどこかには持ちつつ、
プロレスラーでいてくれたことに感謝をしつつ。



…ああ、私が後楽園に普通に足を運んで、
ただただ試合を楽しく、没頭して見てたその何席か隣くらいで。

ひとり、プロレスラーになる決意をした女性がいたんだ。

ということを思い返したりしつつ。

紺乃美鶴選手の新しい生活に幸多からんことをご祈念申し上げるとともに。



“プロレスラー・紺乃美鶴”を見送る心構えを、
しっかりと整えたいと思います。




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